インプラント治療前・治療後の疑問

インプラントには歯石はつくの?

インプラントには歯石はつくの?

インプラントを長期的に健康な状態で保つためには、適切なメンテナンスが欠かせません。インプラントに歯石がつくメカニズムと、そのリスクについてご説明します。また、歯石の付着を防ぐための予防策についても紹介します。

インプラントとは?

インプラントは、失われた歯を補うために顎骨に埋め込む人工歯根のことです。チタンなどの生体適合性の高い材料を使用し、顎骨と結合することで安定した基盤を提供します。この上に人工の歯冠を装着することで、見た目も機能も自然の歯に近い状態を再現します。

主な特徴

  • 長持ちする耐久性
  • 自然な見た目と感触
  • 周囲の歯に依存しない独立した構造

歯石の形成とそのメカニズム

歯石は、歯垢が時間と共に硬化したもので、主に唾液中のカルシウムやリン酸塩が歯垢に結合することで形成されます。歯垢は食事の残りカスや細菌が混ざり合ってできる粘着性のある物質で、特に歯と歯茎の境目に付着しやすいです。

歯石の形成プロセス

  1. 歯垢の付着・・歯の表面に細菌や食べ物の残りが集まる。
  2. カルシウムの沈着・・唾液中のカルシウムが歯垢に沈着。
  3. 硬化・・時間と共に歯垢が硬化し、歯石となる。

インプラントと歯石の関係

インプラントも天然歯と同様に、適切なケアを怠ると表面に歯垢が付着し、最終的に歯石となることがあります。

インプラント周囲に歯石がつくメカニズム

  • インプラント周囲の歯茎が天然歯と同じように細菌の影響を受ける。
  • インプラントの表面に歯垢が付着し、時間が経つと歯石に変わる。

インプラントに歯石がつくリスク

インプラントに歯石がつくことは、インプラント周囲の歯周組織の健康に重大な影響を及ぼす可能性があります。以下のようなリスクがありますので、ご説明します。

1. インプラント周囲炎

インプラント周囲炎は、インプラントを支持する周囲の歯茎や骨に炎症が起こる状態です。これは天然歯の歯周炎と同様に、歯垢や歯石の蓄積によって引き起こされます。

  • 初期段階では、歯茎の赤みや腫れ、出血などが見られます。これはインプラント周囲の歯肉炎と呼ばれます。
  • 進行段階では、炎症が深部の骨にまで広がり、インプラント周囲炎に発展します。これが進行すると、インプラントの安定性が失われ、最悪の場合、インプラントの脱落を引き起こすことがあります。

2. 骨吸収

インプラント周囲炎が進行すると、インプラントを支える顎骨が吸収されてしまうことがあります。骨吸収が起こると、インプラントの支持基盤が弱まり、最終的にはインプラントが脱落するリスクが高まります。

  • 顎骨の損失はインプラントの長期的な安定性に重大な影響を及ぼし、治療が必要となります。
  • 再手術の可能性・・骨吸収が進行した場合、インプラントの再手術や骨移植が必要になることがあります。

3. 慢性的な炎症

歯石の蓄積による慢性的な炎症は、全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。特に、糖尿病や心血管疾患などの全身疾患を持つ患者では、炎症がこれらの疾患を悪化させるリスクがあります。

  • 全身の健康リスク・・口腔内の慢性的な炎症が、他の健康問題と関連する可能性があります。

4. インプラントの審美性の低下

歯石が蓄積すると、インプラントの審美性も低下します。これは特に前歯のインプラントにおいて問題となります。

  • 黄ばみや着色・・歯石が表面に堆積することで、インプラントが黄ばんだり着色したりすることがあります。
  • 歯茎の後退・・炎症が進行すると、歯茎が後退し、インプラントの金属部分が露出することがあります。

5. 口臭の悪化

歯石の蓄積は口臭の原因にもなります。これは、歯石に細菌が付着し、口腔内で不快な臭いを発生させるためです。

  • 社会的影響・・口臭は社会生活や対人関係に悪影響を及ぼすことがあります。

6. 治療費の増加

インプラントに歯石がつき、インプラント周囲炎や他の問題が発生した場合、その治療には多額の費用がかかることがあります。

  • 予防対策費用・・定期的なプロフェッショナルクリーニングやチェックアップの費用が必要です。
  • 治療費用・・インプラント周囲炎の治療や再手術の費用が発生する可能性があります。

