インプラントの基礎知識

インプラントは永久に保つことが可能?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラントは永久に保つことができるのかと気になっている方は多いでしょう。今日はインプラントの特徴や、他の義歯治療と比べてどう違うかなどを具体的にご紹介いたします。

インプラントは永久に保てる?入れ歯やブリッジと比較

では、他の義歯治療である入れ歯やブリッジと、インプラントを比べてみましょう。入れ歯やブリッジは、保険適用内の治療を行えますが、インプラントは自費治療になるため、クリニックによっても設定が異なり、料金が高いです。また、入れ歯やブリッジと比較して、インプラント治療は通院回数が長くなるというデメリットもあります。ただ、インプラントの耐久年数と比べて、入れ歯やブリッジは耐久年数が短いのは間違いありません。

  • 入れ歯はの耐久年数は4~5年程度
  • ブリッジの耐久年数は7~8年程度

その点、インプラントは10~15年と言われており、日々のケアやメインテナンスを怠らなければ寿命以上に長く使えると言われています。入れ歯やブリッジと最大の違いは、他の口腔内の器官に負担をかけないということです。

入れ歯

  • 顎の骨に噛む刺激が伝わらないため、顎の骨をやせさせてしまい、残存歯が抜けるリスクがある
  • バネを使用する入れ歯の場合、バネをかける隣接歯に大きな力がかかり、隣接歯も抜く必要が出てくる
  • また入れ歯の処置を行わなければならない

ブリッジ

  • 二本の歯を支台歯として三本分を支えるために、大きく削る処置が必要となる
  • 特定の歯にのみ力がかかるため、支台歯を健康に保てないトラブルとなる
  • またブリッジの処置を行わなければならない

インプラントとは

インプラントとは、義歯治療です。

  • 虫歯や歯周病、外傷や事故で歯を失った方
  • 歯の根が破折している方
  • 永久歯が生えてこない欠損歯の方

このような方が受ける治療の方法です。インプラント体(フィクスチャー)・アバットメント・上部構造(人工歯)の三つから成り立ちます。

インプラントとは何か教えて

インプラントの治療の流れ

インプラントの治療について、一回の手術で終了する場合と、二回の手術で終了する場合があります。どのように分類するかというと、顎の骨の状態で手術の回数が異なります。

  • 顎の骨の厚みが十分にある方ならば抜歯即時インプラント(即時荷重インプラント・一回法)
  • 顎の骨が柔らかい・厚みが足らない方ならばインプラント(二回法)

通常、二回法となる患者様が多く見られます。では、一般的なインプラントの治療の流れを簡潔にご案内します。

術前

  1. カウンセリングにてお口の状態を確認し、治療計画や費用についてご説明
  2. 患者様がインプラント治療に同意をすればインプラント治療を開始
  3. 歯科用CTで精密検査を行い、顎骨の状態や下顎管(神経や血管が走っている部分)を歯科医師が確認
  4. 顎の骨の厚みや固さに問題がなく、骨造成などの処置の必要がないと診断

一次手術中

  1. 局所麻酔を行い、歯肉を切開し、顎の骨にドリルで穴を開ける
  2. 生体親和性の高いチタンで作製されたフィクスチャーを埋め込む
  3. 歯肉を仮に縫合する

一次手術後

  1. あごの骨と埋入したフィクスチャーが結合するまで、時間(3ヶ月~半年)をおいて待つ
  2. オッセオインテグレーションと呼ばれるチタン製のインプラントと骨の結合が確認

二次手術

  1. 歯肉を再度切開し、インプラントの頭を出す
  2. 人工歯の土台になるアバットメントを取り付ける

二次手術後

  1. 歯茎とインプラントの頭が安定するまで待つ
  2. 最終的に作製予定の色合いの仮歯を装着し、歯茎の安定を図る
  3. 最終的な被せ物の型どりを行い、噛み合わせを考えた人工歯を作製する
  4. 人工歯をスクリューかセメントにて装着して人工歯を固定

