インプラント治療前・治療後の疑問

インプラントの術後はすぐに食事出来ますか?

インプラントの術後はすぐに食事出来ますか?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラント手術の術後のケアや生活習慣には注意が必要であり、特に食事に関しては多くの質問や不安が寄せられます。インプラント手術後の食事に関する基本的な注意点や、具体的なガイドラインについて説明します。

術後の食事のタイムライン

術後はやわらかいものから食べ始めていただき、一週間以内は特に注意が必要です。その後は少しずつ食事内容を変えていき、一ヶ月後くらいになると普通の食事が出来るようになります。

期間 食べてよいもの例
当日(麻酔切れ後) プリン、ポタージュ、おかゆ、ゼリーなど
2〜3日 柔らかく煮た野菜、豆腐、スープ、ヨーグルトなど
1週間以内 煮込みうどん、スクランブルエッグ、白身魚など
1ヶ月後〜 柔らかめの普通食(おむすび、焼き魚など)、硬め食品は医師と相談

インプラント術後に避けるべきNG食品とその理由

NGな食べ物

術後はインプラント部位が安定していないため、強い刺激や圧力が加わると出血や炎症、治癒の遅れ、最悪の場合はインプラントの脱落につながる可能性があります。以下に、避けるべき代表的な食品をあげます。

硬いもの

例:せんべい、ナッツ、フランスパン、りんごの丸かじり、骨付き肉

咬む際に強い力が必要で、インプラント部位に圧力がかかり過ぎてしまう。埋入直後は骨と結合しておらず、グラつきや脱落の原因になる。

粘着性のあるもの

例:キャラメル、餅、ガム、のり巻き、チーズタルト

粘り気のある食品が創部にくっつきやすく、無意識に力を入れてしまい出血や傷の悪化を引き起こす。また、インプラント周囲に残りやすく清掃困難になる。

刺激の強いもの

例:カレー、唐辛子、わさび、炭酸飲料、濃い味付けの食品

刺激物は患部に痛みや違和感を与えるほか、傷の治癒を妨げる恐れがある。炭酸も粘膜に刺激を与えるため控えた方がよい。

熱すぎる・冷たすぎるもの

例:熱いスープ、冷たいアイスやかき氷

術後は知覚が敏感になっており、極端な温度は痛みや違和感を引き起こす。特に麻酔が切れる前は火傷の危険も。

吸う・噛む動作を要するもの

例:ストロー飲料、アイスキャンディー、スルメ、干物

吸引や咀嚼の動作によって患部に圧がかかると、傷口の開きや血餅の流出(ドライソケット)を招くリスクがある。

術後におすすめのOK食品とその理由

おかゆ

術後は「柔らかく、刺激が少なく、栄養価の高い食品」を選ぶことが大切です。以下のような食品が特におすすめです。

ゼリー・プリン・ヨーグルト・おかゆ

理由:柔らかく咀嚼をほぼ必要としないため、インプラント部位に負担がかからない。飲み込むだけで摂取でき、術後すぐでも安心。

豆腐・温野菜・煮込みうどん・スクランブルエッグ

理由:柔らかく、咀嚼しやすいため徐々に回復期に入った患者さんにも最適。栄養も豊富で、身体の回復をサポート。

白身魚の煮付け・鶏ささみのスープ

理由:良質なたんぱく質を含み、筋肉や組織の修復を助ける。脂が少ないため刺激も少なく安心して食べられる。

バナナ・アボカド

理由:柔らかくてビタミン・ミネラルが豊富。ビタミンCやEは傷の治癒を助け、免疫力を高める。

適切な食事を選ぶことで、術後の合併症リスクを軽減し、インプラントが正しく定着することをサポートします。食事内容の選択は患者さん自身の回復に大きな影響を与えるため、慎重に判断してください。

食事の快適性や食品選択能力、術後の注意点について記載。(厚生労働省「歯科インプラント治療のためのQ&A」)

術後の食事のポイント

食事のポイント 内容
温度は常温〜ぬるめで 冷たすぎたり熱すぎたりしないように注意
刺激・香辛料は控える 味付けは薄味が基本、出汁中心がおすすめ
なるべく片側で咀嚼 手術していない側を使い、患部を避ける
よく冷ました状態で食事 術後の感覚異常や火傷を防ぐため
食後の口腔ケアも優しく 歯磨きはやわらかめの歯ブラシで慎重に

インプラント手術直後の食事は可能か?

