インプラントがぐらついていて力を入れて噛めない場合、インプラントはどのような状態になっているのでしょうか?原因によって対処法が違いますのでご説明します。
目次
インプラントがぐらつく主な原因
インプラント周囲炎になってしまった
インプラント手術後に気をつけなければならないのが、インプラントの周囲の歯茎が歯周病にかかるインプラント周囲炎です。
インプラント自体は人工の歯で虫歯の心配などはありませんが、インプラントと歯肉の間に歯垢がついたままになっていると、歯肉炎を起こします。インプラントは感染にとても弱いため、一旦歯肉炎になると症状が進むのがとても早いです。
周囲炎が進んでくると、インプラントと歯茎の間に歯周ポケットが形成され、その中に歯垢がたまり、歯周病菌が増殖します。歯周病菌の出す毒素によって歯周ポケットがどんどん深くなっていき、やがて骨を溶かし始めます。
インプラント周囲炎によってインプラントがグラグラしてくるのは、既に骨が溶け始めてインプラントを支えきれなくなった時です。
そうなると、症状を改善させるのはとても難しくなりますので、周囲炎にならないように毎日のセルフケアた概説になります。歯ブラシだけでは落としきれない汚れを、デンタルフロスや歯間ブラシを使って出来るだけ落とし、それでも取れない汚れは、歯科医院でのメンテナンスの際に除去します。
インプラントと歯茎の間に出来た歯周ポケットの中に歯石が出来ると、インプラント体が歯茎に埋まっている部分はネジのような形状になっているため、歯科医院でクリーニングを行っても完全に歯石を除去することがとても難しいのです。
インプラントを長く使い続けるためには、インプラント周囲炎にならないように細心の注意を払わなければなりません。
骨の吸収
インプラントが埋入された顎の骨が、何らかの原因で徐々に失われ、インプラントが支えられなくなることがあります。
アバットメントや上部構造が緩んでいる
インプラントは顎骨に埋め込まれるインプラント体と、インプラント体と上部構造(被せ物)を繋ぐためのアバットメント、そして上部構造の3つのパーツから成っています。
- アバットメントのネジが緩んでいる
- 上部構造をアバットメントにネジ止めするタイプのインプラントを使用している場合にネジが緩んでしまった
ネジが緩んでしまうのは、上部構造に一定以上の噛む力が加わってしまったときです。インプラントは歯根膜がないため、噛む力のコントロールがしにくく、つい強い力で噛みすぎてしまいます。
ネジが緩んだ場合は、すぐに歯科医院で上部構造を外して再度つけなおします。その際にはかみ合わせのチェックも行います。
インプラント体埋入時のドリルの摩擦による
インプラントが埋入後グラグラして骨と結合しないのはインプラント埋入手術時のドリルによる摩擦が原因の場合があります。
インプラントを埋入する時にはドリルで顎骨に穴をあけるのですが、その時の摩擦熱によるオーバーヒートで骨が火傷の状態になってしまい、骨壊死を起こしてインプラント体と骨が結合しないことがあります。インプラント体の埋入時のオーバーヒートを避けるためには、必ず注水によって冷却しながらドリリングを行います。
ドリリング時のオーバーヒートによって骨が壊死してしまった場合は、1~2ヶ月経ってからインプラント体を前回とは少しずらした場所に埋入することで骨と定着します。
インプラントがぐらついている時の対処法は?
まず、ぐらつきを感じたらすぐに歯科医師に相談しましょう。ぐらつきが起こった原因を明らかにするために、レントゲンやCTでの撮影を行い、問診によって「いつ頃からぐらつき始めたか」、「ぐらつくきっかけの有無」などをお聞きします。
上部構造やアバットメントを固定しているねじが緩んでいる場合は締め直すだけで解決する場合もありますし、インプラントのぐらつきの原因によっては、一度インプラントを撤去して、インプラントの再手術が必要になる場合もあります。
インプラント周囲炎が疑われる場合は、インプラントの周囲のクリーニングを行い、周囲炎の症状が深刻な状態になっているか、症状の改善が可能かを調べていきます。
ぐらつきの原因に応じた対処法
ぐらつきの原因に応じた対処法が必要です。
インプラント周囲炎の場合
炎症が原因でぐらついている場合、クリーニングや外科的な処置で炎症を抑えます。初期段階であれば、抗菌薬や専門的なクリーニングで改善することも可能です。
上部構造の緩み
上部構造が緩んでいる場合は、再装着や上部構造の交換を行うことで問題が解消されます。
骨の再吸収やインプラントの脱落
骨が大きく失れている場合、インプラントの除去や再度の骨移植、インプラントの再手術が検討されます。骨の健康を回復させることが重要です。
インプラントがぐらついた時の注意点
インプラントがぐらついているときは、患者さんご自身で対処しようとせずに、早めにインプラント治療を受けた歯科医院にご連絡ください。
舌や手で触らないようにしましょう
ぐらついているインプラントは気になると思いますが、舌や手で触るとぐらつきがひどくなったり、歯茎の炎症がひどくなったりする場合がありますので、出来るだけ触らないようにして、早めに歯科医院を受診しましょう。
歯みがきは出来る範囲で行いましょう
ぐらついている部分の歯磨きは怖いかもしれませんが、歯磨きをしないと歯垢や汚れたついたままになってしまい、細菌によって更に炎症を起こす原因になります。力を抜いてそっとブラッシングするようにして、早めに歯科医院を受診しましょう。
ご自分で接着しないでください
ねじの部分を接着してしまうと、ねじの溝が接着されて外すことが出来なくなります。また、微妙な高さの違いによって噛み合わせが悪くなり、顎関節症のリスクが高まりますので、出来るだけそのまま触らないようにして、早めに歯科医院を受診しましょう。
ぐらついたインプラントで固いものを噛まないようにしましょう
ぐらついている状態で固いものを噛むと、ぐらつきを更に増す可能性があります。なるべく刺激を与えないようにして、早めに歯科医院を受診しましょう。
インプラントの構造
インプラントがぐらつく原因や対処法をご説明する前に、まずインプラントはどんなパーツから出来ているのか図解でご覧ください。
インプラントがぐらついている時の対処に関するQ&A
インプラントがぐらつく主な原因は、アバットメントのネジまたは上部構造をアバットメントに固定するためのネジが緩んでいることです。
インプラントが埋入後グラグラして骨と結合しない場合、原因はインプラント埋入手術時のドリルによる摩擦がオーバーヒートし、骨が壊死してしまうことがあります。
インプラントがぐらついた場合の対処法は、まず原因を明らかにするためにレントゲンやCTで撮影し、緩んだネジを締め直す場合やインプラントの再手術が必要な場合があります。インプラント周囲炎が疑われる場合は、周囲のクリーニングや症状の改善可能性の調査が行われます。
まとめ
インプラントのぐらつきが起こるには、いくつかの原因があり、どれに該当するかで対処法が違います。そのためには、まず歯科医院で検査を行い、ぐらつきが起こった原因を特定します。その後、インプラントを出来るだけ安定した状態で長く使えるようにするために、どのような治療を行う必要があるかについて担当医が患者さんにご説明します。
インプラントがぐらついていることに気づいたら、出来る限り早く診察を受け、対処することが重要です。