インプラント治療前・治療後の疑問

インプラント周囲炎の初期症状とは?

インプラント周囲炎の初期症状とは?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

気づかないうちに進行するトラブル、見逃していませんか?

インプラント周囲炎の初期症状は、最初は軽い「腫れ」や「出血」から始まり、痛みもなく静かに進行することが多いのが特徴です。気づかず放置すると、せっかく入れたインプラントが脱落してしまうこともあります。

この記事はこんな方に向いています

  • インプラント治療を受けたばかりで不安がある方
  • インプラント周囲に「違和感」や「歯ぐきの赤み」が出てきた方
  • インプラントを長持ちさせたいと考えている方
  • 定期健診を忘れがちな方

 この記事を読むとわかること

  1. インプラント周囲炎の初期症状の見分け方
  2. 周囲炎が進行するリスクと原因
  3. 早期発見・早期対処のために日常で気をつけるポイント
  4. 歯科医院でのチェックとメンテナンスの重要性

インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎

インプラント周囲粘膜炎

インプラント周囲粘膜炎は、インプラント周囲の歯茎のみで炎症が起こる初期段階の状態です。この段階では、炎症が歯茎に限定されており、骨の損失はまだ発生していません。早期に発見し、適切に対処することで完全に治癒する可能性が高いです。

主な症状は以下の通りです。

  • 歯茎の赤み
  • 歯茎の腫れ
  • 歯茎からの出血

インプラント周囲炎

インプラント周囲炎は、インプラント周囲の歯茎だけでなく、骨にまで炎症が進行した状態を指します。この段階では、骨の損失が進行しており、インプラントの安定性が脅かされます。放置すると、最終的には脱落に至る可能性があります。

主な症状は以下の通りです。

  • 歯茎の赤みと腫れ
  • 出血
  • インプラント周囲の膿
  • 口臭の悪化
  • 骨の損失

インプラント周囲炎の初期症状

インプラント周囲炎

初期症状を早期に発見することで、適切な治療と予防が可能となります。以下に代表的な初期症状を紹介します。

1. 歯茎の赤みと腫れ

インプラント周囲の歯茎が赤くなり、腫れを感じることがあります。これは炎症のサインであり、早期に気付くことで進行を防ぐことができます。

  • 歯茎の色が普段よりも赤くなる
  • 歯茎が腫れて痛みを感じることがある

2. 出血

ブラッシングやフロスを使用した際に出血する場合、これはインプラント周囲の炎症を示唆している可能性があります。出血は炎症の初期段階で見られることが多いです。

  • 歯磨き時に血が出る
  • デンタルフロス使用時に出血する

3. 軽い痛みや不快感

初期の周囲炎では、強い痛みは感じないことが多いですが、軽い痛みや不快感を覚えることがあります。特に食事中や触ったときに違和感を感じる場合は注意が必要です。

  • 軽い痛みを感じる
  • 触ると違和感がある

4. インプラント周囲の膿

インプラント周囲に膿が溜まることは、感染の兆候です。膿が見られる場合は、早急に歯科医の診察を受けることが重要です。

  • 歯茎から膿が出る
  • インプラント周囲に膿のようなものが見られる

5. 口臭の悪化

進行すると、口臭が悪化することがあります。これは感染や膿によるものです。口臭が普段よりも強く感じられる場合は、インプラント周囲炎の可能性があります。

  • 口臭が強くなる
  • 普段と違う臭いがする

インプラント周囲炎が発生する原因

周囲炎は、主に細菌感染によって引き起こされます。インプラントの表面に歯垢や歯石が溜まり、それが炎症を引き起こします。以下の要因が周囲炎のリスクを高めます。

  • 口腔衛生の不良・・適切な歯磨きやフロスの使用が行われないと、歯垢や歯石が蓄積しやすくなります。
  • 喫煙・・喫煙は血流を悪化させ、免疫機能を低下させるため、感染症にかかりやすくなります。
  • 糖尿病・・糖尿病患者は感染症にかかりやすく、周囲炎のリスクが高まります。
  • 不適切な手術・・手術が適切に行われなかった場合、インプラントと骨の結合が不十分になり、炎症を引き起こしやすくなります。

