インプラントの基礎知識

老後にインプラントを受けるとデメリットがある?

インプラントはデメリットより老後に良い影響?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラントによる歯科治療にはデメリットがあるのでしょうか?今日は高齢者のインプラントの治療によるデメリットを中心にご説明します。

高齢者がインプラント治療を受ける際のデメリット

1. 骨の量や質の問題

骨の痩せやすさ

年齢とともに骨が痩せ、骨密度が低下するため、インプラントがしっかりと固定されるために必要な骨量が不足することがあります。骨が足りない場合、骨移植などの追加手術が必要になる可能性があり、これが高齢者にとって負担となる場合があります。

骨の再生能力の低下

高齢になると骨の再生能力が低下するため、インプラントの定着に時間がかかる場合があります。骨の質が悪いと、インプラントが不安定になるリスクが高まります。

2. 全身の健康状態への影響

持病の影響

高齢者は糖尿病や心疾患、骨粗鬆症などの持病を抱えていることが多く、これらの疾患がインプラント手術の成功率に影響を与える可能性があります。特に糖尿病は、傷の治りが遅くなるため、感染症リスクが高まることがあります。

薬の影響

血液をサラサラにする薬や、骨の状態に影響を与える薬を服用している場合、インプラント治療に支障が出ることがあります。治療を受ける前に、服用している薬について歯科医としっかり相談することが重要です。

3. 手術の負担とリカバリー

手術の負担

インプラント手術は外科的な処置を伴うため、体力が落ちている高齢者にとっては大きな負担となる可能性があります。手術時間や術後の回復期間が長くなることがあり、手術中や手術後に注意が必要です。

回復の遅さ

若い人に比べて、高齢者は術後の回復が遅くなることが一般的です。歯茎や骨の治癒が遅れ、インプラントの定着にも時間がかかる場合があります。

4. インプラントのメンテナンスが難しくなる可能性

口腔ケアの困難さ

高齢になると手や腕の動きが制限されたり、視力が低下することで、日常の口腔ケアが難しくなる場合があります。インプラントは適切なケアが欠かせないため、十分なセルフケアができない場合、インプラントの周囲に炎症や感染症が発生するリスクが高まります。

通院の難しさ

高齢者は通院が難しくなる場合が多いため、定期的なメンテナンスを受けることが難しくなり、インプラントの健康を維持することが難しいことがあります。

5. コストと寿命の問題

高額な費用負担

インプラント治療は高額であり、高齢者にとっては経済的な負担が大きいことがデメリットとなります。特に、寿命を考慮すると、他の治療法(ブリッジや義歯)と比較してコストパフォーマンスが悪いと感じる場合があります。

寿命とインプラントの長期使用

高齢者の場合、インプラントを長期的に使用できる期間が限られていることがあります。インプラントは長期間使用できることが利点ですが、年齢によってはその恩恵を十分に享受できない可能性があります。

老後にインプラント治療を行う際の注意点

インプラントを長もちさせるためのポイント

インプラントの手術後には、定期的にメインテナンスに通院していただきます。健康な歯肉でも細菌感染を起こせば、歯肉炎や歯周病などになり、歯が抜けます。インプラントも同様で、きちんとブラッシングができていなければ、インプラントの脱落を招きます。自宅で歯ブラシ、タフトブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスなどを使用し、セルフケアを怠らないようにしましょう。

インプラントではなく他の義歯処置(入れ歯やブリッジ)にすれば、そこまで口腔内のお手入れが必要ないということではありません。年齢が上がるにつれ、お口の中にはリスクが多くなります。天然の歯も人工の歯もどちらも変わらず大切にしましょう。

インプラントで老後のデメリットを解消

インプラントと天然歯の違い

以前と違い咀嚼が上手にできない問題をインプラントで解消

前歯で噛んで奥歯ですりつぶし、唾液とともに食道に運ぶというのが咀嚼において大切です。それが、特定の歯に負担がかかり過ぎ、虫歯や歯周病の細菌感染を起こし、抜歯になると、他の残存歯に負担がかかるという悪循環になります。

