
インプラント治療前には虫歯や歯周病の治療は必要なのかについてご説明します。基本的には事前に口腔内の環境を整えておくことがインプラント治療成功の秘訣です。
目次
インプラント治療前の虫歯治療と歯周病治療

虫歯や歯周病など、お口の中にトラブルがある場合は、インプラント治療の前にまず治療を行います。成人の8割が歯周病にかかっているといわれており、日本人が歯を失うトップは歯周病ですので、インプラント治療の前には殆どの方に歯のクリーニングを受けて頂いています。
特に歯周病で歯を失った方には、お口の中の歯周病菌を減らすための治療が必要です。歯周病は歯周病菌による感染症ですので、お口全体に広がっていると考えられます。
更に、歯周病で歯を失うほどの重症の方の場合は、他の歯も歯周病が進行している可能性がありますので、事前に治療が必要になります。
虫歯や歯周病を治すべき理由
インプラント治療を行う前に、虫歯や歯周病を治療することは必須です。以下の理由から、これらの問題が解決されるまでインプラント治療を進めるべきではありません。
1. インプラント手術後の感染リスクを軽減させる
インプラント手術は外科的処置を伴います。もし、口腔内に虫歯や歯周病といった感染源がある場合、手術中や術後に感染が広がり、インプラントが失敗するリスクが高まります。特に、歯周病が進行している場合、インプラント周囲にも炎症が広がる可能性があるため、非常に危険です。
2. 骨を健康に保つため
インプラントが成功するためには、顎骨の健康が重要です。歯周病が進行すると、顎骨が徐々に吸収されてしまい、インプラントを支える十分な骨が不足することがあります。事前に歯周病を治療し、骨の健全性を維持・回復することで、インプラントがしっかりと固定される可能性が高まります。
3. インプラントを長期的に維持するため
インプラント治療は長期にわたって機能することが期待される治療法です。しかし、虫歯や歯周病を放置したままインプラントを行うと、インプラント周囲の組織が再び感染し、インプラントの脱落や周囲の骨吸収を引き起こす可能性があります。これを防ぐためにも、事前にこれらの問題を解決することが重要です。
歯周病は骨を破壊するためインプラントがだめになってしまうのでインプラント前に治療が必要

インプラントを失敗したり、あまりにも早くインプラントが抜けてしまうという失敗のケースで最も多いのが、「インプラント周囲炎」によるものです。
最近では歯周病がお口の中だけでなく全身の病気にも影響があることがわかってきています。そのため、インプラント治療を行う方も、そうでない方も、歯周病の治療はもちろん、予防も普段からしっかりと行わなければなりません。
歯周病は最終的には歯が抜けてしまう怖い病気で、歯と歯の間や歯と歯茎の境目についた歯垢の中で歯周病菌が増殖し、歯周組織に炎症を起こします。
初期の段階では歯肉が腫れる歯肉炎としてあらわれます。歯周病が進行していくと、歯周ポケットが深くなっていき、その中で更に歯周病菌が増え、歯茎の組織を破壊していきます。
歯茎が下がって歯の根が露出するようになると、知覚過敏が起こり、次第に歯槽骨が溶かされて減っていきます。歯槽骨が減ると歯を支えられなくなりますので、歯がグラグラしてきて、最終的に歯が抜けてしまいます。
歯が抜けてしまうほど歯周病が進んでいる方のお口の中は、他の歯も歯周ポケットが深くなり、歯根も露出してグラついている場合が多いため、その状態でインプラントを埋入しても、インプラントの周囲の歯周組織が歯周病菌に侵されてしまいます。
歯周病菌がたくさんいる状態では、インプラントもまた抜けてしまった歯と同じ運命をたどることになりますので、インプラント治療前に必ず歯周病の治療を行わなくてはなりません。
歯周病は専門医療と毎日の歯磨きで治療します

