インプラント

インプラントかブリッジか。選択の仕方

インプラントかブリッジどっちにする?

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

歯を失った時の治療で、インプラントかブリッジか悩んでいる方は多いと思います。歯を失った場合の治療としてはブリッジ、入れ歯、インプラントという選択肢がありますが、皆さん、どれにするか決めかねておられるようです。インプラントとブリッジについてご説明します。

インプラントかブリッジかの選択において考慮すべきポイント

歯を失った際に、インプラントとブリッジという2つの治療法が選択肢としてあげられ、どちらを選ぶか慎重に検討しなければならない場合、以下のようなポイントを考慮して選択しましょう。

1. 口腔内の健康状態

インプラント

インプラントは、失った歯の根元を人工的に再現する治療法で、隣接する歯に影響を与えずに独立して機能します。そのため、隣接する歯が健康で、歯周病になっていない場合に適しています。インプラントを支えるためには十分な骨量が必要で、骨が不足している場合には骨を増やすための処置が必要となることもあります。

ブリッジ

ブリッジは、失った歯の両側の健康な歯を削り、その上に人工歯を取り付ける治療法です。ブリッジは、複数の歯を失った場合や、隣接する歯がすでに補綴物(被せ物など)の治療を受けている場合に効果的です。しかし、ブリッジは隣接する健康な歯を削る必要があり、その歯への負担が増えてしまうことがあります。

2. 治療の耐久性と長期的な安定性

インプラント

インプラントは、適切なケアとメンテナンスが行われれば、長期的に安定した状態を保ちます。インプラント自体は腐食することがなく、周囲の骨としっかり結合するため、長期的には自然歯に近い機能を持続できます。ただし、インプラント周囲炎などのリスクを防ぐために、定期的なメンテナンスが不可欠です。

ブリッジ

ブリッジは、インプラントに比べて治療期間が短く、早く装着できるメリットがありますが、耐久性に関しては、インプラントよりも短い傾向があります。隣接する歯に依存しているため、これらの歯がダメージを受けると、ブリッジ全体がダメになることがあります。一般的に、ブリッジは5〜15年程度の耐用年数があり、その後は交換が必要になることが多いです。

3. 審美性と自然な感覚

インプラント

インプラントは、見た目や感覚が非常に自然であるため、他の歯とほとんど見分けがつきません。インプラントは骨に埋め込まれているため、噛む力も自然歯に近く、日常生活においても違和感が少ないのが特徴です。審美性を重視する場合、インプラントは優れた選択肢となります。

ブリッジ

ブリッジも見た目は自然で、違和感のない自然な感覚で使えます。支台となる歯は他の天然歯と同じように良く噛めますが橋渡しされた真ん中の部分は、噛む力が天然歯よりも弱くなります。

4. 経済的な要素

インプラント

インプラントは初期費用が高い治療法ですが、長い年数機能させることが出来るため、長期的にはトータルコストを考慮すると合理的な選択となる場合があります。また、インプラントは一般的には保険適用外となりますので、費用の支払い方法については事前に検討が必要です。

ブリッジ

ブリッジはインプラントに比べて初期費用が低く、特に保険が適用される場合は、経済的負担が軽くなります。しかし、ブリッジは寿命が短く、将来的に交換が必要となることを考えると、長期的には追加の費用負担が発生する可能性が高いです。

5. 生活習慣やライフスタイル

インプラント

インプラントは、長く機能させるためには健康的な生活習慣が重要です。喫煙や過度の飲酒は、インプラントの成功率を下げる可能性があるため、これらの習慣がある場合は、事前に考慮する必要があります。また、インプラントは適切な口腔ケアと定期的な健診の受診が求められるため、これらに取り組む意識が必要です。

ブリッジ

ブリッジは特別なメンテナンスが必要なく、通常の口腔ケアで対応できます。ただし、支えとなる歯の状態に依存するため、長く使うためには支台となる歯の健康管理が必要です。また、特に噛む力が強い方や歯ぎしりの習慣がある方は、ブリッジの耐久性に注意が必要です。

