インプラントの基礎知識

インプラント体の種類や材質、表面加工について教えて

インプラント体の種類や材質、表面加工について教えて

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラント体の種類や各社独自の表面加工はインプラントを長持ちさせるために重要な事柄です。人工歯根の種類や材質、表面加工についてご説明します。

インプラント体の形状による種類

インプラント体

当院で使用しているインプラント体はチタン製(またはチタン合金)で、直径3~6ミリ、長さは4~20ミリの種類があり、埋入する位置や患者さんの骨の幅や高さによって使い分けます。

インプラント体を骨に埋め込む部分の形状は、シリンダー型とスクリュー型に分けられ、初期固定(埋め込んだ人工歯根が骨に固定されること)しやすいスクリュー型が主流です。

形状の違い

1ピースと2ピース

インプラント体全体の形状としては1ピースタイプと2ピースタイプがあります。1ピースタイプはインプラント体とアバットメントが一体化しており、2ピースタイプはインプラント体とアバットメントをネジで連結します。埋め込む部分の骨などのお口の状態に合わせてどちらかを選びます。

1ピースタイプは1回法に使用され、手術の回数は1回だけです。2ピースタイプは2回法の場合に使用され、手術は1次手術と2次手術の2回になります。(2次手術はアバットメントを連結するための簡単な処置です。)

スクリュータイプとシリンダータイプ

インプラント体の形状には、スクリュー(ねじ)タイプとシリンダー(円筒)タイプがあります。スクリュータイプは骨との結合が強く、広く使用されているのに対して、シリンダータイプは骨質が良好なケースや特定の条件下で使用されます。どちらのタイプも、患者さんの骨の状態に合わせて選択されるため、事前の診断が重要です。

インプラントメーカーの種類

日本で使われているインプラントメーカー

日本国内で流通しているインプラント体のメーカーは50~100社程度あり、海外からの個人輸入を含めると200社以上になるといわれています。歯科医師はその中から患者さんにとって最適のものを選びますが、当院では安全性を考え、トップシェアを占めている製品の中から選んでいます。

それぞれのメーカーはより早くインプラント体を骨の中で安定させるために研究開発を行っており、様々な形状や材質のインプラント体が生産されています。

インプラントの材質であるチタンとは?

チタン

骨に金属を埋めることに不安を感じる方もおられます。一般的に金属は人体にとっては異物ですので、体内に入れることに抵抗を感じるのは無理もないと思います。しかしチタンという金属は身体が異物と判断しない物質で、骨と結合する性質を持っています。その上金属アレルギーを起こすこともほとんどなく、その安全性が確認されています。

チタンは骨折治療のためのプレートや人工関節など、歯科以外の医療の現場でも広く使用されており、実績のある素材です。チタンと骨が一体化する性質を持つことは、1952年にスウェーデンのブローネマルク博士が研究中に偶然発見しました。

インプラント体が歯槽骨に埋め込まれると、生体組織が拒否反応を示すことなく、2~4ヶ月程度かけて骨としっかり結合し、人工歯を支える土台として機能するようになります。

インプラント体の表面加工とは?

インプラントが骨と結合インプラント体の材質であるチタンの性質の1つに、表面に酸化皮膜を作ることがあげられます。一般に金属は表面に皮膜を形成する性質を持っていますが、チタンが特に酸化しやすく酸化皮膜が金属を覆って腐食を防ぎます。

インプラント体を歯槽骨に埋入すると、歯槽骨とインプラント体の間に酸化皮膜が形成されます。この膜を通して酸素やイオンの移動が可能となり、生体に近い働きをしてくれるためにチタンは生体から異物とみなされないのではないかと考えられています。

この優れた特性をより一層高めるため、様々なインプラントメーカーによるインプラント体の表面加工法の開発が進められています。

表面加工をすることで骨と結合しやすくなる

チタンの表面に加工を施すことによって、歯槽骨とインプラント体が接触する結合面積が大きくなり、よりしっかり骨と結合して安定性が得られます。

また、結合面積が広いと噛んだ時にインプラント体に加わる衝撃を分散してくれるため、歯槽骨への負担が減ります。

表面加工の技術とその役割

サンドブラスト処理

インプラント体の表面に微細な凹凸をつけるための処理で、骨との接触面積を増やすことにより、インプラントの安定性を向上させます。サンドブラスト処理を施すことで、インプラント体と骨の結合がスムーズに行われ、早期にインプラントが安定します。

酸処理(アシッドエッチング)

表面を酸で処理することで、さらに骨との結合が強化されます。酸処理されたインプラント表面は、骨との結合力を最大限に高め、早期に安定することで治療期間を短縮する効果があります。

ハイドロキシアパタイトコーティング

骨と親和性の高いハイドロキシアパタイトをインプラント体の表面にコーティングすることで、骨がより早くインプラントに結合しやすくなります。特に、骨質が良くない患者に対して有効です。

各社の表面加工にはどんな特色があるの?

チタンが骨と結合する性質のことをオッセオインテグレーションと呼びます。現在は各メーカーによる素材の研究が進み、チタンの表面に様々な加工処理を行って骨との結合力を強化しています。

例をあげますと、ストローマンインプラントのSLActiveサーフェスインプラントと呼ばれる表面性状では、通常2~4ヶ月必要なオッセオインテグレーション(骨結合)1~2ヶ月となりに短縮されました。

また、アストラテックインプラントでは表面性状がオッセオスピードとなり、人工歯根が骨と結合するまでの期間が短縮され、早期に仮歯を入れやすくなっています。

ノーベルバイオケアの製品は、生体親和性および骨との親和性に優れる「純チタン」の表面に「タイユナイト」と呼ばれる表面加工が施されており、周囲の骨形成が促進されると言われています。

このように、それぞれのメーカーの研究により特徴ある製品が生産されています。

インプラント体のサイズや長さ

短いタイプと長いタイプ

インプラント体の長さや太さは、患者さんの骨の量や質に応じて選択されます。短いタイプは骨が薄い場合に使用され、骨移植を行わずに手術が可能になる場合があります。一方、長いタイプは安定性が高く、骨の量が十分な場合に使用されます。

直径の違い

インプラントの直径も症例によって変わり、特に前歯のように細い歯の場合には、細いライプが選ばれることが多いです。逆に、奥歯など強い咬合力がかかる部分では、太めのタイプが使用されます。

材質の種類とその特徴

チタンとジルコニア

チタン

インプラント体に使用される最も一般的な材質はチタンです。チタンは生体適合性が非常に高く、骨との結合(オッセオインテグレーション)がしやすいため、インプラントに最適な材質です。腐食にも強く、長期間にわたって安定した機能を発揮します。

ジルコニア

チタンの代わりに使用されるのがジルコニアインプラントです。特に金属アレルギーのある患者に適しており、審美的にも自然な見た目を実現できます。ジルコニアは白く、歯の色に近いため、前歯などの審美面が重視される部分で使用されることが多いです。

まとめ

インプラント体には多くのメーカーによる製品が存在し、骨としっかり結合させるために各社が様々な表面加工を施していることをご説明しました。当院ではトップシェアをもつメーカーの純正品のみ使用しています。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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