インプラント

インプラントは天然歯のようによく噛めますか?

インプラントは天然歯のようによく噛めます

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラントは天然歯のようによく噛めますか?

条件が整えば、インプラントは天然歯に近い噛み心地を得られる治療法です。

インプラントは、顎の骨に人工歯根を固定することで、歯の“根っこ”から噛む力を支える治療法です。そのため、構造的に見ても、天然歯に近い安定感と咀嚼力が期待できます。ただし、「誰でも」「必ず」同じように噛めるわけではなく、噛み心地には治療計画やお口の状態が大きく関わってきます。

このコラムでは、「インプラントは本当に天然歯のように噛めるのか?」という疑問に対して、歯科医師の立場から、仕組みや他の治療法との違いを交えながら、わかりやすく解説していきます。

この記事はこんな方に向いています

  • インプラント治療を検討していて、噛み心地が気になっている方
  • 入れ歯やブリッジと噛む力の違いを知りたい方
  • 「よく噛める」と言われる理由を、きちんと理解した上で治療を考えたい方
  • 治療後の生活や食事のイメージを、具体的に知っておきたい方

この記事を読むとわかること

  1. インプラントが天然歯に近い噛み心地を得られる理由
  2. 入れ歯・ブリッジと比べたときの噛む力や安定性の違い
  3. 噛めるようになるために重要なインプラントの構造と考え方
  4. 「よく噛める」と感じるために知っておきたい注意点

 

インプラントが天然の歯のようによく噛める理由

インプラント模型

インプラントが天然歯に近い噛み心地を得られる理由は、その構造と素材、そして顎骨との結合の仕組みにあります。チタン製の人工歯根が顎の骨としっかり結合することで、噛んだ力が骨に直接伝わり、天然歯と同様の安定感が生まれます。

さらに、噛む力が一点に集中せず分散される設計や、耐久性に優れた被せ物素材の使用により、長期間しっかり噛める状態を維持しやすいのが特徴です。見た目や感覚の自然さも、無意識にしっかり噛める理由の一つといえます。

顎の骨と結合する構造により、インプラントは天然歯に近い安定した噛み心地を得られます。

インプラントが天然の歯のようによく噛める理由は以下のようなものです。

1. インプラントの構造

インプラントは、チタン製の人工歯根を顎骨に埋め込み、その上に上部構造(人工の歯冠)を取り付ける構造です。チタンは生体親和性が高く、骨としっかりと結合する「オッセオインテグレーション」という現象が起こります。この結合によって、インプラントは天然の歯根と同様の安定性を発揮します。

2. 力の分散と咀嚼力

インプラントは、噛んだときの力が均等に分散されるように設計されています。これは、天然の歯と同様に、咀嚼時にかかる圧力を適切に顎骨に伝達するためです。顎骨とインプラントが一体化することで、天然歯と同じような咬合力をもち、食べ物をしっかりと噛み砕くことができます。

3. 耐久性と耐摩耗性

インプラントの上部構造(人工の歯冠)には、セラミックやジルコニアなどの耐久性に優れた素材が使われています。そのため、長期間にわたって形状や機能が維持され、天然の歯と同じようにしっかりと噛むことができます。

4. 心理的安心感

インプラントは見た目が自然であり、噛むときの感覚も天然の歯に近いです。そのため、患者さんは心理的な安心感を得ることができ、自然に噛む動作を行うことができます。インプラントは単なる機能回復だけでなく、生活の質を向上させるといえます。

これらの理由から、インプラントは天然の歯と同様にしっかりと噛める歯科治療の選択肢として広く認識されています。

インプラントはシンプルで理にかなった治療

インプラントの構造

インプラント治療は、失った歯の部分に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を取り付けるという、非常にシンプルな構造です。入れ歯やブリッジのように周囲の歯に負担をかける必要がなく、失った歯の部分だけを補うことができます。

そのため、健康な歯を削らずに済み、長期的に見てお口全体の健康を守りやすい治療法といえます。外科手術が必要とはいえ、身体への負担は想像ほど大きくありません。

インプラントは周囲の歯を傷つけず、失った歯だけを補える理にかなった治療です。

入れ歯やブリッジと比較して、インプラントの構造はとてもシンプルです。歯が抜けてしまった部分の骨に、チタン製の人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を取り付けるというものです。

昔は、顎の骨に人工歯根を埋め込むという技術がなかったために、歯が抜けたあとはその両隣の歯を使って義歯を支えるという考え方でしたが、インプラントの場合は人工歯根によって自立しているために、両隣の歯に支えてもらう必要がありません。そのため、両隣の歯は触らずに、失った1本の部分のみの治療となります。

上部構造(人工歯の被せ物)はセラミックで作成しますので、両隣の天然の歯と同じ自然な色で作成できます。見た目は、セラミックのかぶせ物や、差し歯と同じ感じで、とても美しく仕上がりますので、治療後はインプラントをしているとは全くわかりません。

