
インプラントと入れ歯の違いがいまいち分かりにくいという方がおられます。治療方法や装着時の安定感、寿命の違いなどが挙げられます。
インプラントとは
パーツ名 | 説明 |
---|---|
インプラント体(フィクスチャー) | 顎の骨に埋め込む人工歯根(ネジ状)。チタン製が多く骨と結合します。 |
アバットメント | インプラント体と人工の歯(上部構造)をつなぐ中間パーツ。歯ぐきの上に出てきます。 |
上部構造(人工歯) | 見た目と機能を担う人工の歯。セラミックやジルコニアなどが使われ、天然歯に近い仕上がり。 |
インプラント手術の方法と流れ
では、インプラント手術の方法及び流れについて説明します。
① 初診・診断・治療計画の立案
レントゲンやCT撮影で顎骨の状態を確認し、全身状態や口腔内の健康をチェックします。
必要に応じて虫歯や歯周病の治療を先に行ったり、骨造成をすることがあります。
② インプラント埋入手術(1次手術)
局所麻酔をして、歯茎を切開し、顎の骨にインプラント体(人工歯根)を埋め込む手術を行います。
手術時間は1本あたり30分~1時間程度
③ 治癒期間(オッセオインテグレーション)
インプラント体が骨としっかり結合(オッセオインテグレーション)するまで待ちます。
上顎で約3〜6ヶ月、下顎で約2〜4ヶ月が目安で、この期間は仮歯で生活をする場合があります。
④ アバットメントの装着(2次手術)
インプラント体が骨と結合した後、歯ぐきを少し開いてアバットメントを取り付ける処置をします。
2次手術が不要な1回法の場合もあります。
⑤ 上部構造(人工歯)の作製・装着
型取りを行い、見た目や噛み合わせを考慮して人工歯を作製し、装着します。
セラミックが材料となり自然な色や形を再現します。
⑥ メンテナンス及び定期検診
上部構造を装着後も、歯科医院での定期的なチェックとプロによるクリーニングが重要です。
日常の歯磨きやケアも欠かせません。
入れ歯とは
入れ歯には部分入れ歯と総入れ歯の2種類があり、それぞれ構造が異なります。
種類 | 構造の主な要素 | 説明 |
---|---|---|
部分入れ歯 | 歯の代わりになる人工歯、歯ぐきにあたる床(しょう)、残存歯に引っ掛けるバネ(クラスプ) | 残っている歯を支えにして固定します |
総入れ歯 | 人工歯と床のみで構成 | 全ての歯を失った場合に使用。吸着力で歯ぐきにフィットさせます |
材質は保険適用ではプラスチックを材料として、自費では金属床やシリコン義歯など、より快適で目立ちにくいものも選べます。
入れ歯治療の基本的な流れ
では、入れ歯治療の基本的な流れについて説明します。
① 初診・カウンセリング・お口の検査
歯ぐきや残っている歯の状態、噛み合わせをチェックします。
虫歯や歯周病があれば先に治療し、必要に応じてレントゲン撮影なども実施します。
② 型取り
歯や歯ぐきの形を専用の材料で精密に採取する印象採得を行います。
噛み合わせの位置(咬合)も記録します。
③ 仮合わせ
試作品の入れ歯を作り、装着時のフィット感、噛み合わせ、見た目を確認する試適を行います。
問題があれば調整し、問題なければ最終的な入れ歯作製へ続きます。
④ 完成・装着
最終的な入れ歯を口の中に装着し、痛みや違和感がないか調整します。
慣れるまでは違和感や噛みにくさがありますが、数日~数週間で適応できます。
⑤ メンテナンス・調整
使用後も定期的に歯科医院でチェックが必要です。
入れ歯は歯ぐきが変化すると合わなくなるため、数年ごとに作り替えが必要になる場合もあります。
入れ歯治療は外科手術不要
基本的に入れ歯治療では手術は不要です。外科的な処置が必要になるのは、入れ歯ではなくインプラント治療です。ただし、入れ歯が安定しない場合にインプラントオーバーデンチャーという治療を併用することもあり、その際は手術を伴います。インプラントで入れ歯を支えます。
インプラントと入れ歯の違い7つ
インプラントと入れ歯の違うポイントを挙げていきます。
1. 治療方法の違い
インプラントは、歯を失った部分の顎の骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工歯を固定する外科手術が必要な治療法で、治癒期間を含めて数か月かかることがあります。
一方、入れ歯は歯ぐきや残っている歯に装着する取り外し可能な義歯で、部分入れ歯と総入れ歯があり、比較的短期間で作製、装着が可能です。
2. 装着時の安定感・噛む力の違い
インプラントは顎の骨にしっかり自立し固定されているため、天然歯に近い安定感と硬いものもしっかり噛む力が得られまです。
入れ歯は歯ぐきや残存歯に乗せて使うため、ズレや外れが起き、噛む力も弱く、特に総入れ歯では食事に不自由を感じる人も少なくありません。
3. 見た目・審美性の違い
インプラントは人工歯を直接固定し、色や形も周囲の歯と調和しやすく設計でき、自然な見た目となり、見た目にこだわる人にとって理想的です。
対して、入れ歯は設計次第で見た目を整えることもできますが、バネが見える部分入れ歯や、厚みや違和感のある見た目が気になる方もいます。
4. メンテナンスとケアの方法
インプラントは天然歯同様に毎日の歯磨きが必要で、定期的な歯科医院でのメンテナンスも欠かせず、清掃が不十分だとインプラント周囲炎のリスクがあります。
入れ歯は毎日取り外して洗浄する必要があり、就寝時には外すことをおすすめされています。落としたり変形させないよう注意も必要です。
5. 治療期間と費用の違い
インプラントは骨との結合(オッセオインテグレーション)に時間がかかるため、治療期間は数か月〜半年以上かかることがあります。また保険適用外の自由診療に該当し、1本あたり数十万円の費用がかかります。
一方、入れ歯は保険適用の範囲で作製できるため、費用を抑えられ、短期間で完成するのがメリットです。
6. 寿命・耐久性の違い
インプラントは適切なメンテナンスをすれば10〜15年以上使える長寿命の治療法ですが、メンテナンスを怠ると寿命が縮まることもあります。
対して、入れ歯は経年劣化や変形によって合わなくなることがあり、3〜7年ごとの作り直しや調整が必要です。
7. 誰に向いているか
インプラントは健康状態が良好で、顎の骨量が十分にある方に向いていますが、喫煙や糖尿病などの全身疾患がある場合は注意が必要です。
入れ歯は年齢や体調に関係なく行えるため、高齢者や外科手術が難しい方に適応しています。
まとめ
インプラント治療は計画的な再建治療、入れ歯は手軽に始めやすい選択肢と言えます。見た目・機能ともに優れた治療法ですが、手術や治癒期間、継続的なメンテナンスが必要です。入れ歯は、外科手術なしで治療可能で費用も抑えやすいですが、調整や作り替えを定期的に行わなければなりません。
失った歯の機能を補う手段として、ご自身の口腔状態やライフスタイルに合った入れ歯の種類を歯科医師と相談しながら選び、自分に合った治療計画を立てることが成功のカギとなります。