インプラントを長持ちさせるためにはインプラント周囲炎を予防するためにメンテナンスを受け続ける必要があります。同じ歯科医院でメンテナンスを受けた方がいいのか、違う歯科医院でもいいのかについてご説明します。
目次
インプラントのメンテナンスは原則的に手術を受けた医院で行うのがおすすめ
インプラント治療を受けた歯科医院以外でメンテナンスを受けても、大して違いはないのでは、と思われるかもしれません。しかし、転勤族の方など、引っ越しで遠くなって通えなくなって転院された場合を除いて、インプラント手術を受けた歯科医院でメンテナンスを受けることがベストです。
インプラント手術を受けた歯科医院には、手術前の検査データや治療に関する様々な所見や歯周病に関する口腔内の状態などの資料が揃っています。また、担当の歯科医師や歯科衛生士は患者さんの歯がなぜ悪くなったかを理解していますので、患者さんに合ったメンテナンス法がわかっています。
メンテナンスを他の歯科医院で受ける場合には、検査データや今までの治療やメンテナンスの履歴を参考データとして移動させることは可能ですが、今までに培ってきた信頼関係は新しい医院に引き継ぐことが出来ません。
インプラント治療後のメンテナンスを違う歯科医院で受ける場合
インプラント治療後のメンテナンスを違う歯科医院で受ける場合の注意点について解説します。
1. 治療記録の共有
新しい歯科医院でメンテナンスを受ける際は、前の歯科医院での治療記録を必ず共有しましょう。インプラントの種類、埋入位置、治療の詳細などが記録されている診療情報提供書(紹介状)を持参することで、新しい歯科医師が適切な判断を行いやすくなります。また、X線画像やCTスキャンのデータもできるだけ提供しましょう。
2. メンテナンスの計画の確認
インプラント治療後のメンテナンスには、定期的なチェックとクリーニングが含まれます。新しい歯科医院では、前の歯科医院で行っていたメンテナンスの頻度や内容を確認し、それに基づいて継続的なメンテナンス計画を立ててもらうことが重要です。これにより、インプラントの長期的な健康を維持するための適切なケアが確保されます。
3. インプラントの種類や仕様の確認
インプラントにはさまざまなメーカーや種類があり、それぞれに特有のケアが必要な場合があります。新しい歯科医師が、使用されているインプラントの種類や仕様を理解しているかを確認することが重要です。これにより、適切なメンテナンスや修理が行われる可能性が高くなります。
4. 信頼性の確認
新しい歯科医院の選択は慎重に行いましょう。インプラント治療は高度な専門知識と技術を要するため、インプラント治療に関する経験豊富な歯科医師がいる医院を選ぶことが重要です。また、評判や口コミなどを参考にして、信頼できる歯科医院を見つけることも大切です。
5. 費用の確認
歯科医院によってメンテナンスの費用が異なる場合があります。事前にメンテナンス費用の詳細を確認し、治療内容に応じた適正な価格であるかを確認しておきましょう。また、保険の適用範囲についても確認しておくと安心です。
6. コミュニケーションの重要性
新しい歯科医師とのコミュニケーションは非常に重要です。自身のインプラントの状態や過去の治療内容について詳しく説明し、疑問や不安があれば遠慮せずに相談しましょう。オープンなコミュニケーションを取ることで、より良いメンテナンスが受けられるでしょう。
7. 合併症や異常があった場合の対応
インプラントに関して何らかの異常や問題が生じた場合、新しい歯科医院で適切に対応してもらえるか確認しておくことも重要です。特に、インプラント周囲炎などのリスクがある場合、早期に対応するための準備が整っているかを確認しましょう。
これらの注意点を踏まえて、インプラントのメンテナンスを受けることで、長期間にわたりインプラントを健康に保つことができます。
インプラントのメンテナンスは絶対に必要?