咬む力が衰えててしまうと、柔らかい特定の食べ物のみを食べてしまいがちになります。インプラントは患者様ご自身の顎の骨を土台に、生体親和性の高いチタンで作られた人工歯根(フィクスチャー)を埋入します。骨と歯根がきちんと接着した状態で、アバットメントや上部構造をつける義歯処置ですので、入れ歯やブリッジより安定感があります。

認知症のリスクをインプラントで解消

硬い食べ物を噛むことができない人は、咀嚼の機能が低下しています。近年の研究結果により判明しましたが、咀嚼機能が低下した人は、認知症のリスクが高いです。具体的な数字を挙げますと、自分自身の歯が20本以上お口に残っている人と歯を失った人を比べると、1.9倍認知症リスクが高いそうです。入れ歯の場合は、安定性以外に、歯と入れ歯の間に食べ物が詰まってしまい痛みが起きるというトラブルも起きがちです。しっかり噛めることは健康の維持にもつながります。

人と話をすることに対する気後れをインプラントで解消

歯が抜けている部分に義歯(入れ歯)を入れている場合、サ行などの摩擦音、タ行などの破裂音の発音が難しくなります。そのため、人とおしゃべりをしたいと思っても、入れ歯のズレを気にしておしゃべりができないというケースが考えられます。インプラントは天然の歯と同様の安定性があるため、発音も全く気になりません。

見た目の老化をインプラントで解消

義歯処置を行う必要があり見た目の老化を気にされる方の場合、ブリッジや入れ歯ではなく、インプラント治療を選択しましょう。インプラントの治療で用いられる人工歯は、入れ歯やブリッジと違い、審美性の高い被せ物です。ブリッジのように両隣の歯に負担をかけることがなく、また、入れ歯のようなバネや不自然な歯茎などを装着することはありません。また、きちんと固い食べ物でも噛むことができれば、お口周りの筋肉を鍛えられます。

インプラントの治療は老後に受けても大丈夫?

インプラントの治療を老後に行っても大丈夫かというご質問をいただくことがあります。歯科医院でむし歯や歯周病の治療の際に、歯科医師やスタッフに尋ねるにはハードルが高いという方もおられると思いますので、詳しくご説明します。

糖尿病や高血圧、骨粗しょう症や、心臓の疾患などの持病がない場合は、老後でもインプラントは可能です。もちろん、これらの病気にかかっている方でも、全員不可能というわけではありません。担当医に許可をいただければ、一時的に服薬を止めてインプラントの手術を行うことは可能です。

歯周組織に問題があれば先に治療を行います。また、骨の量をきちんと精密検査で計測し、顎の骨の量が少ないと判明した方は、骨造成や骨移植の処置を行います。サイナスリフトやソケットリフト、GBR法などの種類があり、上顎か下顎かで増骨の方法が異なります。これは年齢のみの問題ではなく、若い方でもあごの骨が足りない状態というのはよくあるケースです。

いずれにしても、患者様ご自身へのメリットとデメリットをしっかり比べたうえで、インプラント治療を受けてください。

インプラントは老後に良い影響があるのかに関するQ&A

インプラントは老後に良い影響がありますか?

インプラントは老後に良い影響をもたらします。咀嚼機能の向上により、食事の幅が広がり栄養摂取が容易になります。また、インプラントは見た目の老化を気にすることなく自信を持って笑顔を保つことができます。

歯を失うことで老後に起きやすい問題とは?

歯を失った後に老後に起きやすい問題としては、咀嚼機能の低下や、その結果認知症リスクが増加すること、人と話すことに気後れすること、見た目の老けて見えることなどの懸念があります。

インプラントの治療は老後でも大丈夫ですか?

一般的には老後でもインプラント治療は可能です。ただし、特定の持病や歯周組織の問題がある場合には事前の検査や治療が必要になる場合があります。

まとめ

インプラントの治療は費用も大切ですが、なるべく症例の多い歯医者で受けましょう。様々なインプラントの実績がある医院で手術を行うとリスクは低いと考えます。また、無料カウンセリングを行っているクリニックが多いので、それを活用し、ドクターに歯のお悩みを相談してください。できれば複数の医院へ行き、治療計画や期間、術後の定期検診、アフターケアなどの点をチェックし、安心できるあなたの歯科医院をお探しください。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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