インプラントは犬歯の抜けた位置に入れることができる治療です。その歯の重要性や理由について詳しくご紹介いたします。
犬歯の重要性
犬歯は歯並びのアーチの角にあり、前歯(切歯)と奥歯(臼歯)の間に位置する永久歯です。犬歯の前には前歯が2本、後ろには奥歯が4本生えています。上下左右で計4本あり、鋭い形状で縦に長く歯根も長いのが特徴です。一般的に糸切り歯と呼ばれていて、食べ物を切ったり、裂いたりする力を伝える重要な役割があります。また、笑った口元の端に見える位置ですので、笑顔などの見た目にも大きな影響を与えます。
犬歯の位置による様々な影響
- 前歯は食べ物をちぎって小さくする
- 奥歯はちぎられた食べ物をすりつぶして細かくする
食べ物は上下の歯で噛んでいるという意識が強いと思いますが、実は左右にずらして食べ物を噛むことも行っています。正しい噛み合わせの方は、顎をずらして左右に噛もうとすると、上下の犬歯だけが噛み合い、奥歯は噛み合わないようになっています。この状態を犬歯誘導と呼び、縦の力には強いが横の力に弱い奥歯を犬歯が守る働きをしています。むし歯、歯周病、外傷などで犬歯を失ってしまうと、噛み合わせのバランスが崩れ、他の歯や歯肉、顎関節に影響を与えることがあります。
インプラントが犬歯の抜けた後にピッタリな理由
インプラント治療の流れは下記の通りです。
- 歯を失った部分の骨にドリルで穴を開ける
- 人工歯根(インプラント)を埋め込む
- 顎骨とインプラントが結合するまで待つ
- 連結部分(アバットメント)を入れて歯肉と安定させる
- 最終型採り後の上部構造(人工歯)を装着する
隣接する歯を支台とせず、自立した人工歯根により噛めることから、自然な見た目と機能を取り戻せて効果的な治療法です。犬歯の抜けた後に行う治療として、インプラントがピッタリな理由を下記に挙げます。
他の義歯治療との違い
歯が抜けた部分に人工歯を入れる治療を義歯治療と呼び、インプラント以外の他の治療法として、ブリッジや義歯(入れ歯)があります。
- ブリッジは隣接する歯を支台歯にするため隣接した歯を削り、連結した人工歯を、橋をかけるように被せる治療
- 部分的な入れ歯も欠損する歯の両隣を支台にして、金属のバネをかけて義歯を支える治療
いずれの場合も保険適用内で治療ができることから費用面で安価というメリットがありますが、欠損部分の歯の力を隣の支台歯で補うため、支台歯に欠損部分の力もかかり、ダメージを受けやすくなります。その点、インプラントは周囲の歯に依存せず、自立した歯根のもとに人工歯を立てるため、隣の歯を削る必要がありません。
長期的な安定性
インプラントは顎骨と結合して人工歯を支えるため、非常に安定しており、適切なケアを定期的に行えば長期間保持することが可能です。前歯部である犬歯には、不安定な治療よりも安定する治療をおすすめします。
笑顔の美しさ
スマイルラインとは口角を上げて笑った時に上顎の前歯の先端を繋いだラインを指し、下唇のラインに沿った緩やかなカーブを描いていれば笑顔の美しさの基準となります。歯の生え方、横幅、角度もスマイルラインにおいては不可欠で、人工歯でお口に合った綺麗な歯を入れられるインプラントは、お顔を自然でより美しい印象にできます。
犬歯にインプラントを入れる際の注意点
ただし、犬歯にインプラントを入れる際、メリットのみというわけではありません。デメリットを知ったうえで治療を開始するか検討しましょう。下記に挙げていきます。
治療にかかる費用が高い
インプラント治療は保険適用外の自由診療に該当し、クリニックごとに費用が異なります。また、自由診療の治療費は全て自己負担となるため、高い費用がかかります。
骨の質と量の確認が必要である
顎の骨にインプラントを埋入するためには事前に精密検査で確認すべき点があります。
- 顎の骨の質は良いか
- 顎の骨の量(高さや厚み)はインプラントを埋め込める位あるか
骨の質が悪かったり、骨量が不足している場合は、骨移植や骨造成という処置を行えば治療が可能になる場合があります。
手術をするため治療中の疾患によってインプラントができない場合がある
麻酔後に歯肉を切開して埋め込むための穴を開けたり歯茎を塗ったりという手術を行うのがインプラントです。疾患の治療中により投薬をされている方は、担当医の許可が出なければ行うことが出来ません。ただし、一時的に服薬を止めてよいと許可が下りた場合はインプラント治療を行えます。
まとめ
犬歯のインプラント治療は、十分に効果を発揮できます。審美性の高さや咬合機能の改善、長期的に安定性が高いことから、多くのメリットがあります。ただし、骨の質や量の確認、費用、治療期間の計画、術後のケアなどの注意点やデメリットもしっかりと理解しておかなければなりません。インプラントを長持ちさせるためには、適切な口腔ケアと定期的にメインテナンスを行えば、インプラントを長く清潔に保持できます。