
インプラントはどのくらいもつのか、その寿命が気になる方も多いでしょう。今日は、インプラント治療がどのくらいの期間もつものか、また、長持ちさせる方法はないのか等詳しくご紹介いたします。
目次
他の義歯治療とインプラント
虫歯や歯周病、事故や転倒による外傷で歯を失った方に歯科医師が行うのが義歯治療です。義歯治療には、ブリッジ・入れ歯・インプラントの三種類があります。
他の義歯治療とインプラントを比べる
ブリッジや入れ歯は保険適用内の治療が可能なため、費用を安くすることが可能です。入れ歯は欠損部分の隣の歯に金属のバネをかけたり、ブリッジは欠損部分を支えるために両隣の歯を削って被せるデメリットがあります。そのため、いずれの治療法も咬合時に欠損部分の隣の歯に負担がかかるため、残存歯の健康を脅かす可能性があります。 それに比べてインプラントは、保険適用外の治療対象となるため自由診療制となり、歯科医院により料金が異なるため、費用は高いです。ただし、インプラントは手術により人工歯根を埋入し自立しているため、他の残存歯に悪い影響を及ぼすことがありません。自費治療であるので保険適用内の限定された材料ではなく、審美性が高い素材を使用できます。天然歯と比べても見た目の差がないような緻密な人工歯を作製することが可能です。
インプラントの構造
簡単にインプラントの構造についてご説明します。
顎骨に埋め込むインプラント体(フィクスチャー・人工歯根とも呼ぶ)
生体親和性の高いチタンが多いが、金属アレルギーの方のためにジルコニアを素材にすることもある
インプラント体に連結し、人工歯とつなぐ役割のアバットメント
生体親和性の高いチタンを素材とすることが多いが、チタン合金・金・セラミックを使用することもある
歯としての見た目になる上部構造(人工歯)
- オールセラミック(前歯に向く美しさがあるが、強い力がかかると割れる可能性がある)
- ジルコニアセラミック(奥歯で噛み合わせても問題ない強度だが、透明度にかけるためオールセラミックより審美性は低い)
- ハイブリッドセラミック(歯科用プラスチックとセラミックを混ぜた材料なので値段は安いが、ジルコニアセラミックやオールセラミックより審美性に欠ける)
保険適用内のプラスチック製の入れ歯の寿命は約4~5年・金属製の入れ歯ならば約5年程度 ブリッジの寿命は約7~8年程度
インプラントの治療の流れ
義歯治療の中からインプラントを行う際に、クリニックではカウンセリングや精密検査を行い、顎の骨(顎骨)の量や厚み、高さを確認します。それに加えてあごの骨の質などに問題がなければ、一回法と呼ばれるインプラント治療法が可能ですが、基本的には骨が足らない方が多く、インプラントは二回法で行うことが多いです。
- 麻酔を行い、歯肉を切開する
- あごの骨に穴を開け、人工歯根(インプラント体)を埋入する
- 骨と人工歯根が結合するまで期間を置き、待つ
- 結合しているとドクターが検査などで確認をする
- ドクターが再度歯肉を切開し、インプラントの頭出しを行う
- アバットメントをインプラントの頭に連結させる
- 白いキャップをかぶせて、歯茎とインプラントが安定するまで待つ
- 最終的な上部構造の型どりを行う
- 歯科技工士により上部構造の歯の作製を行う
- 人工歯をセットし、噛み合わせの高さを確認する
- スクリュー型か、セメント型で定着し完成
ただし、すべての手術を終えたら、インプラントは終わりというわけではありません。
どのくらいもつのか知りたい
インプラントの寿命は、平均的に約10~15年前後と言われています。
- インプラントを入れた部分が噛んだ時に不安定
- インプラントが脱落してしまう
- 顎骨とインプラント体が外れた
このようなトラブルが生じると、インプラントの再建が必要となります。
下記の習慣がある方は要注意
再びインプラントの手術や費用をすることになれば、心身共に負担が増えてしまいます。インプラントの手術後に下記のような問題があるケースは、改善が必要です。
喫煙の習慣をやめられない
