
「インプラントをしたら副鼻腔炎になることがある」と聞いて、不安になっている方はいませんか?
この記事では、そんな不安を解消するために「インプラントと副鼻腔炎の関係」についてわかりやすく解説します。副鼻腔炎の原因や、実際に起こりうるリスク、そしてその対策まで、しっかりご紹介します。
目次
インプラントで副鼻腔炎になるの?不安な方へ
インプラントが原因で副鼻腔炎になることはありますが、発生率は非常に低く、事前の検査や適切な治療計画で十分に防ぐことができます。
インプラント治療は非常に精度の高い医療ですが、ごくまれに「上顎のインプラントが原因で副鼻腔炎を引き起こす」ケースがあります。特に骨が薄い上顎の奥歯にインプラントを埋める場合、適切な診断や手術計画がされていないと、上顎洞に影響を与えてしまうことがあるのです。
とはいえ、これは経験豊富な医師が正確な検査と治療を行えば、十分に予防可能な問題。過度に心配しすぎる必要はありません。
副鼻腔炎ってどんな病気?症状と原因をチェック
副鼻腔炎とは、鼻の奥の空洞(副鼻腔)に炎症が起きる病気で、鼻づまりや顔の痛み、口臭などの症状があります。

副鼻腔は、鼻の周りにある空洞で、主に以下の3つが関係します。
- 上顎洞(じょうがくどう) → インプラントに最も関係する
- 前頭洞(ぜんとうどう) → おでこの奥に位置
- 篩骨洞(しこつどう) → 目の間に位置
副鼻腔炎は、風邪やアレルギー、細菌感染などが原因で、これらの副鼻腔に炎症が起きてしまう状態です。
よくある症状
- 鼻づまり、鼻水(黄緑色など)
- 頬の奥や目の下あたりの痛み・重さ
- 咳や痰、頭痛
- 口臭が気になる
- 噛むと奥歯が痛む(歯性の場合)
どんなときにインプラントが副鼻腔炎を引き起こすの?
要約:骨の状態を十分に確認せずに上顎へインプラントを埋入すると、上顎洞を傷つけて炎症が起きることがあります。
上顎奥歯のインプラントでは、骨が薄いとインプラントが上顎洞を突き抜けてしまうリスクがあります。以下のようなケースで副鼻腔炎のリスクが高まります。
リスクが高いケース
- CT検査などの画像診断が不十分
- 骨量や厚みの確認をせずに手術を行う
- インプラントが上顎洞内に突き出てしまう
- インプラントが不安定な状態で感染を起こす
これらはすべて、治療前の精密検査と適切な計画で防げることばかりです。
副鼻腔炎がある人でもインプラント治療はできる?
要約:副鼻腔炎の既往歴があっても、耳鼻科と連携しながら治療を進めればインプラントは可能です。
「過去に副鼻腔炎を繰り返していたけど、インプラントできるのかな?」と心配な方も安心してください。現在炎症が落ち着いていれば、治療可能なケースは多くあります。
治療可能な条件
- 現在、副鼻腔炎の症状がない or 耳鼻科でコントロールされている
- 歯科用CTで上顎洞の状態を確認済み
- 骨の厚みが十分 or 増骨処置で対応可能
不安な方は、耳鼻科と連携している歯科医院での相談が安心です。
副鼻腔炎を起こさないためにインプラント手術で注意すべき点
インプラントで注意すべき大切なポイント
- インプラントの治療の際に検査機器など環境が整った医院で歯科用CTなど精密検査を受診する
- 歯槽骨の薄さや厚みなどを診断できる経験豊富なドクターが確認する
- 骨量やインプラントの埋入角度などを検討したうえでのインプラント手術を行う
どのような場合にインプラントで副鼻腔炎になる事故が起こりやすいか
- 院内にCTなどの設備がなく、経験が浅い歯医者さんが安い価格で治療する
- 骨量・骨の薄さ・角度をきちんと検討せずインプラントを埋入する
- インプラント治療が骨を突き抜けた状態となり失敗する
- 上顎洞にインプラントが刺さり落ち込んでしまうと、粘膜を傷つけた状態になり、上顎洞炎を引き起こす
鼻性上顎洞炎と歯性上顎洞炎の違い
- 鼻詰まりや黄色などの膿の色が付いた鼻水が出る
- 目の奥が重く感じたり、頭痛を生じることもある
上記の症状に加えて、この炎症の原因である歯でかみ合わせたら痛んだり、歯が浮いたように感じる
上顎洞炎の治療法
