インプラント

インプラント手術が怖い方へ

インプラント手術は怖いですか?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

「インプラントという治療法を行うには外科手術が必要です」と聞くと「歯科で外科手術?怖い!」と思われるかもしれません。入れ歯やブリッジなどの他の治療法なら抵抗感は少ないという方でも、インプラントには二の足を踏む方は多いと思います。

周囲の歯が長持ちするというメリットよりも、インプラント手術にはどのくらいの時間がかかるのか、痛みや腫れのリスクはどうなのか、翌日から仕事に行けるのか、身体への影響については、と心配は尽きないのではないでしょうか。

手術、痛み、腫れなどの身体への影響を心配して怖がっておられる方のために、それぞれについてご説明します。

インプラント手術を過度に怖がる必要はなし

インプラントの手術を過度に怖がる必要はありません。もちろん、安全な手術のためにはCT撮影による検査を行い、現在の患者さんのお口の状態を把握するという前段階は絶対に必要です。

インプラントを埋入する部位にもよりますが、「思っていたほど怖くなかった。今後歯を失ったら、またインプラントをすると思う」とおっしゃる方が多いという報告もあります。

インプラントの本数が多い等の理由で手術に時間を要する場合は、治療計画書を作成した段階で、詳しくご案内させていただいています。患者さんの身体の負担を考えて静脈内鎮静法という点滴麻酔を併用して手術を行う場合もあります。

歯を失った場合の治療法はインプラントだけでなく、ブリッジや入れ歯もありますので、患者さんにとってより良い方法がブリッジなのか入れ歯なのか、それともインプラントなのかも、治療方法を決める前にじっくり相談できるような体制になっています。

重度の歯周病の患者さんの場合は、インプラントをしてもインプラントの周囲の組織が歯周病に感染して、インプラントがグラグラになってしまうリスクがあります。歯周病患者さんは、まず歯周病の治療を行い、歯茎の状態が良くなってからインプラント治療を受ける必要があることも、実際に治療に入られる前にしっかりご説明します。

また、CT撮影で骨が少ないと判明した患者様には増骨をしてからインプラントをするのか、それともほかの方法を選択なさるのか、ご希望など伺いながら治療法を提案します。

インプラントを怖いと感じる理由

1. 手術時間が長い?

インプラントの手術時間は、埋め込むインプラントの本数や部位によって異なります。通常は1時間程度で終わる場合が殆どです。虫歯の治療でも、治療の内容によっては少なくとも1時間位かかる場合がありますので、それと同様の時間で終了すると思っていただいても大丈夫です。

それ以外に、お薬を飲んでいただいたり、血圧などのバイタルチェックを行ったりする術前の処置、そして術後の処置の流れなど、手術前後にも少し時間が必要です。ただそれらをすべて入れても1~2時間で完了とみていただければ十分です。

インプラントの埋入本数が多い場合や、オールオン4などは、もう少し時間がかかりますが、熟練した技術を持つ医師とスタッフが対応しますので、オペは1日で終わり、オペの後は少し休憩してからお帰り頂けます。インプラントの手術では入院の必要はありません。

2. 手術は痛い?

インプラントのリスクとしてまず考えられるのが、歯茎の切開や縫合により痛みが伴うのかということではないでしょうか。

手術中は局所麻酔を行います。局所麻酔とは虫歯の治療の時に行う麻酔と同じで、これから治療を行う歯の周囲の歯茎に麻酔の注射をします。麻酔は3時間程度効いていますので、歯茎の切開や縫合時に痛みを感じる子とはありません。きちんと局所麻酔がきいているかの確認も担当医やスタッフが必ず患者さんに声掛けをして行いますので、痛みを感じることなくインプラント手術が終了します。

麻酔の注射が痛いのでは?と思われる方もおられるかもしれませんが、例えば当院では痛みを抑える方法として極細の注射針を使います。そして、体温程度に温められた麻酔液を一定の速度で注入する技術により、極力痛みを感じさせないように配慮して手術を行っています。

また、インプラント手術の内容や患者様の状態により、担当医が笑気麻酔という吸入による麻酔や、静脈内鎮静法という点滴麻酔を行う場合もあります。

手術後、麻酔が切れてから痛みを感じた場合は、痛み止めのお薬を飲んでいただき、通常よりもなるべく安静に過ごしていただくことで炎症が早くおさまり、痛みや腫れは引いていきます。

3. 手術後は腫れる?

