インプラント

60代女性の奥歯のインプラント治療の流れ

60代女性の奥歯のインプラント治療の流れ

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

左右の下の奥歯合計3本をインプラント治療した60代女性の方の実際の治療の流れをご紹介します。

見栄えと口臭と噛みづらさの悩み

インプラントの悩み

患者さんは60代女性です。下あごの右側2本の奥歯と左側1本の奥歯を失っておられ、食べ物が噛みにくいことと、見た目の悪さ、そして口臭に悩んでおられました。お口の中には古い金属の詰め物や被せ物がいくつもあって、歯磨きが不十分であるため、口臭が発生しているようでした。

「欠損した歯をインプラント治療して、奥歯でしっかり噛めるようになりたい」という他に、「前歯の差し歯を新しくやりかえたい」というご希望もありました。前歯を新しいセラミックの差し歯に変えることで、若返りも期待しておられました。

CT撮影と3Dソフト上でのシミュレーション

まずCT撮影を行って、歯槽骨の状態や血管、神経などの詳細な位置を3Dソフトで確認します。

歯を失ってから何年もたつとのことで、頬側に骨吸収がみられました。そのためインプラントを埋入すると同時に歯茎を切開して人工骨を充填する方法で、二回法の手術で行うことになりました。

50代以上の方で、歯を失ってからの年数が長い場合は、殆どの方に骨吸収がみられ、そのままではインプラントを埋め込むための骨の高さや幅が足りません。そのような場合には骨造成を行い、人工骨をつくるための処置をします。

インプラント手術時に静脈内鎮静という点滴麻酔を採用

静脈内鎮静用シリンジポンプ

埋入するインプラントの数は3本です。患者さんは出来るだけ楽に手術を受けたいとのご希望で、眠っている間に手術をする「静脈内鎮静」という点滴麻酔を選ばれました。

これは全身麻酔とは違って、意識が完全になくなるのではなく、うとうとうたた寝をしているような状態になります。静脈内鎮静に加えてお口の中の局所麻酔を行いますので、かなり楽に手術を受けることが出来ます。

インプラントの埋入本数が多い方や、こわがりの方、歯医者が苦手な方は静脈内鎮静を選ばれます。手術は日帰りで行い、ご家族の付き添いは特に必要ありません。そして、手術当日までに一度、歯のクリーニングの為に来院頂いています。

インプラント一次手術

インプラントの構造

麻酔が十分にきいているのを確認したら、手術開始です。

まず下顎の歯の欠損部の歯茎を切開します。次にドリリングでインプラント埋入窩(インプラントを埋めるための穴)を形成し、インプラント体を3本埋入します。

同時に頬側に骨が足りないため、インプラント周囲に骨補填材(骨生成材)を充填します。

骨を造る処置は、GBRという方法で行っています。

一回目の手術はこれで終わります。静脈内鎮静は、麻酔がさめてから少し休んで頂ければ、そのままお帰りになれます。ただし車の運転は控えて頂いて、なるべくタクシーなどでお帰り頂いています。

骨が出来てインプラントと結合するまでおよそ3~6ヶ月

骨が出来る期間は、患者さんによって違います。新陳代謝の活発なお若い方は早く結合します。50代以降の女性は骨密度が減りますので、男性よりも少し長くかかる場合が多いです。

今回の患者さんは60代の女性の方ですが、約4ヶ月で骨が再生されて自家骨が出来、硬い骨になって骨とインプラント体の結合が確認できました。

インプラント二次手術

4ヶ月後に二次手術を行い、歯肉の下に埋め込まれていたインプラントの上部を切り開いて露出され、ヒーリングアバットメント(仮のアバットメント)を装着します。二次手術は手術とはいいますが、簡単な処置ですので、そう時間はかかりません。

その後、型取りをして、上部構造を作成します。この日は仮歯をつけてお帰り頂きました。

インプラントの上部構造の装着

セラミックの上部構造(被せ物)の製作には2~3週間程度かかります。上部構造が出来上がったら、仮歯を外してセラミックの歯を取り付けます。噛み合わせの高さなどを確認し、インプラント治療は終了します。これで左右の臼歯部でしっかりと噛めるようになりました。

その後前歯4本の差し歯のやり替え

前歯

この患者さんはインプラント治療後、色が変わっていた古い差し歯を外して、土台の部分をきれいにクリーニングし、型取りをして新しいかぶせ物を製作しています。

セラミックの前歯は天然歯の色調に近い感じに色付けして仕上げて装着しました。隣の歯との色の差がなく、とてもきれいな状態になりました。

インプラント治療後は定期健診が必須になります

インプラント治療が完了してしっかり噛めるようになっても、それで終わりではありません。その後は三ヶ月に一度くらいのペースで定期健診のために通院して頂きます。定期健診では主に歯科衛生士が歯周病にならないようにインプラントや周囲の天然歯のクリーニングを行います。

インプラント周囲炎

歯周病が進行すると歯を失うということは、皆さんご存じと思いますが、インプラントの周囲の歯肉が炎症を起こして歯周病と同じ症状を起こすことを、インプラント周囲炎といい、インプラントがダメになる一番の理由となります。

そのため、天然歯と同様に、インプラントにも歯垢や歯石がつかないよう、そして歯周ポケットが深くならないように、歯周病予防のためのケアが必要です。

60代女性の奥歯のインプラント治療の流れに関するQ&A

インプラント治療の手順には何が含まれますか?

インプラント治療の手順には、CT撮影による骨構造の確認、インプラントの埋入手術、骨生成材を使用した骨造成などが含まれます。その後、骨とインプラントの結合を確認するために数ヶ月待ち、インプラントの上部構造(被せ物)を装着する手順が続きます。

インプラントの治療期間はどれくらいかかりますか?

インプラント治療の期間は個人差がありますが、骨がインプラントと結合するまでおよそ3~6ヶ月かかります。患者さんの年齢や骨密度によっても異なり、若い方ほど早く結合する傾向が見られます。

インプラント治療後のケアについて教えてください。

インプラント治療後は定期的な健診が必須です。定期健診では歯周病予防のためのクリーニングが行われます。また、歯ブラシや歯間ブラシを使用して自宅でのケアも重要です。インプラント周囲の清潔を保ち、インプラントの寿命を延ばすために適切なケアを続けることが大切です。

まとめ

60代の女性のインプラントの流れをご紹介しました。今回は二回法で手術を行っており、頬側の骨が足りなかったためにGBRという方法で増骨の処置を行っています。インプラント治療後は定期健診に必ず通ってインプラントを長もちさせます。

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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