インプラントの基礎知識

インプラント手術は局所麻酔だけで大丈夫?安心して受けるための麻酔方法を解説

インプラント手術は局所麻酔だけで大丈夫?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラント手術は局所麻酔だけで大丈夫?

ほとんどのインプラント手術は局所麻酔だけで安全かつ十分に行うことが可能です。ただし、患者さんの不安の強さや全身の状態によっては、笑気麻酔や静脈内鎮静法といった方法が併用されることもあります。

この記事はこんな方に向いています

  • インプラント手術に興味はあるが「麻酔だけで痛くないのか不安」という方
  • 局所麻酔と他の麻酔方法(静脈内鎮静法や笑気麻酔)の違いを知りたい方
  • 手術中にリラックスできる方法を探している方

この記事を読むとわかること

  1. インプラント手術で局所麻酔が基本とされる理由
  2. 局所麻酔だけでは不安な場合に選べる他の麻酔方法
  3. 各麻酔方法のメリット・デメリット
  4. 局所麻酔で手術を受ける際の注意点と準備

 

インプラント手術は局所麻酔だけで本当に大丈夫?

電動麻酔器インプラント手術は、一般的には歯を抜くときと同じように局所麻酔だけで行えます。局所麻酔を使うと、手術部位の痛みは完全に遮断されるため、処置中に強い痛みを感じることはほとんどありません。多くの患者さんが「思ったよりも楽だった」とおっしゃるほどです。

ただし、手術そのものの痛みはなくても、「音」や「振動」による不快感を感じることがあり、それが不安につながる方もいます。その場合には、追加の麻酔方法を検討することが可能です。

インプラント手術は基本的に局所麻酔だけで十分に対応できますが、不安が強い方には他の方法も選択できます。

局所麻酔が主流とされる理由は?

麻酔

局所麻酔が主流となるのは、手術の安全性と回復の早さに大きなメリットがあるからです。局所麻酔は歯科治療で一般的に使われる方法で、作用範囲を限定できるため、体への負担が少ないのが特徴です。術後も速やかに意識が戻り、すぐに歩いて帰宅できることが多い点も安心材料です。

さらに、全身麻酔のような大がかりな準備が不要なため、コスト面でも患者さんにとって負担が少なくなります。

局所麻酔は安全性が高く、回復も早いため、インプラント手術の主流となっています。

どんなケースで局所麻酔以外の方法が使われるの?

インプラント手術の多くは局所麻酔で十分対応できますが、すべての患者さんに同じ方法が適しているわけではありません。局所麻酔以外の麻酔方法(笑気麻酔や静脈内鎮静法)が検討されるのは、患者さんの不安や恐怖心が強い場合、手術が長時間に及ぶ場合、または全身的な状態に配慮が必要な場合です。

これらのケースでは、リラックス効果や痛みのコントロールを強化することで、より安全で快適な治療環境が整います。

長時間の手術、不安や恐怖心の強い方、全身的リスクのある方では、局所麻酔以外の方法も選ばれます。

よくあるケースと理由

  1. 複数本のインプラントを同時に埋入する場合

    → 手術時間が長くなるため、局所麻酔だけだと「音」「圧迫感」「緊張」が強くなりやすく、静脈内鎮静法のほうが安心。
  2. 大規模な骨造成(骨移植やサイナスリフト)が必要な場合

    → 手術が複雑で処置範囲も広がるため、リラックス効果のある鎮静法が望ましい。
  3. 強い歯科恐怖症の患者さん

    → 「歯医者に行くだけで緊張する」「器具の音に耐えられない」など、恐怖心が強い場合は笑気麻酔や静脈内鎮静法が有効。
  4. 嘔吐反射が強い患者さん

    → インプラント埋入では口を大きく開ける必要があるため、反射が強い方にはリラックス効果のある笑気麻酔が役立つ。
  5. 高齢の患者さんや持病を抱えている場合

    → 心臓病・高血圧・糖尿病など全身管理が必要な方では、ストレスを軽減する麻酔法が安全性を高める。

ケース別まとめ表

ケース 局所麻酔以外が必要になる理由 推奨される方法
複数本の埋入 長時間手術で緊張や不快感が強い 静脈内鎮静法
骨造成を伴う手術 処置範囲が広く、体への負担が大きい 静脈内鎮静法
強い歯科恐怖症 音や雰囲気への恐怖心が強い 笑気麻酔 or 静脈内鎮静法
嘔吐反射が強い 口を開け続けるのが困難 笑気麻酔
高齢や持病あり 不安やストレスが全身に影響 静脈内鎮静法(医師の管理下)

局所麻酔は多くの手術に十分対応できますが、上記のようなケースでは「手術の安全性」と「患者さんの安心感」の両方を守るために追加の麻酔が選ばれます。特に静脈内鎮静法は「眠っている間に終わる感覚」で治療が受けられるため、恐怖心の強い方には非常に有効です。

一方で、麻酔方法の選択は患者さんごとの体調や希望を十分に考慮して決定されるため、歯科医師に遠慮せず相談することが大切です。

笑気麻酔や静脈内鎮静法はどう違う?

局所麻酔に加えて行われる方法として「笑気麻酔」と「静脈内鎮静法」があります。笑気麻酔は鼻から吸入するガスでリラックス効果を得る方法で、軽度の不安に適しています。

一方、静脈内鎮静法は点滴で鎮静薬を投与し、うとうとした状態で手術を受けられる方法です。恐怖心が強い方や長時間の手術に向いています。

笑気麻酔はリラックス効果、静脈内鎮静法は深い安心感を得られる方法です。

静脈内鎮静法とは?