インプラント周囲炎の予防方法

インプラント周囲炎を予防するためには、以下の方法が有効です。

日常的なオーラルケア

  • 毎日の歯磨き・・フッ素入りの歯磨き粉を使用。
  • デンタルフロスや歯間ブラシを使って、歯と歯の間やインプラント周囲を清潔に保つ。

食生活の改善

  • 糖分の多い食事を控える。
  • バランスの取れた食事を心掛ける。

インプラントに歯石がつくリスクを減らすための予防策

インプラントを長持ちさせ、健康な口腔環境を維持するためには、以下のような予防策が欠かせません。

1. 毎日の口腔ケア

  • 歯磨き・・少なくとも朝晩2回、フッ素入りの歯磨き粉を使用して磨く。
  • デンタルフロスやインターデンタルブラシの使用・・インプラント周囲や歯間の清潔を保つ。

正しい歯磨きの方法

  • 歯磨きの頻度・・毎日少なくとも朝と夜の2回、理想的には食後すぐに歯を磨く。
  • 適切な歯磨き粉の選び方・・フッ素入りの歯磨き粉を使用することで、虫歯予防だけでなく歯石の形成を抑える効果が期待できます。
  • 歯ブラシの選び方・・柔らかい毛の歯ブラシを選び、インプラントの周囲を優しく磨く。インプラント専用の歯ブラシも検討すると良いです。
  • ブラッシングテクニック・・歯ブラシを45度の角度で歯と歯茎の境目に当て、小さな円を描くように優しく磨く。

デンタルフロスや歯間ブラシの使用

  • デンタルフロス・・歯と歯の間の歯垢や食べ物のカスを取り除くために使用。特にインプラント周囲は注意が必要です。
  • インターデンタルブラシ・・歯間やインプラントの周囲を清潔に保つために、適切なサイズのものを選び、優しく使用する。

2. 定期的な歯科健診

  • 半年に一度の定期検診で、インプラントの状態をチェックしてもらう。

  • プロフェッショナルクリーニングを受け、歯石の蓄積を防ぐ。

定期検診の重要性

  • 頻度・・半年に一度、歯科医院で定期検診を受けることが推奨されます。これにより、インプラントの状態を定期的にチェックし、問題が早期に発見されます。
  • チェック内容・・歯科医師はインプラントの安定性、歯茎の健康状態、歯石の蓄積状況を確認し、必要に応じて対策を講じます。

歯科医院でのクリーニング

  • クリーニングの重要性・・定期的に歯科医院でクリーニングを受けることは、歯石の蓄積を防ぐために非常に重要です。歯科衛生士が専門的な器具を使用して歯石を除去します。
  • 回数・・3~6ヶ月ごとに歯科医院でのクリーニングを受けることが推奨されます。

3. 健康的な食生活

バランスの取れた食事

  • 糖分の制限・・糖分の多い食品や飲料は、歯垢の形成を助長するため控えるようにします。
  • 栄養のバランス・・カルシウム、ビタミンD、ビタミンCなどの栄養素を含むバランスの取れた食事は、歯や歯茎の健康を維持するのに役立ちます。

適度な水分補給

  • 口腔内の乾燥防止・・適度な水分補給は、唾液の分泌を促し、口腔内を清潔に保つ効果があります。唾液は天然の洗浄作用があり、歯垢の形成を抑える役割を果たします。

4. 禁煙

喫煙の影響

  • 歯茎へのダメージ・・喫煙は歯茎の血流を減少させ、インプラント周囲の健康を損なう可能性があります。
  • インプラント周囲炎のリスク増加・・喫煙者は非喫煙者に比べてインプラント周囲炎のリスクが高まります。

禁煙のメリット

  • 口腔内環境の改善・・禁煙することで、歯茎の健康が改善され、インプラント周囲の炎症リスクが減少します。
  • 全身の健康改善・・禁煙は全身の健康にも良い影響を与えます。

これらの予防策を実践することで、インプラントに歯石がつくリスクを大幅に減らし、インプラントの健康を維持することができます。

日常的なケアとメンテナンスの重要性

インプラントを長持ちさせるためには、日常的なケアが欠かせません。

ポイント

  • 正しい歯磨き方法・・歯ブラシを45度の角度で当て、歯と歯茎の境目を軽い力で優しく磨く。
  • 適切なブラシ選び・・インプラント専用の柔らかいブラシを使用する。

歯科医院での定期健診とクリーニング

定期的な歯科医院での健診とクリーニングは、インプラントの健康を保つために非常に重要です。

推奨される頻度

  • 定期健診・・3~6ヶ月に一度の頻度で受診。
  • クリーニング・・3~6ヶ月に一度クリーニングを行うことで、歯石の蓄積を防ぐ。

歯科医師によるチェックポイント

  • インプラントの安定性の確認
  • 歯茎の健康状態の評価
  • 隠れた問題の早期発見

まとめ

インプラントも天然歯と同じように歯石がつく可能性があります。そのため、毎日の適切なケアと定期的な歯科医院でのチェックとクリーニングが欠かせません。これらの対策を行うことで、インプラントを長持ちさせ、お口の中を健康に保つことができます。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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