インプラントをわかりやすく知りたい方や、向き・不向きがあるのか気になる方もおられるでしょう。今日はインプラントをより分かりやすくご説明します。
インプラント治療が向いている人とは?
全ての歯を失った人がインプラント治療を行えるのでしょうか。答えとしては、一部向かない人がおられます。 歯をどのようにして失ったかという原因も関係してきます。
事故による外傷で前歯の一部を欠損してしまったケースは、すぐに治療を開始できます。ただし、むし歯や歯周病などで歯を失われたケースの場合は、それらの治療が終了してからインプラント治療を開始することになります。
以下のような方は、インプラント治療に適しているとされています。
顎の骨の健康が良好な人
インプラントを支えるためには十分な顎骨の量と質が必要です。顎の骨がしっかりしている人は、インプラントが安定しやすいです。
歯を失っても他の歯を削りたくない人
ブリッジと異なり、インプラントは隣の健康な歯を削らずに独立した治療が可能です。
長期間の使用を希望する人
適切なケアを行えば、インプラントは非常に長持ちし、快適な噛み合わせを保つことができます。
インプラント治療が不向きな人、注意が必要な人とは?
インプラント治療が不向きな人、また、インプラント治療を行う際に慎重な対応が必要な人は、主に以下のような方です。
- ビスフォスフォネート製剤の服薬がある骨粗しょう症の方
- 血糖値のコントロールが上手くいっていない糖尿病の方
- 高血圧・狭心症・心筋梗塞などの全身疾患などの持病がある方
- 歯周病の方
- 喫煙の習慣をやめられない方
- 顎の骨が不足している方
全身疾患がある方
骨粗しょう症や糖尿病などの全身疾患の持病があり、お薬を毎日服用している患者さんは、通院先の担当医へ相談をすることが大切です。
- インプラント治療をしても良いか
- 術前術後は服薬を止めても可能か
これらの許可を担当医よりもらう必要があります。この確認を怠ると、他のクリニックで顎骨壊死や出血が止まらないなどの重大な事故につながるからです。
全身疾患を持っている人
糖尿病や骨粗鬆症など、全身の健康状態によっては、インプラントの定着が難しいことがあります。事前に医師と相談し、適切な治療方針を立てる必要があります。
歯周病がある方
歯周病が進行している場合、インプラントの周囲の骨や歯茎が影響を受け、インプラントがうまく機能しないことがあります。歯周病治療を行ってからインプラント治療を進めることが推奨されます。
- 歯周病の治療よりも先にインプラントを埋め込んでしまう
- 歯周病の場合は歯周組織に細菌感染が起きている
- インプラントが動揺し脱落するインプラント周囲炎になる
- インプラントの再手術が必要となり治療の期間や料金が再度かかる
このようなリスクを回避するためにも、歯周病の治療を終了させてから、インプラントの治療を行いましょう。
タバコを吸う方
たばこに関しては血液の流れが悪くなるため、当院ではインプラントをする前後で禁煙していただくようおすすめしております。ヘビースモーカーの方を例に挙げてご説明します。
- タバコを吸うことで血管が収縮します
- 血管の中の酸素や栄養素が少なくなります
- 血流が悪くなるため骨とインプラントが結合できない
- インプラントが結合できても外れやすくなります
インプラントに向かない生活習慣がある方は、それらを改善することでインプラント治療が可能になる可能性があります。
しかし、インプラント治療が終了したからもう大丈夫だろうと過去の生活習慣(喫煙など)に戻ってしまうと、その時からインプラントに悪影響を与えます。
顎の骨が不足している方
骨量が少ない場合、インプラントを安定させることが難しくなります。ただし、骨移植などの処置によって改善できるケースもあります。
インプラントとは?
体内に埋め込むという意味で、何らかの原因で身体の機能を失った場合、その部分の機能を回復させるために行う治療法です。心臓に入れるペースメーカーや、人工関節もインプラントです。
歯科医院でのインプラントは、「インプラント体(人工歯根)」「アバットメント」「上部構造(被せ物)」の3つの部品で成り立っています。
インプラント治療を行うことで、食べ物を噛むことやすりつぶすことの咀嚼機能の改善が可能となり、食生活を楽しむことができます。
インプラントの歴史
インプラントの歴史は意外と古く、紀元2~3世紀ごろに鉄製のインプラントが埋まった人骨が出ています。ちゃんと使用したとわかるインプラントは7世紀のマヤ文明で、インプラントが貝殻で作製され、歯石などもインプラントに付着して人骨とともに発掘されました。
近年でのインプラントの歴史は、1913年に円筒型のインプラントが発明され、1930年代にスクリュー型、1940年代にらせん型のインプラントが開発されました。
現在行われているインプラント治療の歴史という点では、1952年にブローネマルク教授がチタンは骨と結合するという発見をしました。これはオッセオインテグレーションと呼ばれるもので、チタンは人体に影響を及ぼさない生体親和性の高い金属で、近代のインプラント治療に大きく影響を及ぼしたと言われています。
歯を失った時の3つの治療法
欠損部分に歯を入れる治療を義歯治療と呼びます。
- 入れ歯
- ブリッジ
- インプラント
インプラントは義歯治療の中でも、審美性と咬合力に優れた治療法です。義歯の治療にはこの三種類がありますが、入れ歯やブリッジは隣の歯に大きな負担をかけます。入れ歯の場合は隣り合う歯にバネをかけ、ブリッジの場合は隣の歯を削ります。将来的に隣の歯をダメにしてしまい、またその隣の歯と残存歯に影響を及ぼしますし、噛む力が弱いため食事を楽しむことができません。
インプラントは、顎骨(あごの骨)に直接人工歯根を埋め込んで結合を待ち、人工歯根にアバットメントを立ててクラウンを被せる構造です。そのため、インプラントは天然歯と同じ噛み心地を味わえます。また、セラミックなどのかぶせ物を選択すると、永久歯と変わらない美しさを保つことができます。
インプラントの向き・不向きに関するQ&A
インプラント治療は歯を失った人のうち、事故による外傷で前歯の一部を欠損してしまったケースや、むし歯や歯周病による歯の喪失後に治療が終了したケースに適しています。
インプラント治療をする際に注意が必要な特徴として、ビスフォスフォネート製剤の服薬がある骨粗しょう症の患者さん、血糖値のコントロールが上手くいっていない糖尿病の患者さん、全身疾患を持つ患者さん、歯周病の患者さん、喫煙者が挙げられます。
インプラント治療におけるタバコの影響は大きく、喫煙によって血液の流れが悪くなり、骨とインプラントの結合が妨げられる可能性があります。また、インプラントの結合ができても外れやすくなる可能性もあります。したがって、治療前後の禁煙が推奨されます。
まとめ
インプラントの治療は保険適用外であるため、高い費用がかかります。また、検査を行うための歯科用CTや設備が整っている歯科医院で、経験の豊富な歯科医師にしてもらわなければ、安全性の高いインプラント治療を行うことはできません。