インプラントの基礎知識

前歯のインプラントができないケースを教えて

前歯のインプラントができないケースを教えて!

大阪インプラント総合クリニック 歯科医師 松本 正洋

前歯のインプラントができないケースは、一定数存在します。「前歯のインプラントがなぜできないことが多いのか」という点について、ご紹介します。

前歯のインプラントができない場合

では、前歯のインプラントができない場合について、具体的にご案内します。

1. 顎の成長が未完了

18歳未満の方は、顎の成長がまだ終わっていないため、インプラントの処置の年齢対象ではありません。

上顎の成長は永久歯に生え変わる12歳前で終わりますが、下顎は18歳くらいまで成長するため、顎の骨の発達がまだ終わっておらず、成長途中という理由によるものです。無理にインプラントの処置を行うと、ご自身の噛み合わせや歯並び、顔に影響を及ぼす可能性があるため、インプラントは18歳以上の方に行います。発達には個人差がありますので、18歳の方がインプラント手術を希望される場合は、ドクターやスタッフにご相談ください。

2. 全身疾患や妊娠などの体の事情による

患者様がインプラントを希望されても、特定の全身疾患や服薬があると難しい場合があります。高血圧、糖尿病、心疾患、骨粗しょう症などが該当します。術中の管理及び、術後のインプラントの安定が難しい等の理由からインプラント治療ができないと断るクリニックもあるでしょう。ただし、一時薬の服用を止めてもいいと担当医に許可を得た方は、可能な場合があります。

妊娠中の方は、術前に行う麻酔や、その後の投薬などの影響が母子に及ぶ可能性があります。リスクが高いため抜歯の部位は入れ歯を入れることで補い、出産後の落ち着いた時期にインプラント手術を受けていただく方が安心です。

3.むし歯・歯周病がある

細菌感染というべきむし歯や歯周病がある場合は、インプラントの手術を行うことができません。口腔内の感染を放置したまま行うと、インプラント周囲炎などの新たなトラブルが起こります。インプラントの部分に細菌が侵入すると、インプラントの脱落や痛みという残念な結果になり、再度行う場合は高い費用がかかります。歯や歯周組織をまず健康な状態に戻し、完治してからインプラントを行うと考えるべきです。

4. 骨の不足

前歯のインプラントを埋め込むためには、十分な量と質の骨が必要です。しかし、長期間歯を失ったままにしておくと、骨吸収が進み、骨の量が不足することがあります。特に前歯の部位は、骨が薄くなりやすいため、インプラントが不可能な場合があります。

  • 対応策:骨移植やサイナスリフトなどの骨増生手術が考慮されますが、全ての患者さんに適用できるわけではありません。

5. 審美的な理由

前歯は見た目が非常に重要な部位であり、インプラントの装着が審美的に満足のいく結果を得られないと判断される場合、インプラント治療が避けられることがあります。例えば、歯肉の厚みや色、周囲の歯との調和が取れない場合です。

  • 対応策:ラミネートべニアやブリッジなど、他の審美的な修復方法が提案されることがあります。

6. 経済的な理由

前歯のインプラント治療は技術的に難易度が高く、また、審美的な仕上がりも求められるため、費用が高額になることがあります。そのため、経済的な理由でインプラント治療が選択されないケースもあります。

  • 対応策:他の費用対効果の高い治療方法が検討されます。

インプラントできない状態に無理に行うとどうなる?

インプラント手術においては、あごの骨の垂直的な高さ、水平的な幅や厚みなどの骨の量の不足は、大変重要な問題です。歯槽骨の厚さが足りなければ、人工歯根を埋めても、すぐに抜けてしまう可能性があります。

骨造成(自家骨か人工骨の移植)やソケットリフト法、サイナスリフト法をせずに、無理やりインプラントの処置を強行してしまうと、どうなるでしょうか。そんなことをすると、インプラントは動揺や脱落を繰り返し、手術の回数を重ねることになります。

患者様の心身ともに負担がかかることや新たに料金や期間が費やすため、必ず骨の幅・高さ・厚みが足りない場合は、その対応ができる歯科を受けるようにしましょう。骨の再生を待ち、十分な骨の量になってからインプラント手術をすることが安心につながります。

