インプラント

インプラントが抜けてしまったら応急処置はどうする?

インプラントが抜けた際の応急処置って?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラントが抜けてしまった場合、まずは冷静に対処することが重要です。インプラントが抜けた際の応急処置についてご説明します。

インプラントが抜けた状況の確認

部分的に抜けた場合

インプラントが部分的に抜けた、あるいはグラグラ揺れている状態であれば、無理に触らずにそのままにしておくことが重要です。抜けた部分や周囲の組織を傷つける可能性があるため、応急処置としてはなるべく安静に保つことを心がけましょう。食事の時は、インプラントの歯を避けて噛むようにします。

完全に抜けた場合

インプラントが完全に抜けてしまった場合は、そのインプラントを清潔な状態で保存し、速やかに歯科医師に連絡してください。

インプラントが抜けたときの応急処置

抜けたインプラントの保管

完全に抜けたインプラントは、汚れが付着している場合、流水で軽くすすぎます。ただし、強くこすったり消毒液に浸けたりするのは避けてください。その後、清潔な容器に入れて保管し、歯科医院に持参します。

口腔内の清潔を保つ

インプラントが抜けた後の部位は非常にデリケートな状態です。抜けた部分に触れずに、やわらかい歯ブラシで周囲を優しく磨き、口腔内の清潔を保ちます。抗菌性のうがい薬を使うとさらに効果的です。

止血

出血がある場合は、清潔なガーゼやティッシュを用意し、患部に優しく押し当てて止血します。強く押さえすぎると逆効果になるので、適度な圧力で止血を行いましょう。

痛みがある場合

抜けた部位に痛みがある場合は、市販の鎮痛剤を服用して痛みを和らげます。冷やすことも痛みを軽減するのに有効です。

状況別の対処の仕方

インプラントが抜けた、割れた、欠けた

インプラントは3つのパーツから成り立っています。まず、どの部分が抜けた、壊れた、取れたなどの症状や、インプラントの周辺のトラブルの状態を、患者さんのわかる範囲でしっかり確認する必要があります。

上部構造が取れた、欠けた

インプラントの被せ物を上部構造と呼びます。上部構造はセラミックや、ハイブリッドセラミックなどで作られますが、これが取れたり欠けたりすることがあります。

上部構造がぽろっと取れてしまった場合は、無理やり自分自身で再度付けようとしてはいけません。周囲の歯茎やインプラント体、アバットメントを痛めてしまう危険があります。誤って飲み込まないように気を付けて、上部構造を保管してください。

欠けて破損してしまった場合は、上部構造の作り直しになります。早めに歯科を受診しましょう。

アバットメントが外れた

インプラント体と、被せ物を繋ぐ土台(アバットメント)が外れるケースもあります。土台が外れるということは、すなわち上にかぶせてあった上部構造も取れているという事になります。注意を払いながら、土台と上部構造を保管してください。

インプラントそのものが抜けた

このケースはかなり深刻な問題と言えます。インプラント体は人体と生体親和性が高いチタンで作製され、顎骨に埋め込まれた後、骨としっかり結合して固定されます。インプラント体は人工歯根とも呼ばれ、骨としっかりと結合した後はグラつくこともなく、しっかりと噛める人工歯根となります。

しかし、その後インプラント体(人工歯根)が骨から抜け落ちたという事は、インプラント周囲炎(歯周病)を起こしている可能性があり、かなりインプラント周囲の歯周組織やあごの骨の状態が悪いと言えます。

インプラントが抜けてしまった場合は、すぐに歯科を受診してください。周囲炎によって歯茎に炎症が起こっていますので、消炎の処置が必要になります。炎症を放っておくと発熱することもありますので、すぐに歯科医院に予約の連絡をしましょう。

抜けてしまったインプラントを再度埋め込むのか、又はブリッジや入れ歯にするのか、医院で検査してお口の状態を診療しなければ詳しい事はわかりませんが、再手術に備えてちゃんとインプラント体と土台、上部構造を保管してください。

歯科医院への速やかな連絡

できるだけ早い受診が必要

インプラントが抜けた場合は、できるだけ早く歯科医院を受診することが大切です。適切な治療を受けることで、インプラントの再手術や他の治療法について早急に対応できます。

インプラントの再装着の可否

抜けたインプラントが再度装着可能かどうかは、歯科医師の判断によります。インプラントの状態や周囲の骨、歯肉の状況によって、再度埋入できる場合もありますが、再治療が必要な場合もあります。

インプラント周囲炎とは?

