インプラントは何本必要ですか?
失った歯の本数と場所、噛み合わせの状態によって必要な本数は変わります。
インプラント治療を検討するとき、多くの方が最初に気になるのが
「歯を1本失ったら、インプラントも1本必要なの?」
「何本失うと、何本のインプラントになるの?」
という疑問です。
結論からお伝えすると、歯を失った本数=インプラントの本数とは限りません。
噛む力のかかり方や骨の状態、周囲の歯とのバランスによって、治療方法は変わります。
この記事はこんな方に向いています
- 歯を何本か失い、インプラント治療を検討している方
- 本数による治療の違いを、事前に知っておきたい方
- 費用や治療規模のイメージを持ちたい方
この記事を読むとわかること
- 歯を失った本数別に考えられるインプラント治療例
- なぜ「本数どおりに入れない」選択があるのか
- 治療計画を立てる際に重視される考え方
目次
歯を1本失った場合、インプラントは何本必要ですか?
歯を1本失った場合、基本的にはインプラント1本で補う治療が選択されます。
周囲の健康な歯を削らずに済み、噛み合わせのバランスを保ちやすい点が特徴です。
1本欠損なら、インプラント1本が標準的です。
治療の考え方
- 失った歯の部分だけを独立して補える
- 両隣の歯に負担をかけにくい
- 噛む力を自然に骨へ伝えやすい
これらの理由から、1歯欠損ではインプラント治療のメリットが最も活かされやすいとされています。ブリッジのように健康な歯を削る必要がない点は、将来的な歯の寿命を考えるうえでも重要です。
歯を2本連続して失った場合、インプラントは何本必要ですか?
2本連続で歯を失った場合、インプラント2本でそれぞれ補う方法と、インプラント1本+被せ物を連結する方法の2つが検討されます。
2本失っても、必ず2本入れるとは限りません。
主な治療パターン
- インプラント2本
→ 噛む力を分散しやすく、安定性が高い - インプラント1本+連結した被せ物
→ 骨の量や費用面を考慮した選択
この判断では、噛み合わせの強さや顎の骨の幅が重要になります。奥歯で強い力がかかる場合は、2本埋入することで長期安定を目指すケースが多くなります。
歯を3本以上失った場合、インプラントは何本必要ですか?
3本以上歯を失った場合でも、失った本数すべてにインプラントを入れるとは限りません。数本のインプラントを支えにして、複数の歯をまとめて補う設計が行われます。
インプラントでブリッジを作る方法は、通常のブリッジと同じく、失った歯が連続して1~3本程度の場合に適用となります。歯が4本以上連続で欠損している場合は、土台で支えきれなくなりますので、ブリッジにすることが出来ません。
本数が増えるほど「支える設計」が重視されます。
考え方のポイント
- インプラントは「柱」の役割を担う
- 被せ物を連結して噛む力を分散
- 骨への負担を均等にする設計が重要
この段階になると、単純な本数計算ではなく、力の流れをどう作るかが治療の軸になります。その結果、インプラントの本数を抑えつつ、機能を確保する計画が立てられます。
多くの歯を失った場合、インプラントは何本になりますか?
ほとんどの歯を失った場合、総入れ歯型のインプラント治療や少数本のインプラントで全体を支える方法が検討されます。
少ない本数で全体を支える設計が選ばれます。
代表的な考え方
- 4〜6本程度のインプラントで全体を支える
- 取り外し式、固定式などの選択肢がある
- 清掃性と噛み心地の両立を目指す
歯を多く失った場合は、「何本入れるか」より「どう使うか」が重要になります。その結果、生活のしやすさやメンテナンス性まで含めた治療計画が立てられます。
全ての歯を失った場合のインプラント治療
片顎の歯が1本も残っていない場合、本来は14本の歯を補う必要があります。実際の治療では下顎の場合は4~6本、上顎の場合6~8本のインプラントを埋め込んで全ての歯を補うケースも多くあり、インプラントの上には連結した上部構造を装着します。
全ての歯を失った総入れ歯の方向けのインプラント治療には種類があり、比較的良く使われているオールオン4と、インプラントオーバーデンチャーについてご説明します。
オールオン4
オールオンフォーはノーベルバイオケア社によって開発された、総入れ歯の方向けの治療です。奥の2本は神経や血管を避けて長めのインプラントを斜めに埋入します。インプラントの埋入本数は片顎4~6本で全ての歯を作ります。
オールオン4の上部構造は歯茎に似せたピンク色の構造の上に12本の歯が連結されて一体化させた形になっています。総入れ歯と違って床の部分がありませんので、小さくシンプルな形となります。
インプラントオーバーデンチャー
インプラントオーバーデンチャーとは、インプラントで総入れ歯を固定する治療法のひとつです。通常の総入れ歯は歯茎や粘膜で固定されますが、インプラントが支えになりますので、安定していて噛む力も強いのが特徴です。インプラントの埋入本数は片顎2~4本程度です。
磁石を利用して入れ歯を安定させる方法
インプラントと入れ歯の双方に磁石を取り付け、磁石の力で入れ歯を固定します。
ロケーターを利用して入れ歯を安定させる方法
インプラントと入れ歯の双方にロケーターと呼ばれる樹脂製のアタッチメントをつけ、アタッチメント同士を連結させて入れ歯を安定させます。
なぜ歯を失った本数どおりにインプラントを入れないのですか?
