インプラントの基礎知識

インプラント治療の目的は機能性と審美性

インプラント治療の目的とは?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラント治療の目的は様々ですが、機能性と審美性にスポットを当ててご説明します。インプラントは歯を失った部分に人工歯根を埋め込んでその上に人工歯を取り付けて失った歯の機能を回復させる治療法です。よく噛めるようになると同時に、天然歯と変わらない程の美しい人工歯を作ることが出来ます。

インプラント治療の目的とは?

1. 失った歯の機能を回復させる

インプラント治療を受ける方は、虫歯や歯周病など、何らかの理由で歯を失ってしまった方です。インプラントの治療目的として殆どの方が考えられる点は、噛めるようになることと、歯がない箇所にきれいな歯を入れることではないでしょうか。

歯がない状態を続けていると噛めないだけでなく、お口の中では様々な変化が起こります。全ての歯は隣り合う歯と支え合って歯列を形成しています。その中の1本が欠けると、そのバランスが崩れてしまい、隣の歯が倒れてきたり、噛み合う相手の歯が伸びてきたりということが起こります。

それを防ぐために入れ歯、ブリッジ、インプラント等で歯を補うことになります。インプラント治療を理解するために、まず入れ歯とブリッジについてどのような利点欠点があり、噛めるようになるという目的が達成できるのかをみていきましょう。

2. 失われた歯の審美性を回復する

歯のイメージ

これまでのご説明で、インプラント治療の目的の一つである「失った歯の機能を回復させる」ということについてと、それに関連して入れ歯やブリッジとインプラントを比較しました。

インプラントのもう一つの大きな目的は、「失われた歯の機能と審美性を回復すること」です。

インプラント治療では人工歯根を骨に埋め込みます。歯茎の上に出ている上部構造は主にオールセラミックやジルコニアセラミックなどの材料を用いて作製されますので、前歯のように目立つ場所であっても隣の歯と殆ど見分けがつきません。

それは、最終的な上部構造を作製する前に色合わせをして、隣の歯に一番近い色で作られるからです。上部構造の形も、歯科技工士が一つひとつ丁寧に天然の歯と同じような自然な形に仕上げますので、天然の歯にかなり近い被せ物を作ることが可能です。

このように、審美的にとても美しい歯が入るというのも、インプラント治療の大きな目的であり、特徴の一つです。

インプラントは隣の歯を傷めない

インプラントの構造

以上の説明からおわかりのように、入れ歯やブリッジは失った歯の機能をいくらかでも回復させるための補綴治療であり、何年か経過するうちに隣の歯を失うリスクが高まってくることが気になります。

それに対し、インプラントは歯を失った部分にチタン製の人工歯根(インプラント体)を埋め込み、チタンが骨と結合したらインプラント体の上にアバットメントと呼ばれる土台を取り付け、その上に人工の歯を被せます。つまり、入れ歯やブリッジと歯構造が全く違います。

そのため隣の歯に負担をかけることがなく、骨に人工歯根を埋め込むことで骨がやせていくのも防げます。しかも、入れ歯やブリッジと違って人工歯根が噛む力をしっかり受け止めますので、インプラントは入れ歯やブリッジとは比べ物にならない程、よく噛めます。

インプラント治療は噛むことと審美性に優れているだけでなく、他の歯に影響を与えて歯の寿命を縮めないという大きなメリットがあります。

インプラント以外の治療法

入れ歯について

入れ歯(義歯)は失った歯の隣の歯にクラスプという金属製のバネをひっかけて

人工の歯を支えるものです。入れ歯での治療には以下にご紹介するようなメリット・デメリットがあります。

入れ歯のメリット

  • 自分で自由に取り外しが出来る
  • 治療期間が短い
  • 保険適用、自費診療で様々な材質が選べる

入れ歯のデメリット

  • あまり力を入れて噛めない
  • 入れ歯に慣れるまでは入れ歯の乗っている歯茎に痛みが出ることが多い
  • 毎日きれいに洗う必要がある
  • バネをかける歯に負担を与えて歯の寿命を縮める

バネをかける歯には噛むたびに義歯の分の力が加わります。また、入れ歯をつけたり外したりする度にもバネの力が加わります。

何年か使っている間に力がかかり続けて、歯が耐えられなくなるとグラグラし始め、やがて抜歯しなければならなくなります。そのため入れ歯はバネをかける歯を傷めるという心配がつきまといます。

そして何よりも、入れ歯ではしっかり噛めるようになるという治療目的を十分に果たせないかもしれません。

ブリッジについて

ブリッジは欠損した歯の両隣の歯を削って支台とし、連結式の義歯を装着するという方法で治療します。場合によっては歯髄(歯の神経)を取らなければなりません。ブリッジの代表的なメリット・デメリットは以下の通りです。