インプラント周囲炎の予防法

予防するためには、以下の方法を実践することが重要です。

  • 定期的な歯科健診・・定期的に歯科医を訪れ、チェックしてもらう。
  • 適切な口腔ケア・・毎日の歯磨きとフロスを欠かさず行う。
  • 禁煙・・喫煙を避けることで、歯茎の健康を保つ。
  • 健康的な食生活・・栄養バランスの取れた食事を心掛ける。

インプラント周囲炎の早期発見の重要性

早期発見は、治療の成功率を高めるために大切です。初期症状を見逃さず、早期に対処することで、インプラントの寿命を延ばすことができます。特に以下の点に注意することが必要です。

  • 日常的なチェック・・インプラント周囲の歯茎や口臭に異常を感じたら、すぐに歯科医に相談する。
  • プロのケア・・定期的に歯科クリーニングを受けることで、インプラント周囲の清潔を保つ。

ケースで学ぶ こんな症状見逃していませんか?

インプラント周囲炎は、目に見える大きな変化がないまま進行するケースも少なくありません。実際にあったケースをもとに、どのように症状が現れるのかを見てみましょう。

ケース① 歯磨きのときに少しだけ出血。でも痛みはなし

50代男性・インプラント治療から半年後

「歯磨きの時にちょっと血が出るけど、痛くないし大丈夫だと思っていた」と話されていましたが、診察の結果、インプラント周囲に軽度の炎症が見つかり、初期の周囲炎と診断されました。

ケース②歯ぐきが腫れていたけど、1〜2日で引いたから放置

60代女性・メンテナンス未受診歴あり

「なんとなく腫れた気がするけど、すぐ引いたから問題ないと思ってた」とのこと。ところがレントゲン検査では、骨吸収が進行していることが判明。すでに中等度の周囲炎に…。

これらの症例からわかるのは、「痛みがない=問題ない」ではないということです。小さなサインでも見逃さないことが重要です。

インプラント周囲炎の初期症状セルフチェックリスト

次の項目の中で、あなたに当てはまるものはいくつありますか?

当てはまる数が多いほど、周囲炎の可能性があるため注意が必要です。

□ 歯茎が赤く腫れている気がする

 → インプラントの周囲が炎症を起こしている可能性があります。

□ 歯磨き時にインプラントの周りから出血する

 → 出血は初期の炎症のサインです。力の入れすぎでなくても出る場合は要注意です。

□ インプラントのあたりに軽い痛みや違和感がある

 → 違和感は炎症による圧迫や腫れによるものかもしれません。

□ 口臭が気になるようになった

 → 歯垢や膿がたまることで臭いが発生している可能性があります。

□ インプラントの周囲にネバつきや粘つきがある

 → 細菌が繁殖しているサインかもしれません。

□ 最近、インプラントの周囲の歯茎が下がってきた気がする

 → 骨の吸収が始まっている可能性があります。見た目の変化にも注意しましょう。

判定の目安

  • 0〜1個 → 現時点でのリスクは低いですが、引き続き丁寧な歯磨きと定期健診を心がけましょう。
  • 2〜3個 → 注意が必要です。早めに歯科医院でチェックを受けることをおすすめします。
  • 4個以上 → 周囲炎が進行している可能性があります。できるだけ早く受診してください。

よくある誤解「人工の歯だから虫歯にも歯周病にもならない」?

インプラントは人工物なので、確かに虫歯にはなりません。しかし、歯周病のようなトラブル(=インプラント周囲炎)にはなるのです。

そして周囲炎のやっかいな点は、一度骨が溶けると再生が難しいということ。

  • 自然の歯 → ある程度は歯周病でも保存が可能なケースあり
  • インプラント → ぐらつきが出ると再手術・撤去が必要になることも

こうした違いを理解して、毎日のセルフケア+定期的なプロケアを心がけましょう。

まとめ

インプラント周囲炎の初期症状は、歯茎の赤みや腫れ、出血、軽い痛みや不快感、膿、口臭の悪化などです。これらの症状を見逃さず、早期に対処することが大切です。

予防策としては、適切な口腔ケア、定期的な歯科健診、禁煙、健康的な食生活、ストレス管理が重要です。インプラント周囲炎のリスクを軽減することは、インプラントの寿命に直結しますので、長期間にわたり健康なインプラントを維持するために、これらのポイントを心掛けましょう。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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