インプラント

スポーツ中の事故で前歯を失った場合インプラントに出来る?

スポーツ中の事故で前歯を失ったけどインプラントに出来る?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

学校の部活などのスポーツ中に事故で歯や口に怪我をすることがあります。スポーツ中に激しくぶつかって歯が欠ける・折れるなどの怪我で抜歯になってしまった場合のインプラント治療についてご説明します。

スポーツ中の怪我で歯を失った場合にインプラント適用かどうか

スポーツ

スポーツ中の事故などで口や歯を怪我する場合があります。歯が折れたり欠けたり、脱臼してグラグラになったりというものです。スポーツ中にぶつかりやすいのは主に上顎の前歯ですが、インプラント治療はこれらの怪我のために歯を失った場合も行うことが可能です。

スポーツ中の事故による歯の損傷後にインプラントを行う場合、まず損傷が歯だけなのか、それとも顎の骨を含む口腔組織にも及んでいるのかを検査する必要があります。

ただし、インプラントは18歳未満のお子さんには治療が出来ません。また、インプラントは外科手術を伴いますので、患者さんの健康状態によってはインプラントが難しいケースもあります。インプラントが難しい場合は、ブリッジや入れ歯で治療を行います。

歯が抜けてしまった、または抜歯になった

スポーツ中の事故によって歯が抜けてしまった場合や、歯根の部分まで破損したために抜歯が必要になったケースで、精密検査で異常が見られなかった場合には、インプラント治療が可能です。

顎の骨が欠損した場合や脱臼・骨折した場合

怪我の影響が顎の骨に及ぶ場合は、骨折した部分を元に戻す治療をまず行い、顎骨や歯茎が正常な状態になってからインプラント手術を行います。

また、怪我によって骨を失ってしまった場合は、インプラントの前に骨の移植手術が必要になります。骨の移植を行った場合は、移植後6ヵ月~1年経ってからインプラントを埋め込む手術を行います。

インプラント治療が出来るのは18歳以上

18歳のイメージ

18歳未満の子供はインプラント治療を受けることが出来ません。そのため、小中高校生のお子さんが部活中の事故などで歯を失った場合にはインプラントは出来ないことになります。

18歳以上にならなければインプラントが出来ないのは、まだ身体(骨)が成長段階にあるからです。インプラント治療を行っても、顎骨がまだ成長していきますので、治療後に噛み合わせが悪くなることがあるので、18歳未満のお子さんにはインプラント治療は推奨されません。その場合の治療としては、ブリッジが考えられます。まだ若いため入れ歯には抵抗があることと、付けたり外したり、きれいに洗ったりという手間が現実的でないためです。

インプラント治療の流れ

前歯の歯茎の損傷の有無で、直ぐにインプラント治療が可能かどうかが決まります。

スポーツ中の事故によって上顎の骨がへこんだりずれたりしている場合は、その治療を先に行う必要があります。骨や歯茎の状態に問題がなければ、インプラント治療を開始することが出来ます。

治療の流れ

  1. 術前検査(CT撮影等)
  2. 治療計画の作成
  3. 必要な場合は増骨の処置
  4. 一次手術(インプラント埋入手術)
  5. インプラントが骨と結合するまで数ヶ月待つ
  6. 二次手術(二回法の場合、アバットメントを取り付ける)
  7. 型取り
  8. 上部構造の装着

前歯は目立つため、仮歯を入れて歯のない時期をなくすようにします

前歯のインプラントの注意点

前歯のインプラントと奥歯のインプラント

前歯のインプラントは見た目の問題があり、難しいとされています。歯の大きさや歯茎のラインが隣の歯と比べて違和感なくきれいに整っていることが大切です。

特に前歯の1番と呼ばれる中央の2本の歯は、歯の中でも目立ちやすいため、噛んだ時の機能性はもちろんですが、見た目の美しさがまず求められます。

インプラント治療後はメンテナンスが必須

メンテナンス

せっかく入れたインプラントを長もちさせるためには、治療後も数か月に一度メンテナンス(定期健診)のために歯科医院に通って頂く必要があります。

インプラントの周囲の歯茎は、天然歯と比べると細菌感染に弱いため、インプラント周囲炎という歯周病のような症状が出ないように注意しなければなりません。

歯周病予防のためには、歯についた歯垢や歯石を除去し、お口の中の細菌の数を減らす必要があります。歯科医院では専用の器械によるクリーニングを行い、ご家庭でも丁寧に歯磨きを行って歯垢を出来るだけためないことが重要です。

スポーツ中の事故で前歯を失った場合のインプラントに関するQ&A

スポーツ中の事故で歯が欠けた場合、インプラント治療は適用されるのですか?

インプラント治療は、スポーツ中の歯の欠損に対して行われることがあります。欠けた歯を取り除き、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込む手術です。

インプラント治療は18歳未満の子供にも行われますか?

いいえ、インプラント治療は18歳未満の子供には行われません。成長段階にあるため、顎の骨の発育に影響を与える可能性があるためです。

スポーツ中の歯の怪我が顎の骨にも及んでいる場合、インプラント治療は可能ですか?

顎の骨に怪我がある場合は、まず骨の治療を行った後にインプラント治療が行われます。骨折した部分を修復するための手術や骨移植が必要な場合があります。

まとめ

インプラント

前歯は目立つので、歯のない状態で放置することはあまりないとは思いますが、放置したり、ブリッジや入れ歯にすると、歯のない部分は骨が吸収してなくなってしまうので、インプラントにしたいというご希望がある場合は、出来るだけ早く治療を開始することが大切です。

スポーツ中の事故で前歯を失った場合、インプラントによる治療が可能です。以下の二つの論文がこの点に関する情報を提供しています。

1. 前歯を失った場合のプロステーシス治療 この症例報告では、スポーツ事故や交通事故で前歯を失った患者の審美的リハビリテーションについて説明されています。前歯の欠損は患者に極度の心理的トラウマを引き起こし、機能と審美性に障害をもたらすため、適切な修復方法の選択が全体的な成功の重要な要素です。この症例報告では、全セラミックの固定義歯を使用していますが、インプラントによる治療も可能であることが示唆されています。【Sehgal et al., 2023

2. 前歯の損失に対するインプラント治療のマルチディシプリナリーアプローチ 別の症例報告では、交通事故により前歯を失った24歳の男性患者が、不満足な取り外し可能な義歯に代わるインプラントベースの治療を計画したことが記載されています。この症例では、インプラントの配置に必要な十分な骨量の確保のためにオンレイ移植とレーザー支援の歯周手術が必要でした。治療の結果、患者は義歯の機能性と得られた審美性に満足していました。【Mallick et al., 2020

これらの症例報告から、前歯を失った場合でもインプラント治療が適用可能であり、適切な審美的および機能的回復を提供できることがわかります。ただし、治療は患者の具体的な状況に応じて、マルチディシプリナリーなアプローチが必要になる場合があります。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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