
前歯のインプラントを失敗すると、見た目はもちろん、患者様自身の精神面や身体面、高い費用の負担などが多くなります。では、前歯のインプラントを失敗しないためにはどうすれば良いか、具体的な例を挙げてご説明します。
目次
前歯のインプラントはどんな失敗のリスクがあるの?
前歯のインプラントが失敗する様々なケースについてご説明します。
1.インプラントの埋入位置や深さや角度がズレた
オペを担当した歯科医師の技術不足により、インプラントが治療計画通りの位置や深さや角度で埋入できなかった場合、インプラントや上部構造への力のかかり方のバランスが狂い、噛み合わせがおかしくなるリスクがあります。
また、治療計画通りに埋入できなかった場合、血管や神経を傷つけたり、上顎洞にインプラントが突き抜けて落ちてしまうというリスクもあります。
手術中に多いトラブル
- 下歯槽神経損傷・・インプラントを埋入する際に下顎の骨の中を走っている神経を傷つけること。唇や舌が痺れて麻痺が残る。
- 上顎洞内インプラント迷入・・インプラントを埋入する際に上顎を深く削り過ぎると、埋入後にインプラントが上顎洞の中に落ちてしまうことがある。
- 上顎洞炎・・インプラントによる上顎洞内の感染を放置したり、傷が治らなかったりすると、膿の混じった鼻水、鼻詰まりなどの副鼻腔炎の症状が出る
2.GBR(骨造成)を失敗した
インプラントを埋入するための骨の高さや幅が足りない場合は、骨造成が必要になります。GBRでは骨の厚みを足す場合よりも、高さを足す場合の方が難しく、日本人の骨は外国の方の骨と比べて薄く繊細なので前歯へのGBRは特に難易度が高いとされています。
3.インプラントが骨と結合しなかった
インプラントが予定していた位置や深さや角度に埋入されなかった場合に、うまく骨との結合が為されないことがあります。
また、インプラント体を骨に埋入するための穴をあけるドリリングの際に、骨がオーバーヒートしてダメージを受けた場合、骨とインプラントが結合しないことがあります。
4.インプラント周囲炎になってしまった
インプラントは歯根膜をもたないため、感染にとても弱く、インプラントの周囲の歯茎が歯周病(インプラント周囲炎)になってしまうと進行が早くなります。
そのため毎日のセルフケアを丁寧に行ってインプラントの周囲に歯垢がつかないように気をつけると共に、数か月毎の歯科医院での定期健診を必ず受けていただくことが必要になります。
5.上部構造の色が思っていたよりも白すぎた
上部構造のセラミックの色を決める時には、色見本の中から近い色を数色選び、鏡で色見本のチップを歯に当てて見ながら、どの色にするかを決定します。
その際に、若干白めの色を選ぶ方が多いのですが、稀にもっと白い色をご希望される場合があります。しかし左右の歯の色よりかなり白いと、その歯だけが浮き上がって目立ちますので、左右の歯と馴染む色にした方がお顔に馴染みますし、天然の歯との見分けがつきにくくなります。
前歯のインプラントの失敗を防ぐためには

前の歯を支える歯槽骨は、骨の構造上薄くなっています。歯科医が歯周病に気づかず、インプラントを行った場合、前歯のインプラントは安定にかけ、痛み、動揺、脱落、またインプラント周囲炎など細菌感染を引き起こしかねません。前歯のインプラント治療を失敗しないためにはどうすれば良いでしょうか。
1. 診断を正しく行い治療計画を立てる