インプラントが抜けてダメになってしまう一番多い原因は、インプラント周囲炎によるものです。インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲の歯茎や骨が細菌に侵されて炎症を起こし、次第に失われていくもので、その症状は歯周病とよく似ています。

周囲炎にかかると、歯周病と同じように歯茎が腫れたり膿が出たり、歯茎の退縮が起こり、骨にまで炎症が起こると、骨がインプラントを支えきれなくなってグラグラし始め、最後にはインプラントが抜けてしまいます。

そのため、周囲炎にならないように、年に数回の定期健診(メンテナンス)でインプラントの周囲に歯垢や歯石がたまらないようにしなければなりません。

同時に、ご家庭での毎日のセルフケアも大変重要となります。歯ブラシだけでなくデンタルフロスや歯間ブラシを使って、お口の中を清潔に保ち、インプラントを守りましょう。

インプラントのパーツの保管方法は?

タッパーウェアー

保管方法で重要なのは、衛生的かつ力がかかっても破損しない保管をすることです。ティッシュや紙で包んで保管してしまうと、ご家族の方などが誤って捨ててしまう可能性があります。

また、捨てられなくてもそれに力が加わった場合、上部構造はセラミックなどで出来ていますので、割れてしまったり、変形する可能性も考えられます。クリニックの予約までまだ日があって不安な場合は、被せ物やアバットメントなどの保管にはご家庭にある小さめのタッパーウェアを活用するのがおすすめです。

歯医者さんにはどう伝えたらいい?

インプラントや上部構造が取れてしまったらすぐにかかりつけの歯科医院へなるべく早く連絡を入れ、診療の予約を入れてください。通院の際には、抜けてしまった装置の説明以外にも、いつ、どのような状況でインプラントが外れてしまったかを説明できるようにしておきましょう。

例えば「2日前に固いせんべいを食べたら、インプラントが外れた」、「最近メインテナンスに行けてなくて、グラグラしているなと思っていたら、食事中に外れてしまった」などで構いません。それにより、歯科医師は抜けてしまった原因が何であるのかを探り、処置を行います。

絶対にやってはいけない事は?

インプラントが抜けたまま、放置をしておくのは絶対に避けるべきことです。一度外れてしまった歯は元に戻りませんし、見た目の問題もあり、良い事は何一つありません。デメリットだらけです。残っている他の歯にも負担を強いることになりますので、結果的に歯を長持ちさせることが不可能になります。

上部構造、アバットメント、フィクスチャーのどの部位が外れてしまっても言える事ですが、絶対にご自身で元に戻そうとしてはいけません。瞬間接着剤でくっつけてみようとか、ちょっと押したら埋め込むことができるかなと行ってしまうと、患者様の口腔内をより悪化させる原因になります。不衛生な状態で身体にそのような事を行うと、細菌が侵入し、感染を起こすリスクにもなるので、絶対にやめましょう。

また、患者様自身には見えなくても、上部構造が破損していたり、土台が折れてしまったりしているケースがあります。再作製しなければならない状態なのに、無理やりはめ込むと、大変危険です。必ず、プロである歯科医師やスタッフに処置を行ってもらいましょう。

一つ、患者様自身で行えることがあるとすれば、抜けてしまった歯の側で咬まないことです。何かがつまったり、先ほども申し上げました細菌感染のリスクが大変高いお口の状態です。通院までの間は、負担をかけないように、噛むのは反対側の歯で行っていきましょう。

インプラントが抜けた際の応急処置に関するQ&A

インプラントが外れた際の応急処置には何が必要ですか?

インプラントが外れた場合は、まず冷静になり、どの部分が外れたか確認しましょう。上部構造、アバットメント、またはインプラントそのものが外れている可能性があります。抜けた部分を無理に戻そうとせず、衛生的な状態で保管し、すぐに歯科医院に連絡して診療の予約を入れましょう。抜けた場所に痛みがある場合は、炎症を起こしている可能性があるため、早めの歯科受診が必要です。

インプラントの上部構造が取れたり欠けたりした場合、どのような対処法がありますか?

上部構造が取れてしまった場合は、自分で無理に埋め込まないように注意してください。取れた上部構造は保管し、すぐに歯科医院を受診して作り直しを行う必要があります。

インプラントのアバットメントが外れた場合、どうすればよいですか?

アバットメントが外れた場合は、上部構造も取れている可能性が高いです。アバットメントと上部構造を保管し、すぐに歯科医院を受診して再診断を受ける必要があります。

まとめ

「インプラントが抜けた際の応急処置」についてご説明しましたが、万が一このような事態が発生したら、担当医やスタッフにすぐに相談し、出来るだけ早く処置を受けてください。歯や噛み合わせは全身の健康に大きな影響を及ぼします。しっかり定期的にメンテナンスでケアを行い、長持ちさせていきましょう。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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