インプラント

全ての歯をつくる「総インプラント」とは?メリット・デメリットと治療の流れを解説

全ての歯をつくる「総インプラント」とは?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

総インプラントとは何ですか?

総インプラントとは、すべての歯をインプラントで再建する治療方法のことです。

「総入れ歯は違和感がある」「しっかり噛める歯を取り戻したい」

そう感じている方にとって、総インプラント(フルマウスインプラント)は大きな選択肢となります。

この治療では、上下いずれか、または両方の顎にすべての歯をインプラントで支えるため、見た目・機能ともに自然な口元を再現できます。

この記事はこんな方に向いています

  • 総入れ歯が合わず、ずれや痛みを感じている方
  • 歯をほとんど失ってしまい、噛む力を取り戻したい方
  • 長期的に安定する治療方法を検討している方

この記事を読むとわかること

  1. 総インプラントの基本構造と特徴
  2. 他の治療法(入れ歯・ブリッジ)との違い
  3. 向いている人・向いていない人
  4. 治療の流れと期間
  5. 治療後のメンテナンスと注意点

 

総インプラントとはどんな治療?

総インプラントとは、歯をすべて失った方に対し、人工歯根(インプラント)を顎の骨に埋め込み、その上に固定式の人工歯を装着する治療です。見た目や噛む力が天然の歯に近く、入れ歯のようなズレや違和感が少ないことが特徴です。

総インプラントは、すべての歯を人工歯根で再建する治療です。

治療の基本構造

インプラントの構造
  1. インプラント体(人工歯根) → チタン製のネジを骨に埋め込む。
  2. アバットメント → 人工歯根と被せ物をつなぐパーツ。
  3. 人工歯(上部構造) → 見た目の歯を再現する部分。

これらを組み合わせることで、失った歯をしっかりと支える構造になります。

入れ歯との大きな違い

比較項目 総入れ歯 総インプラント
安定性 外れやすい・ズレやすい 顎の骨に固定され安定
噛む力 約20〜30% 約80〜90%まで回復
見た目 やや人工的 自然で審美性が高い
違和感 強い場合がある 少ない
メンテナンス 定期調整が必要 定期健診と清掃で長期維持可能

総インプラントは、単に「歯を作る」だけではなく、骨・歯肉・見た目のバランスを総合的に再建する治療です。

なぜ総入れ歯よりも総インプラントが選ばれるの?

総入れ歯に比べ、総インプラントは噛む力・安定性・見た目・発音のすべてで優れています。特に、食事や会話の自然さを取り戻したい方には最適です。

総入れ歯よりも機能的・審美的に優れているため選ばれています。

総インプラントが選ばれる主な理由

  1. 強く噛める → ステーキやナッツなども問題なく噛める。
  2. 見た目が自然 → 歯肉との境目も美しく、笑顔が自然に。
  3. 発音が安定 → 入れ歯のズレによる発音障害がない。
  4. 骨の吸収を防ぐ → インプラントが骨に力を伝え、骨の退縮を防ぐ。

心理的な満足度の高さ

多くの患者さんが「もう一度しっかり噛める」「人前で笑えるようになった」と感じています。総インプラントは生活の質(QOL)を大きく改善する治療といえます。

関連ページ:入れ歯とインプラントの違いとは?

総インプラントの種類と治療方法の違いは?

オールオン4

総インプラントには、「All-on-4」「All-on-6」「フルマウス個別インプラント」など複数の方法があります。骨の状態や希望する見た目、費用によって選択されます。

本数や構造により複数の治療法があります。

代表的な治療法

  1. All-on-4(オールオンフォー)

     → 4本のインプラントで全歯を支える省本数タイプ。
  2. All-on-6

     → 6本でより高い安定性を確保する方法。
  3. フルマウス個別インプラント

     → すべての歯を1本ずつインプラントで再建する方式。

それぞれの特徴まとめ

治療法 インプラント本数 特徴 費用感
All-on-4 4本 短期間・費用を抑えやすい 約200~350万円
All-on-6 6本 より強固で長期安定 約300~450万円
フルマウス個別 12~14本 構造上、天然歯に最も近い 約500万円以上

骨量や健康状態、希望する見た目に応じて、歯科医師と相談のうえ最適なプランを選択します。

関連ページ:オールオン4-総入れ歯に代わる、4本のインプラントで12本の歯を支える新しい選択肢

どんな人に総インプラントは向いているの?