人工歯は、オールセラミック・ジルコニアセラミック・ハイブリッドセラミックなどの種類があり、前歯のインプラントならばオールセラミックが審美性や耐久性にも優れていると言われます。奥歯の場合は、ジルコニアセラミックが強度の面で優れていると言われます。また、アバットメントについても、セラミック・チタン合金・純チタンなどの種類があります。

インプラントの周囲で細菌による感染が生じると、歯周病のような症状になります。そうなると、インプラントが動揺や脱落で不安定になり、再手術を行わなければなりません。また費用や時間がかかるため、心身共に大きな負担がかかります。改善したお口を保つため、定期的なメンテナンスを受診しましょう。

インプラントを永久に保つためにに関するQ&A

インプラントは一生使えるのでしょうか?

インプラントは日常的なケアやメンテナンスを怠らなければ、10~15年以上使用することができます。定期的なメンテナンスを受けることで、寿命以上に長く使用することが可能です。入れ歯やブリッジと比べても、インプラントは耐久年数が長いとされています。

インプラント治療と入れ歯、ブリッジとの比較で重要な点は何ですか?

インプラント治療と入れ歯、ブリッジの比較で重要な点は、治療の耐久性や費用、お口の健康に与える影響です。インプラントは耐久年数が長く、天然歯に近い咬む感覚を得ることができますが、自費治療であり費用が高い点や通院回数が長い点がデメリットです。一方、入れ歯やブリッジは費用が比較的低く、治療期間も短いですが、耐久年数が短く、他の歯に負担をかける可能性があるというデメリットがあります。患者さんはこれらの要素を考慮して治療法を選択する必要があります。

インプラント治療のデメリットはありますか?

インプラント治療のデメリットとしては、自費治療であるために費用が高いことや、通院回数が長くなることが挙げられます。また、インプラント周囲で細菌感染が生じると、歯周病のような症状が起こり、インプラントが不安定になる可能性があります。そのため、定期的なメンテナンスの受診が重要です。

まとめ

メンテナンスでクリーニングやインプラント周囲炎が起こっていないかチェックをしてもらうことは、インプラントを長く使うためには大切です。安心できるインプラントを行うには、症例経験や実績が多い技術を持ったドクターがいる歯科医院で行うとより安全でもあります。そのようなクリニックは、アフタフォローやメンテナンス・保証制度もきちんと考えられているケースが多いです。無料カウンセリングを活用し、複数の医院でお気軽にご相談し、患者様にとって信頼のおける担当医に手術を担当してもらいましょう。

デンタルインプラントの永続性に関する研究は、インプラントの長期的な成功率と骨密度の影響を評価しています。一つの研究では、10年以上のフォローアップ期間を持つ前向きの縦断研究について検討し、骨の密度に応じたインプラントの生存率を比較しました。その結果、骨密度の低いタイプIVの骨に挿入されたインプラントの生存率は、88.8%であり、表面処理されたインプラントの生存率が高かったことが示されました。【Goiato et al., 2014

別の研究では、低密度骨(タイプIV)に挿入された短いインプラント(6mm)と、骨移植を伴う長いインプラント(11-15mm)の生存率を比較しました。5年間のフォローアップの結果、両方の治療法で類似したインプラント生存率が得られ、短いインプラントも骨が萎縮した後方上顎部でのインプラント療法に適した治療オプションであることが示されました。【Thoma et al., 2018

これらの研究結果から、デンタルインプラントは、適切なケース選択と治療計画によって、長期間にわたって機能する可能性があることが示されています。しかし、インプラントの長期的な維持には、適切な口腔衛生と定期的なフォローアップが必要です。また、患者の全身状態や口腔内の条件によって、インプラントの成功率や持続期間が影響を受ける可能性があります。したがって、「永久に保つ」と一概に言えるわけではなく、個々の状況に応じた適切な管理が必要です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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