インプラント

インプラント長持ちの重要ポイント 周囲炎の予防と噛合の調整

インプラント長持ちの重要ポイント 歯周病予防と咬合の調整

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラントを長持ちさせるにはインプラント周囲炎(歯周病)にならないようにすることが大切ということは、よく言われています。

もう一つ重要なのが、噛み合わせの調整をするということです。噛み合わせが悪かったり歯ぎしり・食いしばりがあると、インプラントに横に揺れる力が加わってグラつくリスクがあります。インプラントを長もちさせるためのポイントについてご説明します。

 

インプラントを長もちさせるためのポイント

インプラントの平均寿命は10年~15年であるという説がある一方で、きちんとメンテナンスをすれば40年以上長もちするケースもあります。インプラントを長もちさせるためには、いくつかの重要なポイントがあります。主なものについてご説明します。

1. 定期的なメンテナンス

インプラントを長持ちさせるためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。歯科医院での定期健診を受け、インプラントの状態や口腔内の健康をチェックしてもらいましょう。特にインプラント周囲炎の早期発見・治療が重要です。メンテナンスの頻度は通常、3〜6ヶ月に1回が推奨されます。

2. 毎日のセルフケア

歯磨き

毎日のセルフケアは、インプラントの寿命を大きく左右します。毎日の歯磨きやフロスは欠かさず行い、特にインプラント周囲の清潔を保つことが大切です。インプラント専用の歯ブラシや歯間ブラシを使用すると、細かい部分まで清掃しやすくなります。

3. 噛み合わせの定期チェック

インプラントの噛み合わせが良くないと、過度な力がかかり、インプラントが損傷するリスクが高まります。定期的に歯科医師に噛み合わせをチェックしてもらい、必要に応じて調整を受けることで、インプラントへの負担を軽減できます。

4. 禁煙の実践

喫煙はインプラントの成功率を下げるだけでなく、長期的にインプラントを維持する上でも大きなリスクとなります。喫煙は歯茎の血流を悪化させ、インプラント周囲炎のリスクを高めるため、インプラントを長持ちさせるためには禁煙が強く推奨されます。

5. 適度な食事管理

硬すぎる食べ物や極端に粘着性のある食べ物は、インプラントに過剰な負担をかける可能性があります。インプラントを守るためには、日常の食事においても適度に注意し、特にインプラントを装着して間もない時期は、柔らかい食べ物を選ぶと良いでしょう。

6. 全身の健康管理

インプラントを長持ちさせるためには、全身の健康も重要です。特に糖尿病や骨粗鬆症などの全身疾患は、インプラントの寿命に影響を与える可能性があります。これらの疾患がある場合は、適切な管理を行い、歯科医師と連携してインプラントのケアを続けることが大切です。

7. ストレス管理

過度なストレスは、無意識のうちに歯ぎしりや食いしばりを引き起こし、インプラントに過剰な力をかけることがあります。歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合は、ナイトガードと呼ばれるマウスピースの使用を検討し、ストレス管理にも努めましょう。

8. 歯科医院での定期的なクリーニング

メンテナンス

歯科医院での専門的なクリーニングは、インプラント周囲のプラークや歯石を徹底的に除去し、インプラントの健康を維持するために重要です。自宅でのケアだけでは不十分な部分を補うため、定期的に歯科医院でのクリーニングを受けることが推奨されます。

3ヶ月に1回程度の頻度で、定期的に歯医者に通ってプロによる歯のクリーニングを受けると、お口の隅々まで清掃することが出来ますので歯周病のリスクが減ります。歯面をツルツルに磨き上げますので、歯垢がつきにくくなり、新しく歯石が出来るのを防ぎます。既に軽度の歯肉炎を起こしている場合も、改善させることが可能です。

インプラント周囲炎を防ぐためにも、セルフケアに加えてプロのメンテナンスを受けるようにしましょう。インプラント周囲炎はある程度進行するまでは自覚症状がなく、ご自分では気づきにくいですが、歯科医師や歯科衛生士がプロの目で見ると歯肉の僅かな腫れも見逃さずにチェックでき、トラブルになる前に対応することが可能ですので、ご安心ください。

これらのポイントを守ることで、インプラントを長持ちさせ、快適な生活を維持することができます。長期的な視点でインプラントを管理し、トラブルを未然に防ぐことが大切です。

噛み合わせが悪いとインプラント周囲炎になりやすい

入れ歯の痛み

インプラントを長く使うためには噛み合わせの調整が大切です。噛み合わせが悪いと全ての歯で均等な力で噛むことが出来ず、歯の一部分にだけ強い力が加わることになります。

上下の歯の角と角が噛み合わずにいびつにぶつかり合い、ものを噛むとその一点に体重の5倍もの力がかかります。そのため被せたもの(上部構造)に負担がかかり、インプラントがグラグラしてきてやがて抜けてしまうこともあります。

