インプラント

更年期にインプラントをしても大丈夫?

更年期にインプラントをしても大丈夫?

更年期はホルモンバランスが変化し、骨密度の低下や歯周病のリスクが高まる時期です。しかし、ご安心ください。更年期だからといって、インプラント治療ができないわけではありません。適切な対策を講じることで、安全にインプラントを受けることが可能です。更年期の体の変化がインプラントに与える影響や、成功率を高めるためのポイントをご説明します。

更年期とは?歯や骨にどんな影響があるの?

更年期がインプラントに与える影響

更年期とは、女性が50歳前後になると迎えるホルモンバランスの変化に伴う時期のことです。個人差はありますが、一般的に45歳~55歳頃に訪れることが多く、閉経前後の10年間を指します。

この時期は、女性ホルモンの一種である エストロゲン(卵胞ホルモン) の分泌が急激に減少し、それに伴い 体や口腔内にさまざまな変化 が現れます。特に、骨密度の低下や歯周病リスクの増加は、インプラント治療に大きな影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。

更年期に起こる代表的な変化として、以下の点があげられます。

エストロゲンの減少

女性ホルモンであるエストロゲンが急激に減少し、骨密度が低下しやすくなります。

エストロゲンは、女性の健康を支える大切なホルモンで、骨の形成や代謝、皮膚の弾力維持、血流の調整などに関与しています。しかし、更年期に入るとこのエストロゲンの分泌が急激に減少し、以下のような影響を及ぼします。

骨の新陳代謝の低下

骨は、破壊と再生を繰り返しながら健康な状態を保っていますが、エストロゲンが減少すると 骨の再生スピードが落ちる ため、結果として 骨密度が低下 します。

血流の低下

エストロゲンは血管の拡張にも関与しているため、減少すると 血流が悪くなり、歯茎に栄養が届きにくくなる ことがあります。その結果、歯茎が弱り、炎症が起きやすくなります。

コラーゲンの減少

エストロゲンの減少によって コラーゲンが失われると、歯茎の弾力がなくなり、下がりやすくなる 傾向があります。これにより、歯の根元が露出し、知覚過敏や虫歯のリスクが高まります。

骨粗しょう症のリスク増加

骨密度が低下すると 骨粗しょう症 のリスクが高まり、それが顎の骨にも影響を与えます。

顎の骨が脆くなる

骨粗しょう症が進行すると インプラントを支える骨が不足 し、インプラントがうまく定着しない可能性があります。通常、インプラントは顎の骨と結合することで固定されますが、骨密度が低いと結合が不十分となり、治療の成功率が下がることがあります。

インプラント手術後の骨吸収

インプラントを埋め込んだ後、顎の骨が吸収されてしまうと、固定が不安定になり、最悪の場合 インプラントが脱落 することもあります。骨粗しょう症の人は 術後の経過を慎重に見守る必要がある のです。

骨補填材の使用が必要になる場合も

骨密度が低い場合、インプラントの前に 骨を増やす手術(骨造成) を行うことがあります。これにより、インプラントがしっかり固定される環境を整えることができます。

歯茎の変化

更年期には、唾液の分泌が減少し、口腔内が乾燥しやすくなります。これによって以下のような影響が考えられます。

口腔乾燥症(ドライマウス)のリスクが高まる

唾液には、 細菌を洗い流す作用 や 歯を保護する効果 があります。しかし、更年期には唾液の分泌が減るため、 口の中が乾燥し、細菌が繁殖しやすい環境になる のです。

歯周病のリスク増加

口腔内の乾燥によって 歯垢(プラーク)がたまりやすくなり、歯周病が悪化しやすくなります。歯周病が進行すると、歯を支える骨が溶けてしまい、最終的には歯が抜け落ちることもあります。インプラント治療を行う際は、 事前に歯茎の状態をしっかり確認し、必要なら歯周病治療を受けることが重要 です。

歯茎が痩せるとインプラントの見た目にも影響

歯茎が痩せると、 インプラントの歯が長く見えてしまう ことがあります。特に前歯のインプラントでは審美性にも影響するため、歯茎の健康管理が不可欠です。

免疫力の低下

更年期には、免疫機能も低下するため、口腔内の細菌と戦う力が弱くなります。その結果、以下のようなリスクが高まります。

歯周病や口内炎が治りにくくなる

免疫力が低下すると、一度発生した炎症がなかなか治らず、 慢性的な歯茎の腫れや口内炎 に悩まされることが増えます。インプラントを埋め込んだ後も 感染リスクが高まるため、術後のケアがより重要 になります。

