インプラント治療前・治療後の疑問

インプラントを長もちさせるためのケアの仕方を教えて

インプラントを長もちさせるためのケアの仕方を教えて

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラント治療が終わったら、インプラントを長持ちさせるためのケアを続けていかなければなりません。それには歯科医院での「定期健診」とご家庭での「セルフケア」が重要です。どのようにすればよいのかをご説明します。

インプラントを長もちさせるためのケアについて

インプラントは、適切なケアを行うことで長期間にわたり機能し続けることが可能です。しかし、天然歯と同様に、日常のケアや定期的なメンテナンスが不十分であると、インプラント周囲炎(インプラントを支える骨や歯茎が炎症を起こす状態)などのトラブルが発生し、最悪の場合インプラントが失われる可能性もあります。したがって、インプラントを長もちさせるためには、日々の適切なケアが欠かせません。

1. 毎日の口腔ケア

インプラントを長もちさせるためには、以下のような日常的な口腔ケアが重要です。

丁寧な歯磨き

インプラントの周囲に歯垢がたまると、インプラント周囲炎の原因になります。通常の歯ブラシを用いた丁寧なブラッシングを行い、特にインプラントと歯茎の境目をしっかりと磨くことが大切です。

フロスや歯間ブラシの使用

インプラントの周りには、食べ物のカスや歯垢がたまりやすい部分があります。歯ブラシだけでは取り切れない部分をケアするために、デンタルフロスや歯間ブラシを使用して、隙間の汚れをしっかりと取り除きます。

抗菌性のマウスウォッシュの使用

抗菌性のマウスウォッシュを使用することで、口腔内の細菌を減らし、インプラント周囲の健康を保つ手助けをします。特に、歯茎の状態が気になる場合には有効です。

2. 定期的な歯科健診

インプラントを長もちさせるためには、定期的な歯科健診が不可欠です。

歯科医院で受けるクリーニング

歯科医院でのプロフェッショナルクリーニングにより、家庭でのケアでは取り除けない歯石や歯垢を除去します。特にインプラント周囲は、定期的なクリーニングで健康を維持することが重要です。

インプラント周囲のチェック

歯科医師によるインプラント周囲の健康状態の確認は、早期に問題を発見し、対処するために重要です。歯茎の炎症や骨の吸収が進行する前に対策を講じることができます。

3. 健康的な生活習慣の維持

インプラントの健康を保つためには、全身の健康管理も大切です。

禁煙

喫煙は、インプラント周囲炎のリスクを高める要因の一つです。タバコの煙に含まれる有害物質が、歯茎や骨の健康を損ない、インプラントの安定性を低下させます。インプラントの長期的な維持を考えるなら、禁煙は非常に重要です。

バランスの取れた食事

骨や歯茎の健康を支えるために、カルシウムやビタミンDを豊富に含む食事を摂取することが推奨されます。これにより、インプラント周囲の骨密度を維持し、安定性を保つことができます。

ストレス管理

高いストレスは、免疫力の低下を引き起こし、口腔内の健康にも悪影響を与える可能性があります。適度な運動やリラクゼーションを取り入れて、ストレスを管理することも、インプラントを長もちさせるための一環です。

4. 咬合(噛み合わせ)のチェック

インプラントが正しい位置に装着されていても、噛み合わせが悪いと負担がかかり、インプラントの寿命を縮める可能性があります。

咬合調整

インプラントを埋入した後も、歯科医師による定期的な噛み合わせのチェックが必要です。噛み合わせが悪い場合は、調整を行い、インプラントに過度の力がかからないようにします。

 

 

 

インプラント長持ちのためには定期健診+自宅でのケア

インプラント長持ちのために定期健診+自宅でのケア

インプラント周囲炎にならないためには、歯科医院での定期検診とご自宅での丁寧なセルフケアが欠かせません。定期健診ではインプラント周囲の歯茎の状態、インプラント体の緩みなどをチェックし、お口全体の状態もチェック(歯周病検査)して、その後クリーニングを行います。

ご自宅でのセルフケアは毎日の歯磨きが基本になります。この点も天然歯のための歯周病予防と同じです。歯周病で気を付けなければならないのは歯と歯茎の境目(歯周ポケット)にたまった歯垢ですが、インプラントの場合も同じで、インプラントと歯茎の境目は炎症を起こしやすい場所ですので汚れをしっかりと落とします。

