インプラントの基礎知識

インプラント手術はどんな時に必要?失った歯の状況別にわかりやすく解説

インプラントはどんな時に必要?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラント手術はどんな時に必要なの?

答えは「歯を失い、機能や見た目を回復したい時」です。インプラントは、失った歯の代わりに人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。ブリッジや入れ歯と比べて、自分の歯に近い噛み心地や見た目を得られることが大きな魅力です。

この記事はこんな方に向いています

  • 歯を失って治療方法を検討している方
  • 入れ歯やブリッジが合わず、より快適な方法を探している方
  • 骨が痩せるのを防ぎたい方
  • 見た目や発音を改善したい方

この記事を読むとわかること

  1. インプラントが必要となる典型的なケース
  2. 他の治療法との違いとメリット
  3. 治療を検討する際の判断ポイント

 

歯を失い、機能や見た目の回復が必要な時にインプラントは有効

インプラントは、天然歯のような見た目と噛む力を再現できる治療です。歯を失ったままにしておくと、噛み合わせのバランスが崩れ、骨が痩せ、他の歯や全身の健康にも悪影響が出ます。そのため、失った歯を放置せず、機能と見た目を回復する手段としてインプラントは非常に有効です。

歯を失ったら、機能と見た目の回復のためにインプラントは有効です。

天然歯に近い機能と見た目を取り戻せるから

インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込み、固定するため、入れ歯やブリッジに比べて噛む力や安定性が高く、見た目も自然です。さらに周囲の健康な歯を削る必要がないため、長期的に他の歯を守る効果も期待できます。

インプラントは、噛む力・見た目・周囲の歯の保護に優れています。

具体例①:事故や虫歯・歯周病で歯を失った場合

歯を失う主な3つの原因

外傷や虫歯、歯周病は歯を失う主な原因です。失った部分を補わないと噛み合わせの悪化や骨吸収が進みます。インプラントはその部分を補い、機能と見た目を回復します。

歯を失ったら、早期のインプラント検討が大切です。

歯を失う原因の例

  1. 事故やスポーツ外傷 → 瞬間的な強い衝撃で歯が脱落する場合があります。
  2. 重度の虫歯 → 歯の構造が崩壊し、抜歯せざるを得ないことがあります。
  3. 進行した歯周病 → 歯を支える骨が溶け、歯が自然に抜け落ちることがあります。

これらの原因で歯を失った場合、インプラントは安定した機能回復手段となります。特に前歯など見た目に影響する部分では、自然な仕上がりが得られる点が大きなメリットです。

具体例②:ブリッジや入れ歯が合わない場合

ブリッジや入れ歯が合っていないかも?

ブリッジや入れ歯は有効な治療法ですが、支えとなる歯への負担や装着時の違和感が気になる方もいます。インプラントなら単独で機能するため、周囲の歯や歯ぐきへの負担を減らせます。

他の治療が合わない時、インプラントは快適さを提供します。

合わない時の症状

  • 入れ歯のずれや痛み → 咀嚼中に動き、不快感がある。
  • 発音しづらい → 装置の厚みや形が話し方に影響する。
  • 支台歯の負担 → ブリッジでは健康な歯を削る必要があり、将来的に弱くなることがある。

