インプラント治療前・治療後の疑問

インプラントの上部構造が壊れることはありますか?

インプラントの上部構造が壊れることはありますか?

インプラントの上部構造は、時間の経過や使用状況によって壊れることがあります。これが発生すると、審美的な問題や機能的なトラブルを引き起こす可能性があります。インプラントの上部構造が壊れる原因やその予防策についてご説明します。

インプラントの上部構造とは?

インプラントの構造とメリット・デメリット

インプラントの上部構造とは、インプラント本体(人工歯根)の上に装着される人工の歯冠やブリッジを指します。この部分は、実際に口内で噛む力を受け止め、日常的な咀嚼や会話を支える重要な役割を果たします。上部構造にはセラミックやメタルなど、耐久性が高い素材が使用されますが、それでも長期間の使用や外的要因によって壊れることがあります。

上部構造が壊れる原因

インプラントの上部構造が壊れる原因は複数あります。主な原因として、以下のようなものが挙げられます。

1. 咬合力が強い

咬合力とは、噛み合わせの際に歯にかかる力のことです。インプラントの上部構造は、天然歯と同様にこの咬合力に耐えるよう設計されていますが、場合によっては過剰な力がかかり、構造が壊れる原因となります。

2. 歯ぎしり・食いしばり

寝ている間に無意識に行われる歯ぎしりや、日中のストレスによる食いしばりは、インプラントの上部構造に非常に強い力をかけることがあります。このような癖が続くと、上部構造が摩耗し、最終的にはひび割れや破損を引き起こす可能性が高くなります。

噛み合わせが悪い

一部の歯に過度な力が集中するような噛み合わせになっている場合は、インプラントにも力がかかり、上部構造の破損を引き起こすリスクを高めます。

3. 経年劣化

インプラントの上部構造は耐久性が高い素材で作られていますが、長期間の使用により劣化することは避けられません。

接着部の劣化や緩み

インプラントの上部構造は、インプラント体にしっかりと接着されていますが、時間が経つと接着剤や接合部が劣化したり緩んだりすることがあります。この劣化により、最悪の場合、外れてしまうことがあります。

4. 外的衝撃

突然の外的衝撃は、インプラントの上部構造に深刻な損傷を与えることがあります。

事故やスポーツによる衝撃

交通事故やスポーツ中の衝突など、強い外的衝撃を受けた場合、インプラントの上部構造がひび割れたり、完全に破損することがあります。特に、接触の多いスポーツ(ラグビー、ボクシングなど)では、マウスガードの使用が推奨されます。

転倒などの事故

突然の転倒や顔面に衝撃が加わると、上部構造が壊れるリスクが高まります。こうした状況では、すぐに歯科医を受診し、破損した部分の修復や交換を検討する必要があります。

5. 製作や装着の不具合

インプラントの上部構造の製作や装着過程での不具合が、後に破損を引き起こす原因となることがあります。

設計が適切でない

上部構造が適切に設計されていない場合、噛む力が均等に分散されず、特定の部位に過度の負荷がかかることがあります。

接合が不十分だった

上部構造をインプラント体に装着する際、接合部が不十分であると、使用中に緩んでくることがあります。この緩みによって、構造が壊れるリスクが高まります。

素材の選択ミス

患者さんの咬合力や噛み合わせの状態に適した素材を選択しない場合、上部構造が早期に壊れることがあります。例えば、強い咬合力を持つ患者さんに対しては、より耐久性の高い素材が求められます。

これらの原因により、インプラントの上部構造が壊れることがあります。適切な予防策を行うことで、破損のリスクを大幅に減らすことが可能です。

壊れた場合の症状と影響

インプラントの上部構造が壊れると、次のような症状や影響が現れることがあります。

  • 見た目の変化・・歯冠が欠けたり、外れたりすることで、見た目に明らかな変化が生じます。
  • 噛む時の違和感・・壊れた部分が尖っていたり、歯列が不均衡になることで、食事時に違和感や痛みを感じることがあります。
  • 発音の乱れ・・特に前歯の上部構造が壊れた場合、発音が不明瞭になることがあります。
  • 周囲の歯への影響・・壊れた上部構造が隣接する天然歯や他のインプラントに悪影響を及ぼすこともあります。

上部構造が壊れた場合の対処法

インプラントの上部構造が壊れた場合は、以下の対処法が一般的です。

  • 早期の歯科受診・・できるだけ早く歯科医に相談し、適切な治療を受けることが最優先です。
  • 応急処置・・壊れた部分が鋭利であったり、不快感が強い場合、応急処置として保護キャップの装着や歯冠の一時的な修復が行われることがあります。
  • 上部構造の再製作・・完全に壊れてしまった場合は、新たに上部構造を製作し直す必要があります。
  • インプラント全体の再評価・・上部構造の破損が繰り返される場合、インプラント全体の状態を再評価し、根本的な問題解決が必要となることがあります。

当院では、インプラント治療後にメンテナンスをきちんと受けていただいている患者さんに限り、上部構造への保証制度が適用されます。手術後の経過年数によって保証の内容が変わります。詳しくは医院にお問い合わせください。

壊れるリスクを減らすための予防策

インプラントの上部構造が壊れるリスクを減らすためには、日常生活で以下の点に注意することが重要です。

  • 適切な噛み合わせの管理・・歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合、マウスガードの使用や噛み合わせの調整が推奨されます。
  • 定期的なメンテナンス・・定期的に歯科医でインプラントのチェックを受け、問題が発生する前に早期に対処することが重要です。
  • 慎重な食事習慣・・極端に硬い食品や粘着性の高い食品を避けることで、上部構造への負荷を減らすことができます。
  • 定期的に健診を受ける・・定期健診でインプラントの状態をチェックし、クリーニングを受けることがインプラント周囲炎を防ぐことに繋がります。

まとめ

インプラントの上部構造を長持ちさせるためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。定期健診を受けることで、早期に問題を発見し、適切な対処を行うことができます。また、日常的な歯磨きやデンタルフロスの使用による口腔ケアも、インプラントの寿命を延ばすために大切なことです。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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