ブリッジとインプラントの比較

ブリッジかインプラントか、悩んでおられる方は、比較しながらじっくり考えて選びましょう。

ブリッジとインプラントの比較
項目 インプラント ブリッジ
自然に見えるか・噛み心地 ◎自分の歯のように良く噛める。天然歯と見分けがつかないくらい自然に見える。 〇違和感や異物感は殆どない。
周囲の歯への負担 〇周囲の歯を傷つけない。 ×両隣の歯を削る必要がある
骨が痩せるのを防げるか 〇人工歯根によって骨が痩せるのを防げる。 ×歯が欠損した部分の骨は痩せてしまう。
保険適用か ×保険がきかない。 〇保険治療が可能。前歯は自費診療のセラミックにした方がきれい。
治療期間 ×半年程度の治療期間が必要。 〇数回の通院で済む
外科手術が必要か ×外科手術が必要 〇外科手術は必要ない

 

インプラントとブリッジのメリットデメリットとは

虫歯などで抜歯したときに、昔はほぼブリッジの治療になりました。現在ではインフォームドコンセントといって、医師は患者さんに可能な治療法をご紹介して十分にご説明し、最終的には患者さんが決定するというやり方を取り入れている医院がほとんどです。そのため、医院側は考えられる治療法を全て患者さんに説明し、患者さんの側も自分で決断するだけの知識を得て決めることが必要になってきています。

インプラントかブリッジか入れ歯か、医院から説明を受けた後は患者さんがご自分の責任で決めなければならないので、悩む方が多いのだと思います。それぞれにメリット、デメリットがあるので、どの治療法を適用するかは簡単には決められません。

インプラントのメリット・デメリット

インプラントのメリット

  • 自分の歯のように噛める
  • 天然歯と見分けがつかないくらいきれい
  • よく噛める
  • 自立しているので周囲の歯を傷めない
  • 人工歯根によって骨が痩せるのを防げる

インプラントのデメリット

  • 保険が効かない自由診療なので治療費が高い
  • 外科手術が必要になる
  • インプラントは歯周病に弱いのでメンテナンスが必須
  • 治療期間が長い

ブリッジのメリット・デメリット

ブリッジのメリット

  • 保険がきくので費用が安く手軽にできる
  • 治療期間が短い
  • お口の中での違和感や異物感がない

ブリッジのデメリット

  • 両隣の歯を削って土台にする必要がある
  • 前歯の場合は審美面から自費診療のセラミックする必要がある
  • 土台にした歯に負担がかかる為、歯の寿命が短くなる恐れがある
  • 一番奥の大臼歯を失った場合はブリッジをかけられない

このように、治療法にはメリットとデメリットの両方があります。

ブリッジってなんでしょう?

歯を1本失った場合、従来の治療方法では、両隣の歯で義歯を支えるブリッジが使用されていました。ブリッジは上の図のように、失った歯の両隣の歯を削って3本連結のかぶせ物を装着します。

ブリッジは、保険がきくので安価で作れますし、お口の中で違和感もなく、通院も数回で済みます。しかし、将来的な耐久性を考えると、ブリッジは実は問題をはらんでいます。

ブリッジを作るには、ブリッジを固定するために健康な歯を2本削らなくてはなりません。しかも、ブリッジは水平に作らなければならないため、同じ高さに揃えるためにエナメル質を完全に削ってしまう必要があります。健康な歯をかなり削るのですから、これには心理的な抵抗があると思います。

ブリッジのために削られた歯は神経を取らなければならないときもあり、更に失った歯を支えるための負担が生じます。このため、ブリッジを支える歯は痛みやすく、将来的に様々な問題を起こしやすくなります。

また、歯を失った部分の骨は、ブリッジによって歯を補ったとしても自然に痩せていってしまいます。そのために、将来、ブリッジの下に見た目の悪いスペースが出来る可能性もあります。