インプラントは周囲の歯を削らずに済むため、長期的な口腔健康の維持にもつながります。

具体例③:骨が痩せるのを防ぎたい場合

歯を失うと、その部分の顎骨は刺激を失い、徐々に吸収されます。インプラントは骨に直接力が加わるため、骨の健康を保ちやすくなります。

インプラントは顎骨の吸収を防ぎます。

  • 骨吸収のリスク
  • 顔の輪郭が変わる
  • 入れ歯が合わなくなる
  • 咀嚼力の低下

骨量を保つことは、見た目と機能の両方を守る上で重要です。インプラントはその役割を果たせる治療法です。

具体例④:発音や咀嚼機能を改善したい場合

歯を失うと、噛みづらさだけでなく発音にも影響します。インプラントはしっかり固定されるため、自然な発音と噛み心地が得られます。

発音・噛み心地の改善にインプラントは有効です。

  1. 噛みづらさ・話しづらさの例
  2. サ行やタ行の発音がしづらい
  3. 噛む時に片側だけを使う癖がつく
  4. 食事の楽しみが減る

会話や食事の質は生活の満足度に直結します。インプラントはその両方を改善します。

具体例⑤:欠損歯の本数によって“必要度”は変わる

インプラントの必要性は、歯を失った本数や位置で変化します。1本だけの欠損では周囲の歯を守る目的が大きく、複数欠損では咀嚼効率の回復が優先されます。全ての歯を失った場合は、顎骨の吸収抑制や会話・食事のストレス軽減の観点から、インプラント義歯(オーバーデンチャー)や固定式の全顎治療が候補になります。

欠損の本数・部位で、インプラントの必要度と設計は変わります。

治療設計の例

  1. 単独欠損 → 1本だけ失ったケース。周囲の健康な歯を削らず、単独で機能回復できるのが利点です。
  2. 多数欠損 → 連続した欠損には、複数のインプラントで「ブリッジ状」に人工歯を連結し、強度と清掃性を両立します。
  3. 無歯顎 → 全ての歯を失った場合。数本のインプラントで義歯を固定する方法や、全て固定式にする方法があります。会話や食事の快適さが大きく改善します。

同じ「歯を失った」でも条件はさまざまです。欠損の形に合わせて本数・位置・上部構造を設計することで、噛む力、清掃性、コストのバランスを最適化できます。

具体例⑥:前歯の“審美域”で自然な見た目を求める場合

笑ったときに見える前歯部は、見た目の自然さや歯ぐきのラインが重視されます。インプラントは骨や歯ぐきのボリューム回復(必要に応じて骨造成・歯肉移植)と組み合わせ、天然歯に近い透明感・形態を追求しやすい治療です。

審美域では、インプラントは自然な見た目の再現に適しています。

審美域での配慮

  1. 歯ぐきの厚みと高さ → 歯ぐきの不足がある場合、周囲組織の造成でラインを整えます。
  2. 歯の形・色の調和 → 隣の歯と明度・彩度・形態を合わせ、違和感を減らします。
  3. 清掃性の確保 → 見た目だけでなく、歯磨きやフロスがしやすい形に仕上げます。

前歯部の治療は、機能と美しさの両立が大切です。設計段階から写真・模型・仮歯で共有し、完成像をすり合わせると満足度が高まります。

反対例:インプラントが“必要ではない”または“避けるべき”場合

歯の保存が可能な場合は、根管治療や再治療、歯周治療で歯を残す選択肢があります。矯正で隙間を閉じる、親知らずの移植などが適することもあります。全身状態や口腔衛生状態が整っていない場合は、まず前提条件を整えることが優先です。

保存・矯正・移植・全身管理の観点で、インプラント以外が適する場合もあります。

インプラント以外を選ぶ場合

  • 歯の保存が可能 → 再根管治療や歯周再生で予後が見込める場合。
  • 矯正でスペースを閉じる → 不正咬合を整えながらスペースを閉じる計画が立つ場合。
  • 自家歯牙移植 → 条件の良い親知らず等を移植できる場合。
  • 全身状態が不安定 → 未治療の糖尿病、骨代謝薬の影響が強いケース、喫煙や重度の歯周病がコントロールできていない場合など。

治療は「インプラント一択」ではありません。長期予後や費用、通院負担を含め、複数の選択肢を比較し、患者さんの価値観に合う方法を選ぶことが大切です。

まとめ

歯を失った時はまず専門医に相談を

インプラントは、機能回復と見た目の自然さを両立できる治療法です。ただし骨の状態や全身の健康によっては適応できない場合もあります。歯を失ったら早めに専門医に相談し、自分に合った治療法を選びましょう。

歯を失ったら早期に専門医相談を。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

▶プロフィールを見る