タバコにはインプラントだけではなく、血流を阻害し、口腔内の唾液を減らすニコチンやタールが含有されています。インプラント体を骨に埋める時のみ禁煙をし、インプラント手術が終わってからまたタバコを吸っているという方がおられれば、禁煙をおすすめします。タバコにより血液の流れが悪くなると歯茎に栄養や酸素が行き渡らなくなり、自浄作用のある唾液の分泌が減るとインプラント周囲炎になるリスクが上がるという理由からです。
噛み合わせに違和感がある
インプラント処置の際にしっかり噛み合わせを歯科医師に確認してもらっても、インプラントと対合歯の噛み合わせが合わなくなるということは考えられます。咬む時に片側ばかり咬む・うつ伏せに寝る・頬杖などの日常の習慣でずれてしまいます。インプラントは骨に埋入しているため、力がかかってしまい、痛みを覚え、動揺や脱落を起こすという可能性があります。
歯ぎしりや食いしばりをしている
一般的に歯ぎしりや食いしばりの癖を、ストレスなどが原因で日常的に行う方は意外と多くおられます。睡眠時に歯ぎしりや食いしばりというブラキシズム(上下の歯が無意識のうちに異常な噛みしめや噛む機能を行う状態)に急になったという方もおられるでしょう。インプラントに日常的に強い力がかかってしまうと、骨とインプラント体の動揺を起こす可能性がありますのでブラキシズムの自覚があれば、早めにガード用のマウスピースの使用をおすすめします。
糖尿病や骨粗しょう症・高血圧などになった
インプラント埋入時にはこのような全身疾患になっていなくても、その後疾患になる方もおられます。その場合、免疫力が低下するため、インプラント周囲炎を起こす可能性が、通常の方と比べて高くなります。
インプラント周囲炎を引き起こした
インプラント治療後に最も気を付けなければいけない病気です。天然歯の方が歯周病になり悪化すると、歯が抜けてしまうのと同様で、インプラント周囲炎はインプラントの周囲で歯周病が起こる状態とお考えください。歯垢(プラーク)や食べかすを歯磨きで除去できず、インプラント周囲の歯茎で細菌感染し炎症が起きます。インプラントの周囲で炎症が悪化すると動揺し脱落してしまいます。
インプラントを長持ちさせる方法
インプラントは適切な処置を定期的に受け、きちんと口腔内の状態を管理できれば、10年と言わず更に長く保つことができる可能性があります。
正しく歯磨きをする
しっかりと磨けていればインプラント周囲炎にはなりません。ただ、歯ブラシでの磨き方に癖がついている方も多いです。
- 舌側部分(歯の裏側)の奥歯が磨けていない
- 頬側(歯の表側)の奥歯が磨きが足りず、歯垢が残っている
歯科医院で患者様ご自身の歯みがきの癖を知ることはとても大切なことです。
定期通院でメインテナンスを受診する
天然歯でも健康状態を維持するために痛みや腫れがある前に予防歯科へ行くことが大事です。インプラントも同じと言えます。
- インプラントや歯肉に異常がないか
- 噛み合わせが合っているか
- 歯石や歯垢を除去するクリーニングを歯科衛生士にしてもらう
- 歯磨き指導を受ける
メインテナンスを定期通院で受診すると、インプラントの動揺や脱落を防止することができます。
インプラントの寿命に関するQ&A
インプラントの寿命を延ばすためには、正しい歯磨きを行い、定期的なメインテナンスを受けることが重要です。また、口腔内の健康状態を管理するために定期的な通院が必要です。
インプラントの手術後に注意すべき習慣としては、喫煙、噛み合わせの違和感、歯ぎしりや食いしばり、全身疾患(糖尿病や骨粗しょう症、高血圧など)へのなり方、およびインプラント周囲炎の発生が挙げられます。
インプラントが不安定になったり脱落したりした場合は、再建手術が必要になることがあります。
インプラント周囲炎を起こす原因としては、歯垢や食べかすの不十分な除去、喫煙、不適切な歯磨きなどが挙げられます。
正しい歯磨きの方法としては、全ての歯の表側と舌側をしっかりと磨くこと、歯間ブラシやフロスを使用して歯の間も清掃すること、歯科医院での歯磨き指導を受けることが重要です。
まとめ
インプラントは決して安い費用ではありません。インプラントを検討される場合は、「事故などなく症例数豊富な安全な医院か」「安心して治療をお任せできるドクターやスタッフであるか」など費用や治療計画以外にも大事なポイントがいくつかあります。 カウンセリングを行っている医院も多いので(当院は予約制で無料です)、一度お気軽にご相談ください。