インプラント治療前・治療後の疑問

インプラント治療後のメンテナンスを違う歯科医院で受けるのはだめ?

インプラント治療後のメンテナンスはどの歯科医院で受けてもいいの?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラント治療後のメンテナンスを違う歯科医院で受けても大丈夫?

インプラント治療後のメンテナンスを「違う歯科医院」で受けることは可能ですが、慎重な選択と情報共有が不可欠です。埋入した医院との連携が取れていないと、トラブルの早期発見が遅れたり、保証制度が受けられない場合もあります。

この記事はこんな方に向いています

  • 治療した医院が遠く、通うのが難しくなった方
  • 転居や転勤で通院先を変更したい方
  • メンテナンスを他院でも受けられるか不安な方
  • 他院でインプラントの不具合を見てもらいたい方

この記事を読むとわかること

  1. インプラントのメンテナンスがなぜ重要なのか
  2. 違う歯科医院で受ける際の注意点
  3. 他院で診てもらう際の具体的な手順
  4. トラブルを避けるためのポイント
  5. 信頼できる歯科医院の選び方

 

インプラントのメンテナンスは原則的に手術を受けた医院で行うのがおすすめ

インプラントのメンテナンスは手術を受けた医院で行うのがおすすめ

他院でのメンテナンスは可能ですが、治療経過や使用したインプラントシステムの情報が共有されていることが前提です。情報が不十分な状態では、正確な診断や適切な処置ができない場合があります。

別の医院でも受けられますが、情報共有が重要です。

インプラントの構造や素材、埋入位置、使用したメーカーなどは医院ごとに異なります。そのため、施術した医院の記録(インプラントメーカー・型番・埋入位置図など)がないと、後からメンテナンスを行う歯科医師が困難を感じることがあります。

特に以下のような場合は注意が必要です。

  1. インプラント体のメーカーや型番が不明
  2. 被せ物が特殊構造で、専用の工具が必要
  3. 治療記録が共有されていない

このような場合、他院では十分な対応ができず、「修理はできても保証は効かない」というケースもあります。医院を変える前に、まず元の歯科医院から必要な資料を受け取っておくことが大切です。

他院でメンテナンスを受けるときの手順は?

転院をスムーズに行うには、事前の準備と情報提供がポイントです。診療情報を整理し、次の医院へ引き継ぐことで、トラブルを防ぎやすくなります。

前の医院からの情報共有を忘れずに行いましょう。

以下のステップで移行するのが理想です。

他院メンテナンスへの移行手順

  1. 前の歯科医院に相談する

      → 通院が難しくなった理由を伝え、紹介状や治療記録を依頼します。
  2. インプラント情報をまとめる

      → メーカー・型番・埋入日・手術部位などを整理します。
  3. 新しい歯科医院を選ぶ

      → インプラントの実績があり、他院症例にも対応している医院を探します。
  4. 初診時にすべての資料を持参する

      → レントゲン・CT画像・紹介状を提示して、現状を正確に伝えます。

これらを丁寧に行うことで、新しい歯科医師もインプラントの状態を把握しやすくなり、安心してメンテナンスを受けられます。

他院でメンテナンスを受けるときの注意点

医院を変える場合、保証・器具の互換性・対応経験などに注意が必要です。特に保証が治療医院に紐づいている場合、他院での対応が難しくなることがあります。

保証や対応範囲を事前に確認しておきましょう。

以下の点に注意することで、トラブルを避けられます。

1. 治療記録の共有

新しい歯科医院でメンテナンスを受ける際は、前の歯科医院での治療記録を必ず共有しましょう。インプラントの種類、埋入位置、治療の詳細などが記録されている診療情報提供書(紹介状)を持参することで、新しい歯科医師が適切な判断を行いやすくなります。また、X線画像やCTスキャンのデータもできるだけ提供しましょう。

2. メンテナンスの計画の確認

インプラント治療後のメンテナンスには、定期的なチェックとクリーニングが含まれます。新しい歯科医院では、前の歯科医院で行っていたメンテナンスの頻度や内容を確認し、それに基づいて継続的なメンテナンス計画を立ててもらうことが重要です。これにより、インプラントの長期的な健康を維持するための適切なケアが確保されます。