また、審美性が必要な前歯は、歯科医師の経験が特に大切です。前歯のインプラントは、症例や経験を積んだ技術のある歯医者さんのもとで行えば、治療計画も明確です。

インプラントとは

インプラントの構造

まず、インプラント治療について簡単にご説明します。

インプラントは、虫歯や歯周病、事故などにより、歯を失った状況の方が、歯科医院で行う義歯治療のひとつで、手術による治療法です。流れをかいつまんで説明します。

麻酔をし、顎骨(顎の骨)にドリルで穴を開け、生体親和性の高いチタン素材の人工歯根(フィクスチャー)を埋入します。骨とフィクスチャーがきちんと接着するまで時間をかけ、ドクターが骨の状態をきちんと確認できれば、支台(アバットメント)をフィクスチャーに入れ、仮歯をセットします。型どりを行い作製した上部構造(被せ物)が完成したら、土台にそれを装着し、インプラントの治療は終了となります。

前歯の場合、上部構造はオールセラミックやジルコニアセラミックが審美性に優れているため、一般的にセラミック素材の自然に見える歯を前歯に多く使用します。

ちなみに他の義歯治療に、入れ歯や、ブリッジが挙げられますが、インプラントは、歯根とあごを接着し固定するため、最も咬合力(噛む力)に優れていて、安定性があります。また他の歯を削ることがなく自立するので、残った歯(残存歯)に優しいという点もメリットです。 デメリットは自費診療という点です。そのため、保険適用外で高額な料金になります。

前歯の特徴

前歯

通常、前歯と奥歯を比べた時、見えやすさや大きさが違います。前歯は周囲の人からの見た目に影響を及ぼすとても目立つ位置にある歯です。対して奥歯は目立ちません。

大きさについてですが、前の歯(中切歯・側切歯)は平べったく、奥の歯(臼歯)は丸い形をしています。お口の中に入ってきた食べ物を小さく切る働きが前歯、より細かくすりつぶして唾液に混ざりやすくする働きが奥歯です。奥歯の歯槽骨や歯茎と比較すると、前歯を支える歯槽骨や歯茎は、薄く痩せやすい傾向にあります。前歯のインプラントは奥歯と同じように行えるわけではありません。

【動画】前歯のインプラントについて

クローバー歯科総院長の松本正洋が前歯のインプラントについて解説。

前歯のインプラントができないケースに関するQ&A

前歯のインプラントにはどのような特徴がありますか?

前歯のインプラントの場合、上部構造には一般的にオールセラミックやジルコニアセラミックなどの審美性に優れた素材が使用されます。前歯は目立つ位置にあり、見た目に影響を及ぼすため、自然に見える歯を再現することが求められます。また、前歯を支える歯槽骨や歯茎は奥歯と比較して薄く痩せやすい傾向があります。

前歯のインプラントができない場合にはどのような状況が考えられますか?

前歯のインプラントができない場合には、以下のような状況が考えられます。 1.年齢が18歳未満の場合:成長途中の顎の骨の発達による影響があるため、インプラントの処置は18歳以上の方に行われます。 2.特定の全身疾患や妊娠などの体の事情がある場合:特定の全身疾患や服薬によってインプラント治療が困難な場合があります。妊娠中の方もリスクがあるため、一時的な補綴物を使用し、出産後にインプラント治療を受けることが推奨されます。 3.むし歯や歯周病がある場合:口腔内の感染がある場合には、インプラントの手術は行われません。まず歯や歯周組織を健康な状態に戻し、完治してからインプラント治療が行われます。

前歯のインプラントには特にどのような注意が必要ですか?

前歯のインプラントは審美性が重要であり、歯科医師の経験が大切です。適切な治療計画を立てるためには、症例や経験を積んだ技術のある歯医者さんを選ぶことが重要です。また、前歯を支える歯槽骨や歯茎が奥歯よりも薄く痩せやすいため、手術の際には骨の状態や審美的な要素を考慮する必要があります。

まとめ

歯科医院スタッフ

前歯のインプラントでお悩みの方は一度、お気軽にカウンセリングを利用しましょう。インプラント治療を行う医院では、予約制で無料で行っているケースがあります。前歯のメリットやデメリットを患者様にきちんと説明してくれ、CTによる精密検査を医院内で実施できる設備は重要です。

そして、一番大事なことはご自分が信頼できる歯科医師に出会うことです。前歯のインプラント治療はできないのかと諦めず、複数のクリニックに相談し、考えるようにしましょう。

 

この記事の監修者

医療法人真摯会
理事長 歯科医師 総院長
松本正洋
クローバー歯科、まつもと歯科 総院長。国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。インプラントの認定多数。IDIA(International Dental Implant Association国際インプラント歯科学会)認定医。I.A.A国際審美学会理事。日本抗加齢医学会認定専門医(日本アンチエイジング学会)。

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