インプラント

インプラントに副作用はある?安全性と注意すべきリスク

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラントに副作用はあるの?

インプラント自体に明確な副作用はほとんどありませんが、手術や術後の経過で一時的な症状が出ることがあります。

インプラント治療は「第二の永久歯」とも呼ばれるほど、見た目・機能ともに優れた治療法です。しかし、「副作用があるのでは?」と不安に感じる方も少なくありません。こ

この記事はこんな方に向いています

  • インプラントの安全性について不安がある方
  • 副作用や合併症の違いを正しく理解したい方
  • インプラント手術後の経過や注意点を知りたい方

この記事を読むとわかること

  1. インプラント治療における「副作用」の正しい定義
  2. 術後に起こりうる一時的な症状やリスク
  3. 安全に治療を受けるためのポイントと日常ケアの方法

 

インプラントには薬のような「副作用」はほとんどない

インプラントと天然歯

インプラントは体に埋め込む人工の歯根ですが、医薬品のような化学的な副作用はほとんどありません。ただし、手術を伴うため、麻酔や感染、炎症など「身体反応」として一時的な症状が出ることはあります。これらは「副作用」というよりも「手術後の合併症」や「生体反応」として理解すべきです。

インプラントに薬のような副作用はなく、起きるのは一時的な身体反応です。

インプラント体は主にチタンという金属で作られています。チタンは生体適合性が非常に高く、人工関節などの医療分野でも広く使用されています。そのため、体が異物として強く拒絶することはほとんどありません。

ただし、以下のような一時的な反応が見られる場合があります。

  • 手術後の腫れや痛み
  • 一時的な出血
  • 麻酔や鎮痛薬による軽い吐き気や倦怠感

これらは数日で治まることが多く、適切なアフターケアを行えば深刻な副作用にはなりません。

インプラント治療の主な身体反応とリスク

インプラントで起こりうるいくつかの副作用とリスクについてご説明します。

1. 術後の腫れ・内出血がある

インプラント手術の際に起こるというよりも、あごの骨が少ない方に起こりやすい症状です。あごの骨が少ない方は、インプラントをご希望されても、直ちに治療を行えません。先に、あごの骨を増やしてから、インプラント治療を行います。

あごの骨が少ないまま、無理にインプラント治療を行うと、フィクスチャーという人工歯根が口腔内に出してしまいます。安定性という面はもちろん、衛生状態という面においても良くありません。

しっかりと噛む事が出来るインプラントにするため、あごの骨が少ない方に厚みを出すため、増骨する処置を行うときに起こりやすい症状です。

2. 骨とインプラントが結合しない

あごの骨の量についてはCTで撮影する事により確認を行いますが、稀にあごの骨の質が悪い方は結合しない状態になります。また、インプラントを入れるために注水しながらドリルを使用しますが、水の量が少ないとオーバーヒートという現象が起こります。簡単に言えば骨がやけどした状態になってしまい、インプラントが結合できない原因になります。

この失敗は、特に喫煙者や糖尿病患者、骨粗鬆症を患っている人に多く見られるリスクです。

3. 神経を傷つけてしまい麻痺が起こる

上顎には、上顎洞という穴が鼻の横にありますが、下顎の骨には血管や神経が通っている箇所(下顎管)があります。その箇所にインプラント治療で穴を開けてしまうと、動脈や静脈の損傷による過大な出血や痛み、神経を傷つけることによる麻痺が起こってしまいます。

インプラント治療のための精密検査(CT撮影)で、下顎管の位置を歯科医師が確認することが、肝要です。 万が一、神経損傷による麻痺が起きたケースの治療法は、神経を回復するために速やかに投薬(ビタミンB12やステロイドホルモンなど)を行い、治療をします。

神経損傷は通常、術前の正確な診断と計画で回避できますが、万が一発生した場合、症状が長期間にわたり続くこともあります。

4. 感染症

インプラント手術では、歯ぐきや骨に穴を開けるため、手術後に感染症が発生するリスクがあります。感染が発生すると、患部が腫れたり、痛みを伴うことがあります。特に、免疫力が低下している患者や口腔衛生が不十分な場合は、感染リスクが高まります。

5. 上顎洞の損傷

上顎の歯にインプラントを埋め込む際、上顎洞(鼻腔の一部)が近くにあるため、上顎洞を傷つけるリスクがあります。その結果、上顎洞炎や鼻の症状を引き起こす可能性があります。こうしたリスクを避けるために、術前のCTスキャンなどで骨の厚さや位置を正確に把握することが重要です。

6. 骨量不足によるリスク

インプラントを安定させるためには、十分な骨量が必要です。しかし、骨量が不足している場合、インプラントがしっかりと固定されない可能性があります。このため、骨移植やサイナスリフトなどの補助的な処置が必要になることがありますが、これらの処置もまた追加のリスクを伴います。

7. インプラント周囲炎

インプラント手術直後は、インプラント部分の歯磨きができないので、殺菌効果のあるうがい薬で口をゆすいでもらいます。このうがいを忘れて寝てしまうと、口腔内の最近は増殖し、感染を引き起こす可能性があります。歯周病に感染してしまうと、インプラント埋入部分が固定されずぐらつき、脱落を起こしてしまいます。これをインプラント周囲炎と呼びます。

「副作用」と「合併症」は異なるものとして理解しよう

副作用とは薬や治療が本来の目的以外に悪影響を与える現象を指します。一方、インプラントの場合は「手術に伴う合併症」や「術後反応」が該当します。混同してしまうと、過剰な不安につながるため、違いを理解しておくことが大切です。

副作用ではなく、手術特有の合併症が起こる場合があります。

副作用と合併症の主な違い

項目 副作用 合併症
原因 薬や治療法の作用そのもの 手術や経過中の予期せぬトラブル
起こる時期 治療中・直後 手術後・回復期間中
対応 投薬中止・薬変更 再治療・抗生剤・経過観察など
インプラントの場合 ほぼなし 炎症、感染、神経圧迫などが稀に発生

このように、インプラント治療は「副作用」というよりも「外科手術に伴うリスク」として捉える方が適切です。

インプラント手術後に起こりやすい一時的な症状とは?