腫れが起こった場合は十分に縫合が行われていないのではないか、インプラントが骨と結合する間ずっと痛みを我慢するのでは等、ご不安に思われるかもしれませんが、大丈夫です。

手術後の腫れには個人差があります。殆ど腫れない方がいらっしゃる一方で、腫れたが1日程度でおさまる方など、反応が異なります。念のために歯科医が痛み止めのお薬をお出ししますが、全く飲まなかったとおっしゃる方もおられるという報告が上がるほど、痛みの感じ方は人によってまちまちです。

なお、感染を防ぐため、痛みがなくても抗生物質のお薬は必ず飲み切っていただくようお願いします。

4. 顎の骨に金属を埋め込むなんて本当に大丈夫?

顎に金属を埋め込んで大丈夫?

インプラントはチタンという金属を原材料として出来ています。チタンは生体親和性が高く、身体に馴染みやすい性質を持っているため、人工関節の材料として広く医療の分野で使われています。

チタンは骨の中に長い年月置かれても、身体が異物と判断しないばかりか、骨としっかり結合するという性質を持っています。更に、チタンは金属ではありますが、材質的に安定しているため、金属アレルギー反応を起こしにくいため体内に埋め込んでも安心な素材といわれます。

ただし、ごく稀にチタンで金属アレルギーを起こすケースがあると報告されています。金属アレルギーのある方は皮膚科などで事前にパッチテストをして、チタンにアレルギーがあるかどうかを検査することが出来ます。

5. 手術中のトラブル

インプラントは外科手術が必要な治療なので、トラブルやリスクをきちんと知っておく必要があります。治療後に後悔しないためにも、トラブルの可能性や治療後のメンテナンスについても知っておきましょう。

2012年に日本顎顔面インプラント学会が発表した「インプラント手術関連の重篤な医療トラブルについて」という報告によると、09~11年の3年間に421件のトラブルが報告されています。そのデータから推察するとトラブルの発生は千人に一人(0.1%)ぐらいの確率です。

その内訳によるとトラブルの多い順に、「下歯槽神経損傷(27.8%)」、「上顎洞内インプラント迷入(15%)」「上顎洞炎(14.5%)」という結果となっています。

インプラント埋入の手術で下顎の神経を傷つけるのが「下歯槽神経損傷」です。手術後に麻痺や痺れが残るというもので、軽度であれば回復しますが、時間が経ってしまうと治りにくくなる傾向があります。

次に多いトラブルは上顎洞のトラブルです。上あごの骨の奥には、鼻腔につながる「上顎洞」という空洞があります。一般的に上顎の奥歯部分の骨が足りない人は多く、増骨の処置が必要になるケースが多いです。

インプラントを埋入する際に、骨を深く削りすぎると埋入後にインプラントが上顎洞の中に落ちてしまうことがあります。これを「上顎洞内インプラント迷入」と呼びます。この場合はインプラントを除去する手術が必要になります。

また、上顎洞内のインプラントによる感染をそのまま放置したり、手術後に傷がうまく治らなかったりすると、「上顎洞炎」になります。すると膿の交ざった鼻水が出たり、鼻づまりが起きたり、副鼻腔炎の症状が出ます。手術後に異常を感じたら、早急に歯科医院や耳鼻科を受診しましょう。

これらのトラブルは、X線検査やCT検査のデータからインプラントを埋入する位置や角度などの治療計画を立て、その通りに手術が出来れば防ぐことが出来るものです。検査とそれに基づいた治療計画は、安全なインプラント手術には重要で欠かせないものです。

参考書籍:「かめる幸せ」を取り戻す 日本口腔インプラント学会

インプラント手術は怖い?に関するQ&A

インプラント手術中は痛みを感じますか?

手術中は局所麻酔を行いますので痛みを感じることはありません。麻酔の効果は約3時間続きます。怖がりの方には静脈内鎮静法という点滴麻酔を行います。静脈内鎮静法は別途料金がかかります。

インプラント手術後は腫れますか?

手術後の腫れは個人差がありますが、一部の方では1日程度で腫れが引いていくこともあります。

インプラントは体内に金属を埋め込む治療法ですが、安全ですか?

インプラントに使用されるチタンは生体親和性が高く、金属アレルギーの反応を起こしにくい素材ですので医療でも良く使われる素材です。安全に使用されていますが、稀に金属アレルギーを起こすこともあります。

 

まとめ

インプラントがどういうものなのかわからない段階では、手術を怖いと感じられたかもしれませんが、インプラント治療について良く知った後では、手術の怖さはかなり減るのではないでしょうか。

担当医との信頼関係も大切です。どの場合にも言えることは、患者様が納得されてからの治療開始となりますので、ご安心下さい。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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