一度入れたインプラントを、後から除去しなければならないことはあるのでしょうか?
はい、あります。インプラントは適切なケアを行えば長期間維持できますが、炎症や骨の吸収、金属部分の破損などによって、やむを得ず除去が必要になるケースもあります。除去は最終手段であり、専門医の慎重な診断に基づいて判断されます。
この記事はこんな方に向いています
- インプラントを入れた後のトラブルが不安な方
- 「除去が必要になるケース」を事前に知っておきたい方
- 長くインプラントを維持するためのポイントを理解したい方
- すでに違和感や痛みを感じていて、原因を知りたい方
この記事を読むとわかること
- インプラントを除去しなければならない代表的なケース
- 除去の判断基準と、実際の除去手順の流れ
- 除去を防ぐために日常生活で気をつけること
- 除去後の再治療や生活上の注意点
目次
一度入れたインプラントを除去しなければならないことはあるの?
インプラントは「一生もの」と思われがちですが、残念ながら全ての症例で永久的に維持できるわけではありません。骨や歯ぐきの状態が悪化した場合、インプラント周囲炎の進行、またはインプラント体そのものの破損などによって、除去が必要になるケースがあります。除去は最後の手段であり、慎重な診断のもとで行われます。
インプラントもトラブル次第で除去が必要になる場合があります。
主な原因は炎症・骨吸収・破損などです。除去が必要になるのは「機能回復が困難」と判断された場合です。
インプラントは顎の骨と結合しており、自然の歯に近い安定性を得られます。しかし、周囲組織に大きなダメージが生じて「再治療をしても機能を維持できない」と判断されたとき、除去を検討します。除去の判断にはCT撮影や歯周組織検査が欠かせません。
どんな場合にインプラントを除去しなければならないの?
インプラントは顎の骨と結合することで高い安定性を得ますが、周囲の組織に大きなダメージが生じて「これ以上残しても機能回復が困難」と判断されたとき、除去を検討します。主な原因は以下の5つに分けられます。
炎症・結合不全・破損・噛み合わせ不良・事故などが除去の主な原因です。
主な除去の必要性が生じるケース
1. インプラント周囲炎の悪化(最も多い原因)
歯周病と同様に、歯垢による細菌感染が進行し、インプラントを支える顎の骨が広範囲にわたって溶けてしまった場合です。軽度であればクリーニングなどで対処できますが、骨吸収が大きく進行し、インプラントが動揺し始めたら、周囲の健康な骨を守るために除去が必要です。
2. オッセオインテグレーション(骨結合)が成立しなかった場合
手術直後、インプラントが骨と結合しないまま動揺してしまったケースです。感染や患者さんの全身状態(骨質)の問題、手術技術的な問題などが原因となり、身体がインプラントを異物として認識し続けると除去が必要になります。
3. 強い噛み合わせや歯ぎしりによる慢性的なトラブル
過剰な噛む力や歯ぎしり、食いしばりの力が長期間インプラントにかかり続けると、骨やインプラント体に微細な損傷が蓄積します。ナイトガードなどの対策を講じても改善せず、骨の吸収が進行した場合、除去を検討せざるを得ません。
4. インプラント体やネジの破損
チタンは頑丈ですが、稀に金属疲労によりネジが折れたり、インプラント体そのものが破折したりすることがあります。修復が技術的に非常に困難な位置での破損は、除去の対象となります。
5. 外傷・事故による損傷
スポーツや交通事故などで顔面を強打し、インプラント周囲の骨が大きく損傷したり、インプラントが変形したりした場合も、やむを得ず撤去が必要になります。
これらのケースは、多くの場合「早期発見・早期対応」で防げます。特に厄介なのはインプラント周囲炎です。天然歯の歯周病と違い、インプラント周囲の骨は症状が出ないまま一気に溶ける特性があります。痛みや腫れ、出血といった初期サインを絶対に放置せず、定期的な健診を欠かさないことが、インプラント除去という最悪の事態を避ける鍵です。
インプラント除去はどのように行うの?
除去手術は、インプラントが骨とどの程度結合しているかによって方法が異なります。
専用器具で慎重に取り外し、骨の損傷を最小限にするのが基本です。
除去の主な方法
- 専用トルク機器を使う方法
→ 骨との結合が緩んでいる場合や、周囲炎による骨吸収が進んでいる場合に有効です。専用の器具で、インプラント体を反時計回りに緩めながら、骨へのダメージを最小限に抑えて取り出します。 - 骨削除を伴う外科的除去
→ インプラントが強固に骨と結合している場合や、破損などで回転除去が不可能な場合は、インプラント周囲の骨を最小限だけ削って取り出します。術後の骨の回復を助けるために、人工骨を併用することもあります。
- レーザーや超音波機器の使用
→ 周囲組織へのダメージを軽減するため、低侵襲の器具を用いるケースもあります。
除去後の対応
除去後は、まず骨や歯ぐきの治癒を待つ期間が必要です。骨の状態や感染の有無によりますが、治癒を待ってから再インプラントを行うか、骨量が足りなければ骨再生治療(GBR法など)を併用します。条件が整わない場合は、ブリッジや入れ歯への切り替えを検討します。
- 骨の治癒を待ってから再インプラントを行う
- 骨量が不足していれば、骨再生治療(GBR法など)を併用
- 条件が整わない場合は、ブリッジや入れ歯による代替
除去後の再治療は、初回の手術以上に感染予防と術前準備が重要になります。焦って再手術を行うと、また失敗するリスクが高まります。しっかりと骨の治癒期間を取り、なぜ初回にトラブルが起きたのかという原因を突き止めてから、治療計画を立て直すことが成功への鍵です。
「除去」が必要になる前に「予防と早期発見」を
除去しなければならない状態を防ぐためにできることは?
