事故などで前歯が折れてしまった時は、インプラントできれいに治るのでしょうか?前歯で大切なのは審美性で、隣の歯との区別がなく天然歯のように見えるように治療しなければなりません。そして食事の際に噛み切るという役割も欠かせません。
スポーツ中、ぶつかった、転んだ、事故などが発生して前歯が折れた時の治療についてご説明します。
目次
前歯が折れた場合の選択肢
前歯が折れてしまった場合、見た目と機能の両方を回復するためには、適切な治療が必要です。折れた前歯を修復する方法には、次のような選択肢があります。
- 歯冠修復(クラウン)
- 歯の接着修復
- インプラント治療
この中で、インプラント治療は歯を完全に失った場合、または残存する歯が修復不可能なほど損傷している場合に最適な治療法です。
インプラントで前歯をきれいに治せるか?
インプラント治療は、前歯を美しく自然な状態に回復させるための効果的な方法です。以下の理由から、インプラントは前歯の修復に優れた選択肢となります。
1. 自然な見た目
インプラントは骨に埋め込まれるため、人工歯がしっかりと固定されます。これにより、天然の歯とほとんど区別がつかない見た目を実現できます。特に前歯の場合、審美性が非常に重要ですが、インプラントはその要求に十分応えられる治療法です。
2. 機能の回復
前歯は見た目だけでなく、噛む機能や発音にも大きな役割を果たします。インプラントによって失った前歯を補うことで、噛む力や発音の機能も自然な状態に近づけることができます。
3. 周囲の歯に影響を与えない
インプラント治療では、隣接する健康な歯を削ったり、負担をかけたりする必要がありません。これは、特に前歯においては重要であり、全体の口腔健康を保つためにも優れた選択肢となります。
4. 骨の維持
前歯を失うと、その部分の骨が徐々に吸収されてしまいますが、インプラントは骨と直接結合するため、骨の維持にも効果的です。これにより、長期的に見ても歯茎や口元の形を保つことができます。
前歯が折れた時のインプラント治療の流れ
- 検査・・レントゲン、CTなどで歯茎と骨の検査を行います。
- 抜歯・・折れた前歯の根っこを抜歯します。その後数か月待ち、歯茎が落ち着くのを待ちます。
- 一次手術・・インプラント体を顎骨に埋入する手術を行います。インプラントが骨と結合する迄そのまま数か月待ちます。
- 二次手術・・インプラント体にアバットメントを取り付け、最終的な上部構造のための型取りをします。
- 最終的な上部構造の装着・・セラミックの上部構造を取り付け、インプラント治療は終了します。
注意点とリスク
前歯のインプラント治療には以下の注意点とリスクが伴います。
- 治療期間の長さ・・インプラントが骨と結合するまでに数ヶ月かかるため、治療には時間がかかります。
- 費用・・前歯のインプラント治療は審美性が求められるため、費用が高額になることがあります。
- 術後のケア・・治療後も定期的なメンテナンスが必要です。特に前歯は目立つ部分であるため、日常のケアが重要です。
前歯の上部構造について
特に上顎の前歯の場合は審美性が一番に重視されますので、セラミックかジルコニアで上部構造を作成します。
- ジルコニアセラミック冠・・最も高価なタイプ、審美性、耐久性とも最も抜群によい。
- オールセラミック冠・・最も一般的なタイプ、審美性、耐久性ともよい。
治療が終わるまで前歯はないまま?
前歯がないと見た目がとても気になると思います。そのため、前歯の被せ物やインプラント治療の際には必ず仮歯を入れますのでご安心ください。被せ物であれ、インプラントであれ、セラミックやジルコニアで作製すれば、天然の歯と見分けがつかないくらいに色や形を合わせた自然でキレイな前歯が入ります。
前歯をぶつけて折れたときの応急処置は?
転んだり事故にあったりして前歯が折れた場合、傷から出血があればガーゼなどで押えてまず止血します。前歯の先の部分だけが欠けたり折れたりした場合は接着するだけで治ることもあります。
また、前歯や歯ぐきに強い衝撃をうけた時には歯根がダメージを受けて割れていることもあり、ヒビの入り具合によっては抜歯となることもあります。
いずれにしても早めに歯科医院に行きましょう。その時にぜひ守っていただきたい注意点がいくつかあります。
1.残った歯に触らないようにする
前歯が折れてしまった時の断面は鋭い形になっていることがありますので、指や舌で触れると怪我をする場合があります。触れたことによって痛みが出る場合もありますので、絶対に触らないようにしましょう。
2.折れた前歯の欠けらがあれば取っておく
前歯が折れた場合は接着するだけで治ることもあります。もし折れた前歯の欠けらがあれば取っておいて治療の際に歯科医院へ持っていきましょう。欠けらを歯に接着して元のように戻せる可能性があります。
歯をとっておく際には、小さめのタッパーやビニール袋の中に前歯を入れて、歯が浸るくらいに牛乳を入れます。歯が乾かないようにするためと、タンパク質が必要であるためです。どうしても牛乳がない場合は、水を入れたりせずに唾液で歯を湿らすようにして保存しましょう。
しかし長く保存できるわけではありませんので、早めに歯医者に電話などで連絡して予約を取りましょう。
3.すぐに歯科医院へ
ほんの少し前歯が欠けただけで痛みや見た目の不自然さがない場合に、そのまま放置してしまう方がおられます。忙しくてなかなか歯医者に行けないという事情もあるでしょうが、前歯が折れてしまったら、すぐに歯科医院を受診しましょう。かかりつけ医ですぐに診てもらえない場合は、急患を受け付けている歯医者を探して出来るだけ早く受診します。
何らかの理由ですぐに受診出来なくて、激しい痛みが出ている時は、鎮痛剤をドラッグストアなどで購入して服用します。ただし、鎮痛剤の使用は一時しのぎですので、痛みの原因を確実に治療して痛みを止めるために、出来るだけ早い受診を心がけましょう。
前歯が根元から折れてしまった時の治療は?