3. インプラントの種類や仕様の確認

インプラントにはさまざまなメーカーや種類があり、それぞれに特有のケアが必要な場合があります。新しい歯科医師が、使用されているインプラントの種類や仕様を理解しているかを確認することが重要です。これにより、適切なメンテナンスや修理が行われる可能性が高くなります。

4. 信頼性の確認

新しい歯科医院の選択は慎重に行いましょう。インプラント治療は高度な専門知識と技術を要するため、インプラント治療に関する経験豊富な歯科医師がいる医院を選ぶことが重要です。また、評判や口コミなどを参考にして、信頼できる歯科医院を見つけることも大切です。

5. 費用の確認

歯科医院によってメンテナンスの費用が異なる場合があります。事前にメンテナンス費用の詳細を確認し、治療内容に応じた適正な価格であるかを確認しておきましょう。また、保険の適用範囲についても確認しておくと安心です。

6. コミュニケーションの重要性

新しい歯科医師とのコミュニケーションは非常に重要です。自身のインプラントの状態や過去の治療内容について詳しく説明し、疑問や不安があれば遠慮せずに相談しましょう。オープンなコミュニケーションを取ることで、より良いメンテナンスが受けられるでしょう。

7. 合併症や異常があった場合の対応

インプラントに関して何らかの異常や問題が生じた場合、新しい歯科医院で適切に対応してもらえるか確認しておくことも重要です。特に、インプラント周囲炎などのリスクがある場合、早期に対応するための準備が整っているかを確認しましょう。

これらの注意点を踏まえて、インプラントのメンテナンスを受けることで、長期間にわたりインプラントを健康に保つことができます。

他院メンテナンスのメリット・デメリットは?

他院でのメンテナンスは「通いやすさ」「新しい視点による診断」などのメリットがある一方で、保証喪失や対応限界といったデメリットも存在します。

便利さとリスクのバランスを考えて選びましょう。

項目 メリット デメリット
通院距離 自宅や職場の近くで通いやすい 慣れた医院の継続管理が途切れる
診断 別の視点でのチェックが受けられる 治療経過を把握していない場合がある
保証 新しい医院の保証制度を利用できる場合もある 元の医院の保証が無効になる可能性
技術 他院での修正対応や清掃が可能 メーカー非対応の器具がある場合、限界あり

他院でのメンテナンスは決して「悪い選択」ではありません。

ただし、情報共有と医院選びを誤ると、かえってトラブルを招くこともあります。

インプラント治療後のメンテナンスはなぜ必要なの?

インプラント1本のイメージ

インプラントのメンテナンスの必要性についてご説明します。

インプラントのメンテナンス(定期健診)には目的があります。それは、インプラントの寿命を延ばし、出来る限り長もちさせるということです。

そのためにはメンテナンスで口腔内をクリーニングして清潔にすることでインプラント周囲炎(インプラント周囲の歯肉や骨が歯周病になること)を防ぎ、インプラント以外の歯も歯周病から守らなければなりません。

インプラントを長持ちさせられるかどうかは、メンテナンスをきちんと受けていただけるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。そのため当院ではインプラントの保証を受けるための条件として、当院でメンテナンスを受けていただくことをあげています。

  • インプラントを長持ちさせるためにはメンテナンスは大変重要
  • メンテナンスでインプラント周囲炎を出来る限り防ぐ

インプラントのような自費診療では補償内容を確認すること

保証書

インプラント治療後のメンテナンスを手術をした歯科医院で受けるかどうかは、数年後にインプラントに不具合が出た時に歯科医院から保証を受けることが出来るかどうかにも関わってきます。

当院ではインプラント治療に対して保証制度を設けておりますが、当院でのメンテナンスを継続して受けて頂くことを条件にしています。

というのは、インプラントの上部構造はセラミックなどの人工物ですので天然歯と異なり虫歯にはならないのですが、歯茎がインプラントと接している部分が歯周病菌などに感染して歯周病のかかる可能性がありますので、注意が必要です。

インプラントと歯茎の間に細菌が入り込むと、インプラント体の表面はざらざらしているので天然歯と比べると細菌が棲みつきやすく、インプラントの周囲の歯茎が歯周病になってしまいます。

インプラント周囲の歯茎が歯周病になることはインプラント周囲炎と呼ばれ、インプラントがだめになる一番の原因です。そのため、当院ではメンテナンスを受けていただき、出来る限りインプラント周囲炎の予防をすることを前提に、インプラントに何か不具合が出た時の保証を行っています。

  • インプラントの保証の条件としてメンテナンスを受けることが含まれている歯科医院が多い

メンテナンスはどんなことをするの?