インプラントのメンテナンスの必要性についてご説明します。
インプラントのメンテナンス(定期健診)には目的があります。それは、インプラントの寿命を延ばし、出来る限り長もちさせるということです。
そのためにはメンテナンスで口腔内をクリーニングして清潔にすることでインプラント周囲炎(インプラント周囲の歯肉や骨が歯周病になること)を防ぎ、インプラント以外の歯も歯周病から守らなければなりません。
インプラントを長持ちさせられるかどうかは、メンテナンスをきちんと受けていただけるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。そのため当院ではインプラントの保証を受けるための条件として、当院でメンテナンスを受けていただくことをあげています。
- インプラントを長持ちさせるためにはメンテナンスは大変重要
- メンテナンスでインプラント周囲炎を出来る限り防ぐ
インプラントのような自費診療では補償内容を確認すること
インプラント治療後のメンテナンスを手術をした歯科医院で受けるかどうかは、数年後にインプラントに不具合が出た時に歯科医院から保証を受けることが出来るかどうかにも関わってきます。
当院ではインプラント治療に対して保証制度を設けておりますが、当院でのメンテナンスを継続して受けて頂くことを条件にしています。
というのは、インプラントの上部構造はセラミックなどの人工物ですので天然歯と異なり虫歯にはならないのですが、歯茎がインプラントと接している部分が歯周病菌などに感染して歯周病のかかる可能性がありますので、注意が必要です。
インプラントと歯茎の間に細菌が入り込むと、インプラント体の表面はざらざらしているので天然歯と比べると細菌が棲みつきやすく、インプラントの周囲の歯茎が歯周病になってしまいます。
インプラント周囲の歯茎が歯周病になることはインプラント周囲炎と呼ばれ、インプラントがだめになる一番の原因です。そのため、当院ではメンテナンスを受けていただき、出来る限りインプラント周囲炎の予防をすることを前提に、インプラントに何か不具合が出た時の保証を行っています。
- インプラントの保証の条件としてメンテナンスを受けることが含まれている歯科医院が多い
メンテナンスはどんなことをするの?
インプラントのメンテナンスは、まず歯周病の検査として、歯ぐきに腫れがないかを調べ、歯周ポケット深さを測ります。歯周ポケットの深さは、歯ぐきにプローブと呼ばれる細い器具を差し込んで測ります。その際の歯茎からの出血の有無も検査事項として記録されます。その他には、歯ぐきが動揺していないか、一歯ずつ調べていきます。
その後、天然歯も含めてお口全体のクリーニングを行い、歯科衛生士が専用の器械を使って歯垢や歯石を除去し、1本1本ていねいに磨いていきます。ご自身ではケアしにくい歯と歯の間や、歯と歯ぐきの間もきれいにします。
歯科医師が必要と判断した際には、インプラントの上部構造を取り外してクリーニングする場合もありますので、メンテナンスの方法はケースバイケースともいえます。
歯のメンテナンスは一生のお付き合い
歯科医院では患者さんとのおつきあいは一生のものと思って治療やメンテナンスを行っています。インプラントのメンテナンスで重点的に見るのは、インプラント周囲の歯茎の状態です。必要に応じてレントゲン撮影を行うこともあります。
当院ではメンテナンスで歯周病予防のためのクリーニングや歯ぐきのチェックを担当する歯科衛生士は担当制です。
そのため、患者さんが継続してメンテナンスを受けて下さっている間は、お口の中の状態に前回のメンテナンスと比べて変化があった場合は、些細な変化であったとしても担当歯科衛生士がそれを見逃すことなく対応出来ます。
それが患者さんにとって担当の歯科医師や歯科衛生士がいるということのメリットで、その時に応じて適切な処置を受けることが出来ます。
インプラント治療後のメンテナンスを違う歯科医院で受けても良いかに関するQ&A
インプラントメンテナンスを手術を受けた医院で行うことがおすすめです。その理由は、手術前の検査データや治療に関する情報が医院に揃っているためです。担当医師と歯科衛生士は、患者の歯の状態を把握しており、適切なメンテナンスを提供できます。また、互いの信頼関係が築かれているため、患者の個別のニーズに合った対応が可能です。
インプラントメンテナンスを他の歯科医院で受ける場合、手術を受けた医院との信頼関係が引き継げない主な理由は、新しい医院での過去の治療やメンテナンスの履歴が限られるためです。元の医院では患者の歯の状態を理解していたが、新しい医院では過去の情報にアクセスしにくいため、適切な対応が難しくなる可能性があります。
インプラントメンテナンスはインプラントを長持ちさせるために非常に重要ですが、絶対に必要なものではありません。ただし、インプラント周囲炎を予防し、口腔内の清潔さを保つためには定期健診が推奨されています。歯科医院によっては、インプラント治療の保証を受けるためにもメンテナンスを受けることを条件にしている場合があります。
まとめ
インプラント周囲炎を防ぎ、インプラントを長持ちさせるためにも、ぜひ手術を受けた歯科医院で引き続きメンテナンスを受けるようにしてください。
インプラントだけでなく、口腔内のほかの歯に対しても虫歯や歯周病などによる歯の欠損の広がりを抑えるために、お口の中を清掃してきれいにすることはとても大切なことです。
どうしても転院が必要になった場合には、当院のグループ内の歯科をご紹介できる場合はご紹介しますが、そうでない場合は患者さんご自身で信頼できる歯医者を探して転院し、出来る限りインプラントを長く維持できるようにして頂ければと思います。