インプラント治療では「失った歯の本数=インプラントの本数」という単純な考え方よりも、噛む力の配分・顎の骨の条件・清掃性・将来の修理しやすさを重視して設計します。
歯は“見た目の本数”だけでなく、“力学(噛む力の流れ)”で長持ちが決まるため、場合によっては少ない本数で複数の歯を支える計画が合理的になることがあります。
インプラントは「本数合わせ」ではなく「長く使う設計」を優先します。
なぜ「本数どおり」にしない判断が起きるのか?
1. 噛む力は“歯の数”ではなく“支える柱の配置”で決まる
歯を失った本数が同じでも、場所によって噛む力の強さは違います。特に奥歯は力が強く、設計を間違えるとインプラントや骨に負担が集中します。そのため「1本欠損=1本埋入」が常に正解ではなく、柱をどこに置くと安定するかで本数が決まります。
2. 骨の条件が“理想の場所”に追いつかないことがある
インプラントは顎の骨に埋め込みますが、歯を失って時間が経つほど骨が痩せることがあります。「本数どおりに入れる」には、必要な位置すべてに十分な骨があることが前提です。骨造成などで対応できる場合もありますが、負担・治療期間・費用も含めて総合判断になります。
3. 清掃性(ケアのしやすさ)は、長期予後に直結する
インプラントは虫歯にはなりませんが、歯垢がたまるとインプラント周囲炎のリスクが上がります。本数が増え、被せ物の形が複雑になるほど、患者さんご自身の歯磨き・補助清掃が難しくなることもあります。
その結果、「入れた数だけ管理が難しくなる」という現実が出てきます。「壊れたときに直しやすい設計」にするため、長く使う治療ほど、「トラブルがゼロ」よりも「トラブル時に被害が最小」が大事です。
たとえば全部を細かく単独で作ると、噛み合わせの変化で一部に負担が集中しやすかったり、修理が部分的に難しくなることがあります。逆に、連結や支えの考え方を調整することで、修理・交換がしやすい構造にできる場合があります。
4. 費用だけの話ではない(ここを誤解すると危険)
「少ない本数=安い」というのは確かにメリットと思われるかもしれませんが、本数を減らす判断には、骨・力・ケア・修理性など複数の医学的理由が絡むのが普通です。
患者さん側から費用を抑えたいとうご要望があった場合、担当医は本数を減らすことが可能かどうかを慎重に判断します。本数が減らせない場合は、必ずその理由をご説明します。
つまり、インプラントの本数は「失った歯の数合わせ」ではなく、
- 噛む力をどう逃がすか(力学)
- 骨がその設計に耐えられるか(土台)
- 患者さんが維持できる形か(ケア)
- 将来の修理が現実的か(運用)
この4点のバランスで決まります。
インプラント治療は「設備投資」に似ています
インプラントは“買って終わり”ではなく、維持管理して価値が出る治療です。設備投資でも、機械を増やせば生産性が上がるとは限らず、メンテナンスや運用が追いつかないと逆にトラブルが増えますよね。
口の中も同じで、本数を増やす=常に良いではなく、「管理し切れる設計」こそが結果的に長持ちしやすい、というのが現場のリアルです。
まとめ
インプラントの本数は、歯を失った本数別の治療例を知ることで、初めて現実的にイメージできるようになります。
ただし、実際の治療では「何本失ったか」よりも「どう噛み、どう守っていくか」が重視されます。
本数は結果であり、目的は噛める状態を長く保つことです。その視点を持って治療を考えることが、後悔しにくいインプラント治療につながります。
医療法人真摯会