インプラント

インプラント治療後に噛めるようになるまでの期間は?

噛めるようになるまでの期間は?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラント治療は噛めるようになるまでに数か月かかりますが、埋入する場所や本数、そして骨を造る処置が必要かどうかによって全体の期間が変わってきます。仮歯を入れることで見た目は治ったように見えていても、しっかり噛めるようになるまではそれなりに期間がかかります。

手術後すぐに噛めるようになるの?

おにぎり

実際のところ、インプラントの手術をしてもすぐに噛めるようになるわけではありません。インプラントが骨にしっかりと結合するまでの期間、待つことが必要です。平均的には上顎で3ヶ月、下顎で2ヶ月程度の期間がかかりますが、骨の硬さや年齢などの個人差があり、人によっては半年程度の期間を要する場合もあります。

煙草を吸われる方や、骨粗しょう症や高血圧の薬を飲んでおられる方は、インプラントと骨がくっつきにくく、治療期間が平均よりも長くなるかもしれません。その後、上部構造の型取りを行い、上部構造が出来上がってインプラントに装着すると噛めるようになります。(※型取りの際に仮歯をおつけする場合があり、その場合は仮歯で噛めるようになります。)

また、抜歯をした場合は抜歯後4~6か月程度の間は歯茎が治るのを待つ時間が必要ですので、いつ抜歯をしたかで手術のスケジュールが変わります。抜歯と同時に手術を行う抜歯即時インプラントという術式もあり、その場合は抜歯後の待つ期間が必要ありませんので、早めに噛めるようになりますが、全てのケースで行えるわけではありません。

インプラントで噛めるようになるまでに日数がかかる理由

インプラント治療は、見た目だけでなく噛む機能を回復させるために重要な治療法です。しかし、手術が完了してから実際にしっかり噛めるようになるまでには時間がかかります。その理由をご説明します。

1. 骨との結合(オッセオインテグレーション)が必要

インプラントは顎骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込む治療法ですが、しっかりと噛めるようになるには、まず人工歯根が骨としっかり結合する「オッセオインテグレーション」という過程が必要です。

  • 安定性の確保・・インプラントが骨と結合しないと、咬合力に耐えられず、緩んでしまう可能性があります。
  • 結合に必要な期間・・一般的に下顎で2〜3か月、上顎では4〜6か月が目安です。上顎は骨が密度が低いため、結合に時間がかかるとされています。また、骨造成の処置を行った場合は更に日数がかかります。

2. 手術部位の治癒期間が必要

インプラント手術では、インプラント体を埋め込むために骨や歯茎を切開します。そのため、手術後に傷が治るための期間が必要です。

  • 歯茎の回復・・手術による炎症や腫れが引き、歯茎が元の状態に戻るまでには数週間かかります。
  • 感染予防・・傷口が完全に閉じて、感染リスクがなくなる状態になることが大切です。

3. 骨造成や追加手術が必要な場合がある

患者さんの骨量が不足している場合、骨造成(骨移植)やサイナスリフトといった手術が行われることがあります。この場合、さらに以下の時間が必要となります。

  • 骨造成のための期間・・骨が十分に再生し、インプラントを支えられるようになるまで3〜6か月かかることがあります。
  • 追加の手術の調整・・一つ一つの工程を安全に進めるために、治療期間が長くなります。

4. 上部構造(人工歯)の製作時間

インプラント体が骨と結合した後、上部構造(クラウン)を装着します。

  • 型取りと調整・・患者さんの噛み合わせや審美性に合った上部構造を製作するため、精密な型取りが行われます。
  • 試適と調整・・装着後に噛み合わせを調整することで、違和感なく機能する人工歯を完成させます。このプロセスにも数週間が必要です。

5. 患者さんごとの個別対応

インプラント治療は患者さんごとに異なる条件で行われるため、噛めるようになるまでに必要な日数が異なります。

  • 年齢や健康状態・・糖尿病や喫煙などの要因があると、治癒が遅れる場合があります。
  • 治療計画の複雑さ・・複数のインプラント埋入が必要な場合や全体の噛み合わせを再構築する場合は、工程が増えるため、時間がかかります。