前歯が根元から折れてしまった時は、被せ物(クラウン)をつけてもすぐに外れてしまうリスクがありますので、被せ物での治療は難しくなります。その場合は、抜歯の対象となり、抜歯後の治療は入れ歯、ブリッジ、インプラントの3つから選びます。
前歯の根元が残っている状態なら、抜歯しなくても被せ物治療で済むことがあります。また、前歯の欠けた部分が小さい時は、レジン(歯科用プラスチック)でのダイレクトボンディングやラミネートベニアという薄いセラミックのチップを歯の表面に張り付ける治療できれいに治る場合もあります。
歯牙破折(しがはせつ)
転んだりスポーツでぶつかったり、事故などの外傷によって歯が歯がさまざまな位置で折れた状態を歯牙破折といいます。強くぶつかった際に歯槽骨骨折、歯牙脱臼、歯牙破損、口腔内創傷、口腔外創傷などを起こしている場合があるため、注意が必要です。
前歯が折れた時の衝撃で歯茎の腫れが起こっている時は、腫れがひくまで消炎以外の治療を待ち、歯茎が落ち着いてから治療を行う場合もありますので、担当医の指示に従って下さい。
前歯が折れた状態を治療せずに長い間放置するとどうなる?
前歯が折れてしまったのを長い間放置してしまうと、以下のような問題が起こります。
- 歯が折れた状態が他人から見えると恥ずかしい
- ものを噛み切りにくくなって丸呑みすると消化不良になる
- 発音がしにくくなり、話すことがおっくうになる
- 早めに治療した方が費用が安く済む
- 神経が露出している場合はズキズキ痛む
インプラント治療とは?
歯科治療におけるインプラント治療とは、顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、そのうえに被せ物を取り付けて、失った歯の機能を回復させる治療方法です。
事故や歯周病、虫歯などで歯を失った方が、主なインプラント治療を受ける対象となります。しかしインプラントは外科手術が必要で、全身疾患があって投薬中の方や、顎の骨が少ない方はインプラントが出来ない場合があります。
また、歯周病で歯を失った方は、歯周病をある程度治療しておかないと、インプラントを埋入してもその周囲の歯肉が歯周病菌によって炎症を起こし、インプラント周囲炎を起こすとやがてインプラントが抜けてしまいます。
インプラントは20歳から可能になります
インプラントが可能な年齢は、顎の骨の成長が止まる20歳くらいからとなります。顎の骨が成長している時期にインプラントを入れると、顎の大きさや形が変化しますので、歯並びや見た目に影響が出てしまうリスクがあります。
顎骨の成長期に歯を失った場合は、顎の成長が止まるまでは仮歯や入れ歯を一時的にお使いいただく場合もあります。
【動画】前歯のインプラントについて
クローバー歯科総院長の松本正洋が前歯のインプラントについて解説。
前歯が折れた場合のインプラントに関するQ&A
前歯が折れた場合の応急処置として、まず傷口から出血がある場合はガーゼなどで押さえて止血します。先の部分だけが欠けたり折れたりした場合は、接着するだけで治ることもあります。ただし、触れると怪我をする恐れがあるので絶対に触らないようにし、早めに歯科医院を受診しましょう。
前歯が折れた場合、欠けた歯があれば保存しておくことが重要です。欠けた部分を小さめの容器に入れ、牛乳に浸すか唾液で湿らせて保存しましょう。できるだけ早く歯科医院に連絡し、欠けた部分を持参して受診することで、歯に接着して元のように戻せる可能性があります。
前歯が根元から折れた場合、被せ物での治療が難しくなる場合があります。根元が残っている場合は被せ物治療が可能なこともありますが、抜歯が必要な場合もあります。抜歯後の治療は、入れ歯、ブリッジ、インプラントの3つの選択肢があります。治療方法は個々の状況によって異なりますので、歯科医院で相談しましょう。
まとめ
前歯が折れた場合のインプラント治療についてご説明しました。前歯は審美性が重要ですので、インプラントが一番きれいな歯をつくれますが、歯が折れたときはまず現在の状況についての歯科医師の診断を仰ぎ、その後治療方法について相談する流れとなります。
インプラントでの治療の際には特に念入りにカウンセリングを行いますので、折れてしまった歯以外にもお悩みの歯がありましたら、お話しください。