一番最悪なのは、ブリッジを固定している歯のいずれかが抜けてしまうと、ブリッジを長くし、それを支えるために、健康な歯を更に1本削る必要が出てくることです。これは将来的に必ずといっていい程、起こってくる問題です。このようなデメリットも十分に考慮して、歯の治療方法を選択しなければならないと思います。

ブリッジは数年後に更に歯を失う原因になる可能性がある

複数本の歯を失ってしまって噛めなくなって悩んでいる方も、元は1本の歯を失うことから始まったことと思います。1本くらい歯がなくても大丈夫と思われたかもしれません。逆に歯を抜かなければならないなんて大変なことになったと思われたかもしれません。

しかし、このたった1本の歯の治療が、残った歯の運命を決めると言っても過言ではないでしょう。

歯を失ったのが何年も前の場合は、歯科医師からブリッジ治療を勧められる事が多かったのではないかと思います。今でこそインフォームドコンセントといって、歯科医師は患者さんにしっかりと治療内容を説明して同意をもらわなければなりませんが、一昔前の歯科治療では、患者さんに詳しい説明をしてくれる歯科医師は少なかったと想像できます。そのためにあまり説明せずに治療が進められることになり、知らない間にブリッジにされていた方もおられるのではないでしょうか。

両隣の歯が虫歯のない完全に健康な歯であった場合、ブリッジを支えるために健康な歯を大きく削る事になってしまいます。その方の歯の状態にもよりますが、ブリッジの支えになる歯も何年か後には虫歯になったり、ブリッジの支えの歯には大変な力がかかるために歯の根が割れてしまったりして、抜歯が必要になる場合があります。

そうすると更に隣の歯を削り、大きなブリッジになり、新しくブリッジを支えることになった歯に負担がかかり、その歯も何年か後にはダメになるという負の連鎖が始まるリスクがあります。

現在ブリッジにしている方がインプラントに変える場合

ブリッジをインプラントに替えたいとおっしゃる患者さんもおられます。抜歯してから何年もたっている場合、歯を失った部分の骨が痩せてしまって、そのままでは骨の高さや厚さが足りなくてインプラントの埋入が出来ない場合があります。

その場合は、GBR、サイナスリフト、ソケットリフト等の増骨の処置をすればインプラント手術を行うことが可能になります。

インプラントかブリッジかに関するQ&A

 

インプラント治療の主なメリットは何でしょうか?

自然歯と見分けがつかない見た目、自立性による周囲の歯へのダメージ防止、人工歯根による骨の痩せ防止などが主なメリットです。

インプラント治療の主なデメリットは何でしょうか?

保険が効かないため治療費が高い、外科手術が必要、メンテナンスが必須であり、治療期間が長いことがデメリットです。

ブリッジ治療の主なメリットは何でしょうか?

保険が適用され、費用が安く、治療期間が短い、お口の中での違和感が少ないことがメリットです。

ブリッジ治療の主なデメリットは何でしょうか?

両隣の歯を削って土台にする必要があり、前歯の場合は審美面からセラミックする必要があること、土台にした歯に負担がかかるため、歯の寿命が短くなる可能性があることがデメリットです。

まとめ

ブリッジとインプラントを比較すると、それぞれメリットデメリットがあります。ブリッジはインプラントより費用面では安くできますが、隣の歯に負担をかけてしまうため、隣の歯をダメにするリスクが高いです。

逆にインプラントは、天然の歯と同様にしっかり咬む事が出来ますが、外科手術を伴い、料金面ではブリッジよりも料金の負担がかかります。(前歯の治療などで審美的な理由からブリッジのかぶせ物をセラミックやジルコニアにすると自費診療となり、高額の治療費がかかってしまいます)

どちらを選択する場合も、歯科医師としっかり話し合って、歯を失った後の治療について決めることが重要です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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