インプラント

歯を失ったとき治療をしないで放置するとどうなる?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

虫歯や歯周病や事故などで歯を失ったあと、様々な事情や理由でそのまま治療せずに年月が経ってしまう場合があります。抜けた部分を治療せずにそのまま放置してしまうと、他の歯に悪影響が起こります。どのようなことが起こるのかについてご説明します。

歯がない状態で治療しないとどうなる?

歯を失っても、奥歯1本程度だとあまり不便を感じないかもしれません。しかし前歯を失った場合は見た目が気になり審美性の回復が求められますし、多くの歯を失った場合には、見た目はもちろんのこと、食事や発声など生活していくうえで様々な問題が出てきます。

何よりも、歯はお互いを支えることで歯列を形作っていますので、歯を1本失うことは歯全体の歯列が崩壊するということに繋がるのです。

歯を失ったことによって起こる様々な影響

    1. 頬などの筋肉の緊張が失われて、頬が下に垂れた感じになり、老けて見える。
    2. 食べ物が噛みにくくなるために、良く噛まずに飲み込んで消化不良を起こしたり、かたいものが食べられなくなる。
    3. 食べられる物が限られてくるために、栄養状態が悪くなる。
    4. 発音がしにくくなり、話すことがおっくうになる。

歯が抜いたまま治療せずに放っておくとなぜ危険なのか?

むし歯や歯周病や事故等で歯を失ってしまったときに、前歯は目立つのですぐに歯科医院に駆け込むかもしれません。しかし、奥歯は他人から見えないために「1本くらいなくても大丈夫」「意外と気にならない」などと言って放置してしまう場合があります。

歯は隣の歯と隙間なく互いに押し合うことで全体のバランスを保っています。その中の1本を失うことで全体のバランスが崩れてしまい、気がついたらとんでもない状態になってしまうこともあります。

抜けたスペースに隣の歯が倒れてくる

歯列はお互いに支え合うことで成り立っています。そのため、歯が抜けた場合、両隣の歯が空いたスペースをつぶそうと自然にどんどん倒れてきます。それだけではなく、上下の歯が噛み合う噛みあわせの機能が失われたために、下の歯が抜けた場合は上の噛み合わせの相手方の歯が下りてくる可能性があります。個人差がありますが、ひどい状態になると下の歯ぐきとぶつかるくらいまで落ちてきます。

抜けたスペースに噛み合う相手の歯が伸びてくる

逆に下の歯があって上の歯がなくなった場合も、下の歯がどんどん伸びてきてしまいます。その形のままで数年間放置すると、インプラントにしても入れ歯にしても非常に噛むことが難しくなってしまいます。そのため放置した歯をそのまま時間をかけて置いておかず、適切な治療を早めに受けた方がいいです。

本来は抜けた歯だけの治療で済んでいたものが、隣の歯が倒れてきた場合は隣の歯をまっすぐに起こす矯正治療をしなければならなくなります。上の歯が落ちてきているのであれば、上の歯を元の位置に戻すような治療が必要になってきます。

歯の位置を元に戻す治療というのは具体的には二つしかありません。一つは歯を短く削ってしまうという方法で、削る量が多いと中の神経は取ることになってしまいます。

もう一つは矯正治療です。若い方々がされている歯列矯正をすることになります。インプラント治療をされる方の平均年齢は当院では69歳ですが、60代の方でも必要があれば矯正治療をする場合があります。

そして伸びた歯だけを治療するだけでなく、矯正治療をするならどうせなら全部きれいにしましょうということで、矯正をすることで歯列が整い、きちんとした噛み合わせが出来ます。

歯がないと骨が痩せてしまう

歯がなくなったために噛む力が骨に加わらなくなると、その部分の骨が痩せてきてしまいます。歯があった時にはかなり高さのあった顎骨が、歯が抜けてしまうとどんどん痩せてきて、薄くなってしまいます。

顎の骨が薄くなると入れ歯が安定しませんし、インプラントも増骨の処置が必要になるために治療期間や費用が多くかかってしまいます。歯が抜けたまま治療せずに放っておいたために骨が痩せると、いざ治療しようとした時に様々な問題が起こり、治療がより難しくなります。

歯を抜いたまま放置したら噛み合わせに問題がでる

歯の模型

上下の奥歯を失ったあと、長期間そのまま治療せずに放置してしまうと、咬み合わせが悪くなります。上の歯は下の歯肉に、そして下の歯は上の歯ぐきに咬み合うようになってしまいます。横から見ると、上の歯が下の歯の裏側に隠れてしまうような状態になることも、珍しくありません。