静脈内鎮静法

静脈内鎮静法は、点滴を使って鎮静薬を静脈から投与する方法です。歯科治療では「うとうと眠くなる感覚」で手術を受けられることから、「半分眠っている状態の麻酔」とも言われます。

特徴

  • 点滴で薬を投与するため、効果が安定している
  • 手術中の記憶がほとんど残らないことが多い
  • 強い不安や恐怖心がある方でも安心して治療を受けやすい
  • 医師による全身管理が必要(血圧・脈拍・酸素濃度をモニタリング)

メリット

  • 恐怖心や不安を大幅に軽減できる
  • 長時間の手術でもリラックスして受けられる
  • 記憶が曖昧になるため「怖かった」という印象が残りにくい

デメリット

  • 点滴を使うため準備が必要
  • 保険適用外で、追加費用がかかることが多い
  • 車の運転は当日控える必要がある

特にインプラントを複数本同時に入れる場合や、大きな骨造成を伴う場合に選ばれることが多い方法です。

笑気麻酔とは?

笑気麻酔は「笑気ガス(二酸化窒素)」を酸素と一緒に鼻から吸入して行う麻酔法です。体に入るとリラックス効果が得られ、緊張や不安を和らげてくれます。意識はしっかりあるので会話も可能です。

特徴

  • 鼻マスクを通してガスを吸入するだけで簡単に始められる
  • 吸入をやめれば数分で効果が切れる
  • 幼児から高齢者まで幅広く使える

メリット

  • 気分が落ち着き、不安が軽減する
  • 嘔吐反射を抑えやすい
  • 効果が切れるのが早く、当日もすぐに日常生活に戻れる

デメリット

  • 効果は比較的マイルドで、強い恐怖心には不十分な場合がある
  • 鼻づまりがあると使えないことがある
  • 保険がきかない場合もある

短時間の手術や、不安が軽度な方、または嘔吐反射が強い方に向いている方法です。

  • 静脈内鎮静法 → 強い恐怖心や長時間手術に有効。「眠っている間に終わる感覚」で治療が受けられる。
  • 笑気麻酔 → 軽度の不安や嘔吐反射に有効。短時間で効果が切れるので日常生活にすぐ戻れる。

どちらも局所麻酔と併用され、患者さんの不安や体調に合わせて選ばれます。

比較表

麻酔法 特徴 向いているケース メリット デメリット
局所麻酔 手術部位のみの痛みを遮断 標準的な手術 安全・回復が早い 音や振動は感じる
笑気麻酔 吸入でリラックス効果 軽度の不安や嘔吐反射がある方 不安が軽減・作用がすぐ切れる 効果はやや弱め
静脈内鎮静法 点滴で鎮静薬を使用 恐怖心が強い・長時間手術 強い安心感・記憶が曖昧 費用や準備が必要

このように、患者さんの状態や希望によって最適な麻酔方法が選ばれます。

※笑気麻酔は主に子供に対してのみ行っている歯科医院もありますので、事前にご確認ください。

関連記事:インプラント手術での静脈内鎮静とは?

局所麻酔で手術を受ける際に知っておくべき注意点は?

局所麻酔は安全性が高い方法ですが、より安心して手術を受けるために知っておくべき注意点があります。例えば、術前は十分に睡眠をとり、体調を整えておくことが大切です。

また、持病がある場合は必ず申告し、使用している薬の情報を歯科医師に伝えておく必要があります。さらに、手術中に痛みや不快感を感じた場合は遠慮なく伝えることが重要です。

局所麻酔の安全性を高めるには、体調管理と事前申告、手術中の自己申告が大切です。

注意点

  1. 前日はしっかり休養し、体調を整える
  2. 高血圧や糖尿病などの持病は必ず伝える
  3. 服薬中の薬(特に血液サラサラの薬など)は事前申告
  4. 手術中に違和感や痛みを感じたら、合図を出す

こうした準備や心構えを持つことで、局所麻酔での手術はさらに安全で安心なものになります。

不安を和らげるためにできる準備とは?

不安を和らげるためにできる準備

「局所麻酔だけで本当に大丈夫?」という不安は、多くの患者さんが抱くものです。その不安を少しでも和らげるには、歯科医師とのコミュニケーションが欠かせません。事前のカウンセリングで質問や不安を正直に伝えることで、麻酔方法を含めた最適な治療計画を立ててもらえます。

また、リラックスするために深呼吸法を学んでおくのも効果的です。

不安を減らすには、カウンセリングで相談し、リラックス方法を取り入れることが大切です。

具体例

  1. 歯科医師に不安を率直に伝える
  2. 麻酔の方法や流れを事前に確認する
  3. 深呼吸や音楽など、自分なりのリラックス法を準備する
  4. 信頼できる家族に付き添ってもらう

不安を抱えたまま手術に臨むよりも、準備を整えたうえで安心して治療に向かうことが、結果として手術の成功率や回復にも良い影響を与えます。





まとめ

局所麻酔で十分なケースが多いが、不安があれば遠慮せず相談を

ほとんどのインプラント手術は局所麻酔のみで十分に安全で快適に行うことができます。局所麻酔は、歯科領域で最も良く使われている実績があり、術部のみを確実に麻痺させることが出来るので、患者さんは強い痛みを感じることなく手術を終えられます。

実際、「抜歯の時の方が時間がかかったし緊張した」「術後の痛みや腫れも思っていたより軽かった」など、患者さんご自身が思った以上に楽だったと話されるケースが多いです。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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