- 鼻性上顎洞炎⇒抗菌薬や消炎鎮痛薬を投与して膿や痛みなどを取り除きます。
- 歯性上顎洞炎⇒軽度ならば原因となる歯の神経治療・重度ならば原因となる歯を抜歯の処置をしますが、インプラントが埋め込まれたことが理由ならば、異物を除去するための手術を再度行う必要があります。
骨が薄い場合はどうする?サイナスリフト・ソケットリフトとは
上顎の骨が薄い場合は、骨を増やす「増骨処置」によりインプラント治療が可能になります。サイナスリフトとソケットリフト、いずれかの処置を行います。
1. サイナスリフト
骨の高さが3~5mm以下、多くの歯を失った方に適用されます。 以下の手順で処置を行います。
- 局所麻酔をして上顎の奥歯の骨に穴を開ける
- シュナイダー膜と呼ばれる上顎洞粘膜とあごの骨を剥離する
- 骨補填材(人工骨やメンブレン)を充填する
- 歯肉などを縫合し骨が回復する半年くらいまで待つ
2. ソケットリフト
骨の高さが3mm以上、歯を失った本数は少ない方に適用されます。 以下の手順で処置を行います。
- 局所麻酔をして上顎の奥歯の骨にインプラントを埋入する程度の穴を開ける
- 穴から骨補填材を充填し、シュナイダー膜を押し上げる
- 骨移植とインプラント体を埋入する処置を同時に行えるメリットがある
インプラントの治療とは
インプラントは歯科医院で行う義歯治療です。対して、副鼻腔炎は耳鼻科で治療を行うべき疾患です。歯科と耳鼻科、近いようであまり関係ないように思われますが、実はつながりがあります。
インプラントの治療の流れ
インプラントとは、歯が抜けた部分を改善するための義歯です。保険適用外で費用が高いというのがデメリットですが、入れ歯・ブリッジと比べても安定しており、噛む力が強いのが特徴です。では、インプラント治療について、簡単に流れなどをご説明します。インプラントの種類は、一日でインプラントが終わる即時荷重インプラント(一回法)もありますが、一般的に多い二回法の治療でご案内します。
インプラント手術前
- インプラントの治療をされたい部分について歯科医師やスタッフと相談
- 歯科用CTを撮影し、あごの骨の量(厚み)をチェックする精密検査
- 服薬や全身疾患(糖尿病・骨粗しょう症・脳梗塞・心筋梗塞)がないか確認
- インプラントを埋入する位置をガイドなどを用いて確認
インプラント手術中
【一次手術】
- 局所麻酔を行う(歯科恐怖症の方には笑気麻酔や静脈内鎮静法を適用)
- 歯肉を切開し、生体親和性の高いチタン製のフィクスチャー(人工歯根・インプラント体)を顎骨に埋入し歯肉を縫合
- 数か月後、あごの骨とインプラント体が結合したかどうか歯科医師がチェック
【二次手術】
- 歯肉を切開しインプラントの頭を出す
- インプラント体と被せ物をつなぐ連結部分(アバットメント)を立てて仮歯やキャップを被せて歯周組織の状態の安定を待つ
【仕上げ】
- きちんとくっついていると確認されれば最終の型どりを行う
- 歯科技工士が作製した人工歯(上部構造)をキャップを外してはめてインプラント手術は終了
インプラント手術後
- 歯科衛生士が行う定期的なインプラント用のメインテナンスを受診
インプラント手術に使用する材料をご紹介します。
フィクスチャー/チタン・チタン合金(オッセオインテグレーションを獲得しやすい)
アバットメント/チタン・チタン合金・ジルコニア・セラミック
上部構造/
・オールセラミック(審美性と耐久性に優れ、前歯に最適)
・ジルコニアセラミック(噛む力が強い奥歯にも最適な耐久性と審美性)
・ハイブリッドセラミック(歯科用樹脂とセラミックを混ぜた材質で安価だが経年劣化による変色のリスクあり)
まとめ

- インプラント術後に慢性的な副鼻腔炎を発症した
- インプラント術後噛んでいるうちに動揺や脱落を起こした
このようなトラブルは、骨量などをきちんと検査しておいたり、埋入位置を間違わなければ起こる確率は下がります。後悔しないためにもインプラントを希望する際には、無料カウンセリングを活用し複数の医院で相談をしましょう。信頼や実績のおける担当医に手術をしてもらい、メンテナンスを定期的に受診することで、インプラントを長く持たせることが可能です。