金属で出来ているインプラント体を身体に埋め込むのは心配と思われるかもしれませんが、チタンは身体にやさしい金属で人工関節などにも使われています。インプラント体の安全性について詳しくご説明します。
目次
チタン製インプラントの安全性について
金属のインプラントを身体に入れても影響がないかについて解説します。
1. 生体親和性の高い金属の使用
インプラントに使用される金属は、主にチタンやチタン合金です。これらの金属は生体親和性が非常に高く、体内に埋め込まれても免疫反応やアレルギー反応を引き起こしにくいという特徴があります。チタンは長年、医療分野で使用されており、人工関節や骨プレートなどの材料としても広く使われています。そのため、インプラントに使用しても人体に悪影響を及ぼすことはほとんどありません。
2. オッセオインテグレーション
チタン製のインプラントは、骨としっかり結合する「オッセオインテグレーション」という現象が起こります。この結合は非常に強固で、インプラントの安定性を確保します。オッセオインテグレーションが成功することで、インプラントは長期間にわたり機能し、噛む力をしっかりと支えることができます。
3. 金属アレルギーのリスク
一部の患者さんには、金属アレルギーのリスクが考えられますが、チタンはアレルギーを引き起こすリスクが非常に低い金属とされています。もし、金属アレルギーが心配な場合は、必要に応じてアレルギーテストを受けることが推奨されます。また、金属アレルギーの患者さんには、チタン以外の非金属製のインプラント材料(ジルコニアなど)を選択するという方法もあります。
4. MRIやその他の医療検査との互換性
チタン製インプラントは、磁性を持たないため、MRIなどの医療検査を受ける際に影響を与えることはほとんどありません。通常、インプラントが原因でMRI検査を受けられないことはありませんが、検査前に医師にインプラントの存在を知らせておくことは重要です。
5. 長期的な安全性
チタン製のインプラントは、数十年にわたる臨床データに基づいており、長期間体内に埋め込まれても安全性が確認されています。適切なメンテナンスと口腔ケアを行うことで、インプラントは長期間にわたり機能し続けます。
6. 感染や炎症の発生
インプラント周囲で感染や炎症が発生する場合があります。しかし、これらは通常、術後のケアや定期的なメンテナンスで予防できます。万が一、問題が発生した場合でも、早期の対応によって影響を最小限に抑えることが出来ます。
結論として、金属のインプラント(特にチタン製)は、生体親和性が高く、人体に悪影響を及ぼすことはほとんどありません。安全かつ効果的に機能し、長期的な視点で見ても非常に信頼性の高い治療法です。
チタンと骨が結合する「オッセオインテグレーション」の発見
歯科インプラントの歴史は実は大変長いもので、最古のインプラントとしては紀元前550年頃のものが見つかっています。
人類は紀元前の昔から、木や貝殻や動物の骨など様々な素材を使って失った歯の機能を回復させようとしてきました。近代になると金、銀、コバルト、サファイアなどの材料で出来たインプラントが研究され、治療が行われていましたが、どれも身体に埋め込むものとしては拒絶反応や毒性があって人体に最適といえるものではありませんでした。
歯科インプラントの画期的な発見があったのは、1965年のことです。スウェーデンで医師をしていたブローネマルク博士が、チタンと骨が結合する「オッセオインテグレーション」を偶然発見したのです。この発見によってチタン製インプラントが研究開発され、現在のインプラント治療の基礎となりました。
チタンはとても身体に馴染みやすい金属
殆どのインプラント体はチタンという金属で出来ています。チタンは人間の身体の組織と生体親和性(体に馴染みやすい性質)が高い金属で、腐食や拒絶反応・アレルギー反応が殆ど起こりません。
日本でのチタン製インプラントは1985年頃から普及し始めました。現在チタンは厚生労働省の認可を受けていて、歯科インプラント以外にも人工関節や心臓のペースメーカー、骨折した骨を繋ぐボルトやプレートなど医療の幅広い分野で使用されています。
チタンは金属アレルギーを起こさない?