歯ブラシだけではお口全体の歯垢の6割程度しか落とせませんので、歯間ブラシやデンタルフロス(糸ようじ)も用いて歯と歯の間、歯と歯茎の間をしっかりお掃除します。しっかり磨いているつもりでも、歯垢が残ってしまっている箇所は、定期健診の際に染め出し液を使ったり、歯科衛生士が目視でチェックしますので、セルフケアの方法を工夫して、磨き残しが減るように改善していきましょう。

歯のケアグッズ

インプラント周囲炎は細菌による感染症ですので、他の歯が虫歯や歯周病にならないように常にお口の中をきれいにしておかなければなりません。お口の中から虫歯菌や歯周病菌だけを殺菌することは出来ませんので、虫歯や歯周病を予防するためには、お口全体の菌を減らすことが大切です。特に歯垢がたまりやすい歯と歯の間や、歯と歯茎の間の溝の部分をきれいにすることが、インプラントや残った歯の長持ちに繋がります。

インプラントを長持ちさせるための生活習慣の改善

インプラントを長持ちさせるための生活習慣の改善

近年、歯周病と糖尿病などの全身疾患に相互関係があることがわかってきました。歯周病予防が糖尿病の発病や悪化を抑制し、逆に糖尿病が改善すると同時に歯周病も改善するというものです。歯周病とインプラント周囲炎はよく似ていますので、全身疾患を悪化させないためにも口腔内をきれいにし、規則正しい食生活を心がけましょう。

また喫煙習慣のある方は、インプラント治療を機にぜひ禁煙することをおすすめします。たばこの煙に含まれるニコチンやタールなどの有害物質は、血管を収縮させ、歯茎に十分な血液がいき渡ることを阻害します。

そのため、ヘビースモーカーの方がインプラント治療をされる場合には、手術後の傷の治りが遅かったり、インプラントと骨の結合が十分に行われないなど、インプラント治療の成功率が多少落ちることもあります。

インプラントを長く良い状態で維持していくためには生活習慣の見直しを行いましょう。

インプラント周囲炎を防ぐことが一番重要

インプラント周囲炎

インプラント体自体はチタンで出来ているため半永久的にもち、変質したり腐食したりする心配はありません。しかし歯磨きなどのケアが十分でないとインプラントと歯茎の間から細菌が侵入して、インプラント周囲の粘膜が炎症を起こし、悪化するとインプラントが骨から抜けてしまいます。

この場合の症状は歯周病と似ており、インプラント周囲炎と呼ばれています。インプラント周囲炎によってインプラントの周囲の歯茎の炎症がどんどんひどくなると、やがて炎症は骨にまで広がり、インプラントを支えている歯槽骨が溶けて歯茎が下がり、インプラント体が歯茎の上に露出して、その後はインプラントがぐらぐらになって抜けてしまうという最悪のコースをたどります。

それを食い止めるために、インプラント治療後はケアをしっかり行っていく必要があります。

【動画】インプラントの寿命について

クローバー歯科総院長の松本正洋がインプラントの寿命について解説。

インプラントを長もちさせるためのケアの仕方に関するQ&A

インプラント周囲炎を防ぐためにどのようなケアが重要ですか?

インプラント周囲炎を防ぐためには、歯科医院での定期検診と自宅での丁寧なセルフケアが欠かせません。歯垢をしっかり落とすために歯磨きと歯間ブラシ・デンタルフロスの使用が重要です。

インプラントの寿命を延ばすための定期健診の頻度はどれくらいですか?

インプラントの寿命を延ばすためには、歯科医院での定期健診は半年に1回以上が推奨されます。3ヶ月毎に定期健診を受けていただくと、歯についた歯垢を除去し、歯石が出来る前にクリーニングできれいにすることが出来ます。定期的な健診でインプラント周囲の状態を確認し、早期に異常があれば対応できます。

インプラントの長持ちを促すための生活習慣の改善にはどのような点が重要ですか?

インプラントの長持ちを促すためには、口腔内の清潔を保つことが重要です。定期的な歯科健診や歯科医院でのクリーニングを受けると共に、規則正しい食生活を心がけ、喫煙を避けることが大切です。

まとめ

インプラントを長もちさせるためのポイント

インプラントの寿命を長く保つためのケアの方法をご説明しました。歯科医院での定期健診と毎日のお口の中のケアはインプラントを長持ちさせるために欠かせないものですが、生活習慣を見直して全身の健康管理もぜひ行ってください。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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