インプラントの基礎知識

インプラント治療を選ぶ一番のメリットは?

インプラントの一番のメリットは?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラントにはメリットが沢山ありますが、一番のメリットは何か?という質問に対しては「しっかり噛めるようになること」とお答えしています。

インプラントの1番のメリットは「噛めるようになること」

インプラント治療前には治療について患者さんとしっかりと話し合います。その際に患者さんからよく聞かれるのは、

「何でも気にせず噛めるようになりたい」

「顎の片側でばかり噛んでいたから両方の奥歯で噛めるようになりたい」

「柔らかい食べ物ばかりで飽きてしまった。普通に噛んで食べれるようになりたい」

というご要望です。

インプラント治療を希望される患者さんにとって、「噛めること」や「噛み心地」が大切であることがわかります。患者さんの中には、入れ歯やブリッジを使っておられ、普段から咬み心地に不満を持っていてインプラントを希望される方も多いです。

インプラントは顎骨に人工歯根を埋め込んでその上に義歯を被せる治療ですので、人工歯根があるという点で入れ歯やブリッジとは構造的に全く違って安定していてよく噛めるようになります。それがインプラントの1番のメリットです。

1. 自然な見た目と感触

見た目の自然さ

インプラントは、人工歯が顎骨に直接固定されるため、天然の歯と非常に近い外観を持ちます。特に前歯など目立つ部分でも、インプラントは自然な見た目を提供し、他の人に気づかれることなく笑顔を取り戻せます。

自然な感触で噛める

インプラントは顎骨にしっかりと固定されるため、噛んだときの感触も自然です。食事中の違和感が少なく、天然の歯とほぼ同じ感覚で噛むことができます。

2. 咀嚼機能の回復

噛む力の向上

インプラントは顎骨に固定されているため、入れ歯やブリッジに比べて噛む力が非常に強く、硬い食べ物でも安心して食べることができます。食事の質が向上し、栄養摂取が改善されます。

快適な食事

食事中にインプラントが動く心配がないため、安心してさまざまな食べ物を楽しむことができます。食事の満足感が向上することは、生活の質全体の向上にも寄与します。

3. 顎骨の維持

骨吸収の防止

歯を失うと、その部分の顎骨が徐々に吸収されるリスクがありますが、インプラントは顎骨に直接固定されることで、骨に刺激を与え、骨吸収を防ぎます。その結果、顔の輪郭が維持され、若々しい外見を保つことができます。

4. 生活の質の向上

長期的な安定性

適切なケアを行えば、インプラントは長期間にわたって使用可能です。歯を失ったことによる不便さや不快感を解消し、快適な生活を送ることができます。

心理的な安心感

インプラントは見た目が自然で、噛む力も強いため、社会的な場面や対人関係での不安が軽減されます。自信を持って笑顔を見せたり、会話を楽しんだりできるようになります。

5. 他の健康な歯への影響がない

隣接歯への影響がない

ブリッジとは異なり、インプラントは隣接する健康な歯を削る必要がありません。また、部分入れ歯のように隣接する歯にバネをかけて固定する必要もありません。これにより、残っている健康な歯を保護し、全体的な口腔の健康を維持することができます。

インプラントのデメリット

デメリット

インプラントにはデメリットもあるため、確認しておきましょう。

  • 治療の際に手術が必要であるため、恐怖心や不安を抱える患者さんも多いこと。
  • 治療費が高額であり、保険が適用されないことが多いこと。
  • 治療後のケアやメンテナンスが重要で、怠ると失敗する可能性があること。
  • 年齢や健康状態によっては適応できない場合があること(例:糖尿病や骨粗しょう症など)。

インプラントに向いている人・向いていない人

インプラント治療は、すべての人に適応できるわけではなく、患者さんの状態や健康状態によって向いているかどうかが決まります。以下に、インプラント治療に向いている人と向いていない人の特徴についてご説明します。

インプラントに向いている人

十分な顎の骨がある人

インプラントは顎の骨に直接埋め込まれるため、十分な骨の量と質が必要です。顎の骨が健康で、インプラントを埋め込む場所に十分な骨がある場合、インプラントは非常に安定します。特に、歯を失ってから長期間が経過した方や、骨の密度が十分な方に向いています。

全身の健康状態が良好な人

インプラント治療には手術が必要なため、全身の健康状態が良好であることが求められます。特に以下の点が重要です:

  • 糖尿病がコントロールされている人 → 糖尿病がコントロールされていれば、治癒力が高く、インプラントの成功率が向上します。
  • 免疫力が低くない人 → 免疫力が正常であれば、感染のリスクが低くなります。
  • 心臓疾患やその他の重大な疾患がない人 → 手術を受けても心臓や内臓に負担がかからない状態であれば、インプラント治療は適応可能です。

禁煙者または喫煙を控えている人

喫煙はインプラント治療の成功率に影響を与えることがあります。タバコの煙は血流を悪化させ、治癒を遅らせ、感染のリスクを高めるため、禁煙または喫煙を控えることが推奨されます。