メンテナンス

インプラントは虫歯にはなりませんが、周囲の歯茎や骨は天然歯と同様に炎症を起こすリスクがあります。特に「インプラント周囲炎」と呼ばれる病気は、放置するとインプラントの脱落につながるため、定期的なメンテナンスが欠かせません。

メンテナンスはインプラントを長持ちさせるための「予防治療」です。

インプラントはチタン製の人工歯根と人工歯で構成されており、虫歯にはなりません。しかし、インプラントの周囲には歯茎や骨などの生体組織が存在しており、歯垢がたまると炎症を起こします。

とくに注意が必要なのが「インプラント周囲炎」です。これは天然の歯で起こる歯周病と似ていますが、進行が早く、気づいたときには骨が吸収しているケースも多いです。

メンテナンスで行われる主な内容

  1. 歯磨きのチェックと指導
  2. 歯垢・歯石の除去
  3. インプラント周囲のポケット測定
  4. 咬み合わせの確認
  5. 被せ物のゆるみや破損のチェック

これらのケアを継続することで、インプラントと周囲組織の健康を守り、寿命を延ばすことができます。

歯のメンテナンスは一生のお付き合い

歯科医院スタッフ

歯科医院では患者さんとのおつきあいは一生のものと思って治療やメンテナンスを行っています。インプラントのメンテナンスで重点的に見るのは、インプラント周囲の歯茎の状態です。必要に応じてレントゲン撮影を行うこともあります。

当院ではメンテナンスで歯周病予防のためのクリーニングや歯ぐきのチェックを担当する歯科衛生士は担当制です。

そのため、患者さんが継続してメンテナンスを受けて下さっている間は、お口の中の状態に前回のメンテナンスと比べて変化があった場合は、些細な変化であったとしても担当歯科衛生士がそれを見逃すことなく対応出来ます。

それが患者さんにとって担当の歯科医師や歯科衛生士がいるということのメリットで、その時に応じて適切な処置を受けることが出来ます。

家族

インプラント治療後のメンテナンスを違う歯科医院で受けても良いかに関するQ&A

インプラントメンテナンスは基本的には手術を受けた医院で行うべきですか?

インプラントメンテナンスを手術を受けた医院で行うことがおすすめです。その理由は、手術前の検査データや治療に関する情報が医院に揃っているためです。担当医師と歯科衛生士は、患者の歯の状態を把握しており、適切なメンテナンスを提供できます。また、互いの信頼関係が築かれているため、患者の個別のニーズに合った対応が可能です。

インプラントメンテナンスを他の歯科医院で受ける場合、信頼関係が引き継げない理由は何ですか?

インプラントメンテナンスを他の歯科医院で受ける場合、手術を受けた医院との信頼関係が引き継げない主な理由は、新しい医院での過去の治療やメンテナンスの履歴が限られるためです。元の医院では患者の歯の状態を理解していたが、新しい医院では過去の情報にアクセスしにくいため、適切な対応が難しくなる可能性があります。

インプラントメンテナンスは絶対に必要なのですか?

インプラントメンテナンスはインプラントを長持ちさせるために非常に重要ですが、絶対に必要なものではありません。ただし、インプラント周囲炎を予防し、口腔内の清潔さを保つためには定期健診が推奨されています。歯科医院によっては、インプラント治療の保証を受けるためにもメンテナンスを受けることを条件にしている場合があります。

まとめ

インプラント周囲炎を防ぎ、インプラントを長持ちさせるためにも、ぜひ手術を受けた歯科医院で引き続きメンテナンスを受けるようにしてください。

インプラントだけでなく、口腔内のほかの歯に対しても虫歯や歯周病などによる歯の欠損の広がりを抑えるために、お口の中を清掃してきれいにすることはとても大切なことです。

どうしても転院が必要になった場合には、当院のグループ内の歯科をご紹介できる場合はご紹介しますが、そうでない場合は患者さんご自身で信頼できる歯医者を探して転院し、出来る限りインプラントを長く維持できるようにして頂ければと思います。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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