インプラント

高齢者のインプラント治療は安全?リスクはないの?

高齢者にとってインプラント治療は安全な選択肢?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

高齢者でもインプラント治療は安全に受けられるのでしょうか?

正しく検査・計画を行えば、多くの高齢者の方も安全にインプラント治療を受けることが可能です。

加齢によって骨密度や体の回復力が低下するため、「年齢的にインプラントは無理なのでは?」と不安に思う方も少なくありません。しかし、医学の進歩と歯科の精密検査技術により、70代や80代の方でも安全にインプラント治療を受けている例が増えています。

ただし、「高齢者の方特有のリスク」があるのも事実です。今回は、高齢者のインプラント治療の安全性や注意点、考えられるリスクとその対策をわかりやすく解説します。

この記事はこんな方に向いています

  1. 年齢的にインプラントができるか不安な方
  2. 入れ歯に不満があり、より自然な噛み心地を求めている方
  3. 両親や祖父母のインプラント治療を検討している方

この記事を読むとわかること

  1. 高齢者のインプラント治療が可能な条件
  2. 高齢者特有のリスクとその対策方法
  3. 手術前後に注意すべき健康管理のポイント

 

高齢者でもインプラント治療は安全に受けられるの?

インプラントは無理?

高齢者の方でも、全身状態が安定しており、あごの骨に十分な量と質があれば、インプラント治療は安全に行えます。近年は手術精度を高めるデジタル技術の導入により、高齢者でも安心して治療を受けられる環境が整っています。

体調や骨の状態が良ければ、高齢者でもインプラント治療は可能です。

インプラント治療に年齢制限はありません。

70代・80代でも問題なくインプラントを行える方は多くおられます。大切なのは「年齢」ではなく「健康状態」です。

安全に治療ができる条件

  1. 全身疾患がコントロールされていること

      → 糖尿病や高血圧などが重度でなければ、主治医との連携により治療可能です。
  2. 骨密度が一定以上あること

      → 骨がしっかりしていれば、インプラントを安定的に固定できます。
  3. 口腔衛生管理が保たれていること

      → 歯垢や歯石が多いと炎症リスクが高まるため、清潔な口腔環境が大切です。

これらの条件を満たすことで、高齢者の方でも安全にインプラント治療を受けられるケースが増えています。特にCTを用いた三次元的な診断や、ガイドを使った手術方法は、安全性を飛躍的に高めています。

高齢者のインプラント治療で注意が必要なリスクとは?

高齢者のインプラント治療では、骨の吸収や持病、服用薬の影響など、年齢特有のリスクがあります。しかし、それらは事前の検査と医師の連携によって多くが予防・管理できます。

高齢者特有のリスクを理解し、事前準備を徹底すれば安全性は高まります。

主なリスクと原因

  1. 骨の量・質の低下

      → 加齢により骨が痩せ、インプラントを支える力が弱くなることがあります。
  2. 糖尿病・高血圧などの全身疾患

      → 血流や免疫の低下により、傷の治りが遅くなる場合があります。
  3. 薬の影響

      → 骨粗しょう症の薬(ビスフォスフォネート系)や抗凝固剤は、手術後の合併症リスクを高める可能性があります。
  4. 口腔乾燥(ドライマウス)

      → 唾液が減ると、細菌の増殖が起こりやすくなります。
  5. 認知症や手の不自由さ

      → 歯磨きが十分にできないと、インプラント周囲炎の原因になります。

これらのリスクは「高齢者だから必ず起こる」というものではありません。事前に内科的疾患や服薬状況を歯科医師が把握し、主治医と連携を取ることで、手術リスクを大幅に減らすことが可能です。

さらに、最新の「低侵襲(体への負担を減らす)」手術技術を用いることで、治療後の回復も早くなっています。

関連ページ:デジタルインプラント

骨が少ない場合はどうやってインプラントを入れるの?

骨が不足している場合でも、骨造成(こつぞうせい)という治療を行うことで、インプラントの埋入が可能になります。上顎洞挙上術やGBRといった再生療法を併用することで、多くの高齢者が治療を受けられます。

骨が足りなくても、再生治療でインプラントを可能にできます。

骨を再生する主な方法

  1. GBR法(骨誘導再生法)

      → 骨補填材と専用の膜を用いて、骨の再生を促す方法。
  2. ソケットリフト・サイナスリフト

      → 上顎奥歯の骨が薄い場合に、上顎洞(空洞)を持ち上げて骨を補う手術。
  3. 自家骨移植

      → ご自身の骨を一部採取して移植する方法。

骨造成のポイント

  • どの方法も精密なCT診断が不可欠です。
  • 骨がしっかり再生するまでには数ヶ月かかる場合があります。
  • 術後の安静と清潔管理が成功のカギです。

骨量が少ない方でも、専門的な骨造成を行えばインプラント治療の適応範囲が広がります。経験豊富な歯科医師による診断と、適切な治療法の選択が安全な結果につながります。

高齢者がインプラントを長持ちさせるために必要なケアとは?