インプラント手術後には、腫れ・痛み・内出血などの一時的な症状が見られることがありますが、これは正常な治癒過程の一部です。ほとんどの症状は1週間程度で改善します。

術後の一時的な反応は自然な治癒の一部です。

よくある術後症状

  1. 腫れや痛み → 手術による炎症反応で、2~3日がピーク。冷却で軽減できます。
  2. 内出血 → 頬やあごの下に軽いあざが出る場合がありますが、自然に吸収されます。
  3. 出血 → 軽いにじみ程度の出血は翌日までに治まります。
  4. 違和感 → 口の中に新しいものがあることで、一時的に異物感が出ることがあります。

これらの症状は通常の回復過程であり、副作用とは異なります。不安な場合は担当医に早めに相談することで安心して経過を見守ることができます。

まれに起こる合併症とその対処法

ごく稀に、インプラント周囲で炎症や神経への圧迫、骨との結合不良などが起こる場合があります。これらは適切な処置を行えば回復可能です。

稀な合併症も、早期対応で改善できます。

代表的な合併症

  1. インプラント周囲炎

      → 歯垢や汚れが溜まることで起こる炎症。定期的な健診と丁寧な歯磨きで予防できます。
  2. 神経損傷

      → 下あごの神経に近い部位に埋入する場合に、しびれが出ることがあります。CT撮影による事前診断で防止可能です。
  3. 骨との結合不良(オッセオインテグレーション不全)

      → 骨が十分にインプラントを支えられない場合、固定が弱くなることがあります。再埋入で対応するケースもあります。
  4. 上顎洞炎

      → 上あごのインプラントが副鼻腔に近い位置に埋入された場合、まれに炎症が起きることがあります。

いずれのケースも早期発見と定期的なメンテナンスで改善・予防が可能です。副作用と違い、合併症は対処次第で長期的な影響を残さないことが多いです。

アレルギー反応はあるの?

チタン

チタンは生体親和性が高いため、金属アレルギーが起こることは非常にまれです。しかし、金属アレルギーを持つ方は事前検査を受けておくと安心です。

チタンのアレルギーはほとんど起きませんが、検査をしておくとより安全です。

対策ポイント

  1. 金属アレルギー検査を事前に行う

      → 皮膚科などでパッチテストを受けておくと安心です。
  2. ジルコニア製インプラントを選択

      → 金属アレルギーの方には、金属を使わないジルコニア素材も選択できます。

アレルギーが起きる可能性は極めて低いですが、事前の問診と検査によってリスクをゼロに近づけることができます。これも「副作用」ではなく「体質に合わせた対応」が重要です。

関連ページ:インプラントの材質であるチタンの特性

副作用・合併症を防ぐためにできること

副作用を避けるには、手術前後の衛生管理と定期的なメンテナンスが欠かせません。特に歯垢のコントロールと生活習慣の見直しが大きなポイントです。

ケアと定期健診で副作用のようなトラブルを防げます。

自分でできる予防策

  1. 歯磨きを丁寧に行う

      → インプラント周囲に歯垢を残さないよう、柔らかめの歯ブラシやデンタルフロスを使用します。
  2. 定期的な健診を受ける

      → 年3〜4回のプロケアで、早期の炎症を防ぎます。
  3. 禁煙・節酒

      → 喫煙は血流を悪化させ、インプラントの定着を妨げる原因になります。
  4. 体調管理

      → 糖尿病などの全身疾患がある方は、治療前に主治医と連携することが重要です。

インプラントを長持ちさせ、安全に使うためには、毎日のケア+歯科医院でのサポートが不可欠です。これによって副作用や合併症のリスクを最小限に抑えることができます。

インプラントの「副作用」は誤解されやすいが、正しい知識で安心できる

インプラントには薬のような副作用はなく、起きるのは手術に伴う一時的な身体反応やまれな合併症です。生体親和性が高い素材を使い、正しい診断・ケアを行えば、安全で長期的な機能回復が期待できます。

副作用を恐れず、正しい理解とケアで安心して治療を受けましょう。

まとめ

インプラントの副作用に関するポイント

内容 解説
薬のような副作用 ほとんどない
起こる可能性のある症状 腫れ・痛み・一時的な出血など
まれなリスク 感染・炎症・神経への圧迫
予防法 歯磨き・健診・禁煙・体調管理
素材の安全性 チタン・ジルコニアは高い生体適合性

インプラントは失った歯を補うための大変優れた治療法です。インプラント手術はきちんとした環境の歯科医院で、経験豊富な歯科医師が丁寧に手術を行えば、リスクをなるべく低下させることができます。インプラントを検討される際は、何院かカウンセリングに行き、治療方針やクリニック、医師やスタッフに信頼がおけるか、相談の際に確認することをおすすめします。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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