
食事をしても味がしない、匂いを感じないと思われる方がおられます。加齢や味覚障害も考えられますが「入れ歯治療にしたからだ」という方も少なくありません。今日はインプラントの特徴や、味がしないのは入れ歯(義歯)が原因かについてご紹介します。
目次
インプラントとは

まずインプラントについて治療の流れを含めてご説明します。歯科医院で行うインプラントは、虫歯や歯周病、不慮の事故などで歯を失った方が行う治療です。第二の永久歯と言われ、顎の骨にインプラントを埋め、土台を取り付け、かぶせ物を行う手術です。
即時荷重インプラント(埋入直後に人工の歯を取り付けるインプラントの術式)もありますが、口腔内の状態や全身状態によっては患者様に当てはまらない方も多く、通常のインプラント手術の流れでご案内します。
まず、歯科医師と患者様でカウンセリングを行い、精密検査(CT)をします。患者様がインプラントできる状態か調査が必要です。顎の骨の量が少なければ増骨の処置を行いますし、疾患などがないかも確認します。
インプラント手術をしにくい疾患とは
ちなみに、インプラントができない方は、糖尿病や高血圧、心臓病や骨粗しょう症、歯周病、喫煙習慣などです。
疾患の場合は服薬中止しても大丈夫かを担当医に確認していただきます。そして、口腔内のリスクが高い方(むし歯・歯周病・詰め物や被せ物の再作製・噛み合わせなど)は、先にお口の治療を終わらせてインプラント治療を開始します。お口の中に細菌感染した箇所があると、インプラントの脱落を起こしてしまい、せっかくの手術が無駄になってしまいます。
インプラント治療の流れ
あごの骨にドリルで穴を開け、生体親和性の高いチタン製のインプラント(人工歯根)を埋入する一次手術をします。インプラントと骨が結合するまで待ち、人工の歯を支える土台(アバットメント)をインプラントへ取り付ける二次手術を行います。歯茎の治癒をしっかりと待ってから、人工の歯の型どりを行い、患者様の歯の色にあった人工歯(上部構造)を作製し、装着します。
人工歯と呼ばれる被せ物にも、ジルコニアセラミック、オールセラミック、ハイブリッドセラミックなど種類がありますが、選択された人工歯を土台に固定して、インプラントの治療は終了します。
味がしないのは入れ歯のせい?

一般的に味覚障害や加齢以外で味がしない原因として、噛み合わせが悪いケースと、総入れ歯によるケースの二種類が挙げられます。
噛み合わせが良くないケースとしては、食事の際に大きな食べ物を上下の歯でちぎり、小さくすりつぶすことができないことに起因します。食べ物がすりつぶせないため、うま味が抽出できず、味がしないと考えられます。
総入れ歯のケースとしては、味細胞である味蕾(みらい)に関連しています。味蕾は舌の表面以外に、頬の内側や、上あごの柔らかいところ(軟口蓋)にも存在します。成人でおおよそ7500個味蕾があるといわれ、高齢でない限り、新陳代謝により味蕾は新しい細胞へと活性化しています。
総入れ歯の装置は、人工の歯だけではなく、人工の歯の部分を支える人工床があります。総入れ歯にすると人工床が上あごを覆うことにより味蕾が隠れてしまい、うま味が妨害され、味がしないと思う方が多いです。保険適用内の入れ歯の人工床はプラスチックで、自費診療の場合は金属床やシリコンで作製されています。
インプラントと入れ歯を徹底比較
自費診療の入れ歯(金属床やシリコン床)は保険の入れ歯に比べて、熱伝導や違和感が少ない装着物です。ただ、入れ歯とインプラントを比べる場合、どのように違うかについてご説明します。
噛む力
固い食べ物や粘着性のある食べ物を咬むことができるのは、入れ歯よりインプラントです。もともとのご自身の歯で噛んだ状態を10割とすると、部分入れ歯で3~4割、総入れ歯で1~2割の咀嚼機能になるというデータもあります。食事の際に入れ歯を外すなどの手間がなくなり、またインプラントは顎の骨に人工歯根を埋めて人工歯を取り付けるため、ご自身の永久歯に近い感覚で噛むことが可能です。
費用
価値観は人それぞれですので、治療の料金が重要か、治療内容が重要か、患者様によって選択は大きく変わります。インプラントと入れ歯の費用面でみると、入れ歯は安く歯が入ります。
保険診療ならば3割ですし、保険適用外の自費診療での入れ歯でも、インプラントより安価でしょう。自費診療の入れ歯にすれば、嘔吐反射(えずき)や、入れ歯の不安定感は少ないです。ただし、入れ歯はインプラントの安定感よりも劣ると言えます。
治療期間
治療期間については、入れ歯がインプラントより早く治療が終わります。インプラントの場合一次手術を行った後、骨とインプラントが結合するまで、皮膚が癒合するまでそれぞれ待ち時間があります。その点、入れ歯を作るほうがインプラントより早く使用でき、早く歯が入るというメリットがあります。
他の残存歯への影響
この点はインプラントが勝っています。総入れ歯は粘膜と吸着し安定性を維持していますが、噛んだ刺激があごに伝わらないため、あごの骨が痩せてしまい、他の歯がぐらぐらして抜歯に至るというデメリットがあります。部分入れ歯は金具を隣の歯にひっかけているものが多く、隣の歯が弱ってしまいます。
インプラントは歯根を埋め込むため、他の歯の健康に影響を及ぼすことはありません。そして、骨とインプラントが結合するため、きちんと噛むことができます。
治療後のメンテナンス
入れ歯の場合、変な噛み方を続けると人工歯が削れてなくなってしまいます。噛み合わせを見て、適切な位置で噛むように通院回数を増やしてもらう場合があります。インプラントは、自宅で正しいブラッシングを行っていなければ、インプラント周囲炎にかかり、インプラントが抜ける恐れがあります。定期的にクリニックへ通院し、スタッフにクリーニングを受け、汚れを落としましょう。
まとめ

入れ歯で味がしないという方は、インプラントを検討されるのも一つの手段です。食事はおいしく噛める方が楽しい時間を過ごせます。当院では予約制の無料カウンセリングを行っておりますので、ご相談をされたい方は、お気軽にお問い合わせください。