インプラント

インプラント治療後にMRIはできるのか?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

抜歯した口腔内の治療法にインプラントを提案すると、「何かインプラントをするとクリニックの人間ドックでMRIを受けられないって聞くよ?」と質問されることがあります。では、人工歯根を埋め込むインプラント治療をすると本当にMRIが不可能か、体への問題点がないか、安全性など詳しくご案内していきます。

インプラント治療後のMRIについての一般的な疑問

インプラントはチタンやチタン合金などの金属素材を使用しているため、MRI(磁気共鳴画像)検査を受ける際に問題がないか心配される方も多いです。MRIは強力な磁場を使用するため、金属が体内にある場合、検査に支障が出ることがあるため、事前に確認が必要です。

チタン製インプラントとMRIの安全性

インプラントで使用されるチタンやチタン合金は非磁性体であり、MRIの強い磁場に反応しません。そのため、基本的にMRI検査は問題なく行うことが可能です。チタンは生体適合性が高く、体内に安全に埋め込むことができるため、歯科用インプラントに広く使用されています。

インプラント治療後にMRIは受けられる?

MRI

骨に埋入するインプラントの素材はチタンかチタン合金製です。チタンは非磁性体と呼ばれる物質で、簡単に言えば磁力に影響しないという理由で、MRIに支障をきたしません。

インプラントの本体である骨に埋め込む固定部分はチタンですので、その素材であれば人工歯根部分の骨と結合する箇所は、リスクが少ないと思ってくださって構いません。

▼インプラントについてはこちらで詳しく解説しています。

磁石アタッチメントデンチャーをしている方はMRIを撮る場合に注意が必要

インプラントにおいても、一部の種類ではMRIがダメな場合があるので注意が必要です。それは、磁石による入れ歯をインプラントで固定するインプラントオーバーデンチャーというインプラント治療法で、磁石アタッチメントデンチャーを選択された患者さんです。

<参照:愛知製鋼「歯科用磁性アタッチメント」>

磁石による義歯の装着のため、装置の取り外しが簡単なのと、マグネットやキーパーという部分の働きにより、入れ歯を装着した方にはよくある「入れ歯が外れる」という事がないのが特徴です。

▼インプラントオーバーデンチャーはこちらで詳しく解説しています。

既に多くの歯を失ってインプラントをされる場合、磁石アタッチメントデンチャーはオールオンフォーより安い費用で治療が可能なので、人気の治療方法ではあります。ですが、MRIを受診される際にはそのマグネットはMRIの機器に影響を及ぼし、歯がMRIに引っ付いたり、破損や発熱が生じる原因となりかねません。

インプラントを用いずに、天然歯に磁性アタッチメントを取り付けてマグネットの力でデンチャーを固定している場合も同様です。

磁石アタッチメントデンチャーで治療済みの場合にMRIを受けるにはどうしたらいいの?

既に磁石アタッチメントデンチャーで治療されている患者さんはMRIを受けられないのかと言われればそうではありません。事前にMRI検査を受けることが判明していれば、歯科医院に来院し、ドクターにMRIを受けるとご相談いただければ大丈夫です。

その場合の必要な処置として、インプラント全部を外すのではなく、超小型磁石の付いたアバットメントと呼ばれる土台を外します。アバットメントを外したうえで病院へ行き、MRI検査直前に入れ歯を外していただくと、なんのトラブルもなくMRIを受けられます。

インプラントをされた方は一度、歯医者へ確認してくださるのがよりベストだと思われます。

MRIとはどのような検査ですか?

MRI(磁気共鳴画像診断法)の仕組み

MRIはエックス線は使用せずに、強い磁石と電磁波を使って体内の状態を断面像として描写して調べる検査です。

1. 強い磁場

MRIは強力な磁場を作り出します。これにより、体内の水分の中の小さな粒子が整列します。

2. ラジオ波を使う

磁石によって整列した粒子に、MRIはラジオ波を送ると、粒子が動きます。

3. 反応をキャッチ

ラジオ波を止めると、動いていた粒子が元の場所に戻ります。このときの反応をMRIがキャッチします。

4. 画像にする

キャッチした情報を使って、コンピュータが体の中の画像を作ります。

特徴

  • X線なし。放射線の心配なし。
  • 脳や筋肉の詳しい画像が得られる。

注意

  • 強い磁場のため、体内の金属はNG。

インプラント以外の金属製品の注意

インプラント自体は問題がないものの、他の金属製の補綴物(クラウンやブリッジなど)が影響を与える可能性もあります。特に、磁性を帯びた金属や古い素材で作られたものがある場合、事前に確認しておくことが望ましいです。

MRIで金属を外さなかったために事故が起こったという記事のご紹介

病院でMRI検査を受診する場合は、時計や金属類は必ず別室にて外さなければいけません。インドでの出来事ですが、金属を外さなかったことで痛ましい事故が起こった例をご紹介します。

この記事によると、親族の見舞いに訪れた男性が、「MRIの電源を落としているから酸素ボンベを運んでくれ」と病院職員に言われ運んだそうです。ただ、病院側の不手際により電源が落ちておらず強力な磁場が発生し、酸素ボンベが装置にぶつかり破損、男性はボンベから漏れた液体酸素を吸い込み死亡したそうです。酸素ボンベを何故見舞客が運ばなければならなかったのかという疑問は残りますが、そのような強力な磁場が発生するのです。

インプラントとMRIに関するQ&A

インプラント治療をした後でもMRI検査は可能ですか?

インプラントの素材は非磁性体のチタンでできているため、通常はMRI検査に影響を及ぼしません。

インプラント治療後にMRIが受けられないケースはありますか?

磁石を使用するタイプのインプラント治療を受けた場合、MRI検査を受ける前に特別な対策が必要となります。

磁石を使用したインプラント治療後にMRI検査を受ける際、どのような問題が生じる可能性がありますか?

MRI検査時に磁石がMRI装置に引き寄せられ、義歯が破損したり、発熱したりする可能性があります。

まとめ

今回は、インプラントとMRIの噂についてご説明しました。ただ、急にMRIを受けなければいけなくなった場合は、医師に磁性アタッチメントデンチャーをしているとしっかり申告をしてください。

患者様の意識がない状態等で緊急搬送されることも予想されます。その場合に備えて、磁性アタッチメントデンチャーを使っていることを家族などに伝えておくのも一つの手段です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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