インプラント

インプラントを行ったら耳鳴りがするのはなぜ?

インプラントを行ったら耳鳴りがするのはなぜ?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

インプラント後に耳鳴りの症状が起きてしまい、つらい状態になったという患者さんが稀におられます。今日は、歯科治療のインプラントをして、なぜ耳鳴りが起きてしまうのかなど詳しくご紹介いたします。

インプラント後に耳鳴りが起きる原因とは

では、インプラントをした後、耳鳴りの症状に悩まされるのはなぜでしょうか。インプラントの手術後に耳鳴りが起きると思われる原因をご説明します。

インプラントの位置が誤っている

インプラントの埋入位置や深さ、角度がずれてしまうと、トラブルの原因になります。上顎で深く刺さってしまうと、上顎洞に穴が開き、細菌感染が起こり、蓄膿症のようになります。下顎は下顎管という中に神経と血管が通っています。そこに刺さってしまうと、大量出血や神経麻痺という大変な事態になります。そこまでの状態ではなくても、インプラントの位置はとても大切で、血管や神経を圧迫し、耳鳴りやめまいが生じる可能性があります。

噛み合わせが合わない

歯の重要な機能は食べ物を小さくして飲み込みやすくすることで、上下の前歯で食べ物をちぎり、上下の奥歯や左右ですりつぶします。食べ物を噛む際に、噛み合わせが合っていなければ顎関節がずれて神経を圧迫し、痛みを生じさせる可能性があります。

顎関節症を引き起こしてしまった

インプラントの手術中は、患者さんに大きく口を開けてもらう必要があります。インプラントの埋入本数が1本なのか、複数本なのかで、手術にかかる時間も異なります。そのため、潜在的に顎関節症の予備軍だった方が、インプラント手術で顎関節症を引き起こすということはあり得ます。

インプラントの内部にある金属や金属アレルギー

種類の異なる金属がお口の中に有り、お弁当のホイルを誤って噛んでしまうと、ガルバニー電流が生じます。基本的には、被せ物が金属であるというケースが多いですが、インプラントはチタンを使用している場合があるため、チタンのアレルギーにより、耳鳴りがという方もいらっしゃいます。

耳鳴りの後のインプラントの対処方法

耳鳴りの理由が何かによって、対処法は異なります。

噛み合わせの悪さによるものであった場合

インプラント治療を行ったクリニックへ相談しましょう。症状を説明すれば、インプラントの高さなど調整が可能な範囲で調整してもらえる医院が多いです。

インプラントの位置が誤っていた・金属アレルギーの場合

インプラントを撤去するという対処法しかありません。残念ではありますが、インプラントを取り除かなければ、耳鳴りなどの症状が改善しないためです。 また、金属アレルギーの方は、材質を変更して、再度インプラント治療が行えるかどうかは、歯科医師にご相談ください。

再度手術をご希望される際にも、すぐに治療をできるわけではありません。インプラントを取り除いた部分は骨に穴が開いたままの状態なので、増骨材(人工メンブレンなど)を入れて顎の骨の再生を促進し、安定したころにインプラントの再建を行います。インプラントを再度行うことは心身の負担も増加します。また、費用や治療期間もかかるため、何度も行える手術ではありません。

インプラントとは

インプラントの構造

 インプラント治療は、入れ歯やブリッジと同じく歯を失った方のための治療方法です。虫歯や歯周病、もしくは外傷や事故などで歯を失った方が、咀嚼機能の改善を図るためにインプラントを入れます。インプラントは、三つの部品により成り立っています。

インプラント体(人工歯根・フィクスチャー)

顎の骨に埋め込む部分をインプラント体という。インプラント体は生体親和性の高い純チタン・チタン合金の材料で作製されることが多く、骨と結合する性質をもっている。

アバットメント(連結部分)

アバットメントはインプラント体と上部構造を接続する役割で、メタル・セラミックなどの材料で作製されることが多い。

上部構造(人工歯・被せ物)

上部構造は歯茎の上に見える歯の部分となるため、審美性を求めて、オールセラミック・ジルコニアセラミック・ハイブリッドセラミックの材料で作製されることが多い。

参照先:NHS

インプラント治療の流れ

インプラント治療には手術の回数によって一回法と二回法に分けられます。一回法は顎の骨の厚みや量、高さが十分にある方向けの手術で、多くの方は二回法でインプラント手術を行います。

インプラント術前

  1. カウンセリング(当院は無料の予約制)を行う。主に患者さんからお悩みと治療の希望を聞く。
  2. 歯科用CT撮影などの精密検査を行う。
  3. 検査結果をもとに担当医が治療計画(費用・治療期間・通院の間隔)を作成し、患者さんに提案する。

インプラント手術の当日

  1. 歯茎に局所麻酔をする。
  2. 歯茎を切開してあごの骨にドリルで穴を開け、インプラント体(人工歯根)を埋め込む。
  3. 歯茎を縫合し、インプラント体と歯茎がしっかり結合するまで数ヶ月待つ。

二週間後

  1. 縫合した箇所の抜糸を行い、仮歯が必要な場合は調整をする。

三か月後

  1. 人工歯根と骨がしっかり結合したことを確認する。
  2. 歯茎を再度切開し、インプラント体の頭にアバットメントを装着する。

二週間後

  1. 最終的な型取りをして、セラミックなどで上部構造を作製する。

作製物完成後

  1. 上部構造とアバットメントをスクリューかセメントで接着し、完成。

手術が終わってもインプラント治療は終わりではありません。インプラントはその後のメンテナンスによって長もちさせられるか否かが決まります。

通常の歯と同様にきちんと歯磨きで汚れを除去できなければ、インプラント周囲炎という歯周病に似た状態になります。インプラント周囲炎になると、インプラントはグラグラになって抜けてしまうことがあります。それを防ぐためには歯科医院で定期的なメインテナンスを怠らないようにしましょう。

インプラント治療後の耳鳴りに関するQ&A

インプラント後に起こる耳鳴りの原因は何ですか?

インプラント後に耳鳴りが起こる原因として、インプラントの位置の誤りや噛み合わせの問題が考えられます。

インプラントに金属アレルギーがある場合、どう対処すれば良いですか?

金属アレルギーがある場合、インプラントを撤去するか材質を変更する対処法があります。

インプラント治療後に再手術が必要な場合、すぐに行えますか?

インプラント治療後の再手術はすぐに行えるわけではなく、骨の再生を促進するために時間と増骨材が必要です。

まとめ

インプラントの直後は、麻酔が切れた後の痛みや腫れがありますが、その症状が引いてきたころに、耳鳴りやめまい、頭痛や肩こりの回数が多いなと気になる場合は、早めに歯医者さんへご相談ください。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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