インプラント治療に時間がかかる理由は、治療の安全性と成功率を高めるためです。急ぎすぎると、インプラントの緩みや失敗のリスクが高まります。

噛めるようになるまでの期間

インプラント埋入から仮歯の装着まで

骨とインプラントが結合する期間が2〜6ヶ月程度。その後、仮歯が装着され、比較的やわらかい食べ物を噛むことが可能になります。

最終補綴物の装着後

仮歯の装着後さらに1〜2ヶ月ほどで最終補綴物が装着され、通常の食事が可能になります。これにより、硬いものや粘着性のある食べ物も問題なく噛むことができるようになります。

注意点

  • 骨の状態や治療の進行具合によっては、噛めるようになるまでの期間が延びることがあります。
  • インプラントが完全に安定するまでは、過度な力をかけないようにすることが重要です。
  • 患者さんごとに個別のアプローチが必要となるため、治療期間や噛めるようになるまでの具体的な期間については、担当の歯科医師とよく相談することが大切です。

インプラントが骨と結合するのにかかる期間は?

  • 下顎・・3ヶ月
  • 上顎・・4~6ヶ月

インプラント治療はどんな風に行うの?

最近の研究では、ある条件を満たすことができれば、インプラント手術後に早めに噛んでも大丈夫との報告があり、以前よりも早めに噛めるようにする傾向があります。しかしインプラントの本数や太さや骨の硬さ、密度等によって噛めるまでの期間は変化しますので、全てのケースで早く噛めるようになるわけではありません。

ここでは、大まかな治療の流れを見ていきましょう。

インプラントの治療期間

1.術前検査

 

2.レントゲン撮影、CT撮影を行い、顎骨や神経、血管の状態を立体的に見ることで安全にインプラントを埋入できるかどうか調べます。持病のある方でインプラント手術が難しい方は、服用しておられる薬をコントロールすることで手術が可能になるか、内科の主治医の先生と連携します。

歯周病にかかっておられる場合はインプラント手術前に治療します。

3.インプラント埋入手術

インプラント手術

インプラントの手術は局所麻酔の日帰り手術です。

まず歯茎を切開し、あごの骨にドリルでインプラントを埋め込むための穴をあけ、そこにインプラント体(人工歯根)を埋入します。切開した歯茎を縫合すると手術は終わりです。

歯茎を切らずにサージカルステントと呼ばれるガイドを当ててインプラントを埋め込む術式もあります。

4.アバットメントの装着

インプラントの構造

手術から数ヶ月後にインプラントと骨が完全にくっついて動かないのを確認して、アバットメント(土台)をインプラントにネジ止めします。アバットメントはインプラント体と上部構造を繋ぐ役割をします。

良く噛めるようになるために噛み合わせをしっかりチェックしながら、最終的な上部構造(被せ物)を作るための歯型を取ります。この段階で仮歯をお付けして噛めるようにして、骨に少しずつ力を加えていきます。

5.かぶせ物の装着

最終的な義歯を装着して噛み合わせのチェックを行うと治療は終わりです。治療後は数か月に一度のメンテナンスを受けていただきます。インプラントで噛める状態を長く保つためには、メンテナンスが重要になります。

よく噛めるようになるまでの治療の流れはほぼこのように進んで行きます。このほか、入れ歯を使用しながら治療する場合や、前歯などで審美的な美しい仕上げを要求される場合は少し手順が増えます。

インプラントには一回法と二回法があり、入れ歯を使用しながらのインプラントは二回法インプラントといいます。

まとめ

インプラント治療はインプラントと骨が結合する時間が必要なため、長い期間がかかります。その期間中、医院から事前にお話しさせていただいている注意事項を守って過ごしていただきます。不安な点がおありの場合はすぐに担当医までご連絡ください。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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