CTスキャンの画像診断を正しく行って骨の量や質、位置、顎の関係などを正確に把握し、それに基づいた治療計画を立てることが重要です。
2. 熟練した歯科医師の選択

前歯のインプラントの経験が豊富で、熟練している歯科医師やインプラント専門医に治療を担当してもらうことが重要です。外科手術は医師の技術や経験が治療の成功に大きく影響します。
3. 適切なインプラントの選択
インプラント体には様々な長さや太さがあり、患者さんのお口の状態によって担当医が最も適切なインプラントを選びます。
4. インプラント治療中は喫煙する
タバコに含まれる有害物質によってインプラントと骨の結合が阻げられ、インプラントが定着するまでの期間が長引く可能性があります。治療前後は禁煙することが推奨されます。
5. インプラント治療前後のセルフケア
インプラント治療前後は歯周病にならないように、毎日丁寧に歯磨きをして、デンタルフロスも使いましょう。歯周病にならないことがインプラントを長もちさせるための秘訣です。
6. 定期的にメンテナンスを受ける
インプラントを長く維持するためには、定期的に歯科健診を受けることと、歯科衛生士による歯のクリーニングを受けることが必要です。
7. 審美的な仕上がり
前歯のインプラントにおいては、隣の歯と違和感のない色や形であること、歯や歯茎のラインがガタガタせずきれいなアーチを描いていることが重要です。
8. 糖尿病や全身疾患の管理
全身疾患のある方の病状によっては、インプラントと骨の結合や傷の治癒に影響を与える場合があります。担当医の指示に従いましょう。
9.増骨の処置を正しく行える経験と技術
前歯のインプラントの場合は骨の量や厚みが足りないために増骨の処置をするケースが多いです。増骨を間違いなく行うためには、処置に慣れた歯科医師に治療してもらうことが大切です。
9. 術後ケアを歯科医院の指示通りに行う
歯科医院から手術後のケアや過ごし方についての指示がありますので、それらを厳守した生活を送り、必要な薬の服用やセルフケアを行いましょう。
10. 問題が起こった場合の連絡先
治療後に痛み、腫れ、出血などの異常が起こった場合に、どうすれば良いのか、事前に訊いておきましょう。また、緊急時に医院に連絡が取れるかどうかも確認しましょう。
前歯のインプラントはカウンセリングを活用しよう

前述したことを確かめるためには、カウンセリングを利用しましょう。予約制で無料で行っている歯科医院が多いです。インプラントは自由診療のため、多額の料金がかかります。前歯のインプラントを失敗しないためにも、複数の医院へ足を運び、お悩みを相談してください。
インプラント治療とは

むし歯や歯周病、不慮の事故により抜歯になるケースはあります。前歯は奥歯よりも周囲の方から見られる部分です。そのため、義歯(入れ歯・ブリッジ・インプラント)のいずれかを選択され、処置を歯科医院で受けられる方が多いでしょう。今回はインプラントの治療の流れを簡単にご紹介します。
インプラント治療の説明
インプラントとは、人工歯根を顎の骨に埋入し、その歯根をもとに人工歯を作る治療方法です。カウンセリングで口腔内の状態を確認し、可能であると歯科医師が診断すれば、CTなどの検査を行います。検査によりあごの骨の量が足りていれば、いよいよインプラント治療の開始です。
※骨の量が足りない場合は、骨造成という治療を先に行います。
インプラントの治療の流れ

インプラントの一般的な術式である二回法を例に、治療の手順をご説明します。
1.一次手術
生体親和性の高いチタン素材の人工歯根(フィクスチャーと呼ばれるネジ形状のもの)を顎骨に埋め込み、骨とインプラント体が結合する時を待ちます。
2.二次手術
2~6ヶ月が経過し、インプラント体と骨がしっかりと結合したら、上部構造(被せ物)を固定する支台となるアバットメントを取り付けます。必要に応じて仮歯を入れます。
3.上部構造の装着
型取りを行い、最終的な被せ物である上部構造を製作します。上部構造が技工所から送られてきたらアバットメントに装着します。上部構造の装着方法にはスクリュータイプやセメントタイプなどがあります。被せ物は審美性が高く、噛み合わせの精度や耐久性に優れているセラミックを選択される方が多いです。
【動画】前歯のインプラントについて
クローバー歯科総院長の松本正洋が前歯のインプラントについて解説。
前歯のインプラントを失敗しないに関するQ&A
前歯のインプラント治療の失敗リスクには以下のようなケースがあります: ・インプラントの埋入位置や深さや角度がズレた場合 ・GBR(骨造成)が失敗した場合 ・インプラントが骨と結合しなかった場合 ・インプラント周囲炎が起こった場合 ・上部構造の色が希望と異なる場合
前歯のインプラント治療において、骨造成(GBR)の失敗は骨の高さや幅の不足を引き起こす可能性があります。特に前歯の場合、骨が薄く繊細であるため、GBRの難易度が高くなります。骨の不足があると、インプラントの安定性や噛み合わせに問題が生じる可能性があります。
前歯のインプラントの色調整においては、周囲の自然歯との調和が重要です。白すぎる色を選ぶと、他の歯との色の違いが目立ち、浮いた印象を与えることがあります。自然な見た目を保つためには、左右の歯の色と馴染むような色合いを選ぶことがポイントです。カウンセリングや色見本を活用して、患者と歯科医師が共に満足のいく色を選ぶことが重要です。
まとめ

前歯のインプラントを失敗しないためには、治療内容や計画、期間や費用をわかりやすく提示してくれる歯科医院を選びましょう。インプラント手術をして終わりではなく、術後のメンテナンスまで、長い期間インプラントを保てるよう計らう歯科が望ましいと考えます。