インプラントを長く使い続けるためには、日常の歯磨きと定期的なメンテナンスが欠かせません。特に高齢者の方は、歯垢除去と定期健診の両方をしっかり行うことが重要です。

毎日の歯磨きと定期健診で、インプラントを長持ちさせられます。

ケアの基本ポイント

  1. 丁寧な歯磨き

      → インプラント周囲に歯垢が溜まると、炎症(インプラント周囲炎)の原因になります。柔らかいブラシと歯間ブラシを使い分けましょう。
  2. 定期的なプロフェッショナルケア

      → 歯科医院でのクリーニングや噛み合わせチェックを3〜6ヶ月ごとに受けることが推奨されます。
  3. 全身の健康維持

      → 栄養バランスや睡眠も、骨の維持や免疫機能に関わる重要な要素です。

インプラントは「入れたら終わり」ではなく、入れた後のケアが最も重要です。特に高齢者の方は唾液量の減少や手の動きの制限により清掃が不十分になりがちです。そのため、ご家族や歯科衛生士のサポートを得ながらケアを続けることが、長期的な成功の秘訣です。

歯を失ったあと放置した場合のリスクとは?

歯が抜けたまま、あるいは合わない入れ歯を使い続けていると、こんなリスクがあります。

  1. 噛む力の低下

    → 栄養バランスが崩れて、全身の健康にも悪影響を及ぼすことがあります。
  2. 発音や会話のしにくさ

    → 人とのコミュニケーションを避けがちになり、社会的な孤立の原因になることも。
  3. 顎の骨の吸収が進む

    → 歯がない部分は顎の骨が次第に痩せてしまい、将来的な治療が難しくなることもあります。
  4. 他の歯の移動や不正咬合

    → 周囲の歯が動いてしまい、噛み合わせが悪くなることも。

その結果、食事・会話・笑顔すべてに自信が持てなくなる可能性も。

だからこそ、年齢に関わらず早めの対策が大切なんです。

インプラント治療は歯がなくなる40歳後半から60歳代が中心となりますが、高齢者でも抜歯などの手術を受けられる健康状態であれば可能です。「インプラント – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020」(出典:日本歯科医師会)

関連ページ:高齢者へのインプラント治療の重要性

インプラントが高齢の方にも適している理由とは?

高齢者に適している

インプラントは年齢制限がある治療ではありません。実際には70代、80代でも成功している方がたくさんいらっしゃいます。

高齢者にインプラントが選ばれている理由

入れ歯の不満を解消できる

→ 噛みにくさや外れやすさから解放され、より自然に生活が送れます。

周囲の歯に負担をかけない

→ ブリッジのように隣の健康な歯を削らずに済みます。

見た目が自然で若々しさが戻る

→ フェイスラインも整いやすく、見た目の印象もアップ。

高齢でも健康な骨の状態が維持されていれば、十分に安全で現実的な選択肢です。

関連ページ:高齢者へのインプラントのメリットとデメリット

治療前に確認しておきたいポイント

確認しておきたいポイント

ただし、年齢に関係なく治療を安全に行うには、以下の点をチェックしておくことが大事です。

  1. 全身疾患がコントロールされているか

    → 糖尿病や心疾患などがある場合は、主治医との連携が必要です。
  2.  骨の量と質が足りているか

    → 骨が少ない場合でも、骨造成などで対応できるケースもあります。
  3. 口腔内のケアがきちんとできるか

    → 歯磨きがしっかりできることが、長期的な成功に直結します。
  4. 定期的な健診に通えるか

    → トラブル予防には、歯科での継続的なチェックが欠かせません。

これらの点を確認しながら治療計画を立てれば、「高齢=危険」という固定観念はくつがえります。

関連ページ:インプラント治療前にはカウンセリングが必要な理由

高齢者にとってのインプラントの安全性

高齢者

高齢者のインプラント治療が安全かどうかを判断する上で、歯科医院では以下のようなポイントをしっかりと診査・診断します。

  1. 全身の健康状態(高血圧や糖尿病のコントロールができているか)
  2. 骨密度や顎の骨の量(CT撮影などで詳細に評価します)
  3. お薬の内容(骨粗しょう症治療薬を使用中の方は特に注意が必要です)