そもそも歯を失ってしまった原因は歯周病だった方もおられるでしょう。歯周病になる原因は歯周病を引き起こす細菌に感染するからだと一般的に言われていますが、噛み合わせの悪さからも歯周病が引き起こされます。

噛み合わせが悪いと一部の歯に無理な力がかかり続けて、歯の根が傷んで歯周病になってしまうのです。インプラントの周囲の歯肉が歯周病になることを、インプラント周囲炎と呼びます。その症状は歯周病とほぼ同じ経過をたどり、悪化するとインプラントが抜けてしまいます。

噛み合わせの悪さから歯周病になって歯が抜けてしまい、インプラント治療を受けて咬合を回復させても、根本的な問題である噛み合わせの悪さは解決していません。結果的に、無理な力がかかり、歯の根が傷んでインプラント周囲炎になってしまうこともあるのです。

噛み合わせが悪いと咬合崩壊を起こすこともある

歯の模型

全ての歯は隣の歯とぴったりと並んで支え合っています。歯を1本失うと、そのすき間を埋めるために隣の歯の生えている角度が変わり、更にその隣の歯の角度が変わり、と順々に歯が僅かずつ動いていきます。

そして1本の歯を失ったために歯並びが悪くなり、奥歯が噛み合う位置が変わってしまって噛み合わせが狂ってきます。歯の一点に力がかかり続けると、歯の根が傷んで、また歯を失うということが起こります。

歯を失う連鎖がどんどん起こり、咬合のバランスが崩れて噛み合う歯がなくなっていくことを咬合崩壊といい、そのまま治療しなければほぼすべての歯を失うこともあります。

歯と歯根は上下合わせて28本あります。本来は28本の歯根全体を使って噛む力を分担するように出来ているのですが、歯を失って歯根の数が少なくなったり、噛み合わせがずれていたりすると、噛む時に歯1本にかかる負担が大きくなって歯の亀裂や破損、知覚過敏などを引き起こします。

インプラントで咬合崩壊を防ぐには

歯と歯茎

インプラントは入れ歯やブリッジと違って人工歯根があるから、咬合崩壊を起こさないのでしょうか?実はそうとも言い切れないのです。

失った歯をインプラントで補った後も、お口の中には治療をしていない天然の歯や、金や銀やプラスチック、セラミックなどの様々な詰め物・被せ物が存在しています。

それらは一つひとつの硬さが違いますので、物を食べた時の歯のすり減り方がそれぞれ違います。つまり、インプラント治療によって理想的な噛み合わせを作ったとしても、噛みしめの癖がある場合には歯のすり減り方が大きく変わってきて、噛み合わせが崩れるスピードが速いということになります。

そのため、やはり大切なのは歯ぎしり、噛みしめなどの癖を治すことと、少しでも噛みしめから歯を守るために、ナイトガードを使用することが必要になります。

それが天然の歯や被せ物をした歯、そしてインプラントの上部構造を守ることになり、インプラントの長もちに繋がっていきます。

【動画】インプラントの寿命について

クローバー歯科総院長の松本正洋がインプラントの寿命について解説。

インプラント長持ちの重要ポイントに関するQ&A

インプラントを長持ちさせるためにどのようなポイントがありますか?

インプラントを長持ちさせるためには、毎日のセルフケア、歯科医院でのメンテナンス、骨を強くする生活、喫煙しないこと、咬合の調整、一流メーカーのインプラントを選ぶことが重要です。

インプラントの寿命はどのくらいですか?

インプラントの平均寿命は10年~15年とされていますが、メンテナンスが適切であれば40年以上も保つことがあります。

インプラントの寿命を延ばすために咬合崩壊を防ぐ方法はありますか?

咬合崩壊を防ぐためには、噛みしめや歯ぎしりの癖を治すことが重要です。また、ナイトガードの使用も噛み合わせから歯を守るために役立ちます。これによって天然の歯や被せ物とともにインプラントも長もちさせることが可能です。

まとめ

インプラントは高額な治療なので、出来るだけ長もちさせたいものです。咬合崩壊を防ぐためには、インプラント治療をして人工歯根を入れるだけでなく、噛みしめ癖のある方はナイトガードを使って噛み合わせが崩れないようにしましょう。

また、せっかく入れたインプラントがだめになって後悔しないためには、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けると共に、噛み合わせの調整を受けることをおすすめします。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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