歯が1本もない方でもインプラントは可能です。その場合、何本のインプラントを埋入すれば全ての歯をインプラントで作るかということですが、治療方法がいくつかあり、必要な本数も違います。
歯が1本も無いために総入れ歯をお使いの方がインプラント治療をされる場合は、歯と同数のインプラントを埋め込まなくても良い方法で行うことが出来ますので、ご説明します。歯の本数のインプラントを埋入するのと比べて、身体の負担や料金の面でかなりのメリットがあります。
目次
歯が1本もない場合に必要なインプラントの本数
歯が1本もない場合に必要なインプラントの本数について解説します。
1. オールオン4
最も一般的な選択肢の一つが「オールオン4」という治療法です。これは、上下の顎にそれぞれ4本のインプラントを埋入し、その上に14分の人工の歯がセットされた上部構造を固定する方法です。オールオン4は4本のインプラントが、12本の歯を支えるため、手術が比較的短期間で終わり、コストも抑えられるというメリットがあります。
2. オールオン6
「オールオン6」という方法では、1つの顎に6本のインプラントを埋入します。この方法は、オールオン4を行うにはやや骨の状態が良くない場合に選択され、4本のインプラントよりも安定性が増します。オールオン6では6本のインプラントがそれぞれの負担を分散し、長期間の耐久性が期待できます。
3. 患者さんの状況に応じた本数の調整
オールオン4,オールオン6以外でインプラント治療を行う場合、必要な本数は患者さんの顎骨の状態、健康状態、予算、そして個々のニーズに応じて決まります。歯科医師が顎骨の密度や厚さ、インプラントの位置などを考慮し、最適な本数を提案します。一般的に、顎骨が十分にある場合は本数が少なくても対応でき、骨が薄い場合は補強のためにインプラントの本数を増やすことがあります。
4. 義歯やインプラントオーバーデンチャー
マグネットや専用の金具を使っての取り外しが可能な義歯(入れ歯)やインプラントオーバーデンチャーも選択肢に入ります。これらの方法では、インプラントの本数が少なくても、義歯を安定させることが可能です。
歯が1本もない場合に必要なインプラントの本数は、治療方法や個々の状況により異なります。最適な治療法を選択するためには、歯科医師との十分な相談が重要です。
総入れ歯の患者さん向けのインプラント治療法があります
全ての歯を失って歯が1本も残っていない状態を無歯顎といいます。無歯顎の患者さんは普段は総入れ歯をお使いのことと思いますが、総入れ歯でうまく噛めなかったり、毎日取り外してきれいに洗う手間が大変だったり、お口に入れると痛みがあったり、様々な理由でインプラント治療を希望される患者さんがおられます。
無歯顎の患者さんに対して、失った全ての歯の本数と同じ数のインプラントを埋め込むとしたら、かなり高くなりますし、インプラントを埋入する外科手術の時間も多くかかりますので、身体的にも経済的にもかなりの負担となります。そのような患者さんの為に、従来よりはるかに軽度な負担でインプラント治療が出来る方法「オールオンフォー(All-on-4)」「インプラント・オーバーデンチャー」をご紹介します。
まずCT検査などで現在の状態を知る
インプラント治療において重要なのは、もちろん骨の状態や骨量ということもあるのですが、歯を失ってしまった原因にも着目します。虫歯が進行したのか、歯の根が割れたのか、歯周病によるものなのかをドクターがまず確認します。
日本人の成人の8割は歯周病にかかっているといわれます。そしてインプラントが数年でだめになるケースの大半はインプラント周囲炎と呼ばれる、インプラント周囲の歯肉が歯周病のような症状になる病気です。
そのため、まず歯のクリーニングなどの歯周病治療を受けていただき、歯肉の状態を良くします。
同時に、CT検査によってあらゆる角度から骨の高さや幅を調べて現在の状態を把握します。CTのデータ情報を分析することで現在の骨の状態でインプラント埋入が可能かどうか、それとも増骨の処置が必要かがわかります。
長年に渡って歯が1本もなく総入れ歯を使用されている場合は、あごの骨が吸収されてかなり減っている可能性がありますので、骨の状態を見ながら、オールオンフォーや、入れ歯を磁石などで固定する(ご自分で取り外し可能)タイプのオーバーデンチャーという治療が、果たして患者さんに適しているかを判断します。
オールオンフォー(All-on-4)
オールオンフォーは、インプラントを4本(前歯に2本と奥歯に傾斜をつけて2本)~6本埋入し、連結した固定式の人工歯を支える方法です。歯が1本もなくても、わずか数本のインプラントで10~12本の歯を作ることが出来ます。