また、高齢の患者さんに対しては無理のない治療計画を立てることが基本です。

たとえば、

  • 骨を足す手術を避けるように設計する
  • 骨の状態に合った「短いインプラント」を選ぶ
  • 治療期間をゆとりを持って設定する

など、年齢や体調に合わせた柔軟な対応が可能です。

つまり、治療は「一律」ではなく、「あなたの健康状態に合わせて最適化される」オーダーメイド治療です。

関連ページ:インプラントが身体に悪影響を及ぼすことはあるの?

高齢者にとってインプラントが危険なケースとは?

インプラント治療は、歯を失った患者さんにとって大きなメリットがありますが、高齢の方にとっては注意が必要なケースもあります。ここでは「どのような場合に危険となり得るのか」を整理して解説します。

1. 全身疾患がコントロールされていない場合

高血圧や糖尿病、心疾患、骨粗しょう症などの持病をお持ちの方は、治療リスクが高まります。特に糖尿病は血糖コントロールが不十分だと感染や治癒遅延のリスクが増大します。骨粗しょう症の薬(ビスホスホネート製剤など)を使用している方も顎骨壊死のリスクがあるため、注意が必要です。

持病がある方は必ず主治医と連携し、全身状態を安定させてから治療に臨むことが大切です。

2. 骨量が著しく不足している場合

高齢になると顎の骨が痩せ、インプラントを固定する土台が不足することがあります。骨量が不足していると埋入しても安定せず、長期的にぐらつきや脱落の原因となります。骨造成手術で補える場合もありますが、体への負担が増すため慎重な判断が求められます。

骨量不足は治療の適応を左右する大きな要因となります。

3. 術後のセルフケアが困難な場合

インプラントは「入れたら終わり」ではなく、毎日の歯磨きや歯科医院での定期的な健診が欠かせません。手先の不自由さや認知症などでセルフケアが難しい場合、インプラント周囲炎を発症しやすく、最悪の場合は撤去に至ることもあります。

セルフケアが十分にできるかどうかは、高齢者にとって特に重要な条件です。

4. 出血傾向や免疫低下がある場合

抗凝固薬を服用している方は、手術時や術後に出血が止まりにくいリスクがあります。また、高齢に伴う免疫力低下により感染リスクが高まることもあります。治療に先立って内科医との連携が必要です。

薬の影響や体力低下が、安全性を左右することがあります。

5. 長時間の手術に耐えられない場合

複数本のインプラントや骨造成を伴う治療は手術時間が長くなります。心肺機能が低下している方にとっては大きな負担となり、全身的なリスクにつながることがあります。

治療計画は年齢や体力に応じて無理のない範囲で立てる必要があります。

高齢者でも多くの方がインプラント治療を受けていますが、 全身疾患が安定していない方、骨量が不足している方、セルフケアが困難な方、薬の影響で出血や感染リスクが高い方、体力的に手術に耐えられない方 では危険が伴います。

インプラントは一人ひとりの健康状態や生活状況に合わせて判断すべき治療法です。気になる方はまず歯科医院で相談し、必要に応じて内科とも連携を取りながら安全性を確認することが大切です。

不安なままで終わらせず、まずは相談を

相談

「今さらインプラントなんて…」と感じていた患者さんが、実際に治療を受けて「人生が変わった!」と笑顔になったケースも数多くあります。

まずは、信頼できる歯科医院で無料相談やCT検査などを受けてみるところから始めてみてはいかがでしょうか?

関連ページ:インプラント手術が怖い方へ

まとめ

高齢者でも安心してインプラント治療を受けるために

高齢者の方でも、全身状態や骨の状態が良好であればインプラント治療は十分に可能です。重要なのは、リスクを正しく理解し、医師と一緒に無理のない治療計画を立てることです。

  • 年齢ではなく、健康状態が治療の可否を決める
  • 骨量が少なくても再生治療で対応可能
  • 術後のケアと定期健診が成功のカギ
  • 経験豊富な歯科医院を選ぶことが最も重要

高齢者の方が「もう年だから」と諦める必要はありません。

しっかりと準備を整えれば、自然に噛める喜びを取り戻すことは可能です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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