インプラント治療前・治療後の疑問

インプラントが抜けてしまうトラブルの原因は?

インプラントが抜けてしまうトラブルの原因は?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラント治療後のトラブルの中でも一番最悪なのが、インプラントが抜けてしまうというものです。インプラントが抜けるには、どんな原因があるのかご説明します。

インプラントが抜けてしまう原因は?

インプラントが抜ける原因として多いのが、インプラント周囲炎と、歯ぎしり・食いしばり、噛み合わせが悪いことによるものです。

1.インプラント周囲炎

インプラント周囲炎は、インプラントの周囲の歯周組織に起こった歯周病のことをいいます。天然歯の歯茎に歯周病が起こるように、インプラントの周囲の歯茎も歯周病菌の出す毒素で炎症が起こり、そのまま症状が進行すると、組織が破壊されてインプラントを支えられなくなり、インプラントが抜けることに繋がります。

インプラント周囲炎を予防するためには、歯周病予防と同じように、出来るだけインプラントと歯茎の間に歯垢を入り込ませないように歯磨きを徹底し、細菌の増殖を防ぐことが必要です。

インプラント周囲炎を防ぐためには、一年に3~4回の定期健診を受けて頂き、インプラントの周囲の歯垢や歯石を取り除くことも必須です。

2.歯ぎしり・食いしばり

歯ぎしり、食いしばりの癖があると、インプラントが強い力で揺すられ負担がかかり過ぎるため、抜ける原因となります。

歯は隣の歯とぴったりと隙間なく並び、互いに支え合うことで歯列を形成しています。そのため、横への力には強いのですが、前後への力に弱く、歯ぎしりによって圧力がかかると、インプラントがグラグラになってしまうことがあります。

歯ぎしりは睡眠中に無意識で奥歯を強い力で擦り合わせます。そして食いしばりも、昼間起きている時間帯に何かに集中している時に、気づいたら奥歯をぎゅっと強く噛んでいたというもので、その時、歯には想像以上の力がかかっています。

これらの癖は無意識下で起こる為、なかなか止めることが出来ません。そのため、まず癖を治してからインプラント治療を受けるのがベターです。

インプラント治療後に歯ぎしりや食いしばりが起こった場合は、就寝中にマウスピースをつけて、歯にかかる力を緩和します。歯ぎしりは医学的に原因がはっきりとわかっていませんので、対症療法になる場合が多いです。

食いしばりは、昼間に上下の奥歯が触れ合うことのないよう、極力気をつけることが必要です。

3.噛み合わせが合っていない

インプラントに上部構造が取り付けられた時に、噛み合わせのチェックを行います。特に奥歯の噛み合わせは重要で、インプラントの高さが僅かに高かったり低かったりしただけで、お口全体の噛み合わせがずれてしまい、食事の時に噛む度に、一部の歯に強い力がかかると、その歯が削れて知覚過敏を起こすことがありますし、インプラントに強い力がかかると、グラグラになる可能性があります。

また、治療の時は噛み合わせに違和感がなくても、数日過ごす間に違和感を感じることもあります。そのまま噛んでいると、歯に負担がかかると同時に、顎関節にも負担がかかって顎関節症を引き起こすこともありますので、早めにインプラント治療を受けた歯科医院に相談しましょう。

4.全身疾患による影響があった

患者さんに全身疾患があると、インプラントの安定や寿命に影響を及ぼすことがあります。一例をあげると、骨密度が低い患者さんや、骨代謝に影響を及ぼす疾患(骨粗鬆症や特定の内分泌疾患など)を持つ患者さんは、インプラントが骨と結合し難く安定しない可能性があります。また、喫煙やアルコールの摂取は血流を悪くし免疫が下がりますので、外科手術による傷口の治りを遅らせることがあります。

5.手術や装置に技術的な問題があった

インプラント自体の欠陥や手術中の技術的な問題によってインプラント体が骨と結合せずに抜けてしまう場合があります。

手術の手順や処置の間違い、インプラントの長さや太さの選択の誤り、またはインプラントを埋入した位置に問題があれば、治療後にインプラントが抜けてしまう可能性があります。

インプラント手術直後にインプラントが抜けた場合

インプラント手術のすぐ後にインプラントが抜けてしまうことがあります。これは、手術前後の細菌への感染によるものです。

手術前にはお口の中をクリーニングし、手術器具の滅菌・消毒を必ず行いますが、これらが不十分だとインプラントが細菌に感染し、身体がインプラントを異物と判断して、骨と結合させずに体外に出してしまおうとします。そのため、埋入したインプラントが抜けてしまうということが起こります。

糖尿病の方は感染リスクが高いので、術後の清掃をしっかり行うなどの注意が必要

インプラントが抜けてしまうトラブルの原因に関するQ&A

インプラント周囲炎を予防する方法はありますか?

インプラント周囲炎を予防するためには、歯磨きを徹底し、インプラントと歯茎の間に歯垢を入り込ませないようにすることが重要です。また、定期的な健診を受けて歯垢や歯石を取り除くことも予防に役立ちます。

歯ぎしりや食いしばりがインプラント抜けの原因となる理由は何ですか?

歯ぎしりや食いしばりの癖があると、インプラントに過剰な負担がかかり、抜ける原因となります。インプラントは前後への力に弱く、歯ぎしりや食いしばりによって強い圧力がかかると、インプラントが揺れたりグラグラになったりすることがあります。

インプラントの噛み合わせが合っていない場合、どのような問題が起こる可能性がありますか?

インプラントの噛み合わせが合っていないと、歯が削れて知覚過敏を引き起こす可能性があります。また、インプラントに強い力がかかるとグラグラになる可能性もあります。違和感を感じた場合は、早めに歯科医院に相談することが重要です。

まとめ

インプラントが抜けてしまう原因についてご説明しました。主な原因としては以下の3点があげられます。

  1. インプラント周囲炎
  2. 歯ぎしり・食いしばり
  3. 噛み合わせが合っていない

それぞれに対処の仕方は違いますが、特にインプラント周囲炎はインプラントをされた方全てが予防しなければなりませんので、定期健診(メンテナンス)を必ず受けるようにしましょう。

インプラントが抜けてしまうトラブルの原因にはいくつかありますが、主な原因は以下の2つの研究から得られる知見に基づいています。

1. Sharmaら(2022)の研究では、インプラントの遅い失敗に関わるリスク要因として、主に周囲炎とオッセオインテグレーションの欠如が挙げられています。他にも、咬合の過負荷、患者の医療状態の悪化、口腔組織に害を及ぼす習慣、インプラントの選択などがインプラントの失敗に繋がる可能性があると指摘されています。

2. Bazliら(2020)による系統的レビューでは、首や頭部のがんに対する放射線治療、糖尿病、喫煙、骨粗鬆症、HIV感染などがインプラントの失敗に関与するリスク要因を増加させることが示されています。放射線治療中の照射目標量は、特に辺縁骨吸収の増加によりインプラントの失敗の主な原因です。また、喫煙はインプラント周囲の骨の治癒に悪影響を及ぼすことが指摘されていますが、糖尿病は比較的リスク要因が低いとされています。

これらの研究結果から、インプラントの失敗には様々な原因があることが理解できます。特に、周囲炎やオッセオインテグレーションの欠如が主な原因であり、患者の生活習慣や全身状態も大きく関わっていることが示唆されています。インプラント治療を検討する際には、これらのリスク要因を十分に考慮し、適切な予防策と管理を行うことが重要です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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