インプラント治療前・治療後の疑問

血液サラサラの薬を飲んでいてもインプラント治療はできる?影響と注意点を解説

血液サラサラの薬を飲んでいてもインプラント治療はできる?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

血液サラサラの薬を飲んでいるとインプラントに影響ある?

影響はあるが、歯科医師と医科の連携を行えば多くの場合でインプラント治療は可能です。

抗凝固薬や抗血小板薬は、脳梗塞や心筋梗塞などの予防に欠かせない薬です。しかしインプラントのような外科手術を伴う治療では、出血が止まりにくいといったリスクがあります。そのため服用状況を正確に伝え、適切に対応することが大切です。

この記事はこんな方に向いています

  • 血液サラサラの薬を飲んでいるが、インプラント治療を検討している方
  • 出血のリスクと手術の安全性について不安を感じている方
  • 歯科と内科でどのように情報共有が行われるのか知りたい方

この記事を読むとわかること

  1. 血液サラサラの薬がインプラントにどんな影響を与えるのか
  2. 出血のリスクを抑えるためにどんな準備が必要か
  3. 内科医と歯科医の連携の重要性
  4. 薬を自己判断で中止してはいけない理由
  5. 治療前後に患者さんができる工夫

 

インプラントと血液サラサラの薬は両立できるの?

血液サラサラの薬を服用している患者さんでも、多くの場合インプラント治療は可能です。ただし、薬の種類や体調、持病によって対応が異なるため、歯科医師が医科と連携して治療計画を立てることが欠かせません。大切なのは、服用状況を隠さずに正確に伝えることです。

薬を飲んでいてもインプラントは可能。ただし歯科と医科の連携が必須です。

インプラント治療は顎の骨に人工歯根を埋め込む手術です。血液サラサラの薬を服用していると、通常より出血が長引く可能性があります。しかし薬の服用を中止すると、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まるため、歯科医師が勝手に中止を指示することはありません。多くのケースでは、薬を続けながら安全にインプラント治療を行う方法が検討されます。

なぜ血液サラサラの薬はインプラント治療に影響するの?

抗凝固薬や抗血小板薬は血液を固まりにくくする作用があります。そのため出血が止まりにくくなり、インプラント手術の際にリスクが高まります。ただし、近年は薬を継続したまま手術を行う方が安全とされるケースが増えています。

薬の作用で出血が止まりにくくなるため影響があります。

血液サラサラの薬は、血液中の血小板の働きを抑えたり、血液凝固因子を阻害したりすることで血液が固まりにくくなります。その結果、インプラント手術中や術後に出血が長引く可能性があります。しかし逆に薬を中止してしまうと血栓ができやすくなり、命に関わる合併症を引き起こす危険があります。そのため、「薬による出血リスク」と「薬をやめることによる血栓リスク」の両方を考慮し、適切なバランスを取ることが重要です。

どんな薬がリスクと関係しているの?

インプラント治療に影響を与える血液サラサラの薬には、ワルファリン、DOAC(直接経口抗凝固薬)、アスピリン、クロピドグレルなどがあります。それぞれ作用の仕組みやリスクの程度が異なるため、薬の種類を正確に伝えることが不可欠です。

主な薬はワーファリン、DOAC、アスピリンなどです。

血液サラサラの薬は大きく分けて以下の種類があります。

抗凝固薬

  • ワーファリン
  • DOAC(プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナなど)

血液の凝固を阻害し、血栓形成を防ぎます。

抗血小板薬

  • アスピリン
  • クロピドグレル(プラビックス)
  • シロスタゾールなど

血小板の働きを抑え、血の塊ができにくくします。

薬の分類 主な薬剤名 作用の仕組み インプラント治療での注意点
抗凝固薬 ワルファリン、DOAC(プラザキサ・イグザレルト・エリキュース・リクシアナなど) 血液の凝固を阻害し、血栓ができにくくする 出血が長引くリスクがある。術前に採血検査(PT-INRなど)を行うことが多い
抗血小板薬 アスピリン、クロピドグレル(プラビックス)、シロスタゾールなど 血小板の働きを抑え、血の塊を作りにくくする 歯科治療中に出血が止まりにくい場合があるが、休薬は必ず内科医の判断が必要
併用療法 抗凝固薬+抗血小板薬 二重に血栓を予防 出血リスクがさらに高いため、歯科と内科の密な連携が必須

