インプラント治療における骨造成(骨移植)手術は、インプラントを安定させるために必要な重要なプロセスです。この手術後に「腫れ」が生じるかどうかは、多くの患者さんが気になるポイントです。以下に、骨造成手術後の腫れについて詳しく解説します。
「骨造成の後、腫れたりしない?」「骨造成って何?どんな時にするの?」という疑問や不安、骨造成の方法についてご説明します。
目次
骨造成後には腫れる?
腫れは正常な反応
骨造成手術後に腫れが生じることは一般的で、身体の自然な治癒プロセスの一部と考えられます。手術によって組織が刺激されると、炎症反応が起こり、その結果として腫れや痛みが生じます。
個人差がある
腫れの程度や持続期間は、個人の体質や手術の規模、施術部位によって異なります。一部の人は軽度の腫れしか経験しない一方で、他の人はより顕著な腫れを感じることがあります。
腫れの持続期間とピーク時期
初期段階
通常、手術後24〜48時間以内に腫れが現れ始めます。
ピーク時期
- 腫れは手術後2〜3日目にピークに達することが多いです。
改善傾向・・その後、腫れは徐々に引いていき、1週間以内にはほとんど消失するのが一般的です。 - 長引く場合・・腫れが1週間以上持続する、または時間とともに悪化する場合は、何らかの合併症が起きている可能性があるため、歯科医師に相談することが重要です。
腫れを軽減するための方法
1. 冷却療法
- アイスパックの使用・・手術後最初の48時間は、患部を冷やすことで腫れと痛みを軽減できます。アイスパックや冷却ジェルを20分間当てて、20分間休むサイクルで繰り返し行うと効果的です。
- 注意点・・直接皮膚に氷を当てると凍傷のリスクがあるため、タオルなどで包んで使用しましょう。
2. 頭部の高い位置で休む
- 枕を高くする・・就寝時に頭を高く保つことで、血流を調整し、腫れを抑えることができます。追加の枕を使用して、頭部を心臓より高い位置に保つと良いでしょう。
3. 薬をのむ
- ・抗炎症薬の服用・歯科医師から処方された抗炎症薬や鎮痛剤を適切に服用することで、腫れと痛みを効果的にコントロールできます。
- 抗生物質・・感染予防のために抗生物質が処方される場合もあります。指示通りに正確に服用することが重要です。
4. 適度に休息をとる
- 安静に過ごす・・手術後は十分な休息を取り、激しい運動や労働を避けることで、身体の回復を促進し、腫れを抑えることができます。
5. 食事の工夫
- 柔らかい食事・・固い食べ物や熱い飲み物は避け、**冷たくて柔らかい食事**を摂取することで、患部への刺激を最小限に抑えられます。
- 水分補給・・十分な水分補給も回復を助ける重要な要素です。
注意が必要な症状
- 過度な腫れや痛み・・腫れや痛みが時間とともに悪化する場合、または激しい痛みを感じる場合は、感染や他の合併症が起きている可能性があります。
- 発熱・・高熱が出る場合も、感染の兆候と考えられます。
- 膿の排出・・手術部位から膿が出る場合は、直ちに歯科医師に連絡する必要があります。
- その他の異常・・吐き気、めまい、出血が止まらないなどの異常が見られる場合も、専門家の診察を受けることが重要です。
骨造成にはどんな方法があるの?
インプラント体を埋入するための骨(歯槽骨)が足りないと、どんなトラブルが起きるのでしょうか。インプラント体(人工歯根)はチタンでできており、生体親和性が大変高い、つまり体内で異物と認識されにくいというメリットを持っています。
ただ、顎の骨が痩せた方に骨造成せずに治療を行うと、インプラント体が患者さんのお口の中に飛び出てしまい、チタンが患者さんの口腔内で、大きくむき出しとなります。お口の中は雑菌や食べかす、歯垢などがある不衛生な環境ですので、そこにインプラントが露出しているのは、見た目だけでない大きなリスクがあります。歯周病菌に感染するとインプラント周囲炎にかかってしまい、インプラントの動揺(グラグラ)や脱落(抜ける)を起こすことに繋がります。
抜歯を放置したり、入れ歯を使用すると、あごの骨はどんどん痩せていきます。インプラントを行うためにはある程度の骨の高さや幅など、骨量が必要ですので、痩せた骨を増やさなければいけません。
骨造成とは、自家骨(じかこつ)移植やGBRなどによって、硬組織(骨)欠損部を造成、または増大するすべての手法を指します。自家骨とは、自分の骨のことで、自分から採取した骨を自家骨と呼びます。
GBR法とは?