インプラント手術後、食事の再開が可能かどうかは気になるところだと思います。手術中に施される局所麻酔の影響で、術後しばらくは口腔内の感覚がマヒして鈍くなっています。この状態で食事を行うと、誤って舌や頸の内側を噛んだり、感覚がないために熱い食べ物や飲み物に気づかず、火傷するリスクが高まります。

そのため、手術後にすぐ食事を取るのではなく、麻酔が完全に切れてから食べ始めることが推奨されます。麻酔の効果が切れるまでの時間は、患者さんの体質や手術の内容によりますが、通常は数時間程度です。

また、食事を再開する際には、歯科医師から指示された内容をよく守ることが大切です。特に、初めての食事で注意すべき点や推奨される食材については、具体的な指導が行われることが多いです。疑問点は迷わず質問するようにしましょう。

術後の食事再開は慎重に行うべきですが、適切なタイミングと食事内容を守れば、術後の治癒を促進する効果が期待できます。患者さん自身が無理をせず、ご自身の体調や感覚に応じて行動することが大切です。

術後の食事に関する注意点

スープ

手術後の傷口は非常にデリケートな状態であり、傷口への食べ物の影響を最小限に抑えることが重要です。食事の際には以下の注意点を守りましょう。

  • 反対側の歯でかむ・・手術を受けた側を避けて食事をすることで、傷口に物理的な刺激を与えるリスクを軽減できます。
  • 柔らかい食べ物を選ぶ・・おかゆやスープ、柔らかく煮込んだうどんなど、硬いものを避けた食事内容が推奨されます。

これらの注意点を守ることで、術後の傷口への負担を軽減し、治癒をスムーズに進めることができます。特に、手術後の最初の数日間は、食事が傷口に影響を与えやすいため、慎重に選択することが必要です。

例えば、おかゆやスープは、消化が良いだけでなく、口腔内に食べ物のカスが残りにくいため、術後のケアにも適しています。逆に、傷口に負担をかけやすい硬い食べ物や粘着性のある食品を避けることで、術後の感染を防ぐことが可能です。

術後の数日は特に注意が必要であり、これらを守ることで、患者さんの傷がより早く回復し、インプラントの安定性も向上します。

オールオン4の場合は仮歯で噛んでも大丈夫?

オールオン4は、即時加重(即時負荷)という技術が用いられています。手術の日に仮歯を装着できる場合が多く、そのままご自宅に戻られて、麻酔が切れれば食事をすることが出来ます。

ただし、仮歯は本番の上部構造とは違ってあまり頑丈ではありませんし、まだインプラントが安定していない状態ですので、数週間の間はやわらかいものが中心の食事にしましょう。

アルコールや刺激物の摂取について

ワイン

術後にアルコールを摂取すると、血行が良くなりすぎて出血が増えたり、止血までに時間がかかるリスクがあります。そのため、手術当日から少なくとも1週間程度は控えることが推奨されます。また、刺激物(香辛料や酸味の強い食品など)は、傷口に刺激を与えて治癒を遅らせる可能性があります。

例えば、わさびや辛子を使用した料理は、一時的な刺激による痛みや炎症を引き起こすだけでなく、傷口に長期間悪影響を与えることがあります。術後の食事計画には、これらの食品を避けるという選択が不可欠です。

アルコールや刺激物を控えることで、患者さんの回復がスムーズに進み、インプラントの定着率も向上します。飲食物の選択が患者さんの治癒に直接影響を及ぼすことを理解し、正しい選択を心がけましょう。

まとめ

食事中

インプラント術後の食事は、麻酔の影響がなくなってから慎重に食事を再開し、柔らかい食品を中心に選ぶことで、傷口への負担を軽減することができます。また、アルコールや刺激物を避け、適切な口腔ケアを行うことで、術後の合併症リスクを最小限に抑え、インプラントの長期的な成功を支えることができます。これらの注意点を守り、医師の指導に従うことで、患者さんは安心して回復期間を過ごすことができます。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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