歯周病は歯科医院での治療とセルフケアでかなり改善できます。歯茎がかなり減って歯根が露出している場合も、歯茎の再生治療によって復元させることが出来ます。
そこまで歯周病が進行していない場合には、一般的な歯周病の治療では、歯科医院で歯垢や歯石を除去する治療を受けると共に、ご自宅で正しい歯磨きを行って頂く必要があります。つまり、歯周病は歯科医院への通院だけで治るものではなく、患者さんのセルフケアが絶対に必要になります。
中度以上の歯周病の場合は、スケーラーという器具を使って歯周ポケットの奥の歯根に付着している歯垢や歯石を取り除きます。その後、歯根に歯垢がつきにくくなるように表面を滑らかに磨きます。これをルートプレーニングといいます。
歯周ポケットの奥の歯垢や歯石を除去するためには、歯ブラシは届きませんので、歯科医院でのクリーニングを受けていただきます。歯周ポケットのかなり深い部分に歯石がある場合は、麻酔をして歯茎を切開して歯石除去を行う場合もあります。
歯肉の炎症が酷く、腫れてぶよぶよした感触になり、歯磨きなどで出血してしまう場合も、
歯科衛生士による歯のクリーニングと、徹底した歯磨きなどのセルフケアで、歯茎がひきしまり、かなり改善させることが出来ます。
インプラント治療後のケアの重要性
インプラント治療後のケアは、治療の成功を維持するために非常に重要です。インプラントが埋め込まれた後、インプラント自体は人工の歯根であるため、他の歯と同じようにメンテナンスをしないと、長期間にわたって健康な状態を保つことが難しくなります。ここでは、インプラント治療後に必要なケアについて詳しく解説します。
1. 定期的な歯科健診
インプラントを長期的に維持するためには、定期的に歯科医院でのチェックを受けることが不可欠です。治療後、数ヶ月ごとにインプラントの状態や周囲の歯茎、骨の健康を確認します。
重要性: インプラント周囲の炎症やインプラント周囲炎など、早期に発見して治療することで、問題を最小限に抑えることができます。また、歯科医師によるプロフェッショナルなクリーニングが、虫歯や歯周病の予防にもつながります。
2. セルフケアの徹底
毎日のセルフケアもインプラントを長持ちさせるための基本です。インプラント周囲の歯茎や歯の清潔を保つために、正しい歯磨きが非常に重要です。特に、インプラント周囲には歯垢が溜まりやすいので、丁寧な歯磨きと共に、歯間ブラシやデンタルフロスを使うことが推奨されます。
注意点: 歯磨きが不十分だと、インプラント周囲の歯茎が炎症を起こす可能性があり、最終的にインプラントの脱落を招く恐れがあります。
3. 喫煙の避ける
喫煙はインプラント治療にとって大きなリスク要因です。喫煙によって血流が悪くなり、治癒過程が遅れる可能性があります。また、喫煙により歯周病のリスクも高まり、インプラント周囲炎を引き起こす原因となります。
アドバイス: インプラント治療後は、できる限り喫煙を避け、喫煙を続ける場合は歯科医師に相談することが重要です。
4. 適切な食事習慣
治療後、インプラントを維持するためには、健康的な食生活を送ることが大切です。硬すぎるものや粘着性のある食べ物(キャラメルやガムなど)は、インプラントに過度の負担をかける可能性があるため、控えめにしましょう。
アドバイス: 食べ物がインプラントに与える影響を最小限にするため、食事後の歯磨きを徹底し、過剰な力をかけないように注意することが大切です。
5. インプラント周囲炎の予防
インプラント治療後の最大のリスクのひとつがインプラント周囲炎です。これは、インプラント周囲の歯茎が炎症を起こすことによって、インプラントの骨を溶かすことがあります。予防のためには、毎日のケアを怠らず、定期的なチェックを受けることが非常に重要です。
症状: インプラント周囲炎の初期症状としては、歯茎の腫れや出血があります。これらを早期に発見し、適切な治療を受けることがインプラントの成功に繋がります。
6. 歯科医師とのコミュニケーション
インプラント治療後に何か問題があった場合、すぐに歯科医師に相談することが重要です。定期的なチェックを行い、インプラントの状態に不安があれば早期に解決することで、長期的な成功を確保することができます。
アドバイス: インプラント治療後の疑問や不安は、積極的に歯科医師に質問し、サポートを求めることが望ましいです。
インプラント治療後のケアは、インプラントを長期間にわたって健康に保つための鍵となります。定期的な歯科検診、丁寧なセルフケア、喫煙の制限、適切な食事習慣を守ることが、インプラントの長期的な成功に繋がります。インプラント治療を受けた後も、患者さん自身の意識と努力が重要であり、歯科医師と密に連携を取ることが成功の秘訣です。
まとめ

インプラント周囲炎を防ぐためには、まずインプラント治療前に歯周病の治療を徹底的に
行う必要があります。また、インプラント治療後も歯周病やインプラント周囲炎を起こさないように、定期的な歯のクリーニングとセルフケアを継続していくことが大切です。