ブリッジのメリット

  • 入れ歯よりはよく噛める
  • 自費診療のセラミックで被せれば審美的にも美しい
  • 治療期間が比較的短い

ブリッジのデメリット

  • 両隣の健康な歯を削らなければならない
  • 一番奥の歯を失った場合など、ブリッジを用いることが出来ないケースがある

ブリッジは歯がない部分にはダミーの歯を入れて連結した被せ物を作ります。そのためダミーの歯にかかる力は両隣の歯が負担することになります。何年かすると両隣の歯への負担が重なり、歯がグラグラし始めることがあります。そうなると、また歯を抜かなければならなくなります。

また、神経を取ってしまった歯は天然歯と比べると細菌の感染に弱く、被せ物の下で二次虫歯を起こす危険もあります。神経を取った歯の根っこは折れやすくなっており、歯の根にひびが入れば抜歯しなければならなくなります。

ブリッジでちりょうした場合、しっかり噛めるようになるという治療目的はある程度果たせますが、ブリッジが出来ないケースがあります。

前歯のインプラント審美性についての注意点

前歯のインプラントは奥歯と比較して、審美性にこだわって美しく仕上げることが必要になります。前歯は奥歯とは異なり、歯だけでなく歯茎も他人からはっきり見えますので、歯の色や形だけでなく、歯肉の形にまでこだわって作られます。 インプラント治療の前に歯肉炎を起こしている患者さんの場合は、歯周病の治療をして歯茎の腫れを改善させてからインプラントの埋入手術を行います。

インプラント以外の歯の健康も大切ですので、インプラント体が骨と結合するのを待つ間も、メンテナンスを受けていただき、歯茎をきれいな状態にしてから上部構造を装着します。

事故などで歯茎が陥没したり、歯肉の退縮を起こしている場合は、歯肉の移植が必要になるケースもあります。いずれにしても、インプラントの上部構造を付けた時の仕上がりの美しさに対して妥協することなく、治療を進めてまいります。

噛める状態を長く維持できるようにインプラントをケアする

メンテナンス

しかしインプラント治療は、人工の歯を入れたらそれで終わりではありません。インプラントで人工の歯を作ることで、歯を失った部分を見た目もきれいでよく噛める状態に戻し、そのまま長く使えるようにケアをしていくのがインプラント治療の真の目的といえます。

そのためには、歯茎の病気である歯周病にかからないようにすることが大切です。インプラント治療後は数か月に一度は歯科医院に通ってメンテナンス(歯ぐきの検査やクリーニング)を受けていただきます。(当院ではメンテナンスに通って頂くことが、インプラントの保証を受ける際の条件になっています。)

インプラント患者さんのメンテナンスでは、インプラントだけでなく天然歯に対しても歯周病の検査や虫歯の有無などをチェックし、お口全体の健康に繋がるようにいたします。通常のメンテナンスは保険診療で行いますが、スクリュー固定式のインプラントの場合は、担当医の判断で1~2年に一度、取り外してインプラントの上部構造やアバットメント全体を洗浄する場合があり、その時は自由診療になります。

インプラント治療の目的は機能性と審美性に関するQ&A

インプラント治療の目的は何ですか?

インプラント治療の目的は、「失われた歯の機能と審美性を回復すること」です。インプラント治療ではオールセラミックやジルコニアセラミックなどの材料を用いて人工の歯を作製し、良く噛めるようになり、審美的に美しい歯を再現することが可能です。

前歯のインプラント治療で特に注意すべき点はありますか?

前歯のインプラントは審美性にこだわる必要があります。歯茎も他人によく見えるため、色や形だけでなく歯肉の形にもこだわって作製します。治療前に歯周病や歯茎の問題がある場合は、治療前にそれを改善する必要があります。

インプラント治療後のケアについて教えてください。

インプラント治療後は定期的なメンテナンスが重要です。数か月に一度の歯科医院でのメンテナンス(歯ぐきの検査やクリーニング)を受けることで、歯周病の予防やお口の健康を維持します。また、スクリュー固定式のインプラントの場合は、1~2年に一度、上部構造やアバットメント全体を洗浄することが必要な場合があります。

まとめ

インプラントについて知っていただくためには、どうしても入れ歯やブリッジとの違いについてご説明しなければなりません。それは、歯を失った時に行う主な治療法がインプラント、入れ歯、ブリッジの三種類で、どの治療が患者さんご自身に最適なのかを最終的に判断するために、三つの治療法を検討することが重要だからです。

インプラントの歯を長く維持するだけでなく、全ての歯を長く健康な状態に保っていくことに繋がるのがインプラント治療であり、もちろん噛めるようになるという目的も叶えます。

 

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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