GBRとは、Guided Bone Regenerationの略で、別名、骨再生誘導法とも呼ばれます。
この手法は、埋入したインプラントが歯槽骨の幅が足りないために歯茎から露出してしまった場合に用いられます。GBRでは、患者さんのお口の状態によって、どの素材を使うか異なることがあります。
- メンブレンという特殊な人工膜でかぶせて、それをスクリューで固定し動かなくする方法
- 骨補填材、もしくは自家骨を填入し、吸収性の高いメンブレンを置く方法
これらの処置のあと、歯肉を戻して縫合をしてから約4~6ヶ月後位経過すれば、骨量が再生し、インプラント治療を行うことが出来るようになります。メンブレンには、吸収性と非吸収性の性質を持つものがあり、骨をかなり増やさなければいけない場合は、非吸収性のメンブレンを使用します。非吸収性メンブレンを使用した場合は、身体に吸収されないので、メンブレンを除去する手術を後日行わねばいけません。
骨量が十分に増えたことをドクターが確認できれば、メンブレン除去手術と同時に、インプラント埋入手術を行う事が多いです。
サイナスリフトとは?
歯科におけるサイナスとは、副鼻腔の事を指す言葉です。サイナスリフト、つまり、上顎洞を押し上げる治療方法のことです。
副鼻腔とは、鼻腔に隣接した骨内に作られた空洞で、上顎洞を含めた4つの空洞の事を副鼻腔と呼びます。上顎洞と歯槽骨の狭間にある上顎洞粘膜(シュナイダー膜と専門的に呼びます)をインプラントが突き抜けてしまうと、上顎洞炎を発症してしまいます。上顎洞炎は蓄膿症のことです。
サイナスリフトは歯が生えていた箇所の側面の歯肉からアプローチします。骨の厚みが5mm程度より少ない方や、多くの歯を欠損されている症例の方が対象です。
例えば上顎奥歯の歯を失った患者さんのケースでは、サイナスと呼ばれる上顎の空洞が拡大します。上あごの歯肉の側面を四角く切開し、骨面を露出させます。歯槽骨を切り抜き、歯槽骨とシュナイダー膜を注意しながら剥がしてスペースを作ります。そのスペースができたところへ骨補填材や自家骨をいれ、約3~6ヶ月、骨の再生を待つという方法です。
ソケットリフトとは?
ソケットリフトは、サイナスリフトと同じく、上顎の骨を増加させるために用いられます。ソケットリフトは、サイナスリフト対象の方よりも、骨量がある方に適応される方法です。最も大きな違いは、ソケットリフトは抜歯の穴、もしくは歯が生えていた箇所から行う点です。では、歯の穴から行うメリットは何でしょうか。
それは、サイナスリフトと比較して、穴が小さいため、外科的侵襲(手術による体の変化)や細菌感染が起きにくいというメリットがあります。また、サイナスリフトより短時間で行えるので患者さん自身の負担を減らす事が出来るというのもあります。
デメリットとしては、サイナスリフトと比べて骨量を増やす範囲が限られるため、適応できる患者さんが少ないという事です。
インプラントの骨造成による腫れに関するQ&A
骨造成の主な手法として、自家骨移植やGBR(Guided Bone Regeneration)などが挙げられます。自家骨移植は、患者自身の骨を別の部位から取り出し、欠損部に移植する方法です。GBRは、特殊な人工膜や骨補填材を用いて骨の再生を誘導する手法で、インプラント周囲の骨を増やすために使用されます。
インプラント体を埋入するための骨が足りないと、インプラントが不安定になったり、患者の口腔内で露出してしまう可能性があります。骨が不足している場合、インプラントは適切に固定されず、歯周病菌に感染する恐れがあります。感染が進行するとインプラント周囲炎が発生し、インプラントが動揺したり脱落したりするリスクが高まります。
GBR法(Guided Bone Regeneration)は、別名「骨再生誘導法」とも呼ばれる骨造成の手法の一つです。この手法では、特殊な人工膜を使用して骨再生を促進します。メンブレンと呼ばれる人工膜をインプラント周囲に配置し、骨補填材や自家骨を使用して骨の増大を図ります。GBR法は、インプラントが歯槽骨の幅に収まらない場合に利用されます。
まとめ
インプラント手術を受けるにあたり、インプラントを埋入する部分の骨の幅や高さが足りない場合は、骨造成と呼ばれる、骨を増やす処置を行う必要があります。骨造成はオプションとなり、インプラントの料金+骨造成費用という料金設定になりますので、費用の負担が大きくなります。ただ、インプラントは医療費控除を使用すれば、支払った税金から還付を受けることが出来ます。