インプラントを長持ちさせるには、日常のセルフケアと定期的な歯科健診の両立が不可欠です。特に歯垢除去が不十分だとインプラント周囲炎のリスクが高まります。また、噛み合わせの調整や歯ぎしり対策も重要です。
毎日のケアと定期健診が、インプラント除去を防ぐ最大の予防策です。
トラブルを防ぐためのポイント
- 歯磨きで歯垢をしっかり落とす
→ 天然歯と同様に、歯間ブラシやフロスを使って歯垢を除去しましょう。インプラント周囲は細菌が溜まりやすい構造です。 - 定期的なメインテナンス
→ 半年に1回以上の健診で、歯ぐきや骨の状態を確認します。早期に炎症を発見すれば、除去まで進行するリスクを減らせます。 - 噛み合わせや歯ぎしりのチェック
→ マウスピースを使って夜間の負担を軽減しましょう。力の偏りはインプラントの寿命を短くします。 - 生活習慣の見直し
→ 喫煙や糖尿病は炎症リスクを高めます。禁煙や食生活の改善も重要な予防策です。
どんなに高品質なインプラントでも、日常のケアと定期的な管理がなければ長期維持は困難です。「入れたら終わり」ではなく、「入れてからがスタート」という意識が大切です。
インプラント除去後に再治療はできるの?
除去後の再治療は可能ですが、骨の吸収が大きい場合や感染が残っている場合には、すぐに再埋入できません。骨造成や治癒期間を経てから再手術を行うことが一般的です。治療法は個人の骨量・全身状態・希望によって変わります。
条件が整えば再埋入可能ですが、慎重な計画が必要です。
再治療の主な選択肢
- 再インプラント手術
→ 骨が再生していれば、同じ部位に再び埋入可能です。 - 骨造成を伴う再手術
→ 骨量が不足している場合は、骨移植や再生材料を使用します。 - ブリッジや入れ歯による代替
→ 骨の再建が難しい場合、他の補綴治療に切り替えます。
注意すべきポイント
再治療では、初回手術よりも感染リスクが高いため、術前の口腔衛生管理を徹底する必要があります。また、治療法を選ぶ際は「機能回復」だけでなく「再発防止」の観点も重視することが重要です。
インプラントを除去する判断はどのように行われるの?
除去は医師が慎重に判断する必要があります。単なる炎症や一時的な不具合であれば、クリーニングや薬物療法で改善できることもあります。しかし、骨吸収が広範囲に及んでいる場合やインプラント体が動揺している場合は、除去を避けられません。
状態を総合的に判断し、保存できないときに除去が決定されます。
判断の基準となるポイント
- 動揺の有無(インプラントが揺れていないか)
- X線やCTで確認する骨吸収の範囲
- 周囲炎症の程度(腫れ・排膿の有無)
- 痛み・咬合異常の持続期間
- 全身疾患の影響(糖尿病・免疫低下など)
これらを総合的に評価し、「残しても安定しない」と判断された場合にのみ除去を行います。
除去後の生活で気をつけることは?
除去後は骨や歯ぐきの回復を促す期間が必要です。清潔を保ちながら、刺激物や硬い食べ物を避けることが求められます。また、再治療を予定している場合は、骨の治癒を妨げないよう十分な栄養・睡眠も大切です。
除去後は清潔保持と安静が最優先です。
回復期の注意点
- 口腔内の清潔を保つ → 刺激の少ない歯磨きを行い、うがい薬を活用
- 食事に注意する → 硬いものや熱いものを避け、やわらかい食事を中心に
- 禁煙・節酒 → 治癒を妨げるため控える
- 無理な運動を避ける → 血流が過剰になると出血しやすくなります
治癒後の再治療に備え、医師の指示に従いながら慎重に経過を観察することが重要です。
まとめ
除去が必要になる前に「予防と早期発見」を
一度入れたインプラントを除去しなければならないケースはありますが、適切なセルフケアと定期的なプロの管理によって、多くのトラブルは未然に防ぐことが可能です。
- 除去の原因は周囲炎・骨結合不良・破損など
- 予防には丁寧な歯磨きと定期健診が不可欠
- 違和感を感じたら早めの受診が重要
- 除去後も再治療の選択肢は多い
最後に
インプラントは「治療して終わり」ではなく、「長く共に過ごす医療器具」です。少しでも異変を感じたときは早めに専門医に相談し、健康な状態を保つためのサポートを受けましょう。
医療法人真摯会