固定式ですのでご自身での取り外しは出来ませんが、総入れ歯が合っていない場合の歯茎の痛みや外れやすいなどの心配もなくお食事が出来るようになります。患者さんの骨の状態によってインプラントの埋入数は片顎で4本~6本となります。
通常のインプラントの場合、顎の骨が薄い場合は骨造成術が必要でしたが、オールオンフォーでは骨の薄い部分を避けて長いインプラントを斜めに埋め込むことが出来るので、手術したその日のうちに仮歯を装着して食事をすることが可能です。
【動画】オールオン4について
クローバー歯科総院長の松本正洋がオールオン4について解説。
オールオンフォーについての詳しい説明は下記のページをご覧下さい。
インプラント・オーバーデンチャー
インプラントオーバーデンチャーは総入れ歯を2本のインプラントで支えます。インプラントにはロケーターという器具を取り付け、入れ歯にはロケーターにくっつく留め具を取り付けます。ロケーターと留め具がくっつくことで、入れ歯が安定します。
オールオンフォーと違い、取り外し式の入れ歯をロケーターで安定させますので、ご自身での取り外しが可能で、入れ歯自体のお手入れは今まで通り発生します。つまり、夜は丁寧に入れ歯を洗浄して、専用の液に漬けて保存するというのは毎日行わなければなりません。
ロケーターと留め具の代わりに小型磁石を使う磁石アタッチメントデンチャー(マグネット式インプラント)という方法もあります。
インプラントオーバーデンチャーについての詳しい説明は下記のページをご覧下さい。
このほかにも、歯が1本もない無歯顎の方の為に最小限の本数のインプラントで上部構造をブリッジにするインプラントブリッジやボーンアンカードブリッジなどの選択肢があります。
インプラントオーバーデンチャーとオールオン4の治療例
歯が上下ともに1本もない方の症例です。上顎をインプラントオーバーデンチャー、下顎をAll-on-4(オールオンフォー)で治療した症例です。上顎のオーバーデンチャーはロケーター4本でインプラントに固定しています。下顎のオールオンフォーは4本のインプラントで上部構造を支えています。
治療方法
多くの歯を失っておられたため、上顎はインプラントオーバデンチャーで治療しました。下顎はオールオン4(4本のインプラントで10~12本の歯を作る方法)で治療しました。
費用
オールオン4 セラミックタイプ ¥3,300,000(税抜)
インプラントオーバーデンチャー ¥1,590,000(税抜)
内訳:インプラント ¥1,000,000(税抜)…¥250,000×4
ロケーター ¥240,000(税抜)…¥60,000×4
金属床義歯 ¥350,000(税抜)
静脈内鎮静2回 ¥160,000(税抜)
※費用は現在かかる費用と一致していない場合がありますので、必ずご確認ください。
リスク
インプラントは自由診療なので保険適応の治療と比べて治療費が高額になります。インプラントが骨と定着するのを待つ期間が必要なので治療期間が長くなります。手術後に腫れることがあります。
骨が少なくてインプラントが出来ない場合は?
歯が1本もない方でもインプラント治療は可能ですが、歯を失ってからの期間が長く、その間総入れ歯を使っていた患者さんは、顎の骨が吸収されて減っており、インプラントを埋入するための骨の高さが少なかったり、幅が足りない場合があります。
そのような場合には骨を造る処置を行います。骨を造る処置のことを骨造成といいますが、良く使われている骨造成には、GBR(骨再生誘導法)と患者さん自身の骨(自家骨)を利用して移植する方法があります。
※オールオン4は骨がない部分を避けて斜めにインプラントを埋入しますので、骨造成は必要ないケースが多いです。
歯が1本もない場合のインプラントに関するQ&A
総入れ歯からインプラントへの治療法はあります。オールオンフォー(All-on-4)やインプラント・オーバーデンチャーなどがあります。
無歯顎の患者さんには失った全ての歯の本数と同じ数のインプラントを埋め込む必要はありません。オールオンフォーやインプラント・オーバーデンチャーでインプラントの埋入本数が4~6本程度の治療が推奨されます。
オールオンフォーは4本から6本のインプラントを埋め込み、固定式の人工歯を支える治療法です。数本のインプラントで10~12本の歯を作ることが可能です。
まとめ
このように、歯が1本もない無歯顎の方は、歯の数だけのインプラントを埋入する必要はなく、4~6本程度のインプラントで上部構造や入れ歯を固定または磁石で安定させる方法があります。どの方法が適しているかは、カウンセリングで担当医がお話ししますので、じっくり検討してお決め下さい。