インプラント

インプラントの骨造成後には腫れる?方法、リスク、予防対策について

インプラントの骨造成って腫れたりする?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラント治療を開始しようと考えておられる患者さんにとって、あごの骨が足りるか足りないかは、とても重要な問題です。インプラント治療を行う前には、CT撮影などの精密検査を必ず行います。検査結果により骨が足りないと診断された場合は、骨造成と呼ばれる骨を造るための処置を行います。数か月後、骨が増えたと確認されると、やっとインプラント治療を開始する流れになります。

「骨造成の後、腫れたりしない?」「骨造成って何?どんな時にするの?」という疑問や不安、骨造成の方法についてご説明します。

骨造成後には腫れる?

骨造成後に痛みや腫れがあるのかというのはとても気になる問題だと思います。増骨の手術中は、局所麻酔を行いますので痛みを感じることはありません。

歯科が怖い歯科恐怖症の方や、緊張しやすい患者さんには、静脈内鎮静法(セデーション)という麻酔を適用するケースがあります。静脈内鎮静法は、リラックスできる薬を点滴で注入し、患者さんは眠ってしまいます。目が覚めると全ての処置が終わっているという方法です。

術後の痛みや腫れはどうかという事についてご説明します。痛みの感じ方には個人差がありますが、手術当日から何日かは手術部位の痛みが続いたり、腫れる事が考えられます。

そのため、クリニックから抗生剤や鎮痛剤を処方しますので、決められた分量をお飲みください。そのうち痛みは消失すると思いますが、目安としては1週間とお考え下さい。1週間もしくは2週間以上経っても、どうしてもひどい痛みや腫れが続く場合は、細菌感染などトラブルを起こしている可能性が高いので、すぐにクリニックのスタッフ、担当医に相談して受診してください。

骨造成にはどんな方法があるの?

インプラント体を埋入するための骨(歯槽骨)が足りないと、どんなトラブルが起きるのでしょうか。インプラント体(人工歯根)はチタンでできており、生体親和性が大変高い、つまり体内で異物と認識されにくいというメリットを持っています。

ただ、顎の骨が痩せた方に骨造成せずに治療を行うと、インプラント体が患者さんのお口の中に飛び出てしまい、チタンが患者さんの口腔内で、大きくむき出しとなります。お口の中は雑菌や食べかす、歯垢などがある不衛生な環境ですので、そこにインプラントが露出しているのは、見た目だけでない大きなリスクがあります。歯周病菌に感染するとインプラント周囲炎にかかってしまい、インプラントの動揺(グラグラ)や脱落(抜ける)を起こすことに繋がります。

抜歯を放置したり、入れ歯を使用すると、あごの骨はどんどん痩せていきます。インプラントを行うためにはある程度の骨の高さや幅など、骨量が必要ですので、痩せた骨を増やさなければいけません。

骨造成とは、自家骨(じかこつ)移植やGBRなどによって、硬組織(骨)欠損部を造成、または増大するすべての手法を指します。自家骨とは、自分の骨のことで、自分から採取した骨を自家骨と呼びます。

GBR法とは?

GBRとは、Guided Bone Regenerationの略で、別名、骨再生誘導法とも呼ばれます。

この手法は、埋入したインプラントが歯槽骨の幅が足りないために歯茎から露出してしまった場合に用いられます。GBRでは、患者さんのお口の状態によって、どの素材を使うか異なることがあります。

  1. メンブレンという特殊な人工膜でかぶせて、それをスクリューで固定し動かなくする方法
  2. 骨補填材、もしくは自家骨を填入し、吸収性の高いメンブレンを置く方法

これらの処置のあと、歯肉を戻して縫合をしてから約4~6ヶ月後位経過すれば、骨量が再生し、インプラント治療を行うことが出来るようになります。メンブレンには、吸収性と非吸収性の性質を持つものがあり、骨をかなり増やさなければいけない場合は、非吸収性のメンブレンを使用します。非吸収性メンブレンを使用した場合は、身体に吸収されないので、メンブレンを除去する手術を後日行わねばいけません。

骨量が十分に増えたことをドクターが確認できれば、メンブレン除去手術と同時に、インプラント埋入手術を行う事が多いです。

サイナスリフトとは?