このような状態になってからの治療は、インプラントを埋め込むだけでは解決しません。歯周病の治療や、残っている天然歯の位置や向き、長さなどの治療といった包括的な歯科治療が必要になるばかりでなく、かなり長期にわたる治療とメンテナンスが必要になります。

ある方は、抜歯と同時に、奥歯にインプラントを埋入しました。その結果、正しい噛み合わせが失われることなく、咬み合わせの高さも適切な状態のままで、その結果、前歯などの他の歯の噛み合わせも、ずれずに済みました。

このように、咬み合わせということで考えると、インプラントとは、歯を失った部分の見栄えを良くするだけにとどまらず、正しい咬み合わせの状態を維持するための治療と言えるでしょう。歯が抜けた状態で放置してしまうと、やがて必ず咬み合わせや歯並びに変化が生じてきます。

つまり、歯を失うということは、その部分の歯がなくなるというだけでなく、上下の歯全体に影響を及ぼす重大なことなのです。そのため、抜歯しなければならなくなった時には、出来るだけ速やかになくなった歯の部分への治療をされることをお勧めいたします。

前歯はすぐに治療しないと見た目が悪くなる

前歯

奥歯を失っても他人からは見えないのですが、前歯やその周辺の歯を失った場合は、他人から見えてしまうことが多くなります。そのため、前歯の抜歯後に歯がない状態で放置する方は少ないとは思いますが、様々な理由で放置してしまう場合も考えられます。

歯は互いにぴったりとくっついて支え合って歯列を構成していますので、1本でも歯を失うと、噛めないだけでなく、歯並びに様々な影響が出てきます。前歯は目立つので早めに治療することになると思いますが、放置した期間が長ければ長いほどいざ治療しようとしたときに、様々な問題が出る場合があります。

抜歯後の治療で美しい前歯を取り戻すためにも、出来るだけ早めに歯科医院に相談するようにしましょう。

歯がない時の治療法「ブリッジ」「入れ歯」「インプラント」

ブリッジ入れ歯インプラント

歯を抜けたままにしておくと、見た目や食事がしにくい、発音しにくいなどの生活していく上での悩みが生じやすくなります。ぜひ早めに治療することをおすすめします。歯が無くなった時の治療には、ブリッジ、入れ歯、インプラントの三種類が考えられます。

それぞれ、メリット、デメリットがありますので、しっかりと知識を得たうえで比較を行い、どの治療方法を選ばれるかは最終的にはご自身で選択しなければなりません。

もちろん歯科医師は、その時点での可能な治療法をご説明したうえで最適だと思われる治療方法をおすすめしますが、最終的にどうするか決めるのは患者さんご自身となります。どの治療法を選ぶのか、自分にとってどれが一番良いのかを判断するためには、治療に関する正しい知識が必要です。

インプラントは人工歯根で失った歯を補います

インプラントと天然歯の違い

インプラント治療は歯が抜けてしまった時の治療の選択肢の一つで、金属のチタンで出来た人工歯根を顎骨に埋め込んで、骨と結合させてしっかりと固定させます。その上にセラミックなどで作った人工のかぶせ物(義歯)を装着して、咬合を回復させて噛めるようにします。

インプラント体を骨に埋入するための外科手術が必要になることと、保険のきかない自由診療になりますので費用が全額自己負担となり、ブリッジや入れ歯などの保険適用の治療と比べると治療費が高額になるのがデメリットです。料金は高くなりますが、オールセラミックやジルコニアセラミックで上部構造を作ると、天然の歯と見分けがつかないくらいに自然な色調で作れます。違和感なくしっかり噛めるようになることが大きなメリットとなります。

歯を失った場合に放置することに関するQ&A

歯を失ったまま放置するとどんな問題が起こりますか?

歯を失ったまま放置すると、見た目や噛み合わせに関する問題が生じるだけでなく、食事や発音などの日常生活にも様々な影響が出る可能性があります。

歯を失った場合の治療法にはどのような選択肢がありますか?

歯を失った場合の治療法としては、ブリッジ、入れ歯、インプラントなどが一般的な選択肢として考えられます。

前歯を失った場合、なぜ早めに治療を行う必要があるのでしょうか?

前歯を失った場合、見た目が悪くなり、自信を失うことが多いです。また、前歯の欠損によって噛み合わせや発音にも影響が出るため、早めの治療が求められます。

まとめ

いかがでしたか。私たちのインプラント治療のポリシーは「長持ちさせる」ということですので、インプラント治療の前に治すべきところはきちんと治して、全体的に長持ちさせるように考えています。

歯を抜けたままにしていると、いざ治療をしようと思った時に治療費や治療期間が多くかかってしまい、全身の健康にも影響が出る場合がありますので、抜けたままあまり長く置いておかない方が良いです。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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