さまざまな材料や化学物質に対すてアレルギー反応を示すいわゆるアレルギー体質の人は年々増えているといわれており、金属アレルギーも例外ではありません。しかし金属アレルギーだからといって全ての金属にアレルギー反応を起こすわけではなく、歯科で詰め物・被せ物に使われる金属でアレルギーを起こすといわれる場合は、主にニッケル、クロム、コバルト、銅、インジウム、イリジウム、パラジウムなどの金属のことです。
チタンは金属アレルギーを非常に起こしにくい金属として知られており、そのため人工関節など人体に埋め込まれる材料として選ばれているのです。ただ、チタンでアレルギーを起こす人も僅かですがおられます。そのため金属アレルギーのある方は、インプラント治療を受ける前に念の為アレルギー検査を受けることをおすすめします。
インプラント後に金属アレルギーの症状が出た場合
アレルギーの症状はある日突然出ることもあります。インプラント治療前はチタンにアレルギー症状が出なかったのに、治療後に金属アレルギーではないかと思われる症状が出た場合、まずアレルギーのパッチテストを受け、チタンにアレルギーが起こっているとわかった場合は歯科医師に相談しましょう。
チタンに反応して金属アレルギーが起こっている場合、顎骨に埋め込んだインプラントを除去する必要があり、今後の治療について考えなければなりません。
チタン製インプラントは空港の金属探知機は大丈夫?
銀歯の詰め物・被せ物や銀歯でブリッジをされている方でも、空港の金属探知機には反応しない方が殆どです。金属探知機は金属自体の大きさや、その金属の原子量の大きさに比例して反応します。
インプラントはチタンで出来ていおり、チタンの原子量は金や銀の原子量に比べて小さいので金属探知機はほとんど反応しないと考えられます。
ただし海外の空港を利用する場合で日本の空港よりもチェックが厳しいことが予想される場合は、念のために事前にインプラントの種類や埋め込んだ場所を伝えられるように準備しておきましょう。治療の証明書や診断書があれば更に安心です。
チタン製インプラントはMRIは大丈夫?
チタンは非磁体性といって磁気を帯びない性質を持っています。そのためMRI装置には吸着されず、MRI検査が可能です。銀歯などの詰め物・被せ物をしている場合でも影響が出ることはほぼないといえるでしょう。
しかしMRI検査をする際に被せものを外すよう指示された場合は、歯科医師にご相談ください。また、マグネット・デンチャーをお使いの方は、マグネットを外さなければMRIを受けることが出来ませんので、ご注意ください。
金属のインプラントを身体に入れても大丈夫なのかに関するQ&A
金属製のインプラントは一般的に安全です。特にチタン製のインプラントは身体に馴染みやすく、アレルギー反応や拒絶反応がほとんど起こりません。チタンは歯科インプラントだけでなく、人工関節や心臓のペースメーカー、骨折した骨を繋ぐボルトやプレートなど医療分野で幅広く使用されています。
チタンは金属アレルギーを起こしにくい金属として知られています。金属アレルギーの主な原因とされるニッケル、クロム、コバルト、銅などの金属よりも、チタンはアレルギー反応が少ないです。ただし、全ての人に対して100%アレルギーが起こらないというわけではなく、極稀にチタンに対するアレルギーが報告されています。
チタン製インプラントは空港の金属探知機にはほとんど反応しません。チタンは非磁体性の金属であり、金属探知機は主に磁気を帯びた金属を検知するため、チタンは影響を受けません。ただし、海外の空港でのチェックが厳しい場合に備え、治療の証明書や診断書を持参すると安心です。
まとめ
チタンは人工関節にも使われており、アレルギーが起こりにくく、丈夫で人体と相性の良い素材です。金属を体内に入れることを不安に思われている方も安心して治療をお受けいただけます。