インプラント

インプラント治療のリスクを減らすための様々な取り組みを教えて

インプラントのリスクを減らすための様々な取り組み

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラントは手術を伴う治療ですので、様々なリスクがあります。出来る限りリスクを減らし、安全な治療を受けていただくために、歯科医院では様々な取り組みを行っていますので、ご説明します。

リスクを減らすための取り組みが必要な理由

インプラントの構造

インプラント治療は、歯がなくなってしまった部分の骨にチタンで出来た人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を作ります。

公的な医療保険が適用されない自由診療なので、保険診療に比べると治療費が高いのですが、残っている歯に負担をかけない、歯がなくなった部分の骨が減ることがない等の利点があるため、インプラント治療は入れ歯やブリッジに比べるとQOLの向上のためにすぐれた治療法であると思います。

しかし、インプラントの手術後、痛みや化膿が続く、神経が麻痺する等の被害に遭われている方も少なからずおられるとの問題点が、新聞や雑誌に掲載されました。そのような記事をお読みになり、心配になって治療を迷われている方が多いのも事実です。

インプラント治療を行うにあたって、歯科医院や歯科医師に関する基準や、治療のプロセス全般に関するガイドライン等がないため、歯科医院や歯科医師によって技術の差があることは、インプラント治療の大きな問題点であると考えられます。

インプラント治療のリスクを減らすための取り組み

インプラント治療は、非常に成功率が高い治療法ですが、リスクを完全に排除することはできません。そこで、治療のリスクを最小限に抑えるために、さまざまな取り組みが行われています。

1. 徹底した事前診査と治療計画

CTスキャンや3D画像診断の活用

骨の状態や神経の位置を詳細に把握するため、CTスキャンや3D画像診断が使用されます。これにより、正確なインプラント埋入位置を決定し、手術の精度を高めます。

  • CTスキャン:・・顎骨の形状や厚み、神経や血管の位置を把握するために活用されます。
  • 口腔内検査:・・歯垢や歯石の状態、歯周病の有無を確認し、治療の適応を判断します。

治療計画のカスタマイズ

患者さんの骨の状態や健康状態に応じて、治療計画を個別にカスタマイズすることもリスク軽減の鍵です。例えば:

  • 骨が不足している場合は、骨造成術を先行して行います。
  • 全身疾患がある患者さんには、主治医との連携を図り、安全に治療を進めます。
  • 使用するインプラントの種類やサイズを患者さんの顎骨に適したものに選定します。

2. 高品質なインプラントの使用

信頼性の高いメーカーの製品

信頼性のあるメーカーのインプラントを使用することで、素材や設計の品質が保証され、トラブルのリスクが低減されます。

適切なサイズと形状の選定

患者さんの骨の状態や口腔内の構造に最適なサイズと形状のインプラントを選定することで、治療後の安定性が高まり、リスクが減少します。

高品質な材料の使用

インプラント体や上部構造(被せ物)の材料も、治療の成功に大きな影響を与えます。信頼性の高いメーカーの製品を使用することで、長期的な安定性が向上します。

  • チタン製のインプラント体・・生体親和性が高く、骨としっかり結合する特性があります。
  • セラミックの被せ物・・審美性に優れ、金属アレルギーのリスクがありません。

3. 術前の口腔ケアと衛生管理

歯周病の治療

インプラントを埋入する前に、歯周病がある場合は治療を行います。歯周病があるとインプラント周囲炎のリスクが高まるため、事前の治療が必要です。

術前の口腔内クリーニング

手術前に口腔内を清潔に保つため、プロフェッショナルクリーニングを行い、細菌の繁殖を抑えます。

4. 患者さんへのご説明と禁煙指導

患者さんへの十分なご説明

患者さん自身がリスクを理解し、適切な行動をとることも重要です。そのため、治療の前には以下のような説明が行われます:

  • リスクとメリットの説明・・治療の成功率やリスクを正直に伝えることで、患者さんの納得を得ます。
  • 生活習慣の改善指導・・喫煙や不規則な生活習慣はリスクを高めるため、改善を促します。

術後のケアについてのご説明

患者さんに対して、術後の適切な口腔ケア方法や生活習慣についてのご説明を行います。これにより、治療後の感染リスクや合併症の発生を防ぎます。

禁煙の推奨

喫煙はインプラント治療の成功率を低下させるため、禁煙が強く推奨されます。特に手術前後の期間に禁煙することで、治療の成功率が向上します。

5. 定期的なフォローアップとメンテナンス

術後管理とフォローアップ

インプラント手術後の適切なケアも重要です。術後の感染やトラブルを防ぐために、以下の取り組みが行われます:

  • 抗生物質の処方・・術後の感染予防のために使用します。
  • 定期的な健診・・インプラントの状態や周囲の歯周組織を確認し、問題がないかをチェックします。
  • 歯磨き指導・・インプラント周囲の清掃が不十分だと歯周病のリスクが高まるため、正しい歯磨き方法が指導されます。

定期健診の重要性

インプラント治療後も定期的な検診を行うことで、早期に問題を発見し、適切な対応を取ることができます。これにより、リスクを最小限に抑えることができます。

インプラントは安全か?患者さんからのご質問に対して

インプラントを埋入する際に「骨の中の神経や血管を傷つけることがないのか。本当に大丈夫なのか」と患者さんから質問を受けることがあります。

インプラント手術にももちろんリスクはありますが、手術が成功するかどうかは、歯科医院がインプラントに必要な最新機器をそろえていることはもちろんのこと、手術を行う歯科医師の手術の熟練度と技術、そして解剖学の知識がどの程度あるかに左右されます。

骨の少ない難しいケースでも増骨の処置すればインプラント手術が可能になりますし。レントゲンで確認を行いながら処置を行うことで、危険なく手術を終えることができます。

長く使っている間にインプラントが駄目になってしまう場合は、インプラントの設計や噛み合わせに原因があります。現在使用されているインプラントはチタンベースの歯根型(ルートフォーム)のものが主流になっています。長い年月の試行錯誤によって形や表面性状の面からもほぼ完成されたものになっており、安全性を考慮して適切に埋入し噛み合わせを調節すれば、まず問題が起こる事はありません。

しかしインプラントが数年でだめになるケースが全くないわけではありません。だめになる場合は埋入してから間もない初期の段階が多く、だめになった場合はインプラントがぐらぐらしていますので、ねじを逆回転すればほんの数秒でインプラントを除去できます。

インプラントの除去はそれほど苦痛はありません。インプラントがぐらぐらした原因を見極め、それに対処しながらインプラントを埋入しなおす場合もあります。

安心して治療を受けていただくために

過去に他院でインプラント治療をしたことのある方が来院されるケースがたびたびあります。お話を伺うと、1本目のインプラント治療をした際に、満足のいく治療を受けられなかったというケースが多いです。

次に多いのが、引っ越しや転勤などで、以前の歯医者さんに通えなくなってしまったというケースです。遠くて通えなくなった場合は転院も仕方がないのですが、気になるのは、一本目の治療に満足しておられない患者さんがおられるということです。

インプラントした部分がぐらついたり、違和感があったりして、2度目は違う歯科医院で治療したいと思われる方や、先生やスタッフの方とうまくコミュニケーションが取れず、不信感に繋がったりと、理由は様々です。

まとめ

患者さんが不安を抱えたまま治療を受け続けることのないように、当院では、何でも気になることがあったときに、専任のカウンセラーに相談できる体制になっております。気になる点をお話いただくことで、解決の道が開けると思いますので、お気軽にカウンセラーにお申し付けください。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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