インプラントの基礎知識

インプラントを入れると顎骨が丈夫になるって本当?その理由とは?

インプラントを入れると顎骨が丈夫になるって本当?

「歯を失ってしまったけれど、インプラントを入れれば見た目も噛む力も元に戻る」と聞いて、治療を検討される患者さんは多いでしょう。

ところが最近では、「インプラントをすると顎骨が丈夫になる」といった話を耳にすることもあり、「それって本当?」と疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、インプラント治療は見た目や機能の回復だけでなく、顎の骨の健康にも関係があると考えられています。ただし、「丈夫になる」という表現には少し注意が必要です。正しい知識を知ることで、治療への理解や納得感もぐっと深まるはずです。

この記事では、「インプラントをすると顎の骨が丈夫になるのか?」という素朴な疑問にお答えしながら、歯を失った後の骨の変化や、インプラントが果たす役割について、丁寧に解説していきます。

歯を失うと顎の骨が痩せる?

歯を失うと骨が痩せる

歯を失うとその部分の顎の骨は刺激を失い、徐々に痩せてしまうことがあります。噛む力が骨に伝わらなくなるため、骨の吸収が進みやすくなり、少しずつ骨が減ってしまうのです。

歯を失うと顎骨が使われなくなり、痩せてしまう傾向があります。

● 歯の根がなくなると、顎の骨は刺激を受けなくなる

 ⇒ 骨の新陳代謝が低下して、骨が吸収されやすくなるためです。

● 入れ歯では骨への刺激が弱く、骨の吸収を防ぎきれない場合もあります。

● 骨が痩せると、顔つきが変化したり、将来的にインプラントや入れ歯の適応が難しくなる可能性もあります。

このように、歯を失ったままにしておくと、顎の骨が痩せてしまい、口元の見た目や噛む機能に大きな影響を及ぼします。

歯を失うと骨が痩せてしまうメカニズム

歯を失うと、噛む力が顎の骨に伝わらなくなるため、骨が「使われていない」と判断され、徐々に吸収されて痩せてしまいます。これは身体の自然な反応であり、放っておくと進行してしまうことがあります。

歯がなくなると骨への刺激が減り、骨が吸収されて痩せていきます。

歯の根が骨に刺激を与えている

 ⇒ 歯があると、噛むたびにその力が歯根を通じて顎の骨(歯槽骨)に伝わります。これが骨にとっての“運動”になります。

噛む力がなくなると、骨の活動が低下

 ⇒ 歯を失うと噛む刺激がなくなり、骨は「使われていない」と体に判断されて、必要ないものとして吸収され始めます。

時間とともに骨は減っていく

 ⇒ 特に抜歯直後の半年~1年の間に、骨の高さや厚みが大きく減少する傾向があります。

このように、噛むという日常的な行為が骨の維持に深く関わっているのです。骨は常に作り替えを繰り返していますが、その働きには「刺激」が不可欠です。歯を失ったことで刺激がなくなると、その分骨の再生も行われにくくなり、結果として骨が痩せていくのです。

放置すると骨はどんどん衰える

放置すると骨はどんどん痩せる

骨の萎縮は時間とともに進行するため、歯を失ったまま長期間放置すると、治療が難しくなるケースもあります。

放置すると骨の量が減り、治療が困難になるリスクがあります。

● 時間の経過とともに骨の吸収は進行しやすい

 ⇒ 特に抜歯後1年以内に顕著な吸収が見られることが多いです。

● 骨の厚みや高さが足りなくなると、インプラント治療が困難に

 ⇒ 骨造成などの追加処置が必要になるケースもあります。

● 骨が痩せると、口元が老けた印象になることも

骨の健康は、単に噛めるかどうかだけでなく、見た目や発音、将来の選択肢にも関わる重要な要素です。

インプラントが骨に与える刺激とは

インプラントは顎の骨にしっかり固定される構造のため、噛むたびに骨へ適度な刺激が伝わり、骨の吸収を防ぐ効果が期待できます。

インプラントは骨に直接力を伝えることで、骨の吸収を防ぎます。

● インプラントはチタン製で、骨と結合する(オッセオインテグレーション)

● 噛む力がダイレクトに骨に伝わり、刺激になる

● この刺激が、骨の新陳代謝を促し、骨が保たれる仕組み

入れ歯と異なり、インプラントは骨に力が伝わるので、使わないことで起こる骨の衰えを防ぐ役割があるのです。

インプラントで骨が丈夫になるメカニズム

インプラントによる咀嚼刺激が骨の細胞を活性化し、骨の密度維持や再生を促すと考えられています。骨量の減少を防ぎ、長期的な口腔内の健康維持に繋がります。

インプラントは骨密度の維持・再生を助ける働きがあります。

● 骨に伝わる「適度な負荷」が骨形成細胞を刺激

 ⇒ 骨が再生しやすくなる環境が整います

● 骨粗しょう症のような全身的な骨量低下を防ぐ効果はないが、局所の骨維持に有効

● 適切なメンテナンスにより、長期的に骨の健康を支えることが可能

つまり、「骨が丈夫になる」という表現は誇張ではなく、ある程度の科学的根拠があると言えるのです。

骨を守るために今できること

インプラント治療を検討している方は、早めの相談が重要です。骨が十分あるうちに治療を始めることで、治療の難易度が下がり、成功率も上がります。

骨が痩せる前に、早めに相談・治療を始めましょう。

● 歯を失ったら放置せず、なるべく早く歯科医院へ

● 骨量があるうちなら、インプラント治療の成功率が高い

● 定期的な健診とメンテナンスで、骨の健康もチェック

● 骨が少ない場合は「骨造成」という方法も選択可能

骨の健康は一朝一夕では保てません。日頃のメンテナンスや、早めの行動が将来の口腔環境を大きく左右します。

不安がある方へ、歯科医からのメッセージ

インプラント治療に不安を感じている患者さんも多いですが、カウンセリングやCT検査で骨の状態をしっかり把握し、適切な治療計画を立てれば安心して治療に臨めます。

不安がある方も、まずは検査と相談から始めてみましょう。

● 骨の状態はCT検査で詳細に把握できます

● 歯科医としっかり相談することで、リスクや不安も軽減

● 骨が痩せていても、適切な治療法を選べばインプラントは可能

インプラントは「骨が丈夫になる」可能性を秘めた治療法です。不安を感じたら、まずはお気軽に歯科医院で相談してみてください。

まとめ

インプラントは骨の健康維持に貢献する治療法

  1. 歯を失うと骨が痩せてしまうリスクがある
  2. インプラントは骨に刺激を与え、骨の吸収を防ぐ
  3. 適切な時期に治療を行えば、骨の健康を長期にわたり維持できる
  4. 骨が少なくても治療できる可能性があるので、あきらめずに相談を

インプラント治療は、単なる「歯の見た目」や「噛む機能」の回復にとどまらず、「骨の健康維持」という大きな役割を果たす選択肢です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

▶プロフィールを見る