これらの薬はどれも命に関わる病気の予防に使われる大切な薬です。そのため「インプラントのためにやめる」という考え方は危険であり、必ず医師の指導に従うことが求められます。

手術時の出血リスクはどうコントロールするの?

歯科医院では、血液サラサラの薬を飲んでいる患者さんの手術では、局所止血処置や術後管理を徹底してリスクを減らします。また必要に応じて、術前に採血検査で出血傾向を確認することもあります。

局所止血処置や検査でリスクを抑えます。

歯科医師は以下のような方法で出血リスクを管理します。

術中のコントロール

  • 出血しやすい部位を避ける
  • 吸収性止血材や縫合糸を活用する
  • 電気メスなどで止血を補助する

術後のコントロール

  • 圧迫止血を十分に行う
  • 抗菌薬や鎮痛薬を適切に処方
  • 出血が続く場合は再来院を指示

事前準備

  • 採血検査(PT-INR、APTTなど)で出血傾向を把握
  • 医科主治医と相談し、リスクに応じて手術のタイミングを調整

これらの対策により、多くの患者さんは薬を飲み続けながら安全にインプラント治療を受けられます。

内科医と歯科医の連携はなぜ必要?

薬を服用中の患者さんにインプラント治療を行う際は、内科医との連携が欠かせません。持病の状態や薬の調整が必要かどうかを判断するのは内科医の役割だからです。歯科単独で判断することは危険です。

内科との連携が安全性を高めます。

歯科医院では、患者さんのかかりつけ内科に「紹介状」や「診療情報提供書」を依頼することがあります。そうすることにより以下のような内容が確認できます。

  1. 現在の病状(心臓病や脳血管疾患の安定度)
  2. 服用中の薬の種類と量
  3. 休薬が可能かどうか、または継続すべきか
  4. 手術前後で注意すべき点

このように、内科と歯科が連携することで、患者さんの全身状態をふまえた安全な治療が実現します。

血液サラサラの薬を飲んでいる患者さんが注意すべきことは?

患者さん自身も服用している薬を正確に伝えることが大切です。薬手帳の持参、自己判断での休薬を避けること、術後の出血時には早めに歯科へ連絡することなどが重要です。

お薬手帳を持参し、自己判断で休薬しないことが大切です。

患者さんができる工夫

  1. 薬手帳を持参する

    →服用している薬の名前・量・期間が一目でわかります。
  2. 自己判断で薬をやめない

    →重大な合併症を防ぐため、必ず医師の指示に従います。
  3. 術後の出血はすぐに連絡する

    →長引く出血は合併症のサインです。
  4. 健診を欠かさず受ける

    →インプラントを長持ちさせるためにも定期的な健診が必要です。

こうした工夫を怠らないことで、薬を服用中でも安心してインプラント治療を進めることができます。

まとめ

薬を飲んでいても正しい準備でインプラントは可能

血液サラサラの薬はインプラント治療に影響を与えますが、適切な準備と医科・歯科の連携があれば治療は可能です。大切なのは、患者さんが正確に情報を伝え、医師の指示に従うことです。

薬を飲んでいても、内科と連携すればインプラントは可能です。

インプラント治療を希望する患者さんの中には、血液サラサラの薬を服用している方が少なくありません。薬の影響で出血リスクは高まりますが、歯科と内科が連携して対応すれば多くの場合で安全に手術が行えます。大切なのは「薬を隠さず伝えること」「自己判断で中止しないこと」です。正しい知識と準備を持ち、安心して治療に臨みましょう。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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