総インプラントは、ほとんどの歯を失った方や入れ歯に不満がある方に適しています。ただし、全身疾患や骨量の不足がある場合には注意が必要です。

歯を多く失った方や入れ歯が合わない方に向いています。

向いている方

  • 総入れ歯のズレ・痛みに悩んでいる
  • 見た目・発音を自然に戻したい
  • 顎の骨量が十分にある
  • 喫煙習慣がない、または控えられる

注意が必要な方

  • 骨粗しょう症や糖尿病のコントロールが不十分な方
  • 重度の歯周病が残っている方
  • 清掃習慣に自信がない方

こうした場合でも、骨造成や治療前の全身管理によって、インプラントを安全に行えるケースもあります。

治療の流れと期間はどのくらい?

カレンダー

総インプラントの治療は、診査・計画から手術・人工歯の装着までおよそ3?8ヶ月が一般的です。骨造成を行う場合はさらに期間が延びます。

治療期間は約3~8ヶ月が目安です。

治療の流れ

  1. カウンセリング・診査

      → CT撮影で骨量や神経の位置を確認。
  2. 治療計画の立案

      → 3Dシミュレーションで正確な埋入位置を設計。
  3. インプラント埋入手術

      → 局所麻酔下で人工歯根を顎骨に固定。
  4. 治癒期間(3~6ヶ月)

      → 骨とインプラントが結合するのを待つ。
  5. アバットメント装着・人工歯作製

      → かみ合わせを確認し、見た目を仕上げる。
  6. メンテナンス開始

      → 定期健診で清掃状態や骨の安定を確認。

症例によっては、即日仮歯を装着できる「即時負荷インプラント」も可能です。

関連ページ:奥歯のインプラント治療の流れ

費用の目安と医療費控除について知りたい

価格

総インプラントは自由診療であり、費用は治療法によって大きく異なります。ただし医療費控除の対象となるため、確定申告で税金の一部が戻る場合があります。

費用は高額ですが、医療費控除で負担を軽減できます。

費用の目安(片顎)

  • All-on-4 → 200~350万円
  • All-on-6 → 300~450万円
  • フルマウス個別 → 500万円以上

医療費控除のポイント

  • インプラント治療は「治療目的」であれば対象
  • 通院交通費も控除可能(公共交通機関利用時)
  • 医師発行の領収書を必ず保管

高額な治療であっても、税制面でのサポートを活用すれば実質負担を減らせるため、事前に確認しておくと安心です。

関連ページ:インプラントの費用について

総インプラント後に大切なケアと定期健診

健診

総インプラントの寿命を延ばすには、日々の歯磨きと定期健診が不可欠です。歯垢の蓄積を放置すると「インプラント周囲炎」を起こすリスクが高まります。

ケア不足はトラブルの原因になります。

日常ケアのポイント

  1. 歯磨き → 歯ブラシと歯間ブラシで清掃
  2. マウスウォッシュ → 殺菌効果で補助的に使用
  3. 定期健診 → 3~6ヶ月に1回が目安

インプラント周囲炎を防ぐために

  1. 歯垢を残さない
  2. 歯肉の炎症を早期に発見
  3. 専門的なクリーニング(PMTC)を受ける

総インプラントは正しいケアを続けることで、10年以上の長期安定が十分可能です。

関連ページ:インプラントを長持ちさせるための定期健診

まとめ

総インプラントで“噛める幸せ”を取り戻そう

総インプラントは、入れ歯に不満がある方や、しっかり噛める歯を取り戻したい方にとって非常に有効な治療です。初期費用は高めでも、長期的な満足度と機能回復の面では優れています。

総インプラントは、見た目・機能・満足度を総合的に高める治療です。

ポイントのおさらい

  • 骨に固定するため安定性が高い
  • 噛む力・見た目・発音が自然に戻る
  • 適切なケアで10年以上の長期維持が可能

総インプラントは、「もう一度しっかり噛みたい」「自分の歯のように笑いたい」という方にとって、人生の質を取り戻す有力な選択肢といえます。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

▶プロフィールを見る