インプラント治療前・治療後の疑問

インプラント治療後は虫歯・歯周病の心配はない?

インプラントと虫歯・歯周病の関係

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラントの治療が終わると、「インプラントは自分の歯ではないから虫歯にならないの?」「歯磨きしなくてもいいの?」という疑問がわいてきますが、実際にはどうなのでしょうか?

インプラントは虫歯にならない

インプラントと天然歯の違い

虫歯とは口の中の虫歯菌が歯についた糖質から酸を作り、歯のエナメル質を溶かしていく病気です。インプラントは上部構造と呼ばれる義歯の部分がセラミックなどの人工的なものなので、虫歯にはなりません。歯茎の中に埋まっている人工歯根はチタンという金属製で、これも虫歯菌に侵されることはありません。

つまり、インプラントの歯自体が虫歯になることはありません。しかしお口の中に天然の歯がある場合は、その歯は虫歯のリスクがあります。

インプラントは歯周病には注意が必要

インプラントをケアせずに放っておくと、周囲の歯茎や骨が周囲炎という歯周病のような状態になってしまい、そうなるとインプラントを長持ちさせることができません。

インプラント周囲炎

インプラントは人工的に作られた歯根で、本来の歯の根っこがありません。人工歯根の部分には神経が通っていないため、インプラント周囲炎が進行してくると周囲の歯ぐきが腫れたり、出血などの症状が起こります。

周囲炎の症状がもっと進むと、骨に埋まっているインプラントがグラグラと動くこともあります。歯周病と同じような症状だと考えていただいて結構です。

インプラントを長持ちさせるためには治療後のケアがとても重要です。具体的には患者さん自身による丁寧な歯みがき等のセルフケアと歯科医院での定期検診です。

虫歯の心配がないなら歯磨きしなくても大丈夫?

虫歯にならないからといって、歯みがきなどのケアをしなかったり、適当にすればいいというわけではありません。インプラントの被せ物に歯垢がついたままになっているということは、隣の歯との境目にも歯垢がたまり、その部分に細菌が棲みついて口の中は大変不衛生な状態になってしまいます。

部屋を掃除しないとホコリがたまってアレルギーや喘息等につながるのと同じように、歯磨きが不十分な場合はお口の中に歯垢がたまって細菌が増えますので、歯周病や虫歯が発症しやすい危険な状態になります。 つまり、インプラントの周囲の歯が虫歯になってしまう危険が高まります。

歯垢を発生させないためには、歯みがきを丁寧に行うことが大切です。ぜひ正しいブラッシング方法を身につけてくださいね。力を入れすぎず、磨く場所によって歯ブラシの持ち方を工夫し、きちんと歯と歯の隙間に届かせることに気を付けて磨き残しが出来ないようにしましょう。

歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを使ってご自身で丁寧にケアをしていただいても、歯垢が取れにくい、または取れない部分があるものです。特に歯石は歯みがきでは取ることが出来ません。歯科衛生士によるプロのクリーニングを定期的に受けていただくと虫歯や歯周病の予防に効果的です。

インプラント自身は虫歯になりませんが、お口全体の健康ということを考えると、お口全体を丁寧に歯磨きするように習慣づけてくださいね。

インプラントのホームケア

はみがき

インプラントのホームケアで一番重要なのは、天然歯と同じ歯みがきです。歯垢がついたままになると、インプラントの周囲の歯は虫歯や歯周病になります。歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシ、タフトブラシなどを使いこなして、インプラントや周囲の天然歯に歯垢や歯石がつかないように、しっかりケアしましょう。

磨き残しが起こりやすいのは、歯と歯の間や、歯と歯茎の境目の溝の部分です。出来るだけ歯垢を残さないようにていねいに磨いて、インプラントや天然歯を守りましょう。

インプラントのプロケア

メンテナンス

インプラント患者さんへのメンテナンス(定期健診)では、歯周病予防を重点的に行っていきます。当院ではエアフローという器械で歯にパウダーを吹き付け、ジェット水流で歯垢や歯石になりかけの汚れを洗い流します。

同時に、インプラントや周囲の歯茎に異常がないかを調べて、特に歯茎に炎症が起こっていないかをチェックし、歯周ポケットが深くなっていないか、歯に動揺がないかなどを継続的に記録していきます。

インプラント治療後の虫歯・歯周病予防に関するQ&A

インプラント周囲炎の症状は何ですか?

インプラント周囲炎が進行すると、周囲の歯ぐきが腫れたり、出血したりすることがあります。さらに進行すると、インプラントが骨に固定されている部分がグラグラと動くこともあります。

インプラントのホームケアで重要なことは何ですか?

天然歯と同じように歯磨きが重要です。歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシなどを使って歯垢や歯石がつかないようにケアすることが重要です。

定期健診で何をチェックするのですか?

定期健診ではインプラントや周囲の歯茎に異常がないか、歯茎に炎症が起こっていないか、歯周ポケットが深くなっていないか、歯に動揺がないかなどを継続的に記録していきます。

まとめ

インプラント治療後において、周囲の歯周組織によく起こるトラブルである「虫歯」と「歯周病」についてご説明しました。このようにインプラント治療は、よく噛めるようになったからといってそれで終わりではなく、むしろその後のケアが重要です。

インプラント自体が虫歯にならないからと安心しないで、毎日丁寧に歯磨きすることはもちろんのこと、数か月に一度の歯科医院での定期検診も、欠かさないように受診することをお勧めします。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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