
「インプラントをした後はどんな症状に気をつけないといけないの?」
「インプラントがダメになるのはどんな症状のとき?」
インプラント治療が終わってから気をつけなければならないのはインプラント周囲炎です。インプラント周囲炎とはインプラントの周囲の歯茎や骨が歯周病にかかることで、インプラントは天然の歯と比べるとインプラント周囲の歯肉が感染に弱いため、歯周病に対する予防と注意が必要ですので、ご説明します。
目次
インプラント治療後は何故周囲炎に気をつけなくてはいけないのか
インプラント治療後に周囲炎に気をつけなければならない理由についてご説明します。
1. インプラントの安定性を維持するため
インプラント周囲炎は、インプラントの周囲に炎症が起こり、骨の吸収やインプラントの安定性に影響を与える状態です。炎症が進行すると、顎骨が徐々に吸収され、インプラントが支えられなくなり、グラグラし始めて最終的には脱落するリスクが高まります。インプラントを長持ちさせるためには、周囲炎の予防と早期発見が非常に重要です。
2. 自然歯と同様のケアが必要
インプラントは人工物ですが、周囲の組織は自然歯と同じように細菌の影響を受けやすいです。特に、歯肉の境目には歯垢がたまりやすく、これが原因で炎症が起こります。定期的な歯磨きやフロスの使用に加え、専門的なクリーニングを受けることがが必要です。これにより、細菌の繁殖を防ぎ、健康な歯茎とインプラントの維持が可能となります。
3. 痛みや不快感の防止
インプラント周囲炎が進行すると、痛みや腫れ、出血などの不快な症状が現れることがあります。これらの症状は、日常生活に支障をきたすだけでなく、治療の必要性を生じさせるため、患者さんの負担が大きくなります。周囲炎を予防することで、こうした症状を防ぎ、快適な生活を送ることができます。
4. 治療費用の増加を防ぐため
インプラント周囲炎が進行すると、追加の治療が必要になる場合があります。インプラントの再手術や骨移植、さらにはインプラントの撤去と再埋入など、治療が複雑化し、費用がかさむ可能性があります。これを避けるためにも、周囲炎の予防と早期対応が経済的にも有効です。
5. 全身の健康への影響
インプラント周囲炎が進行すると、細菌が歯茎から血流に入り、全身の健康に悪影響を与えるリスクがあります。特に、糖尿病や心疾患などの全身疾患を持つ患者さんは、インプラント周囲炎によって病状が悪化する可能性があります。全身の健康を維持するためにも、インプラント周囲炎の予防は不可欠です。
これらの理由から、インプラント治療後は周囲炎に特に注意を払い、定期的なメンテナンスと適切な口腔ケアを欠かさないことが大切です。
歯周病(インプラント周囲炎)はインプラントの大敵

歯周病は現代の生活習慣病の一つで、日本人の成人の約8割は歯周病にかかっているといわれています。
この8割の方の中には軽い歯周炎で歯茎に僅かな腫れが見られる方も含まれますので、成人の8割の方が深刻な歯周病にかかっているというわけではありません。しかし歯周病は軽い歯肉炎から始まり、治療せずに放っておくとどんどん進行していって、歯肉や歯槽骨の組織を壊していく病気です。
インプラントは感染に弱く、歯周病にかかると進行も早いというリスクがあります。インプラントが歯周病にかかることをインプラント周囲炎と呼びますが、インプラント周囲炎はインプラントがダメになる原因のトップで、インプラントにとって大変危険なものです。
そのため、インプラント治療後はいかに歯周病にかからないように予防するかによってインプラント自体の寿命が決まるといっても過言ではありません。
インプラントが歯周病に弱い理由

天然歯は歯根膜によって血液を歯に供給し、細菌に対する抵抗力を高めています。
しかしインプラントには天然の歯と違って歯根膜がありません。歯根膜がないためにインプラントの周辺の歯周組織は細菌への抵抗力が弱く、感染しやすいのです。
歯周病は歯周病菌に感染することで発病しますので、インプラントは天然歯と比べて歯周病のリスクが高くなり、インプラント周囲炎を起こしやすくなります。
インプラントの周囲が歯周病にかかると、歯周病菌が歯茎や骨を破壊していき、歯を支えている歯槽骨が溶けてしまうと、最悪の場合インプラントがグラグラになって抜け落ちてしまいます。
そのため、インプラントを長く維持していくためには周囲炎にかからないようにすることが大切です。
インプラント周囲炎はこんな症状に注意!