意欲的にケアを行う人

インプラント治療後には、しっかりとした口腔ケアが求められます。歯磨きや定期的な歯科医院でのチェックを怠らずに行える人には向いています。

歯を失った部分が1本から数本の人

インプラント治療は、特に1本や数本の歯が失われた場合に適しています。全ての歯を失っている場合でも、オールオン4などの特殊なインプラント治療が適用できる場合がありますが、選択肢が限られる場合もあります。

インプラントに向いていない人

顎の骨が不足している人

顎の骨が不足していると、インプラントを埋め込むことができません。この場合、骨移植や骨再生手術が必要になることがありますが、全ての人に対応できるわけではなく、骨が足りない場合はインプラント治療が難しい場合もあります。

重度の糖尿病を持っている人

糖尿病がコントロールされていないと、治癒が遅れる可能性があり、インプラントが骨と結合しにくくなることがあります。治療前に糖尿病をコントロールすることが非常に重要です。

骨粗鬆症やその他の骨疾患を持っている人

骨粗鬆症など、骨の質が弱い場合、インプラントが骨としっかり結びつかない可能性があります。この場合、骨を強化するための治療が必要になることがあります。

妊娠中または授乳中の女性

妊娠中や授乳中は、ホルモンバランスの影響で骨の代謝や治癒が遅れることがあります。そのため、インプラント治療は妊娠や授乳が終わってから行うことが推奨されます。

慢性的な疾患や免疫疾患を持つ人

免疫力が低下している人や、癌治療中の患者さんなど、身体の治癒能力が低い場合、インプラント治療後に感染症や治癒不良が生じるリスクが高くなります。

喫煙者

喫煙はインプラントの治癒を遅らせ、失敗のリスクを高めるため、喫煙者にはインプラント治療が向いていない場合があります。禁煙が難しい場合は、インプラント治療の前に喫煙を控えることが推奨されます。

心理的に不安な人

インプラント治療は外科手術を伴うため、患者さんの心理状態も重要です。手術に対する強い不安や恐怖を感じる方は、まずは不安を解消するためのカウンセリングを受けることが必要です。

インプラント治療は非常に効果的な治療法ですが、患者さんの健康状態や骨の状態により向き不向きがあります。十分な骨の量と質、全身的に健康であること、そして治療後のケアを積極的に行えることが、インプラント治療に向いている条件です。逆に、骨の状態が悪かったり、健康上のリスクがある場合は、治療を受ける前に十分に検討し、他の治療法との比較を行うことが重要です。

入れ歯やブリッジとは構造が違って インプラントには人工歯根がある

インプラントはとかく「入れ歯と比べて~」「ブリッジと比べて~」と、入れ歯、ブリッジとの違いが強調されます。それは、歯を失った時の治療は「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」の3種類から選ばなければならないからです。

インプラントの構造

インプラントは三つの部分からなっています。

インプラントの構造
  • インプラント(人工歯根)・・・スクリューのような形をしていて素材はチタンです。

    顎の骨に埋め込まれると骨と結合します。
  • アバットメント・・・骨に埋入されたインプラントにネジで固定され、被せ物を

    取り付けるための土台となります。
  • 被せ物(上部構造)・・・アバットメントの上に取り付けます。セラミックで

    作られる場合が多いです。

入れ歯の構造

入れ歯の構造

入れ歯は部分入れ歯と総入れ歯に分けられます。総入れ歯は全ての歯を失った方専用の入れ歯です。保険適用の部分入れ歯はクラスプと呼ばれる金属のバネを隣の歯に引っ掛けることで入れ歯を固定します。総入れ歯は顎の粘膜の部分で入れ歯を支えます。

ブリッジの構造

ブリッジの構造

ブリッジは失った歯の両隣の歯を土台として、歯と歯の間に橋をかけたような形で連結された人工歯を取り付ける治療法です。ブリッジで治療するためには欠損部分の両隣の歯を削る必要があります。

インプラントは骨に固定されているのでしっかり噛める

健康な歯とインプラント

インプラント治療が入れ歯やブリッジと違うのは、人工歯根(インプラント体)が骨に

しっかりと埋め込まれて固定されている点です。

人工の歯の根っこが天然の歯の自然の根っこと同じように骨に埋め込まれている為、インプラントは構造的に天然の歯に近いといえます。

これを可能にしてくれるのは、チタンが骨と結合する「オッセオインテグレーション」と呼ばれる性質です。

オッセオインテグレーションとは

インプラントが骨と結合

人間の身体は異物を外に押し出そうとする働きをします。しかしチタンは生体親和性が高く、体内で異物と認識されません。

顎の骨に埋め込まれたインプラント体は異物と認識されないまま骨に包み込まれ、3~4ヶ月程度で骨と結合します。

インプラント治療の大きな特徴が「良く噛める」ということですが、根幹となっているのがこのオッセオインテグレーションです。

まとめ

インプラントの一番のメリットは「良く噛める」ことです。それはインプラントの構造が

入れ歯やブリッジと違い、骨に直接埋め込まれてしっかりと骨と結合する点によります。

インプラントの仕組みや構造は複雑で、治療には外科手術を必要とし、治療期間も数か月かかります。しかし一番のメリットである「良く噛める」という点においては、入れ歯やブリッジよりも優れており、患者さんの満足度も高いです。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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