このように、インプラントはとても自然で、理にかなった治療です。外科手術が必要になりますが、人工歯根を1本埋入するための身体の負担は、健康な歯を1本抜歯するのと同じ程度ですので、怖がらなくても大丈夫です。

※ブリッジと入れ歯は保険診療が可能です。自費診療の入れ歯もあります。インプラントは自費診療のみとなります。

インプラントのもう一つの大きなメリット

インプラントのメリットは、見た目や噛み心地の回復だけではありません。噛み合わせが整うことで、他の歯への負担が減り、顎の骨が痩せるのを防ぐ効果も期待できます。

噛み合わせの乱れは、肩こりや姿勢の崩れなど、全身の不調につながることもあります。インプラントによって噛み合わせが改善されることは、口の中だけでなく、生活の質全体を支える要素になるのです。

噛み合わせの回復は、歯だけでなく全身の健康にも良い影響を与えます。

インプラントは、失った歯の代わりに人工歯根による歯を作る治療法ですので、治療を希望される方は、歯のない部分にきれいな歯が入るというイメージをおもちだと思います。

もちろん失った歯の代わりに、第二の永久歯とも呼ばれる程きれいで良く噛める歯が入るというのは、インプラントの大きなメリットです。しかしそれ以外にも、他の残っている歯を傷めずに保護したり、顎骨が吸収されずに済むというメリットがあります。

歯を失うと、噛み合わせが悪くなります。インプラント治療によって噛み合わせが回復すると、それは口の中のみならず、全身の健康に繋がります。実際に、歯が悪いせいで肩こりが起こったり、骨格が歪んだりするのです。歯を治療するとこれらのお悩みが治った、というお話をよく耳にします。

インプラントなら誰でも天然歯と同じように噛めるのでしょうか?

答え:多くの場合で高い咀嚼力が期待できますが、すべての方が全く同じ噛み心地を得られるわけではありません。

インプラントは「よく噛める治療」として知られていますが、噛み心地には個人差があります。これはインプラントの性能が劣るからではなく、お口の状態や治療条件によって結果が左右されるためです。

たとえば、顎の骨の量や質が十分でない場合、インプラントを支える土台が弱くなり、噛む力を十分に発揮できないことがあります。また、噛み合わせのバランスが整っていない状態で治療を行うと、一部の歯に力が集中し、違和感を覚える原因になることもあります。

さらに、治療後の使い方やメンテナンスも重要です。

インプラントは虫歯にはなりませんが、周囲の歯ぐきや骨は天然歯と同じように影響を受けます。適切な歯磨きや定期的な健診を怠ると、インプラント周囲炎を起こし、結果として噛みにくくなる可能性もあります。

このように、インプラントは「入れれば自動的に天然歯と同じように噛める治療」ではなく、事前の診断・治療計画・治療後のケアまで含めて完成する治療だといえるでしょう。

インプラントの噛む力に関するQ&A

インプラントは本当によく噛めるのでしょうか?

はい、インプラントは骨に固定されているため、治療後は天然の歯のようにしっかりと力を入れて噛めます。

インプラントと他の治療法(入れ歯やブリッジ)との間に噛む力の違いはありますか?

インプラントは顎の骨に人工の歯根を埋め込み、骨としっかり結合させて自立した人工の歯を作る治療法です。入れ歯やブリッジの場合、噛む力は天然の歯の半分くらいですが、インプラントは天然の歯と同等の噛む力が得られます。

インプラント治療後のケアは何が必要ですか?

インプラント治療後は、大切な歯を失わないために、インプラント周囲炎にならないように予防することが必要です。それには、日頃から歯みがき等のケアを自身で行い、数か月に一度は予防のために歯医者でメンテナンス(定期健診)を受けることがおすすめです。

まとめ

食事中の女性

インプラントは顎の骨に人工歯根を固定する治療法のため、天然歯に近い噛み心地が期待できます。一方で、自費診療であることや、治療後のケアが重要である点も理解しておく必要があります。

保証制度やメンテナンス体制を確認し、治療後も継続的に健診とセルフケアを行うことで、インプラントを長く快適に使い続けることができます。

インプラントは噛める治療ですが、治療後のケアと継続的な管理が欠かせません。

インプラントはあごの骨に人工歯根を埋め込むため、しっかりと骨に肯定されて良く噛めるようになります。しかし保険がきかない自由診療ですので、保険治療と比べるとどうしても高額な治療になります。安心して治療を受けて頂く為に、保証期間を設けている歯科医院が殆どだと思います。

当院でももちろん保証制度を設けています。インプラント治療をお受けになる前に、保証についてもしっかりと確認しておきましょう。

そしてインプラント治療後は、大切な歯を失わない為に、インプラント周囲炎にならないように予防することが必要です。そのため予防を中心とした歯科医療を継続的に受けていただきたいと思います。

歯が悪くなってから歯科に駆け込むのではなく、日頃から歯みがき等のケアをご自身の手で行うこと、そして数か月に一度、予防のために歯医者でメンテナンス(定期健診)を受けることをおすすめします。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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