インプラント周囲炎の症状は、歯周病と似ており、初期では自覚症状が殆どないために発症しても初期の段階では自分で気づくことが出来ません。
周囲炎を防ぐには早期発見が大切ですので、こんな症状がないか、チェックしてみましょう。
- 朝起きた時に口の中がネバネバする
- 口臭が強い
- 歯みがきで歯茎から出血する
- 疲れると歯茎が腫れる
- 歯肉が腫れている
- 歯並びがガタガタになったり歯と歯の間に隙間が出来てきた
- 歯がグラグラしている
これらの症状はインプラント周囲炎や歯周病にみられる代表的な症状です。
インプラント周囲炎を防ぐためには?
歯周病予防と同じく、インプラント周囲炎を予防するためには、毎日の歯磨きなどのセルフケアと歯科医院でのメンテナンス(定期健診が)中心となります。
セルフケア(歯磨き)

毎日の歯磨きを丁寧に行います。歯と歯の間や歯と歯茎の間の溝の部分は、歯ブラシだけでは毛先が届きませんので、歯間ブラシやデンタルフロス、ワンタフトブラシなどを補助的に使用することで、今まで取れなかった部分の歯垢(プラーク)を落とすことが出来るようになります。
正しいブラッシングによって歯垢などの汚れをある程度セルフケアで落としてきれいに出来るようになると、歯茎の状態が落ち着いてきますので、軽度の周囲炎による炎症が改善します。
- 毎日のブラッシング
- 歯間ブラシ、デンタルフロス、デンタルリンスなどの使用
また、タバコに含まれるニコチンとタールもインプラントが抜け落ちる原因になりますので、喫煙者の方は生活習慣を見直しましょう。
歯科医院でのメンテナンス

歯磨きで落とせなかった歯垢や歯石を歯科衛生士が専用の器械を使って除去します。また、インプラントの上部構造できちんと噛めているか、全体の噛み合わせもチェックします。
クリーニングを定期的に受けていただくと、付着している歯垢が歯石になる前に除去出来ますので、口腔内の環境がかなり良くなり、周囲炎の進行を防ぐことが可能になります。
- 咬み合わせの検査
- インプラント周囲および天然歯のクリーニング
インプラント周囲炎の治療について
インプラント周囲炎にかかった場合は、病気の進行状況によって治療方法が異なります。
インプラント周囲炎の主な治療方法
- エアフロー、PMTCによる機械的清掃
- 消毒薬による洗浄
- 抗生物質の服用
- 外科的処置(切除療法)
歯周病と同じく、インプラント周囲炎が初期の場合は歯科衛生士によるクリーニングとセルフケアを主にした治療で改善する場合が多いです。
周囲炎が進行すると、歯肉を切開してインプラントの表面を除去する外科的な処置が必要になります。
重度の周囲炎で骨の吸収が進んでしまっている場合は、インプラントをいったん撤去して、骨を回復させてから、再度インプラントを埋入する治療を行います。
インプラント治療後に気をつけるべき周囲炎に関するQ&A
インプラント周囲炎を予防するためには以下のことが重要です。 ・毎日の歯磨きを丁寧に行うこと。歯と歯の間や歯茎の間の溝の部分は歯ブラシだけでは届かないため、歯間ブラシやデンタルフロスを使用し、歯垢(プラーク)を除去します。 ・タバコを控えるか禁煙すること。タバコの成分はインプラントの安定性に影響を与える可能性があります。 ・歯科医院での定期的なメンテナンス(定期健診)を受けること。歯科衛生士が歯垢や歯石を除去し、口腔内の状態をチェックします。
インプラント周囲炎の治療方法は病気の進行状況によって異なります。 ・初期の場合は歯科衛生士によるクリーニングとセルフケアが主な治療となります。 ・進行した場合は、歯肉を切開してインプラントの表面を除去する外科的な処置が必要になることもあります。 ・骨の吸収が進んでいる場合は、一度インプラントを撤去し、骨を回復させた後に再度インプラントを埋入する治療が行われることもあります。
インプラント周囲炎が重度な場合、歯周組織や骨の破壊が進んでいる可能性があります。そのような場合には、インプラントを一時的に撤去し、骨の回復を促すための治療を行います。骨の回復後、再度インプラントを埋入することで治療が完了します。重度の場合は、早期に治療を行うことが重要です。
まとめ

歯科医院ではインプラント患者さんの歯周組織の変化をしっかりと見ており、小さな変化も見過ごさない体制を取っています。しかし、インプラント周囲炎を防いでインプラントを長持ちさせるためには、毎日のセルフケアをしっかり行うことと、メンテナンス(定期健診)を受けていただいてお口の中の歯周病菌を減らすことが重要です。
インプラント患者さんに限らず、歯科医院と患者さんはメンテナンスを継続して受けていただくことを通じての長いお付き合いになります。周囲炎からインプラントや天然歯を守り、出来る限り長もちさせて、何でも好きなものを食べられる健康な歯を守っていきましょう。