歯科におけるサイナスとは、副鼻腔の事を指す言葉です。サイナスリフト、つまり、上顎洞を押し上げる治療方法のことです。

副鼻腔とは、鼻腔に隣接した骨内に作られた空洞で、上顎洞を含めた4つの空洞の事を副鼻腔と呼びます。上顎洞と歯槽骨の狭間にある上顎洞粘膜(シュナイダー膜と専門的に呼びます)をインプラントが突き抜けてしまうと、上顎洞炎を発症してしまいます。上顎洞炎は蓄膿症のことです。

サイナスリフトは歯が生えていた箇所の側面の歯肉からアプローチします。骨の厚みが5mm程度より少ない方や、多くの歯を欠損されている症例の方が対象です。

例えば上顎奥歯の歯を失った患者さんのケースでは、サイナスと呼ばれる上顎の空洞が拡大します。上あごの歯肉の側面を四角く切開し、骨面を露出させます。歯槽骨を切り抜き、歯槽骨とシュナイダー膜を注意しながら剥がしてスペースを作ります。そのスペースができたところへ骨補填材や自家骨をいれ、約3~6ヶ月、骨の再生を待つという方法です。

ソケットリフトとは?

ソケットリフトは、サイナスリフトと同じく、上顎の骨を増加させるために用いられます。ソケットリフトは、サイナスリフト対象の方よりも、骨量がある方に適応される方法です。最も大きな違いは、ソケットリフトは抜歯の穴、もしくは歯が生えていた箇所から行う点です。では、歯の穴から行うメリットは何でしょうか。

それは、サイナスリフトと比較して、穴が小さいため、外科的侵襲(手術による体の変化)や細菌感染が起きにくいというメリットがあります。また、サイナスリフトより短時間で行えるので患者さん自身の負担を減らす事が出来るというのもあります。

デメリットとしては、サイナスリフトと比べて骨量を増やす範囲が限られるため、適応できる患者さんが少ないという事です。

インプラントの骨造成による腫れに関するQ&A

骨造成にはどんな方法があるの?

骨造成の主な手法として、自家骨移植やGBR(Guided Bone Regeneration)などが挙げられます。自家骨移植は、患者自身の骨を別の部位から取り出し、欠損部に移植する方法です。GBRは、特殊な人工膜や骨補填材を用いて骨の再生を誘導する手法で、インプラント周囲の骨を増やすために使用されます。

インプラント体を埋入するための骨が足りないとどんなトラブルが起きるの?

インプラント体を埋入するための骨が足りないと、インプラントが不安定になったり、患者の口腔内で露出してしまう可能性があります。骨が不足している場合、インプラントは適切に固定されず、歯周病菌に感染する恐れがあります。感染が進行するとインプラント周囲炎が発生し、インプラントが動揺したり脱落したりするリスクが高まります。

GBR法とは?

GBR法(Guided Bone Regeneration)は、別名「骨再生誘導法」とも呼ばれる骨造成の手法の一つです。この手法では、特殊な人工膜を使用して骨再生を促進します。メンブレンと呼ばれる人工膜をインプラント周囲に配置し、骨補填材や自家骨を使用して骨の増大を図ります。GBR法は、インプラントが歯槽骨の幅に収まらない場合に利用されます。

まとめ

インプラント手術を受けるにあたり、インプラントを埋入する部分の骨の幅や高さが足りない場合は、骨造成と呼ばれる、骨を増やす処置を行う必要があります。骨造成はオプションとなり、インプラントの料金+骨造成費用という料金設定になりますので、費用の負担が大きくなります。ただ、インプラントは医療費控除を使用すれば、支払った税金から還付を受けることが出来ます。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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