インプラント周囲炎のリスク

インプラントを入れた後に発生する インプラント周囲炎 も、更年期の方には注意が必要です。これは、歯周病と同じように 歯茎が炎症を起こし、最悪の場合インプラントが脱落してしまう 病気です。

感染症にかかりやすくなる

手術後の回復力が低下し、 傷口が治るのに時間がかかる ことがあります。特に糖尿病や高血圧などの持病を抱えている場合は、治癒が遅くなるため、 医師と相談しながら進めることが重要 です。



更年期には、 エストロゲンの減少や骨密度の低下、免疫力の低下 などが起こり、口腔内にもさまざまな影響を及ぼします。

特に注意すべき点

  • 骨粗しょう症が進行している場合は 骨密度の確認が必須
  • 唾液の分泌量が減少するため ドライマウス対策が重要
  • 免疫力の低下による 感染リスクを考慮する
  • 歯周病が悪化しやすいため 事前に歯周病治療を受ける

このような影響を理解し、適切な対策を講じることで、更年期でもインプラント治療を安全に受けることが可能 です。

更年期でもインプラント治療は可能?

更年期でもインプラント治療は可能

結論から言うと、更年期でもインプラント治療を受けることは可能です。ただし、一般的な年齢層と比べていくつかのリスクや考慮すべきポイントがあります。

更年期でもインプラントができる理由

インプラント治療は年齢制限がない

健康な歯茎と十分な骨量があれば、更年期でも問題なくインプラントができます。

適切な骨の管理をすれば問題なし

骨密度が低下していても、骨補填材や骨造成手術を併用することで、インプラントを支える強度を確保できます。

歯周病リスクを事前にケアできる

事前に歯科で歯周病のチェックをし、適切なケアを行えば、インプラント治療の成功率を高めることができます。

しかし、更年期特有の問題を考慮し、慎重に進めることが重要です。

骨粗しょう症とインプラントの関係

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更年期の女性にとって最も気になるのが **「骨粗しょう症」** との関係です。骨粗しょう症になると、インプラントを埋め込む顎の骨の強度が低下し、インプラントがしっかり固定されない可能性があります。

骨粗しょう症のリスクがある方は要注意

骨密度が著しく低下している方

インプラントを支える顎の骨が不足していると、治療の成功率が下がります。

ビスホスホネート製剤を服用中の方

骨粗しょう症の治療薬である「ビスホスホネート製剤」は、骨の代謝を抑えるため、インプラントと骨の結合が難しくなることがあります。

過去に骨折や骨のトラブルがあった方

骨密度の低下が進んでいる可能性があるため、事前の検査が必須です。

骨粗しょう症の方がインプラントをする際の対策

  • 事前に骨密度を測定する
  • 主治医と歯科医の両方に相談する
  • 骨補填材を使用した治療を検討する

骨粗しょう症の診断があっても、適切な対応をすればインプラントは可能です。歯科医としっかり相談しながら進めましょう。

更年期にインプラントを受ける際の注意点

更年期のインプラント治療では、以下の点に特に注意が必要です。

歯周病のチェックをする

歯茎の状態が悪いと、インプラントがうまく定着しないことがあります。

骨密度を確認する

顎の骨が十分にあるか、必要なら骨造成を検討する必要があります。

糖尿病や高血圧などの持病がないか確認する

更年期には生活習慣病のリスクも高まるため、全身の健康状態を確認してから治療を受けるのがベストです。

術後のケアをしっかり行う

免疫力が低下していると感染のリスクがあるため、歯科医院での健診や自宅での歯磨きを徹底しましょう。

これらのポイントを押さえておけば、更年期でも安心してインプラント治療を受けられます。

更年期のインプラント治療を成功させるためのポイント

成功率を高めるためには、以下の対策が有効です。

1. 歯科医院選びを慎重に行う

  • インプラントの実績が豊富な歯科医院を選ぶ。
  • 骨造成などの補助治療ができる医院を選ぶ。

2. 術前にしっかり検査を受ける

  • 骨密度測定、歯周病チェックを必ず行う。
  • 内科の主治医と相談し、体調管理を徹底する。

3. 術後のメンテナンスを徹底する

  • 定期的な健診を受け、インプラント周囲炎を予防する。
  • 口腔内の清潔を保つために歯磨きを徹底する。

これらの対策を行えば、更年期でも安心してインプラントを受けられます。

まとめ

更年期でも適切な対策をすればインプラントは可能! 更年期だからといって、インプラント治療を諦める必要はありません。以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 骨密度のチェックをする
  • 歯周病を事前に治療する
  • 適切な歯科医院を選ぶ
  • 術後のケアを徹底する

適切な準備をすれば、更年期でも安全にインプラント治療を受けられます。お悩みの方は、まずは歯科医院で相談してみましょう!

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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